2006年06月29日(木) 19時32分24秒,20060629193224,20060702193224,k42Bh5ezJSvUo,孤独の天使 〜夜道〜,満月悠,etsuzaki@yahoo.co.jp,,
「お先に失礼しまーす」
「あ、お疲れ様ー」
「お疲れさん。気ィつけて帰れよ」
午後10時近い大手ファーストフード店、ファン☆フード。
ピーク時が過ぎ去った店内は数時間前とは打って変わって、お客の姿もまばらだ。
バイトの人がやっと一息つける時間。
「お疲れ様。でも悠里ちゃん、賢吾の言うとおりよ。悠里ちゃんはピッチピチの女子高生なんだから夜道は注意しなくちゃ」
厨房にいるバイトの仲間先輩たちにぺこりと頭を下げる悠里は、ポテトを作る手を少し休めている高木賢吾(たかぎけんご)の後方から心配気に声をかける祐架(ひろか)に思わず笑ってしまった。
「渡辺先輩、いつもそれ、言っていますよ?それにボ・・・私、童顔だし幼児体型だから・・・誰も私のこと高校生だなんて思ってくれないし」
「だって危ないじゃない。それに悠里ちゃん、結構可愛いわよ?私が男子だったら思わず抱きしめちゃう」
(でも先輩、それは・・・高木先輩の前では言わないほうがいいんじゃ・・)
渡辺祐架と高木賢吾は同じ学年、同じ高校ということもあり、今はバイト仲間も公認のラブラブカップルだったりする。
思わずチラリと賢吾の顔を伺ってしまう悠里。
「でも祐。あんた今女子だけど事あるごとに悠ちゃん抱き潰してない?」
「だって可愛いじゃない♪真由だってしてるでしょ?」
ショートの運動系の先輩、湖鐘真由(こがねまゆ)がいい子いい子をするかのように悠里の柔らかいマロンブラウンの髪を撫でながら話に加わった。
「んー。やっぱり悠ちゃんの髪の毛気持ちいいわね」
「あのー・・・」
(話逸れていませんか・・・?)
「真由ずるい。私も私も」
(う・・・っ)
じりじりと近づいてくる二人の先輩からはもちろん、悠里は逃げられなかった。
カチャ。
銀色のステンレス製のロッカーに鍵を差し込むと小さい音が鍵穴からした。
「ああぁぁぁ。つ、疲れたぁ〜」
いつものように先輩にヌイグルミのごとく抱き潰された悠里はノロノロとした動作でハンガーにかけておいた制服を手に取った。
学校の帰りにそのままコンビニのバイトに行き、いったん家に帰って雷里の夕食を作ったのだが、時間がなかったので制服を着替える暇もないままファン☆フードのバイトにきたのだ。
右胸にF☆Fと刺繍された白い清潔なブラウスに、赤系統のチェック柄の可愛いスカート。白いソックスに店の赤い靴。先ほどまでは同じく赤い紙でできた小さな帽子を被っていた。
慣れた手つきで店の服を脱ぐと学校の制服に着替えた。
深森学園は女子はスカートかズボンか選べるので、悠里はズボンタイプだ。
まだ宿題もやっていない。
早く帰らなければ。
急いで鞄を掴み関係者以外立ち入り禁止の裏口をあけた悠里の頬をひんやりとした冷気がすうっと撫でていった。
春といっても夜は冷える。
「あ、そーいえば明日提出の古文のレポート、まだやっていないんだ・・・」
ハアッとため息を吐き出す。
もう真っ暗な夜道に薄ぼんやりと街灯が小さな光を投げかけている。
静かな暗い空間では小さな足音でも大きく聞こえる。
「やだなぁ・・・」
ふいに目の前に大きく広がる駐車場を視界の入れると大きく顔をしかめた。
悠里は、この駐車場が嫌だった。
夜になるとこのがらんとした広い駐車場は犯罪の温床になっているような気がするのだ。
思わず早足になった。
そのとき・・・。
フッ。
突然、唯一の光となっていた街灯が一斉に何かに電池を切られたかのように光を消した。
(・・・・・っ!?)
急に真っ暗になったことに驚いた悠里の目が何かの黒い影を捉えた。
陸上部所属の、持ち前の反射神経で突然飛び掛ってきたものをかわし、堅いアスファルトに転がる。
「−−−−−っ!!つッ・・・!!」
打ち付けた右肩の痛みに呻いたが、それどころではないと本能が痛む体を起き上がらせていた。
暗い闇の向こうに赤く光る目のようなものがある。
それを見たとたん、何故か悠里の中に嫌悪感と恐怖が大きく沸き起こった。
「破っっ!!」
再び飛び掛ってきたそれに今度は鞄をホームランを打つようにふりかぶり、
思いっきりひっぱたいた。
だがそれは吹っ飛ぶのではなく鞄にしがみつき、赤い目をらんらんと輝かせた。
「ム・・ダ・・・ヤット・・ミツケタ・・オレノエモノ・・・」
「い・・・やーーーーっ!!こっ、このっ・・・!!」
バンッ!!
教科書やノートが詰まった鞄を力いっぱいコンクリートに打ち付けるが、それは寸前に離れ、今度は悠里にしがみつかんと飛び掛る。
ダメだと思った。
もう・・・お終い・・・。
ギラリとその影の手に鋭いつめが光る。
瞼裏に何かの光が走った。
「おい。大丈夫・・・か?」
いつまでたってもそれの感触はしなかった。
変わりに、冷えた体を温かい誰かの体が優しく包み込んだ。
そして、低い美声が頭上からかけられる。
「・・・・?」
そっと瞳を開けると目の前には天使のように怜悧な美貌が覗き込んでいた。
そしてなぜか。
その人には遠い昔に、遇ったような・・・・・・。,急いでいたので変な文章になってしまいました。,#000000,./bg_g.gif,218.139.212.49,0
2006年06月29日(木) 07時35分24秒,20060629073004,20060702073524,jSgCOMX0d2R0I,Ibant obscuri sola sub nocte per umbras,鈴村智一郎,,,
大きい、見違えるほど大きい烏の死骸が、公園の隅で死んでいた。僕と《白い蝙蝠》は、涙を流しながらその広い国立公園の黄昏を駆け回っていた。勾配の急な坂道には、落ち葉が一面に積もり、僕らが一歩足を下ろすたび、中空に生きた小鳥の一瞬の生命のようにそれらは舞った。僕はこれから、彼女が僕に何を告げるか、僕と彼女がどのような結末を迎えるか、それらを全て知っていた。
――ずっと愛したかったのに、愛せなかったんだ。
僕は中身のないスーパーのビニール袋の中を、そこに何かが入っているような気がして覗き込みながら、ふとそう囁いた。《白い蝙蝠》は、僕に強く握られた右手首を無我夢中で引き離そうと必死になっていた。彼女はきっと違うだろう、だが君はいつまでも哀しみの余韻に浸る、そういう陋劣な種族だろう、と僕は内面的な鏡像に映る一匹の崩れた顔を持つ豚に笑われる。豚はさらにこう微笑しながら、口を開いて細切りの肉になるのを怖れずもいう。君は世界で一番不幸な王子だ。君は世界で一番幸福な乞食だ。君はそのどちらでもない。私と同じ屠殺直前の、健康だけは並外れて良好な肥えた豚だ。
――これまで生きてきた中で一番哀しいとかいわないでね。私も魂を喪ったんだから。
《白い蝙蝠》は、落胆しつつも瞳の色には小さな陽光を孕ませながらそう小声でいった。僕らは再び疾り始めた。無数のベンチが無機質に並べられた並木道を通り、無人の噴水広場に出た。僕は石のサイコロに円環を描いて包囲された、中央から噴き出る逆向きの細い滝と、夕暮れの淡い陽が美しく交接している様を見た。飛沫が数知れない宝石の煌きを吸って、それ自体で数億回の自殺を繰り返していた。
――俺が君に冷たいことをしたことも、俯き加減でしか愛を語れなかったことも、全部謝罪したい。今ここで。俺は君に謝罪する。
――悪夢で涙を流せる年齢までよ。女を傷つけた後に、すぐ許してもらえるのわ。
僕は絶え間なく死に絶え続ける噴水が、どうしようもなく美しい乙女の心臓のように感じた。この光景をそのまま西方にスライドさせると、やはり同じ噴水の前で二人の男女が孤独に語り合っていた。国立公園には無数の見えない鏡が存在し、永遠に僕らの対話を反復するつもりらしい、と僕は僕自身のものではない微笑を浮かべつつ考えた。
――あなたと私はお互いが書いている小説の内部で出会った。だから、別れの時もそうある必要があるわ。あなたが私を小説の中で殺し、私があなたを小説の中で葬儀に出す。
その時、僕は彼女の潤んだ横顔に、神話的な東洋の女神の豊穣な知性を感じた。首から提げられたラテン十字架の、贈り主は他でもない僕だというのに。
――俺は君を殺せない。俺は今でも君のことを想っている。君に別れを告げることで、俺は君が傍にいないと魂が全て枯渇してしまう自分を引きずりあげたんだ。
――傲慢ね。
時計塔の方角から、鐘の打つ音が響いた。柵の奥の樹木で満ちた暗闇から、乗り手のいない錆び付いた三輪車がゆっくりと噴水に近付いてきた。それは風を孕みながらペダルを漕ぐ、あの内的な豚に違いなかった。
――君が最後のプラットホームで、俺に何度も手を振っていた光景を想い出す。俺は自分の街に帰るべきじゃなかった。君の街に残るべきだったんだ。
――どうでもいいでしょ、今さら。そんなことより、もうこんな夢、耐えられないわ。夢の中でまで、あなたに心を焼かれている気がするもの。
僕は彼女のその一言で、この国立公園という空間そのものの創造主が僕と彼女であることを悟った。僕は瞼を閉じて、強く噴水から遠ざかる三輪車をイメェジした。瞼を開けると、そこに三輪車の姿は胡散霧消していた。
――悪夢なんていわせない。今、君は悪夢に魘されてはいない。
――あなたの新しい作品を、読んだわ。象牙の塔に棲み始めたのね。孤独を誰よりも畏れるくせに。
僕は頭を死んだ豚のようにがっくり下ろして、清潔な地面を瞳に映した。僕は《白い蝙蝠》の首を絞める悪魔、その豚の顔を持つ醜い男をイメェジしていた。
――私、あなたに今ここで抱かれたいわ。だって、夢の中だと愛は苦悩に焼かれないもの。ねえ、私のイメェジに魂で触れて。
次の瞬間、僕は彼女の首を強靭に締めた。それはこの世界が消尽されるまで、永遠に続いた。僕はその日、夢の中で、二度目の別れを告げたのだ。数知れない烏の大群が、あの大きすぎた塊へと結晶化した。カーテンからまだ青みを帯びた喪服が覗く頃、僕は貧しい布団の上で頬に涙を伝わせていた。
,こんな夢を見ました。
,#000000,./bg_e.gif,220.35.14.46,1
2006年06月28日(水) 14時46分43秒,20060628144643,20060701144643,jdanVPes3gSZg,血塗られた少女 12.,朱鷺,,,あの日から1週間。
私は家を出て、この施設に入る事を決めた。
残りの人生を、此処で過ごそうと決めた。
私はそれでいい、と思ったんだ。
ただ――。
「遙が此処にいるんなら俺も学校辞める」
と言い出す馬鹿が1人。
もちろんのことながら和泉だ。
「ばっか!私は此処に入ったほうがいいだけで、和泉は関係ないっしょ!」
「だって遙こねぇなら俺行く意味ねぇじゃん?」
「黙れ!とりあえずあんたは学校に行くの!巻き込みたくないから!」
「俺の意思なんだから巻き込む巻き込まねぇの問題じゃねぇんだよ!」
「いいから学校に通え!」
「嫌だ!」
こんな言い合いがあれからずっと続いている。
今はまだ学校に行ってるみたいなんだけど・・・
AM12時。
もちろん和泉は学校で、最近この施設の子とも仲良くなった
「遙ぁっ!!早くー!!ご飯無くなっちゃうよー!?」
「うるせーな、人数分あるんだからなくなる訳ねぇだろ?」
「あー!凌ちゃん!女の子に対して失礼な!」
「は?女の子って何処?」
私の約50メートル程で喋っている声がする。
私の事を呼んだ子はまだ中学1年生の13歳。
名前は櫻井奈緒。
そして、凌ちゃんと呼ばれている男の子は高校2年生。
倉本凌と言うらしい。
「凌ちゃんーいじめはダメなんだよ?」
「・・・遙まで凌ちゃんて言うなよ!」
「あはっ、凌ちゃんー遙いじめないでー」
「俺すんげぇ可哀想・・・」
そんな馬鹿な話をしながら食堂まで行った。
食堂にはもう既に2人が居た
「ちょおほんま遅いで!?何してたん!」
窓側に座っている背の小さい、瀬名大志が立ち上がり怒鳴った。
「遙がおそくってさー♪」
奈緒が喋りながら席に座る。
大志の隣には、小柄で見た瞬間に絶対「可憐」「綺麗」という言葉が
頭に浮かぶような美少女。
雨宮澪が座って黙々と食べている。
「遙!またお前か!ほんまにもう・・・」
ぶつぶつ言いながらすわりまた食べ始める大志
「大志、五月蝿い」
静かに食べていた澪が放った一言だった。
「えぇっ!?澪さん!?ごめんてー」
笑いながら澪に喋りかける大志。
どんっ
机の上にお盆に乗った昼食が2つ置かれた。
「持ってくるぐらいしろよ・・・」
そう言ったのは呆れた顔の凌だった。
「凌ちゃぁーんあたしのはー?」
奈緒が間髪入れずに喋りかけた
「ない。俺と、遙の」
「えぇっ!?失礼な子だなー」
そう言いながら奈緒は昼食を取りに行った
「凌、ありがと」
「・・・おう」
お礼を言われる事に慣れてないのか、少し顔を赤らめた凌。
こうして今は皆と仲良くやっている。
―1週間前、綾子から聞いた事はもう一つあった。
「こういう力を持った子は、なんらかの出来事があって発揮されたものだから」
その言葉をなんとなく気にしてはいたが、やはりこう全員が揃うと
改めて気にしてしまう一言だった。
―なんらかの出来事。
皆楽しそうに笑っているが、色々あったんだろうな・・・
「あ、遙ウィンナー食べない?もらうよ?」
私の答えを聞かずに隣の隣という遠い場所から奈緒の手が伸びた。
「あっコラ!ちょっと〜・・・」
「へへっ☆」
こんな何でもない会話をしていられるのも、束の間だと言うことを
皆なんとなく感づいていた。,えー久しぶりにアットホーム?な12話ですw
今回全然難しい話は出てこず、読者様は考えることがないので退屈されたと思うんですが;
あ、ついでに久々?の投稿です^^
読んでもらえれば嬉しいです┏○ペコッ,#0000A0,./bg_c.gif,220.51.148.83,0
2006年06月28日(水) 00時09分25秒,20060628000925,20060701000925,jL2zBQGs3tEx2,鈍色ラストグッバイ,ZedaL,,,
鈍色ラストグッバイ。
自分の傍にはいつも『妻』がいた。
片時も離れずに、俺のすぐ横を並んでくれていた。
まるで規則的に並べられたドミノのようで、自分と妻との間は寸分の狂いもなく、肉体と心は同じ間隔で並んでくれていた。
しかし…… ある日の出来事だった。
それはほんの刹那の出来事で、切ないまでに砕けていった幸せを目の当たりにした瞬間でもあった。
その日は休日で、久しぶりに、妻と都心に買い物をしに行こうと思い、いつも利用している私鉄に二人で仲良く、その日も横に並んで電車に乗り込んだ。
電車は発進する。徐々に加速し始める。乗り込んだ電車は快速。駅を何個も飛ばして、あらかじめ用意されているレールの上を高速で走っていく。まるでエリート社員のように。いや、この場合はエリート社員が電車みたいだと云うべきであろう。
そんなフイに思いついた、無意味な思いを打ち消すほどの事故が起きてしまった。
カーブ 急ブレーキ 電車 脱線 横転 密室暗黒 断末魔 恐怖 未知の未来 怒号の嵐……
それは何もかもが一瞬の出来事。主語や述語、修飾語に接続語、比喩揶揄隠喩など無く、ただ『単語』のみで脳内に押し寄せてくるがのごとく、その映像が続けざまに現実と云うリアルタイムに描き殴られた。
そして……
徐々に目が慣れてきた。電車はただの鉄とアルミとその他諸々の塊と化していた。
自分はすぐに横にいるはずの妻を見た。妻に傷があるのを確認したが、上手いことに、ふき飛んだと思われる柔らかい座席に囲まれるようになっていたため、少量の傷で済んだみたいだ。ところで、自分はというと、体は痛み、周りには夥しい出血。腕は無事だったが、足は有らぬ方向にねじ曲がっていた。叫びたくとも声が出ない。口から出るのは血しかでない。
自分はそのまま意識を失った。妻のように目を閉じたのであった。
目が覚めるのに二日かかった。
目を開けば白い天井、横にやれば緑のリノリウムの床、そして無機質な鉄パイプで作られたベッド。そう、病院である。
自分の足はギプスで固定され、腹には包帯が巻かれ、点滴に繋がれていた。
自分はあの事故から、助かったんだと確認した。 ……ん? 自分?
妻だ。 妻の姿が見あたらない。他の病室か? そう思った否や、自分はベッドから起きあがり、妻が居ると思われる病室を探しに向かった。勿論、傷は完全に癒えてはいない。むしろ、手術をしたばかりなので、動くという行為は危険なはずだ。しかし、探さずにはいられなかった。
常に『横』にいた妻を……
動くのにかなり苦労した。何せ、足は動かないのだから。なので自分は近くにあった車椅子を勝手に拝借し、それに乗って探すことにした。
探し始めて約十分ほどした頃、病院の離れにある第三病棟に妻はいた。
見つけた時、自分は涙が出た。視界がぼやける。見たところ、妻はいま寝ているようだった。
しかし、そんなことはお構いなし、すぐ傍までに寄って、妻を起こした。
妻は自分に「おはよう」と、自分に言ってくれた。自分も「おはよう」と目に涙を溜めた笑顔で、妻に言った。そして妻を抱きしめた。いままでで一番、熱く、激しく抱きしめた。やっとあの事故で止まった二人の時間が動き出したと確認できた。
自分は普段通りの姿を見せてくれた妻を見て、一安心したのか、もしくは容態が悪化したのか分からないが、急に眠くなってきた。いままで眠っていたのに。わがままな体だ。
「自分の病室に戻るよ。ちょっと車椅子を押してくれ。その様子だと大丈夫そうだからな。俺の病室でずっと一緒にいてくれや」
自分は妻にそう言うと、妻に車椅子の後ろのハンドルを握らせた。
「なぁに、ちょっと押すだけでいいんだ。俺も自分でタイヤを回すだけの力はある。それだけの力だけしかないけどな」と、言って自分は笑う。
そして、二人で自分がいた病室に戻った。
いつもなら横に常にいた妻。いまは後ろにつけて。いままでの同じ間隔で。
実は、すでに事故の時、『上』へと逝った妻を認められないまま、後ろに付けて、引っ張って。
自分《だけ》に微笑んでくれた笑顔と優しさと思い出を横に添えて。
涙は止まらない。止める必要はない。お前のために私は泣こう…………
,あとがき。
知らない人は初めまして。知っている方は久しぶり。
ゼダルと申します。以後お見知りおきを。(知らない人用)
帰ってきたよ! ゼダルだよ! お・ひ・さ!(知っている人用)
2年ぐらい書いてなかったのかな?小説ってモノを。
書きたいって衝動はあるのに手がついてこない……
さらに、言い訳したくなるぐらいに時間が無かった。
でも、ようやく時間と脳についてこれる手を取り戻したので、執筆再会。
マジで、再会だよ。執筆というモノとのね。(《再開》の誤字じゃないよ)
では、今作品について。
まず、タイトル。《鈍色(にびいろ)ラストグッバイ》
私は「時間が止まった時の色は?」って、以前聞かれた。そのときすぐ思い浮かんだのが、鈍色。それは、モノが破壊され尽くしたときの色のイメージ。
時が止まる=時間の破壊と云う発想から来てます。
今作品は《時間》、《電車》そして《人の意識、思考》の3つの破壊がテーマ。
なので、鈍色をセレクト。
ラストグッバイは『ロイヤルハント』ってバンドの歌のタイトルです。
好きだから使ったうえに、直訳で『最期の別れ』ってのがこの作品には「いいんと、ちゃうん?」みたいな感じで付けました。
あとは、最期の別れなのに、ずっと一緒にいるってこと。作品でタイトルを否定って意味を込めて。その方が読み手にとっても、おもしろいかなと思った。
内容は、読み手を騙す作品にしたかった。
さらに云えば、「君が思っている事を作品の中で一言も書いて無いじゃーん。思わせるようにはしたけどさ〜」的な事をやってやりたかった。
でも、感のいい人(下手したら普通以上の人)なら、気づくかも……てか、気づいて! みたいなわがままもあった。
気づいてほしいのか、ほしくないのか、はっきりしろって思う。自分ながら。
余談だが、主人公の一人称が『自分』なのはオチで実は自分が死んでました。的な複線でもあったが、ありきたりなので没。
結果、最後の『私』を際だたせるための材料に変更になりました。これにより主人公に人間らしさ、命みたいなものを吹きこめて、生死の切り分けができたかと自分では思う。
とにかく、俺の大好きな「あー。そうだったんかぁ」って言わせるような作りです。
でもやっぱ、ただ単に、楽しんで読んでくれるだけでも、私は大大満足です。
以上、あとがき終了。
それでは、私の作品を読んでくれた人、有り難うございました。
あとがきだけ読んでくれた人もありがとう。よかったら本編も読んでください。
それでは、次の作品で。
ゼダルでした……でした。,#000000,,61.207.215.28,0
2006年06月27日(火) 01時18分42秒,20060627011842,20060630011842,jIM0e0ehufy3E,大好きな君だから,雅,bracken-731@ca2.so-net.ne.jp,,
朝の光に包まれながら 起きたあの朝
君の影だけが 傍に横たわっていた
朝日にかき消されてしまうことに 怯えながら
いつまでも 影を抱きしめていた
これからもずっと 一緒にいるよ
本当に思えた 約束しておきたかった
君をずっと離さず 僕の傍にいて欲しかったから
けれど今なら 勇気を出していえる
君の心に届くように 心のそこから
どんなに叫んでも 届かないこの声
君に気づいて欲しい 僕の思い
頑張っても縮まない 僕らの距離
遠いあの場所に 僕を連れていってくれるなら
何もかもを捨てても 飛んでいきたかった
空飛ぶ鳥のように あの風に乗り
君のいる街まで 僕を連れて行って
そして君をこの腕に 抱きとめておくから
懐かしいあの曲 君との記憶
関わりあえないと 思っていたのに
僕らはまた 出会えることが出来たんだ
通り過ぎる あの季節を越えて
記憶なんて 忘れてしまいたかった
喜びなんて 消し去ってしまいたかった
つらい日を 思い出さなくてはいけないなら
今は覚えていること 誇りに思うよ
新しい1ページ 続きの1ページ
またこれから書き始めよう 僕らの思い出を
大好きな君にだから はっきり伝えたい
今までありがとう これからもよろしく
君がつらい時には 力になるよ
もう一人じゃないから 僕がいるから
綺麗ごとかもしれない 言葉に過ぎないかもしれない
でも これが僕が君に伝えられる唯一の表現だから
たとえこの声が 届かないかもしれない
でもずっと 叫び続けてるから
この声が枯れても 朽ち果てても
大好きな君に 届けたいから
,伝えたいことを伝え切れていないかもしれないですが,#4F4F4F,./bg_d.gif,58.87.241.43,0
2006年06月27日(火) 00時07分20秒,20060627000720,20060630000720,jOmcEvIi3zgu2,デザイアと呼ばれた男 VOL 22,D・二プル,,, 7
マユミはがむしゃらに闇の中を走っていた。
憧れていたデザイア≠ノ冷たくされたのがどうにもやりきれなかった。
ある意味マユミは駆け引き≠ノ出た。
夜の公園で女が走り去れば男は追ってくるだろうと。
そう思ってマユミはここまで走ってきた。
坂道を下りきった辺りでマユミは足を止め、後ろを振り返った。
しかし、そこにデザイア≠フ姿はなかった。
あるのは闇だけだった。
辺りに人の気配はなかった。
生い茂る巨大な木々が風に煽られ、不気味な音をかもしだしていた。
時々、鳥の鳴き声が聞こえた。
マユミは急に心細くなった。
もう一度振り返ってみたが、やはりデザイア≠ヘ追ってきていなかった。
仕方なくマユミはトボトボと歩き始めた。
今来た道を戻ろうとも考えたが前に進んだ方が確実に早く公園から出られるように思ったのだ。
マユミは歩きながらこの公園に住むという10人のホームレス≠フ話を思い出していた。
以前、近所に住む女友達から聞いた話だったが、ここには10人のホームレスが住みついているという。
本当はもっと多くのホームレスが住んでいるはずだったが、特にその10人≠ェ危険だと噂されていた。
危ない噂はいくつもあり、以前の殺人事件もその一つだった。
猟奇的な噂もいくつもあり、公園で猫を焼いて食べたとか、たまたま通りかかった通行人の男の身ぐるみを剥ぎ、犯したという話もあった。
数年前、夜の公園のプールに忍び込み、誰もいないプールでいちゃついていたカップルはいつの間にかプールの中で10人のホームレス≠ノ取り囲まれ二人とも犯されたという。
そして、事件の後も未だにその犯人は捕まっていないという。
マユミの前方には公園内を走る子供用のミニSLの線路が見えていた。
ここを超えれば出口はもうすぐだった。
しかし、そこが一番危険な場所でもあった。
線路に囲まれた広場の中がもっともホームレスたちが多く住み着いている場所だった。
線路を挟んだ階段のトンネルの下にも数人の寝床が作られていた。
マユミは急に小走りになった。
今にもホームレスが自分の前に現れそうに思えてきたのだ。
そんな時、前方で人影が動いたような気がした。
目を凝らして見ると薄汚いホームレスがマユミの前で蠢いているのだ。
そのホームレスはもうすぐ夏だというのに冬ようのロングコートを身に纏い、よく見ると下は何も穿いていないようだった。
もしかしたら露出狂の変質者かもしれない。
マユミの足はガクガク震えだし、動くことができなかった。
ホームレスは徐々にマユミに近づいてきている。
その時、マユミは突然後ろから肩を叩かれた。
「キャー」
マユミは思わず大声で叫び声を上げた。
がむしゃらに腕を振り回し、ありったけの力を込めて相手を殴った。
「……待って、安久津さん俺です。五味です」
マユミはようやく涙が溢れ出した目を大きく見開いた。
目の前にはよく知った五味凛一郎が立っていた。
「……五味君!」
マユミは俺に飛びつくように抱きついてきた。
凛一郎に戻った俺は力いっぱいマユミを抱きしめた。
俺はマユミを抱きしめたまま公園を出た。
途中ですれ違ったホームレスは特に何もしてこなかった。
公園を出てもマユミは俺にベッタリくっついたまま離れようとしなかった。
公園を出た俺はマユミを家まで送っていった。
家に着くまでマユミは一言も話さなかった。
その間俺はしっかりとマユミの肩を抱きしめて歩き続けた。
マユミもそれを拒まなかった。
マユミは俺の腕の中にがっしりと包み込まれ、身を任せていた。
夜道を歩く俺とマユミはその時完全に男と女の関係だった。
マユミの住むマンションの前に着いた所で、俺はマユミの肩から手を離した。
「もう、大丈夫ですよね」
「うん、ありがと。ねえ、まだ少し時間ある?よかったらビール飲んでかない?送ってもらったお礼におごるよ」
「……ありがとうございます」
マユミの口から出た言葉に俺は驚いていた。
マユミは何の警戒もなしに俺を部屋に誘っているのか?
やはり俺を男として見ていないのか?
しかし、俺を誘ったマユミの声はバイト中に聞くそれとは明らかに違っていた。
マユミの声には色気があった。
元々、女としては声は低い方だが、今日は特に低くフェロモンをおびているように感じた。
フェロモンの源は男性ホルモンだ。
だから声が低い女はフェロモンを出していて色気がある。
國無が俺にレクチャーしてくれたことだった。
俺はマユミに着いてマンションの階段を上っていった。
「どうぞ、散らかってるけど入って」
「お邪魔します」
マユミの部屋は言葉の通り散らかっていた。
一応、鏡台に化粧品などの女っぽい部分もあったが、それはほんの気休め程度で、どちらかというと男の部屋に彼女の化粧品が置いてあるといった感じだった。
壁には「クライム」をはじめ様々なロックミュージシャンのポスターが荒々しく貼られていた。
ベッドの上には脱ぎっぱなしの服に、テーブルの上には食べ終えたコンビニ弁当の空箱と飲みかけのペットボトルが無造作に置かれていた。
まさに普段のマユミの見たままの部屋だった。
しかし、逆を言えばそれだけマユミが普段から自分を偽らずに生きている証拠だと思った。
この男のような部屋を見て改めてマユミの純粋さを感じた。
その場に突っ立ったまま辺りを見回している俺にマユミは缶ビールを手渡した。
「恥ずかしいからあんまり見ないで」
その言葉はまさに女のそれだった。
俺の頭の中で鬼頭の言葉が甦ってきた。
「こいつは男勝りだが、中身は女だ」
俺はますますマユミが愛おしくなった。
俺は缶ビールの栓を開け、マユミと乾杯した。
「適当に座って飲んでて。今、何か摘み用意するから」
「……はい」
マユミは冷蔵庫を開け、小さなキッチンの周りで忙しそうに奮闘している。
俺はフローリングの床に腰を下ろし、ビールを飲みながら部屋の中を見回していた。
そこで俺は意外なものを見つけた。
それは「時計じかけのオレンジ」のビデオだった。
「時計じかけのオレンジ」、スタンリーキューブリック監督の中で俺が最高傑作だと思っている映画だった。
主人公の少年アレックスはレイプと暴力とベートーベンを愛する異端児だった。
俺は昔からアレックスに妙に共感を持っていたが、マユミの部屋にこのビデオがあることが以外だった。
俺は「時計じかけのオレンジ」のビデオのパッケージを手に取り見つめていた。
そんな時、マユミが乾き物を持ってやってきた。
「それ元彼が好きだったんだ」
マユミは俺の手から「時計じかけのオレンジ」のビデオを取り上げ、デッキにセットしTVの電源を入れた。
瞬く間にあのけたたましい音楽と衝撃のオープニングが始まった。
「ねえ、五味君は何でさっき公園にいたの?」
「……いや、その、たまたま通りかかっただけですけど……」
マユミのまっすぐすぎる質問に俺はドキッとなった。
マユミは本当に俺がデザイア≠セということに気づいていないのか?
実は全てを知っていて俺を部屋に誘ったんじゃないのか?
頭の中で考えをめぐらしていた俺にさらにマユミが言葉を続けた。
「今日、あたしね、色々あってすごく不安だったの。さっき公園にいた時もすごく怖くて。その時、五味君があたしの前に現れてくれた。五味君は何も聞かずにあたしを抱きしめて送ってくれた。その時、胸がキュンとなったの……」
そう言ってマユミは俺の唇にキスした。
それはマユミとの初めてのキスだった。
TVの画面ではアレックスが仲間たちと共に作家夫妻の家を襲撃し、夫人を歌いながらレイプしていた。
俺は流れに身を任せ、マユミをしっかりと抱きしめ、唇を重ね合わせた。
受けと攻めが入れ替わる。
俺はゆっくりとマユミをベッドに誘導し、スマートに押し倒した。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
いい女は常にフェロモンをまとっている。
そんな女に男は惹きつけられる。
人が人を好きになる時、そこには目に見えない何かが必ずそこにある。
多くの者がそれを求め、中には全人生を賭ける者もいる。
これだけ多くの人が望む幸せだが、その中の何%の人が実際に幸せを掴み取ることができるだろうか?
私の作品を読んで少しでもそれに近づければ私は幸せである。
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年06月25日(日) 23時48分54秒,20060625234854,20060628234854,jwifuj5no885M,天に・・・,雅,bracken-731@ca2.so-net.ne.jp,,幼きあの頃の思いでは 優しく 静かな思い出だった
君の瞳に何が写ってるのか それを何よりも知りたかった
どんな僕が写っていて 何をささやいているのか
ずっと気づけず 時は忘れ 過ぎていってしまった
24の季節が 音も立てずに流れ過ぎていった
人を変えるには十分なほどの時間を 僕らに与えていった
再び君に出会えたこの奇跡を信じ 待っているから
あの時のこの気持ちを大切にして 持ち抱いて
ずっと ずっと 君が好きだった
いつも いつも 君が好きだった
たとえ君が変わってしまっても 僕は君を愛するよ
この気持ちが君に伝わらなくとも 持ち続けるよ
いつか この気持ちが伝わる日を願いながら
手を伸ばし続けるから 伝わるときまで
木漏れ日の中 揺れる君の影を目で追っている
視界から消えたあの時の 不安は感じたくはない
苦しんでいる君に 何も出来ない僕が大嫌い
力になれない 弱さが大嫌い
優しい言葉はかけられるけれど 辛さは拭えない
どんなに綺麗ごとを並べても ただの言葉に過ぎない
でも今 出来ること それしか僕には出来ない
だから出来る限りの 力で君を守りたい
君に伝わった 果てしないこの思い
やっと君に伝わる この気持ち
忘れたくない 忘れてしまいたくない
これからも いつまでも覚えて生きたい
君を好きでいた この気持ちを
どんなに思っても届かないはずの思いは
天に羽ばたき いつか空を舞い
またこの手に降りてくるだろう
そのときに本当の幸せが 僕らに降り注ぐから
いつまでも君を好きでいるよ これからも
,ちょっと無理やりが少しあります,#0000A0,./bg_c.gif,58.87.241.43,0
2006年06月25日(日) 22時31分01秒,20060625223101,20060628223101,jv6JNKgYPETaI,THE SPRING TIME OF LIFE Vol.3,湯瀬 大志,,,
第1話その3
音堂橋の向こうの信号の下で竹本くんと別れるまで、ぼくは言葉にできないくらい楽しかった。ほとんど初対面の人とこんなに話せたコトもなかったし、この一週間くらいこんなに誰かとこんなに会話が続いたコトなんてなかったから。ケンちゃんにはぼくの声は聞こえないみたいだし・・・。竹本くん以外で一番続いた会話は、「あ、」「はい。」「ごめん。ありがとね。」「うん。」っていう、隣りの席の女子が消しゴム落として、それを拾ったときの会話だと思う。
でも、竹本くんとなに話したかはあまり覚えてない。車の音と風がすごくて聞き取りにくかった、てのもあるけど、うれしすぎて、会話を続けるコトしか頭になかったからだ。
覚えてるのは音堂橋の近くでした身長の話。そのときまたちょっと沈黙があって、なんとかしようと思って、
「ねぇ、身長なんぼなん?」
って聞いた。
「え?」
ぼくらの横をトラックが怒ってるみたいに通り過ぎた。
「身長何センチ?」
もう一度ぼくは聞いた。そんなどうしても身長が知りたかったわけじゃないけど。
「162じゃけど?」
でかっ。
「いいなぁ・・・。ぼく135しかないけぇ・・・。」
赤信号を見つめながら言った。
「よくはないじゃろ?ここまで来たらもうあんまし伸びんで?逆に・・・、うん、逆にちっちゃい方が・・・、逆に・・・。」
あまりフォローしきれてない。「逆に」を三回言ってる。少し笑えた。
「見下しとるようにしか聞こえんのんじゃけど。」
ちょっと言い返してみる。こんなの初めて話した人にはぼくは絶対しないハズなんだけど。
「はぶてんなやぁ!まだこれから伸びるで!」
笑いながら竹本くんが言う。笑顔を見てたらホントにうれしい。ぼくの声が届いてる。ぼくをちゃんと見てくれる。ぼくに答えてくれる。「友だち」になれたかな・・・。
信号が青になって、周りが突然動きだした。ぼくも、竹本くんも。
「あ、じゃぁ、おれこっちじゃけぇ・・・。」
右に曲がろうとしたぼくに、竹本くんはまっすぐのひとさし指をだした。
「じゃぁね!」
また、笑った。
「ばいばい!」
ぼくもちゃんと笑えた。最近使ってないから忘れたかと思った。
ぼくはチャリにブレーキをかけて、竹本くんの小さくなっていく後姿を見つめた。竹本くんの頭の上のヘルメットは車のライトに照らされて、自分から光ってるようにきれいだった。
風がざぁっと舞う。後ろを振り返ると、ぼくと信号の間の桜が音をたてていた。学校の桜と重なった。
また、ぼくを笑ってる。
たった三十分の間に忘れてしまっていたコトを思い出した。
また、竹本くんの後姿を探した。もう体は見えなかったけど、ヘルメットだけはきらきら輝いて、ほんとにきれいだった。
,おひさしぶりです。遅くなってすみません・・・。しかも今回はちょっと短い・・・。
>スケハチさん
ぼく、余韻大好きみたいですね。気がつきませんでした・・・。余韻に浸って毎日を生きている気がしないでもないです(謎)スケハチさんの作品は今度必ず拝見させていただきます!!
>天光さん
褒めすぎですよ!!そんな風に褒めてもらった経験があまりないんで、ちょっと恥ずかしいです・・・!!
>中の丸さん
周りの背景が浮かんでくれているのは、ほんとにうれしい限りです!
みなさん、感想ありがとうございました!!
ところで、ぼくはWordでこれを書いているとき縦書きなので、今まで全て漢数字でしたが、今回、身長の漢数字を横にするとヘンになってしまった気がしたので、意図的に数字に変えてあります。気にせず読み飛ばし下さい。。。今更ながら最初から数字にしておけばよかったと、後悔しております・・・。,#E10000,./bg_b.gif,210.235.40.54,0
2006年06月25日(日) 17時12分02秒,20060624142641,20060628171202,jsQv9Kc/eiHkY,孤独の天使 〜平穏な日常〜,満月悠,etsuzaki@yahoo.co.jp,,
「どーしよっかなぁ・・・」
軽く眉根を寄せて、ブレザー姿の少女が一流大学付属の深森学園高等部下駄箱で悩むように呟いた。
いつも綺麗に磨いている23センチの革靴を履きながら呟いた少女、水多紀悠里(みずたきゆうり)に、幼馴染の里入葉月(さといりはつき)が賢そうな顔立ちを向ける。
鳶色のサラサラの髪に同じ色の瞳、銀縁のメガネと、優等生を絵に描いたような少年だが、部活は陸上部で体つきも細身で引き締まった体躯で、幼馴染として十分自慢できる美少年である。
「何が『どーしっかなぁ』なの?」
「え・・・?えーと、今日の・・・夕食」
持ってもらっていた鞄を受けとりながら歩き出す悠里は、鳶色の瞳を柔らかく和ませて質問してくる葉月に少し赤くなりながらも答えた。
二人揃って校門へ向かう今も、頭の中は今日の夕食のメニューでいっぱいだ。
「シチューはこの前やったし・・・。炒め物もやった。キノコは論外。あ、ほうれん草早く使っちゃわなくちゃいけないんだ・・・」
「ほうれん草?ほうれん草なら胡麻和えなんてどうだ?」
「あ、それいい。これで一品は決まり・・・と」
忘れずに白い質素なメモ帳にメモする。
そんな傍目から見るとカップルにも見える悠里と葉月の前に、校門の影からいきなり人が現れた。
身長150センチ前後の少年だ。
柔らかいショートの黒髪に、真っ青な瞳。
白いシャツに紺色のズボンのその少年は、深森学園小等部のグリーンのネクタイをしている。
「一緒に帰ろうと思って待っていたんだ。姉さんたち、今日は職員会議で部活ないんだよね?」
「うん。今日は休みだよ。・・・・・いいけど雷里、もしかしてずっと待っていたの?」
可愛らしい顔をにこりとさせるこの少年、実は悠里の弟の雷里(らいり)。
悠里の髪はマロンブラウンで瞳は淡いブルーだが、顔の造作はよく似ているといわれる。
「ううん。5分くらいしか待ってない」
「ん・・・でも、バイトがあるから・・・・途中までしかいけないよ?」
「うん。別に、途中まででもいいから」
なかなか可愛いことをいってくれる。
「じゃ、3人で帰ろうか。途中からはオレと雷里だけだけど」
「ん、いこ」
破顔した葉月の言葉に、二人も笑顔で頷いた。
「やっぱり笑った顔も二人、似てるなー」
「そう?」
じゃれあいながら帰途につく三人は、兄弟のようにも見えた。
(今日もバイトかぁ・・・)
そんなことを思った悠里は、今日で今までの平穏な日が崩れることになるとは欠片も気がついていなかった。
,えーと、遅くなりました。
弟が煩いので少ししか書けませんでしたが、最後まで読んでくださると嬉しいです。
,#B500B5,./bg_d.gif,218.139.212.49,1
2006年06月24日(土) 13時18分45秒,20060624131845,20060627131845,jMA8IDxqsVyE2,カシニョールとイェイツを核にした「DVD」,鈴村智一郎,,, 物事を、「機械」的に考える、という言葉が持つインパクトに、恵子は一撃された。それは、学校の裏庭で、バスケ部の先輩である加藤というプレイボーイに告白された瞬間、聖ヒエロニムスが晩年に暮らした地下の学堂という舞台を与えられつつ、狂的に彼女の脳内に炸裂した。恵子は、世界を「髭剃り」の有機的な構造にトレースしてシステム化する、ということに快感を見出す類の、幼い乙女ではない。むしろ、恵子は最新式腕時計の内部の精密な歯車の回転と連動しつつ、あらゆる世界を「歯車」の連結として思考するような、複雑な思考をこそにある種の知的オルガスムスを感じる乙女である。恵子は加藤の頬を猛烈に往復ビンタしながら、内的にこう絶叫した。
《 私が聖ヒエロニムスに弟子入りした限りは、やはり師匠様に認められるような、そういう画期的な思考の枠組みを自分自身で構造化しなきゃならないわ!その上で、私は市立図書館で『機械の仕組み』という、子供向けの絵柄が無数に収められた幼稚な図鑑を借りたのだし、何とかして私という存在を優秀な機械状マリオネットの如き女に鍛え上げることが、絶対的に不可欠なのよ!この加藤という、俗にいうホスト風のイケメン顔の金髪白歯白痴青年のような、空気の軽い男とデートするにせよ、情けない小さ過ぎるペニスを見せ付けてきたその瞬間にでさえ、まさにペニスの包皮と、陰茎と、亀頭と、亀頭の周囲にこびりつく恥垢を、有機的に「機械」化するくらいの、男勝りで明晰な思考回路が私のような、生まれながらに容姿端麗な顔を持ちつつ、それを持て余しているもいる女子高生には、必要なのよ! 》
恵子はそう葛藤しながらも、やはり表面的には輝かしい天使的な笑顔を浮かばせつつ、加藤の「待ちたまえ!」というナルシシズムを孕んだ台詞を後にして、美術室へと駆け出した。恵子は、放課後そこで美術部顧問の老齢な教諭である、加藤先生(偶然だが、彼の性も加藤というのだが)に、処女膜を突き破ってもらうつもりでいたのだから。このウルガータ聖書の翻訳者にして教会博士でもある聖ヒエロニムスの、あの誰だかすっかり忘れた有名な(ダ・ヴィンチではなく)画家の描いた肖像画に酷似した、加藤先生を、恵子は強靭に愛していた。
――あっ!想い出したわ!レンブラント・ファン・レインよ!『瞑想に耽る学者』に、加藤先生はそっくりなんだもの!ああ、私だけの大好きな先生!
しかし、廊下を疾走しながらも、恵子の目まぐるしく熱狂的な思考は継続していた。恵子は、これまでの十六年の長い長い長すぎる生涯で、ポルノDVDを三枚も閲覧したことを誇りにしている。彼女はそこで視覚的に体得した、『カーマ・スードラ』よりも遥かに過激で殿方ドモを悦ばせる性技を、加藤先生を実験台にして実演したくて仕方がない。しかし、問題はそのような、肉体的に疲弊する動物的な行為ではなく、DVDという文明の利器が持つ「機械」的なシステムを、思考と癒合させることで、彼女自身に新しい変革の兆しが見える、ということを彼女が自覚していることなのだ。それは、恵子の走りながらの、異常な独り言を聞けばいかなる内容のものであるか、容易に察しがつくであろう。
――私が「DVD」で、ポルノを閲覧していたあの、淋しい寂しい雨の日に、私は再生機器のコントローラーを操作して、男優が射精するシーンを、三度巻き戻ししたのだけれど、現実的に、私の思考を「DVD」化すると、例えば、先刻の加藤のキスしたくてウズウズしてるような気持ち悪い表情を、やはり巻き戻しして、私が不在のまま、いわばここに加藤を呼び起こすことができるのではないか?私は、これを「DVDの幽霊」と呼称したいのだけれど、このシステムを思考化すれば、短期記憶が全て脳内コントローラーのボタン一つで鮮烈に再生することが可能になるし、逆に、未来を見るボタンである、早送りさえ、やってのけられるのではないか?最も利便的な特化して瞠目に値する点は、まさに「DVD」が持つ、半永久的に消去・録画するというシステムであり、これを思考化すれば、私にとって不快な記憶、忌むべきメモリアル、悲哀に血塗られた石碑が、全て脳内コントローラーのボタン一つで消去することができるばかりか、上書きして、そこに偽の映像を刷り込ませることだって可能!私がこのように考える端緒には、サミュエル・ベケットの戯曲『クラップの最後のテープ』で、クラップが耳にするかつての自分の声を可能にする録音装置という名の文明の利器を、いわば現代型に「DVD」化した、ということを白状したいのだけれど!
彼女の長い独り言は、無論彼女が美術室へ到着する寸前まで大声で行われた。廊下ですれ違った多くの男子生徒は、この美しい乙女が、(これも端麗な少女に必然的に付きまとう性格の悪さという先入観に来歴した憂鬱を滲ませながら)、それでもこの恵子の廊下を勇猛果敢に駆け抜ける女神的行為に眼を潤ませた。多くの女子生徒は恵子を気狂いの、色気が微塵もない学校の恥(恵子は残念ながら、中学時代に勉強しすぎて、日本有数のカトリック系進学校の生徒だった)と規定していたが、数人のレズビアン気質のあるグループは、恵子がある種独特の思考回路を持つ奇人風の女子高生であることに興味を示して、いわばトイレで同性愛行為を強要して放校になった。さて、恵子は自分が今、「DVD」ガールになったことを信じ込んでいる。彼女はその想像世界で中世オランダ風の、風車小屋の地下にある学者の隠遁部屋で、師匠である聖ヒエロニムスと、一匹の獅子と三人で学理探求的な生活を送っているのでもある。彼女の将来の夢は、完璧なマシーンになることであって、彼女にとって学校で授業を受けることはあまり必要ではなかった。むしろ、聖ヒエロニムスの隠し図書館である広大な地下のスペースで、プロクロスの『神学綱要』やトマス・アクィナスの『神学大全』を参考文献にしつつ、魂の「機械」的構造についての膨大な論文を執筆することに唯一絶対なる存在意義を見出すのだ。恵子は人間の魂が輪廻していることを熟知している。だが、それは時を経るにつれて、わずかにアレンジメントを加えられつつ、変化する魂なのだ。それは、恵子が閲覧した『男の子の一人えっち!』という猥雑幼稚なポルノで、毎日のように自涜する少年の射精量が、日々変化していることと直接的に血縁を持つ、微妙な差異である。
――センセッ!キマシタヨ!アナタノ奴隷デアルトコロノワタシ、ワタシノ主人デアルトコロノ、アナタニアウタメニ、ロウカヲハシッテキマシタガ!
恵子はそういって、室内の中央で一人瞑想していた加藤先生を驚愕させた。恵子はスカートを脱ぎ、下半身を下着一枚にしていたのである。もっとも、これは恵子の学校の日常的なスタイルといえばそうでもある。(廊下を疾駆しながら、スカートを素早く脱ぎ捨てるのは彼女にとって、最高に輝かしい瞬間でもある)
――また君かね!出て行きたまえ!
恵子はその加藤先生の冷酷峻厳な言葉を、彼女オハコの「DVDの幽霊」をまさに稼動させることによって、消去した。そして恵子は加藤先生の、自分を出迎えてくれた言葉を、以下のように加工修正し、巻き戻して再生したのだ。
――――センセッ!キマシタヨ!アナタノ奴隷デアルトコロノワタシ、ワタシノ主人デアルトコロノ、アナタニアウタメニ、ロウカヲハシッテキマシタガ!
――オオ、恵子クンデハナイカ!アイタカッタヨ!サア、ワタシノムネニトビコンデオイデ!
恵子は沈鬱な表情を一変させて異様なほど満面の笑みを浮かべた。恵子は体内化した「DVDの幽霊」の持つ圧倒的な機能の虜になりつつも、貪欲にこのシステムの応用のみでは表層的だと自責してもいる。加藤先生は、死んだような瞳に小さい涙を浮かべつつ、この気狂いの生徒の精神事情に同情を寄せるような哀憐に満ちた顔つきで、神妙に、あまりに神妙に、こう囁いた。
――自主退学しないかね?君に相応しいスペースがあるんだが。
恵子は瞬時にその言葉が持つ破壊的なインパクトを察知し、計り知れない哀しみと憤慨に襲われたが、ここでも即座に「DVDの幽霊」がグィン、グィイン、グィィィィィン、という電子機器内部音を立てながら驚異的に作動し始めた。彼女の脳内コントローラーは加藤先生の沈んだ顔を聖ヒエロニムスのように知的で穏やかな賢者風の表情へと修正し、先刻の言葉そのものまでを別のものへと置換する。すなわち、以下の如く。
――ワタシトケッコンシテクレナイカネ?キミトフタリデクラシタイノダガ。
恵子は喜悦を滲ませつつ感動に震える手で加藤先生の胸元に指先を艶やかに滑らせた。恵子は信じられなかった。大好きな加藤先生が、自分を花嫁にしてどこかで二人で暮らしたいという想いを抱いていたという事実が。恵子はイグアスの滝よりも膨大な量の大粒の涙を流しながら、恋慕の対象である老美術教諭に抱き締められた。(むしろ、彼女自身が彼を抱き締めた)彼女は興奮に鼻腔を膨らませながら、それでも頬を美しい血染めの紅葉じみて赤らませつつ、
――センセイ、ヨロコンデアナタノオヨメサンニナリマス!ワタシハイマ、ジンセイデモットモウレシイノデス!ホントウニ、センセイガスキデタマリマセン!
と絶叫して、教室の天井から吊り下げられた烏のオブジェを痙攣させることに成功した。ここで恵子の持つ脳内コントローラーの操作ボタンについて、少々列記しておく必要があろう。「再生」、「一時停止」、「巻き戻し」、「早送り」、二回「再生」ボタンを押すことによる「二倍速」、そして「停止」そのもの、「チャンネルリスト」には、無論、過去から抽出されるありとある記憶の風景画が整然と陳列された画廊の如く内部化されている。現在、彼女の心理的チャンネルは加藤先生との愛のチャンネルを選択しており、ここにはノイズと砂嵐に塗れながらも美しい彼女独自の神話的な恋愛風景が演劇的に用意されている。なぜ恵子はそもそも思考のフレームを「DVDの幽霊」に設定したか?それは彼女がとあるビジネスホテルで見た他人の夢に由来している。彼女はそこで、直感して「コレハワタシノユメデハナク、キットワタシノマエニ、ココデトマッテイタヒトノ、ユメダ!」と思うところのものを感じた。禿げ頭の白衣の医者が、恵子の家の中庭に異常なほど長細い人参みたいな自動車を突っ込ませて、彼が包丁を両手に握りながら彼女の妹と弟の名前を絶叫して、玄関にまで足を踏み入れようとする、そういった不条理にも襲撃される者の悪夢を、彼女は普段眠らぬ公衆共通のベッドの上で見たとき、前の客の悪夢の残滓をもろに被ったという不快感を浮上させたが、問題は、その夢が夢でありながらも、恵子がDVDを見ている時のように、視覚の右隅に絶えずプレイヤーの操作画面が表示されていることであって、いわばこの夢の中の奇妙にも電子化された光景が、恵子の「DVDの幽霊」の有機的な構造を説明する第一因子になっているのだった。その日以後、恵子は自分の眠り慣れた普段のベッドの上でも、やはり夢の内部の視覚において、常に右隅に固定化したプレイヤーの操作画面をチカチカさせているという、どこか映画的な印象を与えられ、彼女自身の夢そのものを彼女が夢の中から「コレハ、ワタシノユメデハナク、アノトキノワタシノマエニネタタニンノユメノ、ノコリカスナノダ!」と跳ね起きながら汗みずくで絶叫する、という習慣化した苦しい早朝を迎え続けている。
さて、美術室に一人取り残されて、扉に鍵をかけられて脱出不可能となった恵子は、室内の片隅に眠るジャン・ピエール・カシニョールの『香り』の模写を発見し、それを手に取った。その絵画は、静謐で神聖な、そして美しい花に溢れたガーデンを描いたものであり、前方には今にも香りが漂ってきそうな赤や青や桃色の花弁が装飾的に咲き、空間の奥には水色のレインコートを着た少年風の自転車乗りと、白と薄桃のドレスをそれぞれ着たらしい貴婦人が小さくなって横切っている。広大な西洋風の、高貴な庭の一角を抽出したものであろうこの絵画に、恵子は鼻腔をひくひくと痙攣させつつ、その内的世界の馥郁たる香りそのものを架空の香りとして嗅ぎ取って、意識の底から強いシンデレラになったようなお姫様気分を浮上させた。恵子は官能的な眩暈に襲われて、思わず後方によろけると、正気を取り戻した直後に画集棚で発見した「cassigneul」の文字をまだ半ば朦朧とした視覚に飛び込ませ、狂喜乱舞してその本に飛びついた。恵子は窓の外から洩れる放課後の初夏の夕陽を日本人離れした黄金色を孕む長く柔かい髪に浴びせ、さながら美術室に五十年に一度登場する亡霊の姫君を思わせる俗を脱した聖なる空気を周囲に燦爛と放っていた。廊下を通り過ぎて、信じられない今の美しい光景に胸を高鳴らせた男子生徒たちは、この幻視じみた乙女の孤独な陶酔的光景に、触れてはならない祭儀的な模様を感じ取って、それを涙ながらに「見なかったこと」にせざるえを得なかった。恵子はカシニョールの画集に収録されていた、彼のデッサンに描かれている「バラ」という表題を持つ西洋の若い貴婦人の姿に、レズビアンの女王へ戴冠することを受け容れるべき名状し難い感服を憶え、瞳にガラスの輝きを放ちながらガラスの涙を一滴、ビチャッ!と頁に垂らして急速に拭き取った。恵子は内的にこのフランス人現代画家が描出していた魂のこめられた乙女の、まさに生き写しであろう自分の容姿に、強烈なナルシシズムと、その美的容姿に基く稚拙な自己愛を封印するもう一つの客観的なナルシシズムの対立を心象風景として描き始めた。恵子は胸の裡で爆裂する原子爆弾のように絶叫する。
《 ああ、貴女の瞼はどうしてそれほど色香を漂わせているの!おまけに漆黒の長い豪華な帽子に白薔薇なんか乗せちゃって!白薔薇に囲まれながら、澄んだ黒い瞳で私を見つめて、この私を貴女の鏡像に思い込ませようとしたって、絶対に騙されないんだから!私は将来、貴女のように、世界中の若きタキシードの似合う紳士諸君を、一目惚れさせて魂まで一心不乱に私の胸へ飛び込ませるほどの、そういう聖母マリア的に汎世界的な高貴で知的な淑女になってみせるわ!私ならできますもの!なにせ、私は純潔のイエローモンキーの血筋ではなしに、母方の祖母に南フランスの風を靡かせている乙女なんですからね!ああ、カシニョール!世界で一番美しい十六歳の少女は誰?彼女の名前は何というの?カシニョールよ、ああ、眉毛が蛇のように黒く垂れ下がった、ああ、カシニョールよ! 》
恵子は続いて、画集の頁を狂的に捲り、両足を屠殺直後の首を切断されたウサギの脚部の強烈な痙攣じみてジタバタさせつつ、『百合』という名の静穏なエロティックさを帯びた絵画に注目した。その絵は全体に灰色がかって、前方に机に置かれた百合の花瓶が迫り、その百合をぼんやりと物憂げに眺めている裸体の乙女が、腕を組んで机に乗せている。背景の暗い灰色と同化した銀色の皮膚を持つ彼女は、両耳に大きなイヤリングのようなこれまた銀色の装飾品を提げ、髪色は色彩の主張を脆弱にした大人しい黄金色を帯びている。先刻に恵子が見惚れた『バラ』と、顔の輪郭が瓜二つのこの『百合』の乙女は、何度か悲恋を味わった後の、熱情と憂鬱の双方の痕跡を顔中に湛え、その視線の先に雨降りの出窓を彷彿とさせるが、頬に淡く塗られた幽かなオレンジ色が、おそらくは彼女の内的な快復を示唆しているとも、恵子には感じられた。恵子はその画集のアンニュイな一枚を覗き込んでいるうちに、ゆっくりと自分が小さな丸いスーパーボールになって、大きな口を持つ毛ムクジャラの大男に、パックッ!と飲み込まれてしまうかのような、尋常ではない高揚の癒合した自殺的な哀しみを抱いた。恵子はやはり、自分は世界で最も艶やかで麗しい乙女であるという自信を確かなものにしたが、それは彼女がこの絵画の女性に、普段己が感じている学校生活での孤独の総体を具現化されていた、というのではなく、寧ろこの絵画の女性が自分に何か秘密の契約、特別な哀しみに纏わる秘匿すべき契約を交わそうと内心願っているのではないか、という神聖なインパクトを与えられることによって、より彼女そのものと魂までをも一体化させることに成功したのだといえる。そして彼女の、けして豊かでない胸の膨らみが、この絵画の女性にも顕著に見受けられたという近親感に慰めもされつつ。恵子はカシニョールに、かつて「モデルになってくれませんかね?」と提案され、頬を紅葉色にサッと染めながら、「いいですわ」と返礼した当時の自分を想像した。彼女は、彼の絵に溢れた、上品で洒落てもいるアトリエに導かれ、そこで絵の具と画布のあの独特な臭いを嗅ぎ、彼のカーテンを閉める動作が昔の父親のそれのように優しく滑らかであることに小さな感動を示しつつ、「脱いでくれませんか?」というカシニョール本人の紳士的で礼儀を重んじた訴えに、「ええ」と動揺しつつも心臓の脈動を激しくさせる自分を見出すのだった。恵子は裸体になり、この白髪の似合う笑顔の素敵な初老の紳士の前でゆっくりと、ほろ酔い加減に椅子に腰掛け、足を組み、丸い机の上で頬杖をつき、「どうぞ、リラックスしてください」と囁かれ、その声色に、かつて幼くして世を去った父の眠りの前の安らぎの声を同化させ、「あなたは」とその後の言葉を繋げる自信のない得体の知れない台詞を唐突に吐いてしまい、カシノョールが「ええ、どうかしましたか?」と微笑みながら口にしたのに激しく、幼い乙女じみて羞恥し、「いいえ、なんでもないですわ」と、舌先を強く噛みながら、自分の貧相な胸が真にモデルとして通用するのかといった、そういう今となっては配慮すべきでない心理的問題を浮上させつつ、「太陽を舌に乗せたいですわ」と、瞳に涙を潤ませながら、薔薇畑を燃え上がらせるような狂おしい愛の眼差しでカシニョールの神聖な微笑を覗き込んだ、恵子にとって、これほど時間の静止した教会の鐘だけが鳴り響く天使的な世界がかつて存在したであろうか?
その時、恵子のせっかくの絵画的オルガスムスを打ち破る破天荒な勢いで、加藤先生ではなく、他校生としていつまでも紛れ込むあのメンズファッション誌の専属モデルであるプレイボーイ加藤が扉を強く叩いた。
――見つけたぜ。開けてくれよ!お願いだ。
恵子はカシニョールとダンスしつつ、彼が亡霊となって空気になってしまうことを悔しがりながら、それでも華麗な足取りでクルクルと美術室の扉を開けてあげた。加藤は右腕を背中に回し、何かを持って恵子に高慢な笑みを投げ掛けている。恵子が「ソレハナンダ?」と尋ねると、加藤は信じられないほど巨大な薔薇の花束を恵子に手渡し、「ずっと愛してるからな」と耳元で囁いた直後、廊下へと消えた。彼女はしばし呆気に取られて、口を硬く噤み、さながら地蔵のように石化しながらも、やがてはあの加藤少年に淡い恋心を芽生えさせて、居ても立ってもいられない衝動的な己に変貌した。恵子は暴れ狂う猪じみて、花束を抱えたまま美術室を飛び出して、誰もいない廊下を疾走し、カシニョールの絵画世界の一人の貴婦人になったつもりで、告白した直後姿を消してしまった東洋の王子の行方を追った。彼女は校舎の階段を俊足で駆け下りながらも、不意に一篇の詩を、今の私に相応しい魂の結晶とでも訴えんばかりに、脳内宇宙に炸裂させた。それは恵子が愛して止まないW・B・イェイツの「レダと白鳥」という表題を冠された官能的な落雷を放つ詩である。
突然の襲撃。
大きな翼がはばたき、おとめをよろめかせる、
ふとももを黒いみずかきが愛撫する、
うなじをくちばしにくわえ、
たよりない胸を自分の胸にだきよせる。
おびえしびれた指はゆるむふとももから、
この羽の栄光をどうして押しのけることができるか?
白い突進にうち倒された体は、
ふしぎな胸の鼓動のほかに
一体なにを感じることができるか?
腰の震えが今そこに産みだす、
崩れる城壁を、燃える屋根や塔を、
アガメムノンの死を。
空飛ぶけものの血にそうようにとらえられ、
そのように圧倒されて彼女は身につけただろうか、
彼の知識を、彼の力を、
くちばしが冷淡に彼女をつき放す前に?
恵子は汗みずくで校舎を飛び出し、運動場を上靴で駆け抜けながら、レダとは己であることを悟った。恵子にとって、白鳥とは、加藤先生でも、カシニョールでも、カシニョールの絵画世界の乙女らでもなく、プレイボーイたる加藤君ではなかったか?、というようやく到達した真理のような奇跡にも近い情熱が、今加藤少年そのものに向けられている。恵子は白鳥がレダに行為したのとは逆に彼を押し倒し、腰をガクガクと痙攣させるほど接吻するだろう、と自分の切実に差し迫った瞬間的近未来の光景を錯乱的に夢想する。しかし、恵子は加藤少年が、果たして自分の知識を、力を、運命を、悟り得るかとまで考えて、けしてそうではない、寧ろ彼は何一つ認識し得ないまま肉体的関係だけを私に熱願するであろうことを沈鬱に思い浮かべて、いつの間にか両足の運動を終わらせ、グラウンドの中央にポツン、と佇んでいる自分を発見した。黄昏に映える校庭の遺書千通にも値する絶望的な鬱屈の光景を、恵子は両手で払い除ける動作をしつつ、「ワタシハ、モウタイガクスル!」と誰にともなく絶叫した。ワタシノオウジサマハ、ココニハイナイノダカラ!,また描いてみました。
カシニョールの描く女性の絵は美しい。,#0000A0,./bg_f.gif,220.35.14.46,0
2006年06月24日(土) 08時23分10秒,20060624082310,20060627082310,jEV6FdNcOycBQ,作家志望者である我々の解体者とは誰か?,鈴村智一郎,,, 昨夜、何時もと同じく電子画面と対峙して無気力にショォトショォトを綴っていた僕に、《 ポー 》から電話が入り、僕を驚愕させた。彼は中学時代、僕と成績に於いて壮絶に闘った勇士であり、京都大学に進学したものの母親譲りの鬱病を拗らせ、挙句休学している身であった。彼は幼少期から(幼稚園時代、僕は彼を小さ過ぎるジャングルジムから哄笑しながら突き落とし、厳粛な報復として鼻を蹴られたものだ)推理小説家を目指し、複雑極まる密室殺人の方法について、ノォトに書き込みを入れていたが、今想起してもあの文字は実に微小なものであり、顕微鏡かルーペで観察すべき豆粒じみた気違い沙汰であった。《 ポー 》は嫁入り前の田舎狐のような顔をし、細過ぎる眼と薄い唇と、異様に長い胴を備えていた。《 ポー 》の電話内容は明瞭且つ事務的であった。
――生涯学習情報センターを知っているだろう?あそこで君と久々に話がしたいんだが。
いうまでもなくその公共施設の図書フロアに於ける常連であった僕は、快く了解して彼が何かしら壮大な計画性に基いて旧友を召喚したのだと認識した。予備的な事柄かもしれないが、僕は今朝の朝日新聞の朝刊で「時計職人」を養成するアカデミーの広告欄に微笑を洩らしながら「手に職は素晴らしい」と感極まるほどに、小説家を目指して一年になる。投稿回数と落選回数が等号で結ばれる呪を文学の神から付与され続けし僕は、狂人的な勉強時間の結果入学したはずのカトリック系男子高校の、今尚伸び続ける偏差値の高貴さに僅かな自信と慰めを与えられる、火を見るより明らかな劣等生(不登校、という言葉に僕は未だに恋慕さえ寄せる)であった。尤も、僕は絶えずクラスメイトの合格通知よりも偉大な文学賞の受賞という栄誉に、負け惜しみにも近い憧憬を抱き続けて久しいのだが。《 ポー 》の名の由来は彼の自称に基き、鬱病を半ば文学的な資質として安直なナルシシズムに耽溺する傾向を持つ彼の、その生温い微笑にこそ僕は幼馴染としての連帯感のヴェールを覆い、目を瞑るべきでもあったろう。だが、偏差値こそ全ての人間を総体的且つ客観的に評価するシステムであるという邪教の徒であった僕に、《 ポー 》の優等生的な薄笑いは唾棄すべきものに映ったのも事実であると今となっては認めざるを得ない。
対面当日となった日は奇しくも僕が《 ポー 》を突き落としたその日にも増す雨降りであり、僕は徒歩20分の「ムーヴ21」(生涯学習情報センター)までヒヨコのような足取りで水溜りを避けつつ傘をくるくると回転させ歩行した。到着した入口付近に落下していた<神経病は君だけじゃない!!!>という圧倒的なゴシック体表記によるインパクトに横溢したパンフレットの切れ端を眼にし、そのふやけ萎れ水を吸った紙そのものの弱々しさに、<俺は精神的なアウトサイドに位置しない!!!>と内的に絶叫しながら微笑を浮かべもする。
だが、僕は二階図書フロアで《 ポー 》を眼にした時、声を喪ったというよりも、寧ろ哄笑の洪水を送るべきであったのだ。《 ポー 》は二人の、それもファッション雑誌を豪華に飾るべき同年程度の女性を、牝奴隷の如く傍に左右置いて、彼女らの尻を緩慢な動作で撫で擦っていたのだった。僕は明瞭に性的な革命的変貌を遂げたと思しき《 ポー 》の、その端的にその原因と判明できる類の事件を数十通り想像してから、けして容姿端麗とはいえぬ、寧ろこの少女たちの美学的整合とは対照的な彼の目立たぬ日本人特有にのっぺりとし過ぎたキツネ顔を笑いのめしたくて肩を痙攣させた。
――やあ!君が文学的に物凄いことをしようとしているという情報を俺は、君のサイトに掲載された小説を読んで直感したんだよ!あの下手糞な、読んでて大便さえ催す汚物たちを、如何に今後大作へと発展させるか、それを君と議論したくてね!俺は君が「鈴村王子」などと自称して、ネットの投稿小説サイトで見るに耐えない駄作を連続投稿していることも知っているし、君がそのサイトで出会った少女と電脳的擬似恋愛に堕ちて、複雑極まる「失恋」を経験したこともお見通しなんだ!さて、どこから君を文学的に拷問しようか?
僕は憤怒の念に全身の表皮を裏返された気持ちになるよりも、先ず彼のズボンのチャックが全開してその暗闇からジャングルじみた陰毛の密林が顔を覗かせている様を目の当たりにし、深甚な嘔気の小人どもに襲撃された。図書フロアの人気の少ない片隅で、天井から柔かく照らすライトを浴びた彼の臭そうな股間に、僕は彼の天才的な密室殺人の暗号碑文が隠されていることを知らない。僕はペンネェムを「鈴村智一郎」としていることを事実として認めても、断じて幼児的に「王子」などと発言したことはなかったし、何にも増して《 ポー 》が何故僕が「失恋」した当の本人であることを、本名を伏せているにも関わらず熟知していたのか、甚だ疑問に付すべき事柄でもあった。そこで、僕は彼の股間を観察しながら、微笑を浮かべて、続け様にこの二人の少女たちを交互に見やった。
――信じられないなあ。お前みたいな死んだ顔が、何故これほどの美女を一匹とはいわず、二匹も連れているんだ?俺はお前みたいな死んだ顔は、一生童貞を神聖化して影で死ぬほど自涜し続けるべき類の選ばれたトイレット・ペェパァ的人類だと規定していたんだがなあ。信じられないなあ!
彼は僕のこの優しい嘲笑を念仏でも拝聴するかの如く異様に神聖な眼差しで聞き惚れるや否や、肘掛け椅子に座ったまま左右の猿臂を伸ばして乙女たちの胸を兇暴に鷲掴みした。僕は彼のその行為に、得体の知れない魑魅魍魎の一種の穏やかさ、懐かしさの因子を掬い取って笑顔を浮かべた。女たちは子供じみたクス・クス笑いを続けながら、未だ嘗て耳にしたことのない信じられない程無機質且つ冷酷な声色で一言、「モット」、と彼自身の左右の耳に左右から囁くのだった。僕は彼女らのその涙ぐましい、機械化された悲哀の封入されし声から、有機的に構成されたサミュエル・ベケットの戯曲『ロッカバイ』のエロティックな反復的台詞である「もっと」「もっと」「もっと」…の無限に続く輪廻をトレースしたような感覚に陥り、恍惚し上気した頬を甲の産毛で冷却しようとした。僕は彼女らが《 ポー 》の妾ではなく、劇団仲間であろうことを直感した。そして、僕は《 ポー 》を徹底的に論駁し粉砕すべく、自作を寧ろ野風に曝し風化させんばかりの気迫でこう絶叫した。
――俺の作品が情けないことは作者である俺が濃厚に意識しているんだが、俺はお前のような死んでしまった顔が、モデル女を左右に置いて変態的な煬帝みたいな男に変貌していることを、今まさに文学化したくなったんだよ!お前をジャングルジムから墜落させて、お前自身の歯形を激変させてやった日を根に持って、今文学的な復讐を果たそうとしているんだろう?受けて立つぞ!俺はお前の果し合いに俺の文学的智識という二刀流を携えて受けて立つぞ!
右の、おそらくはフランス人を片親に持つであろうアルビノの如く蒼白なモデル女が、僕に接近して顔面に唾を吐いた。僕は鼻息を荒くしながら、鼻筋から唇へと滴る彼女の悪臭を放つ唾液を、熱い汁を舐め取るようにして舌先に乗せる。元の位置に戻って三人揃って僕を嘲笑している《 ポー 》の一族に、僕は『失楽園』冒頭のサタンの悲嘆にも類似した懊悩を顔中に滲ませて、「ありがとう」と囁きながら天使的に微笑した。僕が二刀流と表現した来歴は、書き且つ読む、ということをこの一年苦行僧じみて継続させてきたけして冷めることのない自負に拠る。
――お前の糞のような、或いは、より適切正確に表現すべきは恥垢じみた短すぎる作品群は、実に「情けない」と思っているんだよ、なあ「鈴村王子様」?お前がスウェーデン・アカデミーお墨付きの作家ばかりに目移りして、色気づいた衒学の極みを上昇している、いや、ニイチェぞっこんなお前からしみれば「下降している」のかもしれないが、兎に角その執筆スタンスが気に喰わなくてね!今まで何人中途半端に喰ってきたんだ?お前の文章を読んでいると、「あいつ」や「そいつ」の顔が絵に描く以上に眼に浮かんで仕方がなくてね!お前は購入してきたばかりのスピノザの主著なんかも、適当に赤線を引いて、常に「引用したいなあ!引用は頭が賢そうでかっこいいからなあ!」と歓喜の歌を口遊むのかもしれないが、逆だよ、逆!この、百年劣等生めが!引用は「情けなさ」の極地ではないか!なんて俺は幼馴染のお前に非礼にも罵声を浴びせたりはしないさ?俺はこれからもお前と付き合う大親友だし、この二人のclitorisがどんな法悦の汁を流すかも、二人で試すべきだと思っているんだよ。なあ、そうだろう?文学のprinceさま?
僕はそれでこそエドガー・アラン・ポーの直系の血族である彼だと感涙に咽びながら胸で十字を切った。彼の悦ばしく的確極まる文学的批評は、その解体のコードを精神分析学的な「マゾヒズム」――「サディズム」の二項対立と照合した上で、あくまで僕に「大笑い」と「自殺的苦悩」を与えるためにプログラムされていることを僕は無論察知している。僕の内部でプツプツと彷彿する怒気の湯沸かし器は、その漏斗状化した注ぎ口から紳士的な理性に溢れた安穏そのものを流し始めたことに僕は僕自身の「サディストではない男」としての悦ばしい烙印を見る。
――取り敢えず、性的な事情に関しては、俺は今から彼女たちを使ってそれを払拭することにしたいんだが!念の為に質問するが、彼女らは陰毛の処理をきっちり行っているのか?もしそうでないのなら、俺は一本一本デブの豚の屠殺直前の戦慄に満ちた寒イボみたいに、それをピンセットで摘んで抜き取りながら、彼女らの声色が艶かしい「もっと」に変容することを希求むのだがなあ!
左で茫然自失して直立する髪の毛が小麦色をした可愛らしい少女が、今度は僕の前方に歩み出た。彼女は大きく「ァーン」と開口して扁桃腺にぺったりと貼り付いた(おそらく《 ポー 》の亀頭を弄んでいる中途に付着した)濃い黒の縮れ毛を覗かせて、僕にも口を大きく開くよう目線とジェスチャァに拠って促した。ぱっくりと口腔内部を彼女の視界に広げた僕に、彼女は三歩後退四歩前進して弓なりに半弧を描きながら僕のキャッチャー・マウスへ唾と痰を吐き入れた。それらは一つの半球体であり、黄土色を帯びていたことを僕は確かに眼にした。
――お前は「言葉」の波及効果を何も理解していない。だから、お前はいくら本を読み、且つ書くことをしても、「言葉」に拒絶され続けるんだ。俺はお前が作家になる日を待ち望んでいるよ!
かつての旧友であり現在も類稀なる僕の先導者にして評論家である《 ポー 》はそう哀しげに呟くと、右のフランス女に目配せして肘掛け椅子から起立した。彼は左の小麦色の髪の毛をした可愛い女の腰に手を伸ばしながら、熱愛中の恋人を強度にその身体的動作から主張しつつ図書フロアを後にする。僕と残されし妖艶な微笑を柔かく浮かべるフランス女(僕はその時初めて、彼女の前歯が二本喪われていることに気付いたのだが)は、互いに互いを見つめ合いながら敵意ではなく同盟的な協調の色を放ち合う。それはたった今から動物的な交接を果たし合う者特有の厭に親密な睨めっこに相違なかったが、僕がこの糞のような女を抱くつもりが皆無であることは今更いうまでもないだろう。僕がこの女を抱くことをするのは、この女が《 ポー 》の亀頭の先端から流出し続ける膿のような灰汁を飲み干した、常に以後であり以前ではないのだから。僕が今飲み干すべき灰汁は、絶えず「言葉」の内部から栗の花の臭気を漂わせている、まさに僕が今手にしている「彼の」本ソレである。
,親友です。,#000000,./bg_f.gif,220.35.14.46,0
2006年06月23日(金) 22時28分39秒,20060623222839,20060626222839,jhY9lRNg8WaP6,また会いましょう,雅,bracken-731@ca2.so-net.ne.jp,,木々が桃色に染まり 甘い香りが漂う
僕らは その中で出会った
幼い僕らは確かめるように 歩き出す
転んだ時は 手を差しのべ また歩き始めた
二人で手を握り 新しい道を見ていく
君といる日々が 楽しくて 嬉しくて
どんな時も一緒にいたい 初めて思えた気持ち
迷う日は光を探し さまよい続ける
きっと僕が来てくることを願い 君はずっと待っていた
離れたくない 近くにいてほしい 気持ちに気付けなかった
叶わぬ夢 届かぬ君への想い
何もかも 上手くはいかないけれど
いつまでも この手を伸ばし続けるよ
その時に 僕は生きてるって思うんだ
いつの日か大きな夢と 君の小さな手を握り
二度と離れないように 笑いたい
どんな事があっても 君を守っていけるように
強い力と 強い想いを手に入れたい
ずっと君といたいから
葉が色移り変わり 照りつける光を体に受け
ただ立ち尽くす そんな日々の毎日
どんなに泣いていても 笑っていても 怒っていても
忘れることの出来ない日が また舞い戻る
いつも笑顔でいることを 忘れてしまう
約束はずっと覚えているよ これだけが僕らの証だから
見ることの出来ない夢を 見たいと願ってします
君の香りがするときは いつの間にか探してしまう
もう一度君に会いたい もう一度君を見たい
決して伝わらなくても これだけは伝えたい
どんなに待っていても 縮まない距離だけど
出来ることなら君の傍で 瞳の中で 生きて行きたい
愛することは簡単だけど 思いは伝わらない
君に会えるなら 今すぐ飛んで行きたい
けれど会えないなら これだけ言わせて
また会いましょう いつの日か あの場所で
,少し遠まわしにやってみました,#0000A0,./bg_e.gif,58.87.241.43,0
2006年06月23日(金) 20時44分22秒,20060623204422,20060626204422,jwxG3lY5eWwZ6,友情と恋愛@〜イヤ〜,しぃ,,,−「あぁ、だる!先生の説教とかありえんし。なんが弁論は気持ちで書くもんやろがぁ、だっつうの」
私「うん。なんか、なんで自分は生きてるのぉ?なんて考えれない」
昼休み、下敷きで顔を仰ぎながら、−(名前)と話していた。するとkくんが私たちに何気なく話しかけてきた。おっとりしていて、何も考えてなさそうな外見。
k「生きてるって感じる事に意味があるやん。死ぬ事が解ってるから生きてる事を考えんば。生きがいもその一つでやろ?」
以外だった。だって日ごろ地味やんか。kくんがオトナな考え持ってると思わんかった。
−「k…。なんかアンタ外見と正反対やん!面白すぎ!ははは。めっちゃウケル!」
kくんは、真面目に言葉を返した。けど、−は、その言葉を軽く返し、笑っていた。それも、馬鹿にしたように。私には笑えない。重すぎたせいなのかもしれない。けど、−みたいに笑って返せなかった。真面目な顔、みてたら普通笑えないし。
私「………」
k「……重すぎ?笑われたし……」
−がkくんの肩を叩き、にしても今日あつい!と話を変えていた。kくんは俯いて苦笑していた。
放課後
−「ねぇ、k、最近ウザィし。ねぇ?」
私「そうかな。真面目な顔して話してたよ」
−「何?アンタもしかしてあいつの肩持つ気?だめだからね。あんたは私の親友。親友はアンナ奴の味方はしないの!」
私「親友ねぇ。ねぇ、−。聞いて欲しいことがあるんやけどさ、kくんうち等の仲間に入れてやろうで。だっていっつも一人で居るやん。可愛そうやし」
−「はぁ?イヤやし!ありえん!うち等の仲間にもカッコイイ男子なら居るし。絶対無理!だってキモィもん」
キモィ。昔、私がいわれた言葉。調子に乗って友達と接してたら出てきた言葉。どうしてもこの気持ちを傷つけられるような事があれば止まらない。気が付けば私は暴走していた。
私「はぁ?キモィ?なんてこと言ってんの!その言葉がどれだけ人を傷つけてるか解って言っとっと?いい加減にしてくれん!キモィなんて言わんで!」
−「………どうしたん?そんなに取り乱して」
私は反省の色も無い−に嫌気がさして走って家に帰った。何をしてるんだろう。あんなに取り乱したの何年ぶりやろ。でも私が言った事は本当。解ってくれるかな。−変な風に思わないでくれるといいけど。
,どうもwwこんにちゎ。友情と恋愛。二話目です。これは、もち実話です。(一話目も
リアリティなくてごめんなさい。記憶から引っ張ってきてるんで、セリフとか微妙に違うかも………。そこら辺は許して下さい。今回ゎ、何回かに分けようかと思いました。なんか長くなりそうだったんで。あ!そういや天光さんに言われたけど、九州弁です。読みづらィ人は申しでを…,#0000A0,./bg_g.gif,220.20.125.15,0
2006年06月20日(火) 18時52分45秒,20060620185245,20060623185245,iTEOOH1iu9gfQ,アカリとヒカリ,恵理子,eriko10131992@yahoo.co.jp,ameblo.jp/eriko-reon/,急須からそっと、お茶を注ぎます。
ぷかぷかとお茶っ葉が浮いて、真っ直ぐな茶柱が立ちました。
今日も良い事、ありそうです
今時珍しい茅葺屋根のお家に住む、座敷童のアカリちゃんは
誰よりも綺麗な黒髪を持っています。
アカリちゃんはその黒髪が大好きで、肩の下まで髪を伸ばしています。
綺麗な髪を、綺麗に梳いて、アカリちゃんはお散歩に出掛けました。
お家から出て、緩やかな坂道を上って、砂利道を転ばぬように歩いて、
小さな岩を飛んで川を渡り、広い草原へやってきました。
ここは、真っ白な蝶々が踊る若葉色の舞踏会場。
その真ん中には、黄色いお花畑が広がっています。
アカリちゃんはそのお花が、黒髪の次に大好きです。
――そうだ、お花で冠をつくりましょう
アカリちゃんは、草原の真ん中目指して歩きます。
蝶々はひらひらと踊りながら、アカリちゃんについて行きました。
――えーん…えーん……
真ん中に近付くと、女の子の泣き声が聞こえてきました。
女の子の声を頼りに、アカリちゃんは女の子を捜します。
――どこ? どこにいるの?
――えーん…えーん……
泣き声は黄色いお花畑から聞こえてきます。
お花畑の中には、お花と同じ色の髪を持つ女の子が居ました。
アカリちゃんは尋ねます。
――あなたはだぁれ?
女の子は泣きながら答えます。
――わたしはヒカリ。あなたはだぁれ?
――わたしはアカリ。
アカリちゃんはもう一度尋ねました。
――ヒカリちゃんはどうして、こんな所で泣いているの?
ヒカリちゃんは答えます。
――みんなに、髪の色が変だって言われたの…
ポニーテールにしているヒカリちゃんの髪は、砂金のように光っていました。
それはとても綺麗で、見惚れてしまうほどでした。
――変じゃないよ、とっても綺麗。まるでお花の妖精みたい
――…本当?
――本当だよ。もう泣かないで。一緒に遊ぼうよ
アカリちゃんは、ヒカリちゃんに手を差し伸べます。
ヒカリちゃんはそっと手を取り、もう片方の手で涙を拭きます。
さっきまで涙でグシャグシャになっていた顔は、笑顔に変わりました。
そして二人は、蝶々が踊る草原で、お花を編んで遊びました。
今日も良い事、ありました,はじめまして、恵理子と云います!
最初は、絵本の様な小説を書こうと思ったんですが…
なんじゃこりゃあ!?
なモノになってしまいました(汗)
ほのぼのした小説が書ける方に憧れます…。
まだまだ未熟な私ですが、頑張りますので宜しくお願いします!,#000000,./bg_e.gif,221.78.208.12,0
2006年06月20日(火) 18時45分32秒,20060620184532,20060623184532,i8lV0QYz2Tgjs,血塗られた少女 11.,朱鷺,,,気付いてしまった本当の気持ち。
和泉がすき・・・。
こんなことになるはずじゃなかったのに・・・
和泉の何処に惹かれたかは知らない。
時が来るまで言ってあげないしね。
「もう大丈夫か?」
着替えを終え、部屋に戻って来た私に問う
「もう全然平気だよ」
気持ちに気付いた所為か、口調が少し変わったような・・・
「さっき、着替え取りに行った時遙が平気なら話があるって・・・」
「えと・・・誰だっけ・・・。羽野・・・?とか言う人が」
羽野 綾子。
私に見たくもない過去を見せしめた女。
でも見て良かったのかも・・・。
前のままじゃ先に進めないから。
「そっか・・・。うん。行くよ平気」
この時は和泉に言った言葉でなく、自分に言い聞かせるように言葉を放った。
「んじゃあ・・・俺はどっかで待ってるから」
そう言った和泉は少し悲しそうな顔をしていた。
廊下を進む和泉の背中を送ってから、私は進んだ。
進んだ先には羽野がいた。
「大丈夫みたいね」
「はい」
大丈夫―。これもまた言い聞かせる。
弱い自分に。
強くなれ、と
「じゃあとりあえず、此処に座って」
此処、といわれた場所は何処か見覚えのある場所。
残酷な過去を魅せられた場所。
私はまた此処に来た。
でも・・・もう逃げたくないから・・・
椅子に座ると、頭に何かを付けられる
「じゃあ、いくわよ」
羽野の声とともに視界が歪む。
最後は真っ黒。
―時の中。
立っているのかないのかもわからず。
前、後、何処を見ても暗闇。
何処からか吹く、風。
振り返れば灰色の世界。
白と黒で創られた灰色の世界
赴くがままに、進む
現実と夢の果て。
いつの間にか、目覚める音がする
周りを見ると個人情報がと写真が載っている。
巨大なスクリーン。
その中に私も居た。
「とりあえず私の正体を明かさないとね。」
羽野の声が上から聞こえてくる・・・
が、羽野本体は見当たらない
「私の名前は羽野綾子。地球内、外関わらず管理する秘密組織ERの一員よ」
「は・・・秘密・・・ER・・・?」
戸惑う私になど構いなしに淡々と話し続ける
「貴方・・・遙と似たような人は100人居たの。この世界に」
「でも近日、その貴方と同じ運命を背負った者は何故か殺されているの」
「100人居たのが、ついに8人まで減ったという報告を受けているわ」
私は分からないが、分かるように理解しながら手を精一杯握り、話を聞く
「貴方の他にあと7人。此処に収容されてる子は貴方を混ぜて5人になったわ」
「あと2人の行方は分からないの」
「それで、貴方が倒して来た敵の情報なんだけど・・・」
「詳しい情報は未だ分かってない。けど、確かなことは・・。」
「元は人間だったってこと」
私はこのとき、初めて息を飲む。ということが分かった
――人間。
私は今まで人間を殺してたのだ。
人間を。
「説明は以上。また分かったら連絡するようにするわ」
そう言ったら視界がまた歪み出す。
元の景色へと戻っていった
心臓が大きく音をたて、響く。
人間を殺し続けていた。
頭に音が響く。
やめて・・・もうやめて
こんな音、止まればいいのに・・・
「遙」
和泉の声がする。
「大丈夫か?」
そういいながら駆け寄って来た和泉はすごく心配そうな顔をしていた。
「・・・大丈夫だよ。」
そうだよ。私はこの音をけしてまだ止めてはならない。
和泉が居るから。
とめるときは・・・いつかは訪れるんだから
それまで静かに待つんだ。
音を自分で止めることはしない、と・・・
この時胸に誓って決めた。,話が難しくなって参りました;
わかっていただけるでしょうか・・・
私自身、とても不安です;
表現力がある方は凄いなぁ・・・と思います。
文章力ある人も凄いなぁ、とは思いますけどw,#0000A0,./bg_c.gif,220.51.148.83,0
2006年06月20日(火) 01時37分33秒,20060620013733,20060623013733,in421KSdh6GXs,デザイアと呼ばれた男 VOL 21,D・二プル,,, 6
目の前には信じられない光景が広がっていた。
國無が車を停めた場所は「ニガー」の事務所前だった。
俺は車の中から目の前の光景を見つめていた。
まさに今、マユミが「ニガー」の連中に腕をつかまれ、事務所に連れて行かれる瞬間だった。
連中の後ろには鬼頭の姿もあった。
鬼頭たちは車から降り、事務所に入ろうとしている。
「よし、行くぞ」
そう言うと國無は一気に車を加速させ、鬼頭たちが降りたばかりのベンツにハイエースを突っ込ませ体当たりさせた。
静まりきった街に轟音が響き渡った。
辺りに人影は無い。
いや、そんなことを気にしている暇もなかった。
鬼頭たちは突然の襲撃に目を丸くして呆然としていた。
まだ、頭が現実についていっていない感じだった。
マユミの腕を掴み連行していた「ニガー」の連中もあっけに取られマユミの腕を離していた。
國無はすぐに車を荒々しくバックさせ、マユミの前に横付けした。
「今だ、やれ!」
國無の声と共に、俺は助手席のドアを明け、マユミの手を取りハイエースの中へ引き込んだ。
俺とマユミの目と目が重なり合った。
マユミは突然現れたデザイア≠ノ呆然となり、されるがままに車の中へやってきた。
マユミを抱きかかえ、俺は助手席のドアを閉めた。
それとほぼ同時に國無は車を猛スピードで発進させた。
狭い室内で俺とマユミは身体を密着させた。
ほのかに甘い香りが俺の心臓の鼓動をさらに加速させた。
そんな俺を現実に引き戻したのは國無の一言だった。
「来たぞ!」
ハッとなり、横を見ると窓の外には鬼頭と「ニガー」の連中が半分潰れたベンツでハイエースの横にぴったりと横付けしたまま追ってきていた。
俺は鬼頭と目があった。
鬼頭は自らベンツを運転していた。
俺は鬼頭と視線を絡ませた。
鬼頭は鬼の形相で俺を睨みつけている。
その眼はたった今襲撃されたことに対する怒りだけではなく、恋人を奪われたことに対する怒りも含まれていた。
鬼頭は明らかに俺をデザイア≠セと認識している。
鬼頭は何の躊躇もなく、ベンツをハイエースにぶつけてきた。
その度に車は轟音と共にものすごい衝撃を受ける。
衝撃で助手席のドアが凹み、窓ガラスに亀裂が入った。
俺はマユミを急いで後部座席に移動させた。
「身を屈めて頭を低くしてろ」
ボイスチェンジャードロップで低くなった声で俺はマユミに言った。
マユミは必死で言われ通りに後部座席で亀のように丸くなっている。
その間にも鬼頭は容赦なく車をぶつけてくる。
ついに助手席の窓ガラスは粉々に砕け散った。
鬼頭は運転しながら大声で叫んでいる。
「テメエら、このまま無事で済むと思うなよ」
鬼頭の目はまるで野獣が獲物を狙うような眼をしていた。
俺は無意識に國無に視線を送った。
「何やってんだ。このままだとやられるぞ。早くやれ」
國無は前を見たまま大声で叫んだ。
俺は足元のトランクを大急ぎで開けた。
そして、そこに詰まっている液体の入った小型のビンを手に取り、蓋の代わりに詰まっている液体の染み込んだ布にライターで火を点けた。
國無が用意した新兵器とは小型の火炎瓶だった。
火の点いた火炎瓶を持って俺は鬼頭が運転するベンツに振り返った。
火炎瓶を見た鬼頭の眼が一瞬にして変わった。
俺が火炎瓶を投げようとした瞬間、鬼頭は車を体当たりさせ、その衝撃で俺は窓の外に火炎瓶を落としてしまった。
火炎瓶は鬼頭のベンツのすぐ横の道路に落ち、炎上した。
それでも鬼頭の車のスピードは一瞬緩んだ。
ようやく、ベンツとの間にわずかな距離ができた。
「まだだ、もう一回ブチかませ!」
國無の声と共に俺はもう一度火炎瓶に火を点け、思いっきり鬼頭の運転するベンツの正面に投げつけた。
火炎瓶は突っ込んでくるベンツの前方で爆発し炎上した。
その衝撃で鬼頭の車はやっと停まった。
バックミラーに慌てて車から脱出する鬼頭たちの姿があった。
國無の運転するハイエースは猛スピードでその場から走り去った。
辺りは静まり返っていた。
マユミは公園のベンチの上で意識を取り戻した。
気がついた時、マユミは初め自分がどこにいるのか分からなかった。
「ニガー」の連中に捕まり、非現実的なカーチェイスを体験していた最中にどうやら意識を失ってしまったようだった。
マユミは覚えていなかったが、実際にはどさくさに紛れて國無が催眠ガスで眠らせたのだった。
もちろんそれは最高の演出をする為に計算に入れてのことだった。
ベンチから体を起こしたマユミの視界に入ってきたのはニット帽と特殊なサングラスで顔を覆われた男の姿だった。
「よお、気がついたか」
「……」
マユミは驚きを隠せなかった。
マユミは数日前から無性にこの男に会いたいと願っていた。
その為に「ニガー」の事務所の周りをウロウロしていたのだ。
「ニガー」の連中に捕まっていた時、突然自分を助けに現れたこの男に正直ドキドキしていた。
自分の手を取り、車に引き入れ抱きかかえてくれた時、胸がキュンとなった。
それはマユミが久しく忘れていた感情だった。
マユミはこの時、はっきりと確信した。
自分は「この男が好きなんだ」と。
呆然と目の前の男を見つめているマユミにデザイア≠ヘアイスココアを手渡した。
「よかったらどうぞ」
デザイア≠ゥらもらったココアを飲んだマユミは落ち着きを取り戻した。
「どう、少しは落ち着いた?」
「……うん。ありがとう。ねえ、あなたデザイア≠ナしょ?何であたしを助けてくれたの?」
「あれはたまたまさ。俺は「ニガー」の連中を潰そうと思ってるんだ。そこにたまたま君がいただけさ」
「あなたは長期延滞者を助けてるんでしょ?何でそんなことしてるの?危険なだけじゃない」
「さっきも言ったろ。俺はあいつらを潰したいだけだ。別に延滞者を助けたいわけじゃない」
デザイア≠フ口から出た言葉は以外にも冷たいものだった。
「何であなたは『ニガー』を潰そうとしてるの?彼らに怨みでもあるの?」
「君には関係ないことだ。とにかく一つだけ忠告しておくけど、もう二度と『ニガー』に近づいちゃだめだよ。君の気持ちは良く分かる。でも、君が手を汚す必要は無い。その為に俺みたいな男がいるんだからね」
「……」
マユミは黙ったまま俺を見つめていた。
「さ、だいぶ落ち着いたろ。家まで送るよ」
俺は立ち上がったがマユミはベンチに腰を下ろしたまま動こうとしなかった。
「……まだ帰りたくない。もう少しあたしの話を聞いて」
「……」
「あたしね、昔元彼を……」
「君の話に興味は無い。帰らないなら俺はもう行くよ。時間が無いからね。君は何か勘違いしているんじゃないのか?君の目の前にいる男がどんな男か知っているのか?ここに君一人残して帰ることもできるんだぞ。ホームレスや変質者がウヨウヨしているこの夜の公園にね。さあ、通りまで送っていくから帰るんだ」
俺は冷たくマユミを突き放した。
それはもちろん國無にきつく言われていたからだった。
「デザイア≠ノ惹かれているマユミを冷たく突き放し、お前に好意をもつようにする」
國無のこの言葉を聞いていなければ、俺がマユミにこんな態度で接することはなかった。
傷ついたマユミを強く抱きしめ、最後まで話を聞いてやりたかった。
しかし、それでは駄目だと自分でも分かっていた。
もし、今の姿のままでそんな態度をとってしまえば、マユミは今以上にデザイア≠ノ惹かれてしまうだろう。
俺は目的の為に自分の気持ちを押さえ込んだ。
デザイア≠フ言葉を聞いてマユミは下を向いたままおもむろに立ち上がったかと思うと、突然、夜の公園の中に走り去って行った。
走り去る直前にマユミの目からは涙が溢れ出していたように見えた。
これでいいんだと思う一方で俺はマユミが心配だった。
半分冗談で言った自分の言葉が胸の中で津波のように押し寄せてきた。
「ホームレスや変質者がウヨウヨしている夜の公園」
確かにここには何人ものホームレスが住み着き、変質者も多く出没すると聞く。
過去には殺人事件もあったという。
しかし、実際にマユミが被害に遭うとは思えない。
しかし、妙な胸騒ぎがいつまでたっても納まらなかった。
俺はマユミが走り去った闇の中をいつまでも見つめていた。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
人の命には限りがある。だから私は今を大切に生きている。
編凡な日常の中にも常に変化しているものがある。
老いは確実に私たちにやってくるものだ。
だから私は人生をもがき続ける。失敗しても決して諦めずにあがき続ける。
そんな想いが私の作品には込められている。私の作品を読んで皆さんも何かを感じて欲しい。
そして、明日を精一杯生きて欲しい。
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年06月19日(月) 21時11分59秒,20060619211159,20060622211159,ipAxsIqD.BA7I,友情と恋愛〜幸せ〜,しぃ,,,「幸せってなんだろうね?」
突然友達に聞かれました。私は答えられませんでした。
幸せという言葉を身近に感じないし、幸せ?うーん。という感じでよく考えた事がありませんでした。
「さあ?知らないな。ってかどうでもいいじゃんそんな事」
気にもせず友達の言葉をスルーしました。友達は、そう?と不機嫌そうに答えました。
次の日、私は学校を休みました。軽い気まぐれでした。憂鬱になり、暇になりました。リビングでお昼ごはんを食べた後、ふと窓辺に近づきました。窓の外には、偶然友達と別の友達がいました。楽しそうに話していました。なぜか胸がきゅうんと痛みました。理由なんてわかりませんでした。
翌日、私は友達に謝りました。
「この前、ちゃんと幸せのこと、考えてあげないでスルーしてごめん」
「いいよぉ。そんな謝らんでも。−ちゃんなら」
私はすごくうれしかったです。
親友に他の人と仲良くされると胸が痛む。
あれ?待って。私、幸せが解った気がする。
「−!(名前)私、解ったよ。幸せの意味。たぶん、−と一緒に何気ない話とか、こうやって居る事が幸せなんじゃないかな?ふふん。すごくない?うち」
「ってか、キショイこといわんで!ハズイハズイ!」
ホント、なんか友情と恋愛てそっくりだわ。
,私にとっての幸せです。何気ない事が幸せだという事はいろんな小説の作者の方が言われています。私はこの体験をもって、本当にそうなんだなあと考えさせられました。最後の言葉には、友情と恋愛がそっくりとあります。本当にそういまでも思います。外見から見ると、レズかなんかと思われがちですが、事実。もちろん私はいったってノーマルです(笑),#0000A0,./bg_g.gif,220.20.125.15,0
2006年06月19日(月) 10時27分06秒,20060619102706,20060622102706,iQaz8WGQ4fe3s,夢が映した現実 二話,梨音,,,
散っている桜が 私の心を表わすように舞っている
何故、こんなにも詰まらない事をするのか、不思議でなかった。
新入生の顔なんて、適当に見てれば分かるし、普段ならばサボっていた。
『新入生代表 大河内瀧』
眠ろうとしていた時、一際目立つ声が響いた。
「はい。」
勿論、目覚めたので、その声の主でも見てみようと好奇心で、チラッと横を向いた。
心なしか、女子の瞳がハートになっている気がする・・・・。
『僕達は今日・・・・・・』
マイク越しに聞こえる声は格好良くて、こんな人もいるのか、と女子の気持ちが分かった気がする。などと一人で関心していると、横から肩を叩かれた。
「あれです。私の幼馴染。」
小声で芽衣が言う。
その顔は嬉しそうで、楽しそうで、私は少しだけ、悲しくなった。
と、マイク越しの声が段々と大きくなっていく。きっと芽衣に聞いてもらいたいのだろう。
気付いた私は、芽衣に前を向こうと注意した。
その瞬間、彼は笑った。もちろん、芽衣に対してだが、
その瞬間、私は頭が真っ白になった。
「・・・さん。來華さん!」
芽衣の声で現実に戻る。どうやら寝ていたらしい。
「もう、皆帰ってますよ。私達も帰りましょう。」
にっこりと微笑んだ芽衣が可愛くて、私は思わず赤面しそうになった。
「そうね。」
私達は、何時もの道を歩む。
変わらないまま、世界の狭さを知ってゆく。
続く
,,#0000A0,./bg_d.gif,61.199.57.50,0
2006年06月18日(日) 19時54分04秒,20060618195404,20060621195404,imCoCsmxBqwGk,残り香,羽香(わか),mai_waka@hotmail.com,,昼近く、彼氏に電話に起こされる
午後まで寝る予定だった
口が乾いて気持ち悪い
歯を磨いて部屋を見渡す
今朝まであの人がここに居たことを思い出す
昨日の夜、相変わらず突然の「会いますか?」のメール
あの人にとって私は会うべき人としての優先順位が低い
彼の時間が空いた時気まぐれに来るこの時を逃すと
次会えるのはいつかわからない
帰りの時間を気にしている割にこちらに連絡をよこすのは
ある程度泊りがけの覚悟あっての事
それは最終的な暗黙の了解であって
あの人は決してそういう態度は示さない
私も何も言わないが
結局、泊まっていく流れになる
それについて確認の言葉がないだけ
私の部屋に来ると彼は必ず本・写真・アルバムに関心を示す
CDを焼いてくれるよう頼まれることもしばしば
この日も5枚焼いた
改めて部屋を見渡す
散らかったCDを見ながら自分たちの関係性が変わっていないことに、苦笑
寝室にはかすかな情事の残り香
ベッドに潜ると彼の残り香
あの人との情事は長い
何時間もかけてゆっくりじっくり事が進む
その1つ1つをベッドの中で思い出す
彼が帰った後はそれが現実であったことを1日かけて思い出す
私の想いは一生叶わないのだけど
少なくともあの人は昨日私の元に居て、時間を共有したのは事実
1日かけて思い出して、次の日から日常に戻る
こんなことが後何回繰り返されるのか
彼と私をつなぐものは
お互いの抱える「生きづらさ」が似てるからなのか、
ただの「腐れ縁」なのか
進む道はお互い違っても
「同じ穴の狢」であることは一生変わらないような気がする
でも私にはおそらく人生を共にしていくであろうパートナーがいて
結婚願望皆無の彼も滅多に「女」は切らさないわけで
あの人は私の部屋を出た時点で日常に戻ったであろう
私も明日には日常に戻る
私たちの逢瀬は非日常
非日常だから夢や遠い過去だったような錯覚が襲う
その錯覚に抵抗する私は執着が強すぎるのかもしれない
でも、今日1日は残り香の中であの人を想う
,過去のものを多少修正しました。元の題名は「残り香のある1日」です。
一応実話です(照)。
「あの人」には7年間片思いです。彼氏とは運命感じているのですが、「あの人」との関係性はちょっと特殊なんです。
この文章の反響次第ではもっと彼について書いてもいいかな、と思案中です。
スクロール長くてすみません。個人的には時系列とか「景色」と「思考」との間はこれくらい開けたいんです。,#4F4F4F,,218.137.228.190,0
2006年06月18日(日) 19時41分08秒,20060618194108,20060621194108,ieN9XU.q2UwEk,THE SPRING TIME OF LIFE Vol.2,湯瀬 大志,,,
第1話 その2
みんながやっぱり仲間でかたまってサーっと帰っていった。そしてやっぱりぼくはひとりだ。
体育館からひとりで出るとき、なんとなく桜が気になった。
足が自然に東門に向いた。外は、さっきの眩しさなんかもうどこにもなかった。
弱い風がスーとふいて、ぼくと桜を揺らす。
なんでだろ?薄暗くなった中の桜はなんだか怖い。昼間きれいなピンク色だった花が、太陽の去った空と似た色になってる。それに生暖かい風。怖い。ハダカの桜は黒くなってて、それでもやっぱり、寂しそうだった。
なんとなく、ホントになんとなく、ハダカ桜に近づいた。幹を触るとちょっと暖かい気がする。
生きてるんだ・・・。
ぼくはそのまま根元に腰を落とす。不気味な風が前髪を揺らした。
・・・また悲しくなった。
さっきはなんで悲しくなったかわかんなかったけど、今はわかる。わかるよ。
この桜とぼくは似てるんだ。周りから取り残されてる感じ。自分には仲間なんていない。他のだれとも住んでる世界が違う。そんなトコが。
この桜を見てたら悲しいのに、ほっとけないのは、ぼくだからなんだと思う。きっと、他のだれが見てもそうは思わない。思えない。「呪い」のウワサとかにされるだけなんだ。きっと。
気がつくと、涙がこぼれていた。止まらない。もともと泣き虫だからそう簡単に止めるコトなんてできない。でも、だれも見てないのに、こんなに泣きたくないって思ったことはなかった。
ダメだ。声も出てきた。
いつもいつも、一生懸命に心の中に浮かんできた考えを打ち消そうとしてた。忘れようとしてた。でもこの木を見てたら、自分と重なって悲しくなってくる。
ケンちゃんはぼくをウザがってる。
「違う、違う」必死で逃げてきたけど、やっぱそうだよね。ウザいよね。こんなちびで泣き虫なヤツなんか、ウザいよね。他の人に「友だち」って思われたくないよね。
風が強くなってきて、周りの桜の花がザワザワと笑い出す。それは、ケンちゃんやその友だち、クラブのメンバーの気がしてくる。みんなとは違う、花のないハダカのぼくは、その笑いには入れない。
なんかもう、全部イヤになってきた・・・。
「大丈夫?」
低い声がする。目を開けると、目の前にナニかいた。
「おい・・・。」
それが人だってわかるまでに少し時間がかかった。ぼぅっとその人を見てた。見たコトがある・・・。話したコトはないけど・・・。同じクラスの・・・、確か竹本くんだ・・・。
「どしたん・・・?」
そうか・・・、寝てたんだ・・・、ぼく。
竹本くんのカオの向こうに、さっきまでぼくを笑っていた桜の枝先が見えた。・・・。あ・・・。
「大丈夫なん?」
さっきまでここで泣いてたんだった・・・。
それを思い出したら、ものすごく恥ずかしくなって、目が覚めてきた。
「・・・大丈夫・・・。」
もしかしたら、見られた?恥ずかしくて竹本くんの目を見れなかったけど、とりあえず返事はした。
「死んどるんかと思ったぁ。」
竹本くんはさっきより高い声を出したけど、のど仏にジャマされて、声が裏返った。
「なんしょったん?」
しゃがみながら聞いてきた質問にドキっとした。・・・、どうしよう・・・。
「・・・、なんもしてないよ・・・。」
そうだよ、ぼく何もしてない。
少し沈黙が流れる。また風が気になってきた。ぼくの髪の毛は揺れたけど、竹本くんのボウズは動きもしなかった。
沈黙と風がイヤで、ぼくは必死で何か話題を探した。
竹本くんの後ろに、チャリがあるのを見つけて、これだ、って思った。
「竹本くんはなにしとったん?」
しまった・・・。
バカすぎる。時間は夕方六時半、校門、チャリ。なにしてたかなんて、見たらわかる・・・。
「おれ?おれは今から帰ろうとしょうたんじゃけど・・・。」
だよね。それしかないよ。ごめん。ヘンなコト聞いて・・・。
・・・。
また沈黙が流れる。コトバじゃなくていい、なんか音が、風以外の音が欲しい。だからぼくは、わざと靴で音をたてて立ち上がった。
「クラス同じじゃろ?・・・吉岡くんよね?」
竹本くんも沈黙がイヤだったみたいで、ぼくを見上げて聞いてきた。
「うん。」
ぼくは短く答える。竹本くんはしゃがんだまま立とうとしないから、ぼくも少しまたしゃがんだ。目がぼくから離れていく。
「ふぅん。」
ぼくじゃなくて、ハダカ桜の黒い幹を見ながら言った。さっきのぼくみたいに目がぼぅっとしている。
風が少し優しくなってきた。スッと竹本くんが立つ。どうでもいいけど、でかい。・・・ぼくがちびなだけかもしれない。・・・どうでもいいけど。
「家あっち?」
竹本くんが風に向かって指をさした。ぼくの家は、うん、東だよ。
「うん。」
竹本くんが優しく笑う。
「じゃぁ、一緒に帰ろうや。」
風がまた強くなった。でもそれは、さっきまでぼくを笑っていた風じゃない、そう思った。さっきまで泣いてたのに、そのときぼくはそんなコト忘れてたんだ。
きっと、ケンちゃんのコトも。
,感想をありがとうございました。
>スケハチさん
ぼくもその一文はけっこう気に入ってます!
>天光さん
主人公が気弱なの伝わってよかった・・・!
>中の丸さん
心に残ってくれてホントにうれしいです!
感想があると創作意欲が増すっていうのか、もうホントにうれしいです!
課題がたまってて続きが遅れました・・・。ごめんなさい・・・。次はもうちょっと早く更新したいです・・・。
では、よろしくお願いします!
,#E10000,./bg_b.gif,210.235.40.54,0
2006年06月18日(日) 14時18分01秒,20060618141801,20060621141801,ijYXm0ahlvfoc,雑感―雨上がり、外の音と中の音,羽香(わか),mai_waka@hotmail.com,,昨夜から降りだした雨がようやく止んだ
雨上がりに聞こえる鳥たちのさえずりは嫌いじゃない
梅雨空は時間の感覚を狂わせる
明け方も昼間も夕暮れ時も空の色が変わらない
変わっているのだが変化が顕著ではない、といったほうが正確か
異空間に放り込まれた、とまではいわないが
時間は流れているのにその流れをはっきり感じられないことが
湿気以上に梅雨を不愉快に思わせる
雨上がりの瞬間はそんな不快感を大分紛らわせてくれる
時間といえば音楽とTPOには相性があると思う
昔は知っている曲も、合わせたい場面も少なかった
それでも編集作業は好きで、カセットテープを何本も作ったものだ
今は合わせたい場面も知っている曲も増えた
編集する方法はとても楽になったはずなのに
再生リストの数は、少ない
編集するエネルギーがもうないのか
編集せずとも好きな曲を簡単に聴けるようになった便利さの功罪か
ほんの少しだけさっきより明るくなった外を横目に
「東京事変」の「秘密」をききながら、一服,題名は「内の音」ではなく敢えて「中の音」にしました。「内」だと心の中ってイメージが付いてしまうような気がして。たった今の書き下ろしほやほやです。新鮮さ大事にしたときは推敲がおろそかなんでボコボコにしてやってください(苦笑),#4F4F4F,,218.137.228.190,0
2006年06月18日(日) 00時40分17秒,20060618004017,20060621004017,iHgWF5vkGByO6,擬似恋愛的な、あまりに擬似恋愛的な、結晶化した涙と汚物,鈴村智一郎,,, 僕がネットの小説投稿サイトで出会った《白い蝙蝠》と、東京で出会ってから4日目、僕は彼女に「協調性の虚しさ」について特殊な教唆を受けもした。彼女の住む街から、わずか二駅ほどの地点にあるビジネスホテル(それは彼女が紹介した)で滞在する為の残金が少ないことを危惧しながらも、僕は文学的討論という名目を借りて「協調性の虚しさ」を厳しく教えられる。二人が出会うことを許している環境とは、専ら心理的な二人の閉鎖、内閉志向に来歴し、僕と彼女は社会から「引き篭もり」と嘲笑されるべきなのだ。彼女が僕の短過ぎるショートショートに感想を綴ることで、急速に接近した大江健三郎を、僕は彼女がそれらのショートショートに触れることがなかったとしても、彼女であれば接近したであろうことを感じるが。ジャンケンで『同時代ゲーム』を彼女に譲り渡したことを、僕はあれから一ヶ月経過した今となって、惜しいと残念がるほどに、もうこの作家の癖のあり過ぎる文体には近づけない己を見出す。それは、彼女が性的な文学というよりは、寧ろ夢野久作的な(僕はこの作家について何も知らないことを平気で、敢えて今彼のペンネームの後に「的」と付けた)幻想怪奇な文学に血縁を持っているであろうことを思い出すことに拠って、慰められ、わずかな優越感を取り戻しもした。これから僕が綴るのは、彼女が小説投稿サイトに投稿した最後の作品である『落夏』の、いわば迷宮的な構造を添加された裏返し=鏡像である。(迷宮的、という言葉でさえ、それを使用することを、僕は愛するボルヘスを安易に気取っている気がして罪悪を感じもするが)僕は、今となっては手紙もプレゼントの類も全て燃やし尽くした彼女に、「もう俺はおまえに何も謝罪しないのだ!」と意識の襞ひだをブワッと開闢しつつ、絶叫してみたいと思う。この恐らくはそれ程長くもないショートを、彼女が読みながら、僕に今更のように「吐き気」を憶えることさえ願って。
《白い蝙蝠》は、『アナルな姉妹の快姦私生活・・・。出前の男たちを引き込んで酒宴大乱交!日課は近親相姦レズフィスト!!』というタイトルを持つ、そのアダルトビデオのパッケージの裏を眺めながら、沈鬱な表情をしている。彼女と僕は今、東京のある街の、ひっそりと人気のない小径に面した黄色の屋根のアダルトビデオ・DVD販売店の内部に存在しているのだ。一日目、彼女が半ば華美で、女の子らしい可愛さを感じもする服装で身を纏って来たことを、僕は四日目の彼女の平凡で、どこか冷酷な姿とのギャップに、厭になっている。そのビデオは、二人の女が、四人の男とサンドイッチ状態で交接をしているまさにその瞬間の画像を、しっかりとパッケージ裏で宣伝している。泡塗れになりながら、シャワールームで、乳首と乳首を擦り合わせて、かすかに笑っている女たちの隣の画像は、騎乗位の体勢で、下から男に胸を鷲掴みされている、おそらくこの二人の内のどちらかの、険しい眼を細めた般若のような顔だ。僕が今、まさに手にしている『女子高生ザーメン奴隷2』のパッケージ裏は、中央に制服のまま精液を放たれた少女の、ほとんど顔は半分しか映っていない写真が貼り付けられており、表は両手首を赤い縄で括られた椅子に座る女子高生である。この女子高生は、しかめっ面をし、明らかにカメラの方へ淡い敵意を放っているが、全体的に顔が脂ぎっているようで、ウィンナーの焼き上がった表面の脂を、僕に想起せしめる。《白い蝙蝠》は、いつしか『近親相姦 息子の淫らな妄想に支配されていく母親』というビデオを両手でしげしげと覗き込んでいて、僕にその素早い手捌きを驚かせた。僕は彼女と同じようにして、『女性の嘔吐 THE LADY'S GERO』を手に取る。パッケージの裏には、おそらくは二度目に飲んだであろう自身の吐瀉物を更に吐いている女性の、風邪気味の小さい苦しみのようなそれなりに苦痛を刻んだ表情が貼付されている。この女は半裸で男に喉の奥を刺激されながら、ひたすら嘔吐を続けているようだ。全60分と記されているが、きっともっと長時間に及ぶものもあるのだろう。次に手にした『女の子のツバが飲みたい!』というビデオの裏には、全裸になった皺くちゃの老人が、女子高生二人に口腔から唾液を汁のように落としてもらっている写真が、合計四つの視点から撮影されていた。今、《白い蝙蝠》は『ぐそみるく』というビデオの裏を、やはり亡霊のような眼差しで見つめている。そこには、三人の男に肛門を向けられ、彼等の尻の下で彼等の肛門から出ている黄土色の糞便を舌の上に乗せながら、満面の笑みを浮かべている茶髪の若い女性が映っていた。彼女は活力と希望に満ち溢れたように耀かしく瞳を潤ませ、そのすぐ下の写真では純白のドレスに自らの糞を塗りたくって笑っている。美容液じみて、顔面に糞便を塗り、それを舌先でも舐め取る彼女の、あまりにも幼児的な、元気に溢れた表情に僕は首筋に小さい鳥肌が立つのを感じる。僕は『大観衆が見つめる中で初めての公開生うんち』の裏を眺めながら、今まさにスパゲッティを食べてきたばかりの、己の胃や腸の内臓的な具合について、多少の気味悪さを憶えもするのだ。
僕は《白い蝙蝠》にさりげなく、囁いた。
――大江健三郎にはラブレー受け売りのスカトロジィ気質があったけど、こういう店で何かイメェジを掴む訓練をしているのかな。
彼女は僕の方を振り向きながら、溜息を吐いた。僕は、彼女に嫌われ始めていることを知っていた。それは、二日目くらいから、彼女の死んだ視線を見ていると読み取ることができた。
――さあね。でも、独特だわ。
僕は彼女が少し微笑を洩らしたので、半ば安心して僕自身、歪な微笑を洩らした。
――この店に置かれたビデオに収められてる、ありとある糞や精液やゲロの類の総量は、きっとあの店長の百倍の容積があるなあ。
僕は無意味にそういって、自分ひとりで卑屈に笑った。店内には、素晴らしいほど夥しいアダルトビデオたちが、蜂の巣の一つ一つの小さい孔に詰まりこんだ幼虫のように敷き詰められている。それらの総体、純粋に性的な、あるいはまた倒錯的な、結局は購買者の自涜へ変わるであろう、この無機質なフィルムたちの洪水、と僕は心の底でクツクツ摩滅音を立てながら笑うことをする。社会的に労働する気力を持たないニートである僕と、学校教育に必要性を感じれない不登校の《白い蝙蝠》が、二人で自殺にまで走れないのは、文学があるからである。僕らは読む前にまず書き、書く前にまず読むことで、自殺や、狂気や、恋愛といった不必要な観念を排除する。僕が彼女に惹かれた最大の由縁は、彼女が「人は狂人を名乗るときその外部に位置する」ことを承知していたからである。僕の何の効力も無い定義に基けば、この世界には狂人は確かに存在しているのだが、それは自分を天使と信じ込める選ばれた天才を指し、残りの大半の努力家たちは、ひたすら病室で何かを演じ続けているのである。死を見つめる瞬間、決定的に我々が死の外部に位置することと同じことが、狂気についてもいえるのだと、僕は心療内科に定期的な通院を繰り返す《白い蝙蝠》の、おそらく僕より強度であろう狂気のレヴェルに嫉妬しつつ思う。
――もうそろそろ出ないか?ここは臭い。
僕はそういって、鼻腔の粘膜にへばりつく饐えたような、葉っぱみたいなかすかな臭いを入店した当初から意識していた己を再発見した。
――買わないの?ここに置いてあるこれら。
僕は今にも萎れた枯木になって床に倒れ臥しそうな彼女を、多少なりとも気遣いはしつつ、首を縦に振った。
――買っても一度観たら、捨てたくなる。
《白い蝙蝠》は「ああ」と大きな音を喉から立てつつ笑った。商品棚の隙間から、店長の貧相な長細い、しかし顕著に自涜経験が豊富であると解る猿みたいな顔が見え、僕は彼が僕らをずっと観察していたことを知った。きっと、あの店長は《白い蝙蝠》の細い指先を見て、その爪の中に垢が溜まっていないかを見る。もしも少しでも溜まっているならば、膨大な数のビデオを見飽きた彼の中で、爪の垢を強制的に喰わされるような、そういう変態的な妄想が、生まれもするのだろう、と僕は自分のことのように夢想して、小さく声を立てて笑う。僕はその時、不意に、ここが図書館の空気に近しいことを直感した。ここは、並べられた物がビデオであるだけで、後はもうそのものが図書館の静謐さを孕んでいる、と僕は断言してみせてもいい。ここで数千数万のポルノを眼にする生活をすることと、今の僕らのように、ひたすら文学的な高みを目指して受験生じみて本を読み、赤線を引き、小説を書くことと、いかなる相違があろうか?と僕は自問自答してしまう。僕は、自問自答の末に、やはりいつもの混濁した蜃気楼のような塔、その漏斗状化した地下の螺旋階段で蹲る。起床してすぐに聖書を読み、ご飯中は『ぐそみるく』を流し続け、ひたすら便座の上でも本を読み、太陽が沈むや否や錯乱を気取って狂的に書き殴る…、僕はそのような生活に憧憬を抱くほど、思春期的な呪縛を備えてはいない。僕は《白い蝙蝠》を愛していないし、好きでもなく、きっと嫌いでもないのだろう。彼女は、あまりに僕だ。三日目に彼女自身が口にした言葉を、僕は胸の裡で反復しながら、近親憎悪という言葉を穏やかに思い起こす。何故対面したのか?もう少し、ゆっくりと擬似恋愛に耽溺していれば良かったのに、と歯軋りしながら。
――最後の風景がここなんて、あなたらしいわね?
《白い蝙蝠》は侮蔑でも嘲笑でもない、圧倒的な他者に向けるべき無関心な微笑みを浮かべながら僕にそういった。意味も無く、僕は涙で眼を潤ませた。「ばいばい」「また会おうね」「さようなら」「大嫌い」「さようなら」「ばいばい」「また会おうね」僕はもうこれ以上、何を語る必要があるだろう?一つだけいえることは、僕と彼女には四日目など存在しなかったということだ。僕が《白い蝙蝠》を白い閨へと送り返し、掴み掛けた一握りの幸福を自ら棄て去ったのだ。一度も手を繋ぎ合わず、一度も愛という言葉を使わず、あれだけ口にした電話越しの擬似恋愛を焼却しながら。やがて、数年もすれば日記から《白い蝙蝠》の名は消失するだろう。僕にとっての初恋は、線香花火で白く焼かれた石の上で踊り狂う蚯蚓の、石の表面と癒着して引き剥がされた一枚の薄皮以下のものに過ぎなかったのだ。いわれた通り、僕は彼女の写真も縫い包みも「大好き」と記された手紙も全て燃やして僅かばかりの煤にしたのだった。これを書き綴ったことで、僕は逆説的に彼女の封印に成功したと悦ぶ。今、僕に見えている風景は、大江健三郎の情熱的で、内向的な核シェルターでも、アダルトビデオ販売店の無数に陳列されたポルノの山でもない。ボルヘス、彼の名が僕の新しく浮上した暗闇に光の陥穽を開ける剣となっている。願わくば、《白い蝙蝠》よ、君は幻想に逃れず、現実と対峙しながら、この僕を超克せよ!図書館に根を下ろしたまえ!宿命的に敵対せざるを得ない我々にとって、今立ち向かうべきこととは、幻想ではなく現実を疾走することである。僕は三日前、面接を受けた。君は、何としてでも卒業証書を手にせねばならない。僕に今でも苦痛と慈愛の双方を与え続ける君と、文学的な高みに存在する「海辺の街」へ向かうことを強靭に願って。,最早現実か虚構かも判断できません。,#000000,./bg_g.gif,220.35.14.46,0
2006年06月18日(日) 00時36分11秒,20060618003611,20060621003611,iRZwqjqdkP6YA,【 異端審問 】と蜃気楼の増幅する夜の散歩風景,鈴村智一郎,,,すっかり無人化したような、亡霊の一匹さえ電柱の濃い影で捕獲できても無論怪笑しくない、そんな深い穴ボコのような閨が、空中遊歩道の下に広がっている。暗闇はそれ自体、街灯の白熱発光を緩慢に恐る恐る強姦させつつ、絶え間なくわけのわからぬ魑魅魍魎の残影を、そこかしこに生じさせては、やはり霧消させるのでもある。僕は鞄にイェイツの詩集を入れて、手摺に両腕を小さく乗せながら、明日も均質に幕を開く監獄――あのカトリック系男子高校――を厭がっていた。黒く、しかし乳白色を帯びつつ片雲は三日月を隠して、いよいよ街に、ある特別な悪意に満ちた、何かきっと滑稽でもあろうところの虚無を、僕の意識の襞ひだに敷き詰めていく。空中遊歩道の広くそれなりに長い道は、中央に無垢な笑顔の子供らを模った石像を置いてい、僕は彼らを包囲した石質の円形ベンチに、鳩の夥しい糞を避けながらページを開くことをする。如実に性的な、かつ耽美的でもある一篇の詩を読むことで、僕は僕自身が不登校になってフリースクールを真剣に考えていた時代に、生徒相談室の片隅で出会った「Avril」のことを回想し、彼女が死んでしまったことを確固たる記憶として認めない頑固モノな僕自身を見出す。「Avril」という十七歳の南仏マルセイユ出身の漁師の娘は、長い黄金色の髪と、右眼の蒼い瞳、そしてけして動くことのない茶褐色の美しい義眼を持つ左の眼窩、と僕は急速にこうも真摯に彼女を想像する僕の頭をハンマーで叩き潰すようにして強靭に殴った。不意に、背後で丸っこい、けれど足があったらしい白い運動体が横切り、僕に「あー」という死んでしまう前のような曖昧な愕きの声を発することを強いたもの、それは子豚のように丸々と肥り過ぎた一匹の猫だった。僕は、僕自身のことを「彼」と呼称しつつ、「Avril」のことを考えた。
《 「彼」は夢見がちな生徒だなあ!なにせ、「彼」の脳内宇宙にしか存在し
ていない「Avril」のことを、「彼」は真剣に己と交際するに値するものと規定しているのだから!錯覚なんだなあ!「彼」は毎日、三人の「Avril」に陰茎を強制的に何回も擦られて射精ではなく、素晴らしい放尿をする夢を見つつ、現実でもしっかりオネショしてもいた!錯覚なんだなあ!「彼」はイェイツの詩集を音読しながら、イェイツが輪廻転生の信奉者であるに違いないと断定し(この浅はかな断定は的を得てもいる)、自分にも昔、別の自分としての長い長い生活があったことを涙ながらに夢想して、オネショして濡れに濡れたズボンの冷たさをニチャつく二本の指先で確かめながら、カーテンを素早く開く!全部、全部、全部全部錯覚なんだなあ!「彼」はアヴリル・ラヴィーンの歌唱能力に耽溺し、あらゆる事象をアヴリル・ラヴィーンの声色的に思考し、無我夢中でアヴリル・ラヴィーンの全曲を一日流し通すことでしか読書を継続できない己を知っている!「彼」はそこでこう結論を付けざるを得ない。すなわち、イェイツは生まれ変わってアヴリル・ラヴィーンとなったと!あの世界的に大ヒットしたアルバムの全曲は壮大な永劫回帰に関する暗号に満ち満ちており、少しでも彼がそれを解析しようものなら、たちまちアヴリル・ラヴィーンはこう素晴らしく官能的に絶叫して空前絶後な暗号破りの僕の手を止めるのだ!ヤケニナッタリシナイモン!チットモキニシテナイモン!アナタガナンテイッタッテ!ヤケニナッタリシナイモン!と。錯覚なんだなあ! 》
僕は夜の河川公園は野犬がうようよしているので怖く、以前二匹の、あまりにも眼だけは特別優しそうで気性のトゲトゲしくない犬ドモに、二十七分も汗みずくで追跡された挙句、尻と右膝をバクッ!と噛み付かれたことを根に持っている。それは激痛だったし、僕はナイアガラの滝よりもまだ膨大な量の涙を奇妙にも左眼(僕はどちらにも義眼を嵌め込んでいない)のみから流し続け、犬ドモに「ワオォン!」と、絶滅してしまったニホンオオカミのように哀しくも逞しい悲鳴を発して、彼らを撃退したのだった。その一部始終を傍観していた、東洋風アインシュタインみたいな顔面を首の上に乗せて笑う老人は、「そっ!そっ!そっ!」と得体の知れない笑い声を発しながらカエルのようにピョンピョン跳ねて、石階段を下っていったのだが。僕は今、彼の簡潔でありながら極めて爬虫類的な演技を完璧に実践しつつ、彼がかつて通って弓なりに唾を吐いていた階梯を一段、一段、また一段、さらにまた一段、そしてさらにまたまた一段!と飛び跳ねながら駆け上がるのだ。堤防の高い草叢の上に敷かれた幅の狭い歩道には、漆黒そのものの色だけがグリスを混合した黒絵具の水彩画のように滲んでいた。僕は周囲を俯瞰し、この街=<蟻塚>に長年住み続けている人間=<蟻>である僕自身の社会的機能は、<働き蟻>ではなく、むしろチョコレートの大山脈のみを掠め取っていく<泥棒蟻>に相違ないものと化すだろうと、今更のように眼に涙を潤ませて狭すぎる将来の門を悲嘆する。刹那、消火器が墜落して少女の頭がスイカじみて真っ二つに綺麗に割れた呪わしい事件を刻印する巨大な塗り壁じみた高層マンションの方から、ライトを宇宙船のように眩く燦爛と光らせた自転車がやって来た。彼女、そのレインコートを纏っている初老の女は、腰を真っ直ぐ直線形に伸ばしながら、性転換した老衰寸前の仏陀みたいな細い眼をさらに皺クチャに細めて、
――ちょっとね、通りますね!
と両肩を痙攣させながら極めて淑女らしく懇切丁寧に会釈していった。僕はイェイツの詩集をぎゅっ!と抱き締めながら、今の老婆の視覚に捉え得た全ての動作の総体を全的に巻き戻して、一から彼女を再びこちらへ来るように仕向けた。この皺くちゃのヴィデオ再生的な「第二の老婆」に、僕は彼女の後部座席に座らせる存在として、ウォルト・ディズニー社製の旧型ドナルド・ダッグを選択し、彼を静かに座らせることは不可能だと自覚しつつも、やはり紳士的に座ってもらうように架空の超大型拡声器を使って「コラ、動くな!」と絶叫する。次の瞬間には、頭部がパンパンに膨張した水風船みたいなドナルド・ダッグが遂に涙を流しながら大爆発し、彼の運び屋である「第二の老婆」の背中をアヒル色の脳味噌の欠片とふざけ狂ったケチャップで塗りたくった。僕はその幻を夢想することで、自分の精神が更に深く無限に続く井戸の底へ落ちていくような、眩暈と淡い嘔き気に襲われて、もう随分マンションからは遠ざかった「第一の老婆」と「第二の老婆」を融合させ、先刻の統一的な老婆に戻すのだった。僕は唐突だが、ここでどうしてもイェイツの「モル・マギーのバラッド」という一篇の詩の一節を、魂を込めて音読せねばならなかった。
《 わたしは赤ん坊のうえにねてしまった
かわいい子供らよ
つめたい赤ん坊に気付いたのは
しらじらと霜の朝になってから 》
僕は想像妊娠の末、三回妄想的な流産を経験してから呆れるほど粘着質な男性恐怖症に陥った世界的スーパー歌手「Avril」にこそ、この詩を眼前で一語一句余すことなく朗読してやらねばならないと自負する。
孤独で道化的な夜の一人歩きも半ばに差し掛かり、僕は圧倒的な運動不足から既に棒切れと化した惰弱な両足をパンパン叩きつつ、僕の最近入団した新興宗教団体のアジトへいつの間にか到着した。異端スウェデンボルグ派(予備的な知識として、この18世紀末に没した神秘思想家が、人間は死ぬと天国へ行くか、地獄へ行くか、自由意志によって決定できると説いたことくらいは認識しておいて戴きたい)に属性を持つこの団体の、紅い四つのテントが小さなサツマイモ畑を中心に放射状に広がるアジトは、河畔に群がる雑木林の内奥にヴィエトナム戦時下の野戦基地の如く密かに存在している。メンバーの大半は気狂いか、もしくは勤勉過ぎる輪廻転生説の信仰者であり、無論教祖であり薬品会社の体操風のcmで最近テレヴィ界にも進出しつつある十七歳の「キイチャン」も、同じく頻繁にナーガールジュナやヘラクレイトスやショウペンハエルの名を口にする筋金入りの永劫回帰の讃美者だった。僕はテントの前でしゃがみ込みながら咥えた煙草の先端に蚯蚓を巻きつけて微笑している同期メンバーの「G」に夜の挨拶を交わした。
――ああ!スズムラくん!よく来たねえ。じきに【 異端審問 】の会議は始まるよ!さあ、教祖のいるテントへお入り!
僕は軽く会釈して、団員の証である舌先のラテン十字形をした縫い跡を見せると、親切に先刻から手招きしていた数人のメンバーに肩を抱き寄せられながら、教祖のいるテントへと向かった。中はモンゴルの族長用ゲルのように広く、中央に一本の燭台が置かれ、更にその錆びた中央で黒人プロレスラーの陰茎よりも太い黒色の蝋燭が桃色の焔を揺蕩わせながらコーコーと燃えている。円形の空間は背丈の物凄く低い本棚に蜂の巣のように埋まりに埋まった無数の神秘主義的書物、哲学的書物、宗教的書物に溢れ、ビニールシートの床一面にも160センチの高さにまで無数の書物が積み立てられていた。その狭苦しく葉っぱ臭いテントには総勢十名の幹部連中が屯し、中央には我等の教祖「キイチャン」がおくびを洩らしながら黒縁丸眼鏡をクイクイ上げている。僕は「G」と隣り合って一番入口兼出口に接した場所に座布団を敷いて座りながら、会議が始まるのを熱望していた。やがて、「キイチャン」が厳粛な表情を浮かべながら口を開いた。
――唯今より、予は【 異端審問 】にかける者を発表する。その者は我等の信仰を陰で嘲笑い、国家権力の犬にアジトの場所を密告した者、罪を犯して処分されるべき者である。名は「G」である!
僕は驚愕しつつも、裁判にかけられきっと拷問される「G」の悲運を想うと、どこか喜劇的なクス・クス笑いが胸の裡で沸き起こるのでもあった。「G」は大阪の精神病院から脱走してきた僕と同じカトリックの洗礼者であった。友情、そう呼べるものは彼の中に見出しもする。だが一方で、彼の口があまりにも軽すぎるために、何一つ約束事を交わせないのでもあった。「G」は今から、【 異端審問 】にかけられ、処刑されるのだ!
――教祖「キイチャン」様、どうか私を赦して下さい!
「G」は鼻腔に左手の親指をねじ込みながら、馬鹿にしたように眼をオセロの急速な反転現象の如く白、黒させてそう絶叫した。やがて周囲で冷酷に彼の行動を監視していた幹部連中の中の、とりわけ筋肉質な二名の男が、「G」の上着を脱がし、シャツを引き裂きズブンを下ろし、下着もハサミで切裂いて全裸にした。暴れ出し手足を小犬のようにジタバタし始めた彼を、寄って集ってメンバーたちが取り押さえる。「キイチャン」は玉座の後方にある謎の蛇柄模様の鞄から電気按摩器を取り出した。僕はそれを見たとき、心底戦慄に襲われたことを今こそ白状しておきたい。
――異端者には強力な快楽を与え、精神を浄化させねばならん!予は人間の交接にこそ精神の研磨された至高性を見出す!
「キイチャン」はそう宣言すると、「G」の屹立してもわずか3センチにも満たない真性包茎ペニスに電気按摩器の最大出力による破壊的な電撃を与えた。「G」は【 異端審問 】にかけられ、浄化されたのである。教祖による拷問は一晩中続いた。「G」は無垢な赤ん坊のように「ホニャア!ホニャア!」と泣き続けた。
僕は早朝、蛻の殻と化した紅いテントの中で眼を覚ました。テントは一つだけ夏草の生い茂る緑の中に埋もれ、この一年誰かが侵入した形跡などまったく見当たらなかった。僕は木漏れ日を浴びながらイェイツの詩集のあのページを、最後の力を振り絞って開く。
《 寄って来ておくれ
小さい子供らよ
石なんかなげないで
わたしがぶつぶついいながら歩くからって
さあ哀れんでおくれ
モル・マギーを 》
,感想もらえたら嬉しいです。
ピンチランナー。,#000000,./bg_f.gif,220.35.14.46,0
2006年06月17日(土) 11時34分40秒,20060617113440,20060620113440,iakqqhy3zwX8I,血塗られた少女 10.,朱鷺,,,俺はただ呆然とした。
暗くてよく見えないけど目が・・・
いや、目というか全てが紅い。
その中で綺麗に涙を流していた。
すぐに話すことはできなくて・・・
ただドアを背にし、呆然と遙を見ていた。
それしか俺にはできなかった
誰・・・?
この部屋に入ってくる人なんて居ないはずなのに。
外から明るい光が差し込み、頭がくらくらする。
誰なの?
入ってきたその人は、ただこっちを見つめている。
心がないかのような目で。
河合・・・・和泉。
何でこんなとこにいるの?
何でずっと見てるの?
何で何も言わないの?
何で出て行かないの?
不安が胸を過ぎる。
唯一の友達・・・
和泉・・・。
早く出ていきなよ。
もういいから。
もういいんだよ。
私なんかにかまう必要なんて元々なかったんだよ?
だから、もう・・・
呆然と立ち尽くした和泉は、いきなりドアを開けたまま・・・
出ていった。
・・・これでいいの。
和泉は私を嫌ってくれた。
元々すきなんかじゃなかったと思うけど
またやっと独りになれた。
・・・独りになった。
そう思い直すとまた、涙が溢れてくる。
和泉に嫌われた。
私は、カッターをまた取り出した。
バンッッ
「遙!何してんだよ!」
入ってきたのは和泉だった。
右手に箱のようなものを持っている。
・・・何でくるの?
・・・何できたの?
私の右手の物を取り上げると、左手を掴んできた。
「あーもう・・・俺不器用なんだからな!知らないからな!」
そう言って箱から白い綿と消毒液を取り出した。
ゆっくり、優しく・・・
私の左手を拭いていく。
何してるの?怖くないの?
自分の左手を見返すと、真っ紅で・・・傷だらけ。
怖いんでしょ?手が震えてるよ・・・
あっというまに和泉まで紅く染まっていく。
私の血で。
白く綺麗な包帯を取り出し、私の左腕に巻いていく
「あーほら・・・だから言ったじゃん。巻き方わっかんねぇからきたね・・・」
そう言いながらも、私の左腕に巻いていく。
どうして・・・。
「一応できたな。うん。」
和泉はその場で立ち上がり、続けて喋った。
「何か違う服持って着てやるよ」
そう言って部屋を出て行った。
光に照らされた和泉は、真っ紅だった。
この血の海から私を救ってくれようとしてるのかな?
和泉は私を助けてくれようとしてる。
血だらけの、私を。
もう・・・私が求めている人は・・・
和泉しか居ないんだ。
違う・・・
和泉しか要らないんだ。,10話です!!!
今回は遙の想いを書いたつもりです。
コメントのしにくい10話なんですが・・・;
ここから遙がまた元に戻っていくんですねーきっとw
では、11話もよろしくお願いします^^
,#0000A0,./bg_c.gif,220.51.148.83,0
2006年06月17日(土) 11時20分26秒,20060617112026,20060620112026,iQO9aKQJ3HUvQ,雫と葉っぱ,青夜,,,雨が止んだ
葉の上には雫がひとり
葉は何も言わず雫を乗せて揺れている
下では花たちが声をそろえて歌っている
―さぁ、降りていらっしゃい
―怖がらないで、大丈夫
雫は黙って葉に乗っている
葉もやっぱり黙っている
―何を躊躇しているの?
―早く顔を見せてごらん
葉は相変わらず無言
不意に風がやってきた
雫は花たちに支えられた
葉は一人ぼっちで佇んでいる
虹が雫の旅立ちをそっと祝っていた
ある雨上がりのことだった
,連載が行き詰っているんで息抜きに書きました…
ずいぶん前に書いたんです。
では〜,#005100,./bg_b.gif,59.140.62.153,0
2006年06月17日(土) 00時52分47秒,20060617005247,20060620005247,ip.b47gwr0hs.,デザイアと呼ばれた男 VOL 20,D・二プル,,, 5
鬼頭が店にやってきてから明らかにマユミの雰囲気が変わった。
俺が話しかければそれには答えたが、常に上の空といった感じだった。
マユミは必要最低限以外の言葉を話さず、黙々と仕事に打ち込み、時間を費やしている感じだった。
鬼頭が去った後、マユミは決してその話題に触れようとしなかったが、常に頭の中で過去の忌まわしい記憶がリピートしているようだった。
それはそうだ。
自分の恋人を殺し、自分を犯した者たちが目の前に現れたのだ。
俺は國無から話を聞いて、過去に何があったのか知っている。
しかし、マユミは俺がそれを知っているとは思っていないだろう。
俺は二人の間にあるその溝を歯がゆく思った。
心の底では今すぐマユミを抱きしめ、心の痛みを少しでも和らげてやりたかった。
しかし、それはできない。
それが今ある現実の世界だった。
夜になり、マユミは俺より一時間早く上がった。
帰り際までマユミは作り笑いをつくろっていたが、心はどんよりと沈んだままだった。
マユミの心の痛みが俺にも伝わってきた。
マユミに惚れている俺はすっかり同情し、マユミの決意を秘めた気持ちの変化にまつたく気づいていなかった。
「ワールド」からの帰り道、俺が自転車で家に向かって走っていると、國無から電話が掛かってきた。
俺は自転車を停め、携帯を取った。
「凛、今どこだ」
「今、家に向かってるところだけど……」
「すぐに帰って来い。緊急事態だ。今お前の家の前にいる」
そう言って國無は一歩的に電話を切った。
仕方なく俺は自転車にまたがり、大急ぎで家に帰った。
家の前に着くと、國無が車を停めて待っていた。
今日は黒のハイエースに乗っていた。
俺が運転席が側の窓際に自転車を付けると、國無が窓を開けて言った。
「早く乗れ。マユミが危ない」
「!!!」
俺は自転車を自転車置き場に停め、ハイエースに乗り込んだ。
國無はすぐに車を出した。
気がつくと俺の足元に小さなトランクが置いてあった。
「早く用意しろ。デザイア≠ノなるんだ」
國無は前を見つめたまま言った。
トランクの中にはデザイア≠ノなる為の一連の変装グッズと武器が詰め込まれていた。
「なあ、緊急事態ってどういうことだよ」
俺は着替えながら國無に問い詰めた。
「昼間『ワールド』に『ニガー』連中がきただろ?その中にオールバックの大男がいただろ。あいつは鬼頭といって『ニガー』の頭で、過去にマユミの恋人を殺し、マユミ自信を犯した張本人だ」
「何だって……」
「鬼頭との再会でマユミの中で眠っていた復讐心に火が点いた。マユミは今日中に何らかの行動をしようとしている。その証拠にマユミは今、長期延滞者のリストを持って単車で『ニガー』の連中の後を付けている」
「何をする気なんだ?」
「恐らく、目的は二つある。一つは鬼頭に復讐すること。だが、具体的に何をしようとしてるのかまでは分からない。それともう一つはデザイア≠ノ会うことだ」
「……俺に?」
「お前じゃないデザイア≠ノだ。マユミはお前の正体気づいてないだろ」
「同じことだろ。デザイア≠ヘ俺じゃないか」
「恐らくマユミはデザイア≠ノ自分の胸のうちを聞いてもらいたいと思っているはずだ。今、自分の気持ちを受け止めてくれるのはデザイア≠セけだと思っているからな。今日、『ニガー』の連中が持ってきたチラシを見て決意したんだろう」
「何であんたそんなことまで知ってるんだ?」
「そんなことはどうでもいい。へたをすればマユミは鬼頭に殺されるぞ。あいつは人を殺すことなど何とも思っていないからな。恐らくまたレイプしてから殺すだろうな。あいつは今お前のことでイラついているからな」
「俺のことってどういう意味だよ?」
「お前がこの前犯した小林和美は鬼頭の女だ。鬼頭はその犯人を捜している。そして、それが『ニガー』を的にかけているデザイア≠フ犯行であることもうすうす感づいている。普段鬼頭は長期延滞者への取立てを全て部下に任せている。鬼頭が現場に出る時は何か特別な理由がある時だけだからな」
「……俺があいつの女を犯したって?あんたいつから知ってた?まさか、その為に『ワールド』の会員の中から女を選ばせていたのか」
「いいかよく聞け。逆にこれはチャンスでもある。ここでうまく立ち回ればシナリオ通りにマユミをお前の女にすることができるかもしれないぞ」
「何がシナリオ通りだ。あんた人の気持ちを何だと思ってるんだ。好き勝手弄びやがって」
「……おい、忘れたのか?安久津の死を。お前の暴走のおかげでだいぶ計画が遅れているんだ。それにもし、今の段階でマユミを失ったらお前は明日から生きていけるのか?さっきも言ったがこれはチャンスでもある。目的の為には手段を選ぶな。小さなことは切り捨てろ。言っておくが鬼頭は今までの雑魚とはわけが違うぞ。今のお前じゃ正面から挑めば返り討ちにあってすぐにあの世行きだ。そうならない為にも俺の言うことを聞け」
「……わかった」
俺は國無の言葉に飲み込まれ反論することが出来なかった。
俺はニット帽とサングラスを着用し、全身黒の衣装に身を包み、口の中でボイスチェンジャードロップを転がしていた。
トランクの中のスタンガンや催眠スプレーを手に取り、これから起こる殺し合いのビジョンを頭の中で想像する。
いつか國無が言っていた。
「実戦に勝るトレーニングは常に身の危険を想像し、瞬時に体が動くようにイメージしておくことだ。」
俺は狭い車内の中でそれを繰り返していた。
「鬼頭に今までのような単純な攻撃や騙し討ちは通用しないぞ。本来ならまだぶつかるのは早い段階だが、そうも言ってられないしな。今日は新兵器を用意した。後部座席にもう一つトランクがあるだろ。それを開けてみろ」
國無に言われたとおり俺は後部座席からトランクを持ち上げ中を開いた。
「……これは?」
「気をつけろ。そっと扱えよ」
俺は初めて見るそれに目を奪われていた。
「いいか、時間が無いから簡単に説明するぞ。今から……」
「……」
國無は前々から決めていたようにぺらぺらと今から行う無謀な作戦を俺に説明した。
國無の無茶な話は今に始まったことではなかったが、それでも國無の口から出た言葉はそれこそ映画のワンシーンのような話だった。
「……おい、聴いてるのか?お前の働き次第で結果が変わってくるんだぞ。マユミが欲しくないのか?しっかりしろ」
「……ああ、わかってる」
俺は必死に國無が言った言葉を頭の中でイメージし、これから確実に起こるであろう非現実的な場面に自分がついていけるように努力していた。
そんな中、國無が車を停めた。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
日常はゆっくりと動いている。その日常の中で人の心は激しく揺れ動いている。
感情が人を突き動かす。強い意志が人生を決める。
欲望を心に秘めたデザイアたちの戦いが始まる。
次回、激闘必死!
乞うご期待!
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年06月16日(金) 17時26分45秒,20060616172645,20060619172645,ig0h2hs1g56Bo,夢が映した現実 一話,梨音,,,
彼の笑顔も 私には向けられない
話しかける事だって出来ない
だって、彼は彼女が好きだから
「遅刻〜!!」
そう叫びながら、マンションの階段を下りる。
「何でこんな時に〜!?」
そう。遅刻したのはあの夢のせい。
「來華さん。おはようございます。」
何時もの通学路に辿り着くと、同じ制服を着た生徒達で溢れている。
さっき声をかけたのは、クラスメートの一人だ。
「芽衣。おはよう。」
息を切らせながら、その少女に挨拶を返す。
すると、その少女はにこりと笑って、
「珍しいですね。來華さんが遅刻なんて・・・。」
芽衣はいきなり核心を衝く。狙っているわけではなく、天然なだけだが、それをどうこうする気力も私にはない。
「寝坊でね。ってか、お嬢様のあんたが歩きなんて珍しいんじゃない?何時もは車なのに。」
隣にいる芽衣は微笑んで答えた。
「幼馴染が入って来るんです。だから楽しみで・・・。」
本当に嬉しそうに彼女は言う。それほど楽しみという事だろう。だけど、その笑顔を見て私は不安になった。
「芽衣も、彼氏が出来たら私から離れるのかな?」
ぽつりと呟いた言葉に気付かなかったらしい芽衣は、「何か言いました?」と聞き返してくる。
「何も。」
悲しみをまぎらわすように、桜が咲いている。
この時は気付かなかった。
この時に、運命は動き出してたって事に・・・・。
続く
,初めまして。梨音と申します。
まず、こんな駄文を読んで下さった方、有難うございます。
これから頑張るので、感想下さったら嬉しいです。,#0000A0,./bg_e.gif,211.122.61.175,0
2006年06月18日(日) 19時40分07秒,20060616000254,20060621194007,ihvHmInwbOW9c,呑込まれる時,羽香(わか),mai_waka@hotmail.com,,自分が感受性が高いかどうかは知らないが
ある世界に飲み込まれてしばらく余韻が残ることがある
別にそれは特別なことではなく
素晴らしい芸術に生で触れたときなど
誰もが一度は味わったことがあるような感覚
純文学に触れるときには自分の評価基準にもなっている
ただ、稀に自ら望んでその感覚に浸るときもある
大概自分の精神状態の良くないときだが
飲み込まれるにはきっかけが必要だ
書きものをする場合もないわけでなはいが
創造行為に酔えるほどの才能は持ち合わせていない
大抵導入は音楽
POPにせよclassicにせよ暗い曲が効果的
自分の波長にあわせて選んでいるのか
ぼうっとしながらその世界に足を踏み入れる
精神が暗い世界の底辺にありそうな水面に吸い込まれれば成功
あとは浸りたいだけ浸って水面に波ひとつ立たなくなり、
しばらく経ってから現実の世界に、戻る
戻った後は多少の虚脱感
そのまま寝ることもあれば
そのまま考え事に突入することも
最近ここまですることは少なくなった
前よりも抽象的な文章を書くことが増えたからか
こんなことをしなくても切り替えができるようになったのか
ここまで書いて、最近1人の時間が増えたことに気づく
確かに、最近必要なくなったわけだ
,ここの所立て続け投稿ですみません。
今回はめずらしく新作です。
こういう感覚いつかどこかで書きたかったので。
意味不明ですみません。
表現力アップしたら(するのか?)違う形で再投稿したいテーマですね。
題名の漢字変えました。
天光様のアドバイスを受けて、さらに題名のひらがな率を下げたかったのと短くしたかったので「飲み込まれる時」→「呑込まれる時」になりました。
,#4F4F4F,,218.137.228.190,1
2006年06月15日(木) 15時37分50秒,20060615153750,20060618153750,i/jA.piT.21fk,迷路,羽香(わか),mai_waka@hotmail.com,,人生を迷路に例えたとする。
人によって進み方は様々。
ゴールも様々。
人が特に悩むのは進み方ではないだろうかと思う。
私はどうも、先が行き止まりかもしれないとわかっていつつも、
そこが行き止まりであることを確認してからでないと、
次のルートに行くことが出来ないタイプのようだ。
以前は進み方を変えようと必死だった。
どうやったら効率よく進むことが出来るのかと悩んだ。
今はこのままでもいいような気がする。
遠回りでも、自分の進み方を自分で分かっていることが大切なのではないかと。
,前作「信号機」に比べると、個人的にはいまいちですが、前作よりは分かりやすいと思います。前作と言ってもどちらも昔書いたものですが(苦笑),#4F4F4F,./bg_h.gif,218.137.228.190,0
2006年06月13日(火) 20時18分24秒,20060613201824,20060616201824,haNJ1lxmwZQqY,血塗られた少女 09.,朱鷺,iruka_609@hotmail.com,,「ったくよー・・・遙学校も来ねぇで何してんだ・・・?」
あれから遙とは連絡が一切取れない状況だった。
―というか、繋がらない。
「和泉ぃー♪なんで最近遊んでくれないのさぁー!」
同じクラスの女子が数名、こっちに歩いてくる。
どいつもこいつも化粧が濃くて、素顔はどうなんだか・・・。
「んーごめんな。最近なんだか気が乗らなくてーじゃね!」
そう言い放って足早に去っていく。
「えーもう行っちゃうのぉ!?また絶対遊んでねー!」
と、後方から聞こえてくるが・・・無視。
そのときだった。
ピリリリリリ、ピリリリリリリリ
携帯が大きく振るえ、鳴り出した。
携帯の表面についている小さな窓を見る
゛蒼井 遙
遙っ!?
急いで切れないうちに携帯のボタンを押す。
「おいっ!?遙!なんだよ電話にも・・・!」
だか、俺の話は遮られた。
携帯の向こう側で遙ではない別の女の声がする。
「初めまして河合和泉さん・・・いえ、くんと言ったほうがいいかしら?」
不気味な笑い声とともに、喋る電話の向こう側。
「まあ、世間話なんていらないわよね。」
次々に喋りだす。
「遙さん、知ってるわよね?会いたくはない?」
・・・?
今確かに、遙と言った。
遙―か?
「・・・遙の何なんだよお前」
つい、声が暗くなる。
自分でも恐ろしいほどに・・・。
「あら、そんな怒らないでよ。そうね・・・これからの教育係。とでも言いましょうか?」
・・・教育係?ってーことは・・・新しい先生かなんかか?
でも・・・なんでそんな奴が遙を・・・
「話を戻しましょうか。遙さんに会いたい?」
・・・・。
少しの沈黙が流れる。
つか、考える意味ないだろ
「会いたいよ、決まってんじゃん。」
「そう。じゃあ今すぐ校門に来てくれる?」
はっ・・・校門?
窓に手をかける。
校門の前には黒塗りの車が止まっていた。
俺はとにかく・・・ただ、ただただ走りだした。
行き先は、もちろん―
「お前だな?遙の携帯で俺にかけた奴。」
黒塗りの車の中の助手席にのっている女に話かけた。
「そう。早く車に乗りなさい。」
そう言って女は後ろを指でさした。
・・・新手の誘拐とかじゃねーだろうな・・・?
乗るとすぐに車は走りだした。
本当に・・・遙に会えるのか?
遙に―。
「和泉。起きなさいよ」
視界がぼやける中見えるのはスーツの女。
・・・寝ちまったんだ。
車を降り、連れて行かれたのは寮のような施設。
そして・・・部屋の前。
「ここの中に遙さんがいるわ。」
そう言われ、ノブに手をかけたとき
「・・・冷静になってね。取り乱さないで。貴方が唯一遙さんを救えるんだから」
その言葉の意味はこの時、よくわからなかったが、
すぐにわかった。
部屋に入ると、部屋は薄暗くてよく見えないが
誰かがいることは確か。
―強烈な血のにおいが鼻をついたのも確か。
目が少しなれたころぼんやり見えた。
遙が―血の海の中で涙を流しているのが。,今回は和泉視点で書きました^^
遙はあんまり活躍なかったので・・・。
主人公なのにw
天光さんへ。
毎回適切なコメント・アドバイスをありがとうございます!!
できるだけアドバイスを参考にしているんですが直ってなくて申し訳ないです;,#0000A0,./bg_c.gif,220.51.148.83,0
2006年06月13日(火) 01時12分59秒,20060613011259,20060616011259,hlxXayGrlKKRo,デザイアと呼ばれた男 VOL 19,D・二プル,,, 4
朝、眠い目をこすりながら俺は「ワールド」に向かった。
正直、まだ昨日の酒が完全に抜けていない。
睡眠時間も二時間ぐらいしかとれていなかった。
それを無理やり熱いシャワーと濃いコーヒーで誤魔化して、俺は出勤時間の一時間前に「ワールド」に到着した。
扉の鍵を開け中に入ると、予想通りマユミはまだ寝ていた。
昨日俺がかけて帰ったダンボールをふっ飛ばし、大きく口を開いて寝息を立てながら、へそを丸出しにした状態で、大の字になって眠っていた。
俺はマユミをそのまま寝かしたまま休憩室の垂れ幕を落とし、外から見えないようにした。
エプロンを着け、レジの電源を入れ、レジ金のチェックを始めた。
開店準備を整えた俺はCDプレイヤーの電源を入れ、音量を下げてからラブサイケデリコの「ラストスマイル」を掛けた。
どこか悲しげなメロディーを聴きながら俺は昨日のマユミとの会話を思い出していた。
マユミはデザイア≠ノ惹かれている。
デザイア≠フ正体は俺だが、マユミは俺のことを男と意識していない。
俺の中で妙な空しさが広がりすごくやりきれなくなった。
その時、奥で物音がして、マユミが休憩室からよろよろと顔を出した。
「……おはよー」
「おはようございます」
マユミはまだ寝ぼけている。
酒も抜けきれていないようだった。
「……五味君昨日はごめんね。あたし途中から全然記憶なくて、ここまで連れてきてくれたんでしょ。ごめんね。あたしから誘ったのに迷惑かけました」
「いや、そんな全然いいですよ。俺の方こそ昨日は楽しかったです」
「……五味君っていい人だね」
そう言ってマユミは奥のトイレに入って行った。
マユミが言ったいい人≠ニいう言葉が俺の胸に突き刺さった。
男にとって好きな女からいい人≠ニ言われるのは最悪のことだった。
それは自分が男として見られていないということの象徴のようなものだった。
胸の奥から熱いものが込み上げてくるようだった。
俺は居ても経ってもいられなくなり、立ち上がった。
休憩室を通り抜け、トイレのドアをノックした。
「安久津さん、俺ちょっとコンビに行ってきます。何かいりますか?」
中から返事はなかった。
俺はもう一度ノックして叫んだが、やはりマユミは返事をしなかった。
ゆっくりと扉を引いてみると鍵は掛かっていなかった。
中を覗いてみるとマユミはショーツを下げ、便器に腰をかけたまま眠っていた。
初めて見たマユミの色白の形のいい尻が俺の心を癒してくれた。
俺は静かに扉を閉め、休憩室から出ると、入り口に鍵を掛け、階段を下りていった。
俺は「ワールド」の下にあるコンビニでコーヒーとパンを買いすぐに戻った。
鍵を開けて中に入るとカウンターの中でエプロンを着けたマユミが朦朧と立っていた。
「安久津さん、大丈夫ですか?」
「……うん、五味君どこ行ってたの?」
「下のコンビニでコーヒー買ってきました」
俺はマユミにコーヒーのペットボトルを手渡した。
「わぁー、ありがと」
マユミは目をきらきらさせて、コーヒーをがぶがぶと音をたてて喉へ流し込んだ。
「はぁー、生き返った。よし!そろそろオープンだね。店開けよっか」
「はい」
俺は店を開け、音楽をユウセンに切り替えた。
幸いオープンしてすぐは2,3人の客しかこなかった。
俺とマユミは特別仕事をするわけでもなく、カウンターの中で朦朧と立ちながら、世間話をしていた。
「五味君、朝、『ラストスマイル』かけてくれたじゃん。あれよかった。すごくいい目覚めだった」
「俺もあの曲好きなんですよ」
「あの曲ね、私にとっても思い出の曲なんだ。死んだ元彼が好きだったの。あいつよくこの曲聴いてたな」
「……」
マユミは俺に話しながら元彼のことを思い出しているようだった。
俺は再び寂しさを感じた。
マユミの中で死んだ彼氏はまだ生き続けている。
現実の世界ではデザイア≠ノ魅せられている。
マユミの中で俺の存在はただのバイトの仲間というだけのちっぽけな存在に思えてしかたなかった。
その時、店内に三人の黒服を着た男達が入ってきた。
男達を見たマユミの表情が明らかに変わった。
男達は間違いなく「ニガー」の連中だった。
「いらっしゃいませ」
マユミが明らかにトゲのある声で言った。
「店長はいるか?」
「今日はまだ出社していませんが……」
俺はマユミと「ニガー」の連中のやりとりを黙って横で見ていた。
連中の顔には見覚えがあったが、俺は知らん顔をしてとぼけていた。
「これを店長に渡しておけ」
そう言って「ニガー」の男はカウンターに一枚のチラシのようなものを叩きつけた。
マユミはチラシに目を奪われている。
俺も横目でチラシを見た。
そこにはニット帽にサングラス姿のデザイア≠フ似顔絵が書かれていた。
「これは?」
「いいから店長に渡せばいいんだ」
「ニガー」の一人がそう言った時、後ろから黒いスーツ姿のサングラスを掛けたオールバックの大男が現れた。
大男の出現に男達は驚き、一礼した。
この大男が「ニガー」の頭 鬼頭だった。
「よう、久しぶりだな。元気か?」
鬼頭はマユミに言った。
「……まあね」
「そう怖い顔で睨むなよ。俺たちはこの男を捜してるだけだ。俺達の行き先に現れるということはここの情報が漏れてる可能性もあるからな」
「誰なの?」
「噂ぐらいは聞いてんだろ。俺たちの邪魔をして長期延滞者を逃がしてるデザイア≠チてクソヤローだ。何か分かったら教えてくれよ」
そう言って鬼頭は俺に視線を向けた。
「兄ちゃん、新入りかい?」
「……はい」
「そうか、こいつは男勝りだが、中身は女だ。しっかり守ってやりな」
「……」
「じゃあ、邪魔したな」
そういい残して鬼頭は去って行った。
「ニガー」の連中も鬼頭の後ろから金魚の糞のようについて出て行った。
マユミはまだデザイア≠フチラシを見つめていた。
これが俺と鬼頭のファーストコンタクトだった。
俺たちが再び対峙する時、殺し合いの火蓋が切って落とされるのだった。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
好きな人から異性と見られない悲しさ。好きな人が違う相手に好意をよせているをの知る切なさ。
そんな気持ちを感じたことはあるだろうか?
悲しみは時に人を狂わせたり、無気力にさせたりする。その代わり悲しみは強さも与えてくれる。
そのギリギリのボーダーラインを生きるアウトローたち。
凛一郎を始め、マユミ、鬼頭、國無由自それからまだ見ぬキャラクターたちの悲しみの黙示録をとくとご覧下さい。
この後さらに過激さをまして行く「デザイアと呼ばれた男」にご期待下さい。
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年06月12日(月) 23時06分30秒,20060612230630,20060615230630,hMaiwB0g30AEY,信号機,羽香(わか),mai_waka@hotmail.com,,感応式信号。
自分しかその信号を使う人は居なくて
しかも自分は原付だったりして
そんな時に感応式信号で大きな通の流れを止めるのが申し訳なく思う時がある
でもその信号を使わなければ私は家に帰れないわけで
こういったことは人間関係にもいえるのかな、と
他人に迷惑を掛けるのがわかっていても
動かなくてはならない時が、ある
迷惑を掛けたくないからといって
動かないわけにはいかないわけであって
そうやって生きていくのが人間であって
無論自分が進むのを誰かによって止められることもあるだろう
そうやって止めたり止められたり
それが人の世で生きることなのかな、と
思ってみたりした ,こういう文章の投稿が有りなのかが気になりますが、感想いただければ幸いです。,#4F4F4F,,218.137.228.190,0
2006年06月11日(日) 05時52分34秒,20060611055051,20060614055234,hsFrA0cm1Tl/w,THE SPRING TIME OF LIFE Vol.1,湯瀬 大志,,,
1
ウチの学校には、咲くのが遅い桜の木がある。咲かない桜ってのは、聞いたことがあるような気がするんだけど。
かなり昔から卒業の記念に桜を植えてきたみたいで、正門から東門まで、ずーっと桜が三十本くらい植えてある。春は花で、夏は葉っぱでいっぱいになって、グラウンドが外から見えなくなるくらい、らしい。
咲くのが遅い桜は東門から七本目にあって、いつ植えたのかはわかんない、らしい。
その木で首を吊って死んだ人がいて、その呪いでそうなっちゃった、らしい。
「あー、おい、一年!外周してこい!学校の周り三周!」
しゃべってばっかりで練習を始める気配が全然ない三年の大垣部長が、思い出したように指示を出して、またおしゃべりに戻った。
「お前ら返事せぇや!!」
クラブに入って三日。先パイたちのコトを見てて、一番ぼくらに厳しそうな、吉井先輩が怒鳴った。
「・・・はい。」
迷ってるようなみんなバラバラの返事。ぼくもちょっと遅れて返事をした。
「ちゃんと言えって言うるんじゃ!!殴るど!」
吉井先輩が怒鳴った。
「はい!!」
「せーの」とか、みんな合わせる合図もなかったのに、今度は声がそろった。
一年のみんなは東門に向かいながら、仲のいい子どうしでかたまり始めた。
ぼくはなんだか置いていかれてるカンジ。ここには知ってる人は一人しかいない。新しい友だちとさっきからしゃべり続けている、ケンちゃんだ。
小学校は同じだったけど、そんなに仲がよかったわけじゃない。「知ってる」と「友だち」の中間くらいの仲だった。
中学校に入って、クラスの中で知ってたのはケンちゃんしかいなかった。ケンちゃんもぼくしか知ってる人はいなかったんだと思う。だからぼくらは急に仲よくなった。授業の移動とか、休憩中に話したり、とか・・・。
それで、このあいだ、クラブ見学に一緒に行こうってケンちゃんに誘われた。ぼくは全然クラブのことは考えてなかったけど、ケンちゃんは、野球部は練習がキツい、サッカー部は先パイが怖そう、バスケ部は顧問が厳しい、卓球部はちょっとダサい・・・、みたいな情報をどこかから仕入れていて、そのときもうすでに、バレー部って決めてたみたいだった。
ケンちゃんと一緒なら、ってカンジでバレー部に入部した。バレー部に入ったワケを聞かれたら、あんまり答えたくないけど、「ケンちゃんが選んだから。」しか答えられない。
そんなんだからいけなかったんだ。
バレー部に入部してから三日、仮入部も併せたら一週間くらいで、ケンちゃんは新しい友だちを作った。そして、いっつもその友だちと一緒にいて、まるでぼくのことは忘れたみたいだった。
ぼくは・・・、全然友だちを作れていない。友だちを作るのはキライな方じゃないけど、もう周りはグループができてて、入りにくくなっていた。
「走るのヤじゃね・・・。」
ものすごく自然にぼくはケンちゃんに話しかけた。
「・・・なんよ!じゃけぇ、おれ・・・。」
ぼくの演技は完璧だった。でも、ケンちゃんはこっちを見ようともせず、友だちと東門に歩いていった。最近はずっとこんな感じ。ぼくの声はいつも春の空に消えていた。
みんなは走ってる間も仲いい人同士で集まってて、またぼくはひとりだった。それでも、なんとかケンちゃんに話しかけれないかな、とタイミングを探してたけど、ケンちゃん以外はほとんど話したこともないような人ばっかりだから、ムリだった。
傾いた太陽が少し眩しい。そんな風にちょっとだけケンちゃんから気をそらしたら、もう差が開いていた。ケンちゃんは足が速い。ケンちゃんより二十センチ以上も背の低いぼくが、どんなにがんばっても差は埋まらなかった。
ケンちゃんが西門を過ぎた頃、ぼくはケンちゃんに話しかけることも、もう一度ケンちゃんと仲よくなることも諦めていた。
でも、ケンちゃんを諦めるのは簡単だけど、かといって、他にだれか友だちを作れる自信もなかった。もう他のグループも出来てるんだし。
どんどんみんなに抜かされていく。いろんなイミで。って言うよりも、ぼくは最初から抜かされる側じゃなかったんだ、きっと。スタートダッシュで出遅れて、最初からビリだったんだ。
ぼくの後ろにはだれもいない。なんか走るのがイヤになってきた。走っても追いつけないし、走るのやめてもだれかに抜かれたりはしない。何も変わらないんだ。
桜が見えてきた。少し散ってきたかな・・・、葉桜になりかけてるのもある。
「来ぉぉぉぉぉい!」
練習のキツい野球部の低い声が響き渡る。桜の向こうのその声はなんだかぼくとは別の世界に感じた。
少しずつ野球部の声が遠くなっていくと、だんだん近づいてくる。そこだけ冬みたい。まわりが騒いでいるのに、ひとりだけ静か。まだ芽が膨らんでもない、桜の木。
まだ花が咲いていない桜は、なんだか他のよりもかなり小さくて、弱そうだった。となりの木はハダカの桜を迷惑がって隠そうとしてるみたいに、枝をいっぱいいっぱいまで伸ばしてる。
それを見てるとなんだか悲しくなった。でも、なかなか目の奥から離れなかった。
まだ、諦めちゃいけない。桜をみてそうも思った。なんでかはわかんないけど。
とにかく、チャンスはまだある。
でも、今日の体育館でもケンちゃんと話せなかった。て言うか、体育館に戻ってからは1年はだれも話していない。先輩が怒るから。自分たちはずーっとしゃべってるクセに。
まだ、話しかけるチャンスはある、ハズ。
クラブが終わってから話しかけよう、って思ってたら、着替えてる間にケンちゃんはいなくなっていた。
まだ・・・、ある・・・ハズ。今日はもうナイけど。
,初めて小説を書きました!!中学のときからいつか書くだけでも書いてみたいと思ってたストーリーです・・・。・・・なんか会話の部分がほとんどなくて・・・ちょっと後悔・・・。いきなり長編はムリがあったかも・・・。でも、よろしくお願いします!!
,#E10000,./bg_b.gif,210.235.40.54,1
2006年06月10日(土) 21時02分57秒,20060610210257,20060613210257,hXPYQYm9cSIqk,Going My Way A,青夜,,,放課後、七海は家に帰ってから公園に行った。
なぜか公園に行きたい気分だった。
「やだぁ!みっちゃんのばかぁ!ももかのスコップとらないでぇ!」
「じゃあももかちゃんはみっちゃんのバケツ返してぇ」
小さい子のケンカを見ていると、だんだん微笑ましい気分になってくる。
「…七海ちゃん?」
「え?」
なんだか懐かしい声が聞こえた。
声が聞こえた方を見てみると、あまり見たことのない少女が立っていた。
「…七海ちゃん、ですよね?私、リナです」
「…リナ?って…松尾リナ?」
「うん…!」
「七海だよ!わぁ、幼稚園ぶり!」
その少女は幼稚園のときに仲のよかった少女だった。
変わっていない七海と比べて、とっても可愛くなってしまったようだ。
「…変わったね、リナ」
「そうかな?七海の方が変わったんじゃない?」
「変わって…ないよ。リナは、やっぱ可愛くなったなぁ…」
リナは微笑して七海の髪をさわった。
「染めた、でしょ」
「…うん。でも化粧はしてない。リナは化粧してるね」
「うん」
七海はリナの目元を見て言った。
目元が微妙にくっきりしている。
突然、リナはニンマリ笑って七海を見た。
「え…なに?気持ち悪い…」
「彼氏、できた」
「…本当?!」
リナが言うには、七海と同じ中学校らしい。
七海が知っているかはわからないが、一応その人は七海を知っているらしい。
今度プリクラをくれる、と言ったので、七海は楽しみになった。
その後二人は街まで出かけてショッピングを楽しんだ。
メルアドや電話番号も交換した。
「あ〜、よく遊んだ!!」
「本当にね〜…ずっと遊んでいたいなぁ…そうだ、今度泊まろう!!」
「今日、泊まる?」
冗談で言った筈の言葉が、本気にとられてしまったらしい。
リナの家においで、とリナは可愛く言う。
泊まりたいのは山々だが、明日は集団で遊ぶ約束があるのだ。
「明日友達と遊ぶんだ」
残念そうに答えると、リナは興味ありげに、誰と?と聞いてきた。
「え…男子四人と女子はあたしだけ」
「ふぅん…ねぇ、リナも行っていいかな?」
「うん…たぶん大丈夫だけど…」
そうして、集団とリナは知り合うことになった。
七海は、リナと裕也が仲良くすることに不安を感じながら、明日を待つのだった。
,今回は「幼稚園時代の友達と再会を果たしました。さて、どうなる?」みたいな感じです。
今後の七海の心の変化に注目!…となる予定ですので(汗,#B500B5,./bg_f.gif,59.140.62.153,0
2006年06月09日(金) 23時10分39秒,20060609231039,20060612231039,hGS7EselPwgX2,オモチャ箱をひっくり返す,鈴村智一郎,,, 僕と五つ年下の妹は、ある日エスカレーターの上で眼を覚ました。この機械状の階段の上で、何故僕ら兄妹が眼を覚ましたのかはわからない。僕と妹は、暗く狭い塔の内部と思しきエスカレーター状の螺旋階段の上で、瞼を開けたのである。僕と妹が困惑しながら佇んでいるこの階梯の一つ一つには、明滅してはいるがネオン付きの手摺が設置されていた。ネオンは上方を眺めても下方を俯瞰しても皆一様に淡い白色を放っている。いつか、妹がバベルの塔の話を僕の口から耳にしながら、一番頂上には何があるの?と絵本を閉じた僕に質問したことがあったが、僕は今、もしも同じ質問を彼女にされると、いかなる返答を用意するだろうか。僕と妹は、どこかの果てしなく高い塔の内部に存在しているのである。そして、この塔の内部は機械状階段がとぐろを巻いたように構造化されていて、ひたすらゆっくりと自動的に上へ向かっているのであった。無論、僕は今ここが塔の内部といったが、それが誤謬である可能性も高いことを自覚する。もしかすると超巨大なデパートの中で任意に選び出した被験者を使って新型エスカレーターのデモンストレーションをしているのかもしれなかったし、現実感の濃厚な、珍しい悪夢であるかもしれなかった。どちらにせよ、昨夜はいつも通りそれぞれの部屋で眠っていた僕らが、翌朝(これも日光の投射されぬここでは曖昧な表現に違いはないが)に眼を覚ますと、エスカレーターの階段の上で横になっていたのである。妹は明らかに不安な表情を顔中に滲ませながら、僕の傍に近寄って、こういった。
――お兄ちゃん、なんで私たち、こんな場所にいるの?
それは妥当な訴えであったが、僕も同様にここへ僕らを運んだ人間たちに対して(僕はその時、家から僕と妹を拉致した武装グループを想定していたのだ)叫びたいことでもあった。妹の格好は寝巻きであったが、奇妙なことに彼女は背に小さな鞄を背負っていた。それは熊の縫い包みの喉元が開いて、中にそれほど多くではないが、小物を入れることのできる安物の玩具じみたリュックである。彼女がこれを就寝前に背負いながら枕に頭を乗せたことは考えにくかった。何者かが僕の妹に、それをある必要性から、背負わせたとしか考えられなかったのである。
――なあ未来、そのリュックはお前のか?
僕がそう質問すると、彼女はハッと息を呑んで、今まさに己が背に何か見知らぬ物体を背負っているという悪寒を全身に走らせた。妹はゆっくりとそれを脱ぎ捨てると、沈黙したまま足元に落ちた熊の縫い包み(紐の部分がちょうど熊の背に隠れて、それは縫い包みに見えた)をしげしげと見つめた。
――知らないよ、こんなの。私のじゃないよ。
彼女は悪夢をみた後の倦怠感を顕わにして、そう小さい声で囁いた。脱力してただ虚ろに永遠と連なる階段の群れを見下ろしている妹の傍らで、僕は注意深くそのリュックを拾い上げた。中に何かが入っている可能性がある、或いは、仮に空でも、今後何か重要な道具をここに入れる必要性があるだろう。僕はそう思って、商品戸棚に陳列されていたばかりであろう、埃一つ付着していない繊維質を持つ熊のリュックを両手で顔に近づけた。中を覗き込んだ僕は、そこでこの怪物的なエスカレーター・マシンから脱出する方法が明記された紙片を発見するには至らなかった。というのも、中身は空で、文字通りの新品(値札が糸をつけたまま入っていた)であったのだから。念のため、僕は鞄を壊さぬ程度に、紐の付け根や底の皮革部や、熊のプラスティック製の眼球、内部の繊維と外部の繊維の間にある柔かい綿などに手を伸ばして、何か機械仕掛けの物品が仕組まれていないか、手触りや揺らした時の違和感を入念に調べてみた。しかし、この縫い包みタイプの鞄は、あくまでマスコット風の熊を模したオモチャのランドセルに過ぎなかったのである。
――これ、新品みたいだが、何も中に入ってないな。お前のじゃないとすれば、一体誰が背負わせたんだろう。
僕は自問自答するようにそう妹の方へ顔を向けながらも、あくまで目線はあっけらかんとしたミッキー・マウス似の円らな瞳に注いでいた。妹は僕より階段を一つだけ下りた地点で座り込んですっかり拗ねてしまっている。その姿はあの絵本を読んであげた夜の数時間前に、部屋に小さい蛾が二匹も入ったといって子供らしい大泣きをしていた妹の後姿に近い。僕は彼女を励ますために、そして何より自分自身の知覚が薄気味悪い夢幻に犯されるのを防ぐために、半ば無意識裡に彼女の右肩に手を乗せていた。
――大丈夫さ。お兄ちゃんが何とかする。いつもそうしてきたろう?こんなバベルの塔の欠陥品、すぐに出られるさ。
僕は確かにそういった。しかし、語尾に向かうにつれ、著しく僕の声色は擦れ、弱まらざるを得なかった。それは彼女が一握りの砂を両手で掬うようにしながら、掌の半球の内で蠢かせていたものを眼にしてしまったことに来歴していた。彼女が抱いているのは二匹の翅を失った蛾の成虫であった。僕は鳥の声を立てて恐怖に顔を引き攣らせることをしない妹の、厳粛な面持ちで二匹の黒褐色の昆虫を抱擁する様を、その指と指の戯れに半ば気だるい嘔気を催しつつ近寄った。蛾は頭部から濃厚な、植物的な緑黄色に耀く体液を滴らせながら、数本不足した肢を使ってしきりに互いの頭部を引っ掻く運動を続けている。それは蛾同士の真剣な共喰いにも近い壮絶な格闘を僕に思わせ、眼を釘付けにし続けた。やがて僕は確かに二匹の蠢き続ける瀕死の昆虫から、彼ラがその所有者かもしれない声を幻聴とは自覚しながらも耳にし始めたことを契機に、一気に妹の両掌を振り払った。
――やめるんだ。もう直に死ぬさ。
僕がそう小鳥の叫びのように口を開くと、彼女は茫然と意識を遊離させながらも、数秒後には悔い改めた盗人のように重々しくも神聖な顔色を浮かべて、僕の胸に擦り寄った。彼女の手から離れた四段後方の階梯で、なおまだ何事もなかったかのように肢を使った殴り合い、蹴り合いを続けている彼ラは逞しい。それは死に物狂いでこのゆっくりと自動上昇するエスカレーター・マシンの遅々とした機械運動と、歪なほど深いシンメトリーを成すほどに逞しく素早過ぎるマングースのような死闘ぶりである。妹の掌には零れた涙のように美しくさえあるソノモノどもの体液が、我々ハ確カニ貴様ノ実ノ妹ノ皮膚ヲ穢シタノダとでも主張せんばかりに、艶かしくも朝露のように手首に熱く熱く流れ滴る。僕は奇妙にも聖母マリア的な微笑を浮かべてさえいる妹の、日常とは圧倒的に異なる表現不能な空気、すなわち違和感を密かに懼れた。妹の肩まで伸びた起床直後のくしゃくしゃに乱れてもいる髪に僕は性的な強い自信を与えられつつ、彼女を慰めるようにして僕自身のTシャツを雑巾代わりに体液を拭くのだった。しかし、彼女は僕が彼女の掌を拭いている中途にも、やはり手首から滴り落ちる二匹の蛾の体液が無性に気になるのか、生まれたばかりの赤児を温かく見守るような眼差しを向けるのである。およそ妹の表皮に付着した全てのソノモノどもの痕跡を拭い去った僕は、彼女から根茎のふやけた夏草の噎せ返るような臭気が漂っていることに、彼女自身が昨夜行った性的な行為そのものの強烈なインパクトを想像的に快復させた。
――お兄ちゃん、あのポスターなんだろ。
妹は突如、上方を見据えながら僕にそう極めて活溌な声色で口を開いた。彼女の細く白い指の先にあるもの、それは今まで暗澹たる鉄筋の壁に円形的に包囲されていた僕らに、ハンマーで知覚を打ち砕かれたような鮮烈な刺激を印象付けた。その白い紙、ときに明滅しつつも柔かいホワイトを主張して止まない等間隔に並列されたネオンに上向きで照らし出された、同じく白色の新鮮なポスター。それは僕と妹に新しい発見を与えるに相違ない、と僕は悦しがった。スロゥに上昇する階段を自身でも上ることによって、僕らはポスターの前方に立つに到る。ここでポスターに記載されたものをずっと眺め続けるには、数秒おきに階段を下降し続ける必要があることは今更いうまでもない。しかし、それは紳士服売り場のバーゲンセールを謳った宣伝用ポスターである、若しくはスパイラル・エレベーターの世界一の延長を競う大会のキャッチコピーである、ということでは毛頭なく、僕ら自身に直接的な絶望の深度を強めるために意図されたと信ずるべき類の注意書であった。以下に付記するのはこの注意書に記載されていた文書の全文である。
《©2005 Japan Elevator Association 社団法人日本エレベータ協会
エスカレータご利用の際に
安全に、そして快適にエスカレーターをご利用いただくために、皆様のご協力をお願いいたします。またお子様の無意識の行為が危険に結びつくこともありますので、お子様へのご指導も併せてお願いいたします。
○移動手すりに必ずおつかまりください。
ふとした拍子でバランスを崩したり、停電による急停止などで不意の反動を受けた場合でも、移動手すりにつかまっていればバランスを保つことができ、事故を未然に防ぐ確率も高まります。
○エスカレーターの利用中は禁煙です。
まわりの方への迷惑となるだけでなく、ステップの隙間からエスカレーターの内部へ落ちたタバコの火から引火する恐れもあります。エスカレーター利用中の喫煙はご遠慮ください。
○必ず黄色い線の内側にお立ちください。
ステップに黄色い線が塗ってあるところは、エスカレーターの機構上、他の構造物と複雑にかみ合う場所です。間違って靴や衣類の裾などが挟み込まれることがないように黄色の線の内側に立ってご利用ください。
■ 階段上の歩行について(右あけ、左あけ)■
○すり抜けは危険です。
すり抜けざまに他の利用者や荷物と接触して、思わぬ事故を引き起こすことがあります。
○歩いたり走ったりすると身体のバランスを崩します。
バランスを崩して転倒するなど、大きな事故を引き起こすことがあります。また他の利用者を巻き込む恐れもあります。
○ケガなどで、片方の移動手すりにしか、つかまることのできない方もいます。
たとえば左手を骨折していて、右手でしか手すりにつかまれない方がいらしたとします。その方はエスカレーターの右側にしか乗れませんが、右あけが慣習となっていたらとても不自由で危険です。
↓
歩行禁止の呼びかけが始まっています
慣例となっているエスカレーターの片側あけですが、危険や不便をともなう行為だということが、少しずつ浸透をしてきました。JR川崎駅前の地下街「アゼリア」や、名古屋市営地下鉄などでは、エスカレーターの歩行禁止の呼びかけを始めています。
■ お子様へもお聞かせください■
○正しい乗り方を守らないと、エスカレーターは危険です。
通常は安全で快適なエスカレーターですが、それはルールを守って利用している時のこと。運転方向と逆方向に歩くなど、ルールを守らないとケガをすることもあるとお子様にお話しください。
エスカレーターは遊具ではありません。手すりにまたがるなどして遊ぶことは絶対にやめてください。 エスカレーターに落とし物をしたら、自分では拾わないで係員を呼んでください。指を挟んでケガをすることがあります。
ステップと移動手すり以外は固定されています。固定されている場所へは絶対に寄りかからないでください。 顔や手を乗り出した利用は大変危険です。上昇時に天井に挟まれたり転落するなど、重大事故の原因ともなります。
傘の先などをステップのミゾに差し込まないでください。食い込んで抜けなくなる場合があります。 裸足では絶対に乗ってはいけません。クシ部などに挟まれて大ケガをすることがあります。
お子様の1人乗りは危険です。ちょっとしたことでバランスを崩し、大きな事故となることがありますので、必ず保護者が手をつないでお乗りください。
* 社団法人 日本エレベータ協会は、昇降機が担う社会的使命と責任を果すために設立された、わが国昇降機事業分野における唯一の業界団体です。》
僕はその微小な文字で手書きによって記された注意書を一読して、心臓が宙に浮かび上がったかのような眩暈を憶えざるを得なかった。そして、本来多くのデパートのエスカレーター付近で小さな看板に記載されているはずの「乗り口付近や降り口付近には、立ち止まらないでください」といった類の一文が欠落していることに怪しむべき着目点を見出した。僕と妹が上昇しているこの無限に続かんばかりのスパイラル・エスカレーターには果たして「乗り口」と「降り口」なるものが存在しているのであろうか。僕と妹は「中間点」に無造作に放り込まれたのではないか。仮に僕と妹が「乗り口」から緩慢な上昇を余儀なくされていたのだとすると、出口=入口を発見するのは容易い。しかし「中間点」から出発を始めることに何者かが奇妙な愉楽を見出していたのだとすれば、上と下どちらがより出口=入口に近いのか判断は不可能となる。引用元は社団法人日本エレベータ協会と冒頭で大きく掲げられているが、これが事実であるか確認する術を現在の僕らが持たぬ以上、過不足なく適切な注意書で満たされているか、自らの客観的判断の基準と照合して不審点を炙り出す他に手立てはないと思われる。そして僕は、「乗り口付近や降り口付近には、立ち止まらないでください」という決定的な一文が不足している気がしてならない。まるで僕らを拉致した者どもが、この永劫不変なる螺旋階段には出発点も到達点も存在しないということを暗に示すかの如く。だが、そんなことよりも、僕には圧迫され脅えながらも苦心の笑みを洩らすこの妹をこそ、逸早く光あるところへ連れ出さなければならないという血族的な連帯感に由来する保護者としての使命が浮上していた。底知れず漏斗状化した非現実的な建造物の不快に、そのぶよぶよと纏わり付く粘着質な不快に、僕はこの妹の手をしっかりと握って立ち向かい、上昇せよ、上昇せよ、重ねて上昇せよ、と内面的に萎縮した僕の鏡像を励ます。僕にとって妹の存在が僕を心理的に勇敢な者へ鼓舞するのと同じく、彼女自身の心理的な寄り掛かることを許す支柱こそ、きっとこの僕に違いないであろうから。
――ねえお兄ちゃん、いなくならないでね。わたし、自分が怖いの。だから、絶対に傍にいてね。お願いよ。
壁から引き剥がした注意書を筒状に丸めている僕に、妹は俯き加減にそうか細い悲痛な声で囁いた。僕は短く返事をして、筒を持たない方の手で彼女の右手を握ると、曲りくねった螺旋階段の上方に眼を移した。そして、次の瞬間に僕らの視界に広がった光景を眼にして、これまでイメェジとして補完していた塔としての構造が根底から覆されたことに僕は強靭な愕きを憶えた。それは水平部の出現であった。これまで螺旋状に回転しつつ緩やかに上昇していたエスカレーターが、突如この地点から直線的な、しかも段差のない水平部となって僕らの眼前に出現したのだった。それは端的に夜の空港の、パイプラインの内部にあるオートウォーク(動く歩道)を思わせた。遥か遠方まで果てしなく弱い白色のネオンが点々と連なっている光景には銀河ステーションの内部のような神秘的な威厳さえ感じられた。オートウォークとエスカレーターの構造的な同一性に基づく連結は、この建造物がピサの斜塔のように天高く伸びる線形型の形態をしていないことの証であるように僕には思われた。より大きな塔が二つ以上の小さな塔を内包し、それらは一本の直線=オートウォークによって繋がっているのかもしれなかった。無論、僕と妹が今いるこの建造物の外界に如何なる他の建造物も近接していないとしても、このオートウォークは別の建造物と連結した怖ろしく長い橋梁の機能を担っているのだろう。それも、非常な高度を持ったブリッジである。構造が螺旋状から直線へ変換されたことによって、僕らにも内部的な変化が生じたことを、僕は自覚する。僕は妹に、昨夜動物園で檻に近づき過ぎた不良少年がゴリラに殴り倒されて救急病院で二十三針縫ったというテレヴィ番組の話を、半ば解放された直後にも近い冗談交じりで話しもした。クリーニング屋でアルバイトをしていた彼女は、そこの天井に備え付けられているテレヴィで、僕が観た当のハプニング番組を眼にしていたことを微笑しながら語り、僕らは互いに奇妙にもこの閉鎖的な空間に順応しつつある暗く痛々しい感覚を浮上させたのであった。しかし、テレヴィ番組の話題が小休止ついた頃になって、妹は不意に僕の顔を真剣に見やり、僕の首を傾げさせたのである。彼女は今までずっと抑圧し、封印してきた過去の咎を悔い改め始めるかのような懺悔にも近い表情をただでさえ雪のように白い顔一面に広げながら、それでも果敢にこう切り出した。
――ごめんね、お兄ちゃん。わたし、お兄ちゃんに嘘ついてたの。わたしね、さっきのポスターのこと、お兄ちゃんに何も話さなかったけどね、本当は知ってるのよ。五日前の、数学の授業のとき、先生が突然へんなことを黒板に書き始めてね、それで、みんなに一枚ずつ白い紙を渡して、板書しておくようにっていったの。平常点に入れるからって、みんないうとおりにしたわ。その黒板の内容はね、お兄ちゃんがさっき読んだあの紙と同じものだったのよ。お兄ちゃん、わたしのいいたいこと、わかるよね?わたしが書いたものなのよ、今お兄ちゃんが握っている紙は。ごめんね、今までいい出せなくて、本当にごめんね。
僕は妹の弱々しくも、強い意志の込められたけして虚偽とは思えない告白を知って、むしろ失っていたパズルのピースが一つ見つかったような、合理的な発端の内情に接触して安心したのだった。彼女の話を再構成してみると、少なくとも五日前の時点で被験者となるべき集団は決定されていたのであり、特定の者を抽出してその肉親もろとも何らかの実験に巻き込ませることは予定されていたのである。妹がこのどこか安心感を与える水平部において真実を告げることと、僕が以上のような推察を試みることまでが彼らの予測の範囲に含まれていることは考えられた。しかし、そもそも本質的にこれは人為的に建造されたものであり、つまり時間の矢を逆行してみれば僕と彼女が立つこの地点に建設関係者はしゃがみ込みながら汗を流していたわけである。仮に建設者が機械であれ、機械を創造した者とその使用者がその機械をここへ解き放つ地点、すなわち入口=出口は存在するのだし、最低でも五日以内にそこへ到着しなければ、妹の直筆であるこの注意書をあの地点の壁に貼り付けることは不可能であるに違いない。問題は、妹の書き綴った紙を携帯してあの地点へ貼付した者(それが建築者の一人と断定する証拠はどこにもない)が、果たしてエスカレーターを上昇して来たのか、あるいは下降して来たのか、という酷く基本的な事柄へ収斂する。僕と妹はその者が下降してきたと信じて、螺旋階段をひたすら上昇し続けたのであるが、だとすればこれほどの高さを持つ建造物は地下に埋まった塔としか想定することができない。地上から建造可能な塔は必然的に高さが有限となるが、地下の奥深くを掘削して建造した塔は、地上を出発点とした塔と比較して明らかに高さの自由度が大きい。しかし、結論として双方ともに有限の高さを持った塔であることに何ら変化はない。天空に近付こうとした人間たちを許してしまった神の、ここがその完成間近のバベルの塔でもない限りは。
僕と妹は水平部で長距離マラソンするように疾り始めた。今気付いたことだが、妹はいつの間にかあの縫い包みのリュックを背負って、足うらが一段先の踏み板に着くたび、その軽い頭部でもある蓋を激しく上下させている。僕が怖れていることは、この連結された直線を通過したその後、降りのエスカレーターが螺旋状に巻かれた塔に行き着かないか、ということだった。その場合、僕らが今まさに元来た道を遡行して、再度あの暗い塔を下降することと如何なる相違があるだろうか。光あるところが、僕ら兄妹の頭上遥か先に広がっていると信じ続けることが、僕と妹に次の歩行を許してもいるのだから。僕らは犬のように走り続け、互いの寝巻きを汗みずくにした。
やがて、一人の男に僕らは遭遇した。僕が彼を眼にしたとき、どれほど僕は彼に驚愕の眼差しを向けることを抑えるのに必死だったろう。彼は僕と妹が昨夜別々の場所で観たハプニング番組に、スペシャル・ゲストとして登場していた男性アイドルのOrcinus orcaだった。Orcinus orcaとはシャチの学名であり、彼のロックバンドグループは、その名をWHALES+DОLPHINS(クジラとイルカ)としてい、メンバー四名は皆鯨類及び海豚類の学名をそれぞれの芸名としていたのだった。勿論、彼が学名そのもので呼称されないのは自明の理であり、端的に圧倒的多数の女性たちから、「しゃっちー」、及び「しゃっくん」、乃至は「オルカ」(これは狂信的な信者のみに通じる秘匿されるべき呼称であるという)、或いは「しゃちお」と渾名されていたのだが、僕が何故これほどOrcinus orcaに関する情報に長けているのかと問い詰められると、それは彼が僕の小学校時代のクラスメイトであることに由来するのである。水族館に異常なほどの恋慕を向けていた彼は、幾度目かの遠足でまさにその水族館へ足を運ぶという日になって、信じられない異常ぶりを僕らの眼前で開花させた。「おれは、このシャチの夫にならなければならない」そう何時になく沈鬱な面持ちで重々しく囁いた直後、彼は僕ら班員(不運なことに、僕が班長であった)の制止を断固振り切って、極めて遅々とした動作で制服と下着を抜いだ後、数時間ずっと、雌のシャチが泳ぎ回る巨大な水槽のガラス面にイモリの如くへばり付きながら微笑し続けたのだった。僕は、彼の幼くも驚愕すべき太さを持つ植物的な生殖器が、彼が脳内プールで雌のシャチと優雅に戯れ泳いでいる最中、ずっと活火山じみて屹立していたことを昨日の光景のように回想することができる今では珍しい生き証人でもあるのだが。その数週間後、彼はその日本人離れした天使的に女子児童を魅惑させる顔に、磔刑に処される基督じみた悲哀を浮かべながら、一言「adios!」といって、泣き崩れる僕の好きだった担任の女教師を含む彼女ラの一握りまでをも失神させたのであった。そして、約一年前に、シャチの学名を芸名にした驚異的に端正の取れたビジュアル系バンドグループの歌唱力抜群なボーカルとして、Orcinus orcaは僕らの眼前に、テレヴィの中で踊り歌い役を演じる王子様の姿をまざまざと見せ付け、あの包皮を被った太過ぎる生殖器の脈動を僕の脳内で錯乱的に想起せしめたのである。以上が、僕が彼の情報を否応なく収集せざるを得ない理由の、半ば嫉妬に由来した小さい興味の経緯であるが、彼が唐突に僕ら兄妹の前に出現したことは、喜劇にも近い逞しい哄笑を僕に起こさせるのに充分なものであった。彼は白いスーツを着ており、胸元には薔薇の花弁ではなく太い棘そのものが刺さっているらしかった。
――やあ、君たちは上昇してきたんだね。俺は下降しているんだよ。
彼は厭味なほど僕の妹に表情による、いかにも男性アイドルらしいペッティングを行い、小さく僕の片隅で萎縮していた彼女をますます背後へ後退させた。彼はまったく、僕がかつての級友であることに気付いていなかった。しかし僕の妹は、彼が昨夜テレヴィ画面の中でハプニング映像を眼にするたびに基督のような顔をして胸で十字を切っていた有名なアイドルであるということをしっかりと意識しているようでもあった。
――上には何かありましたか?出口などは。
僕は常時変わらない演技的な彼の仕草に脱力を憶えながらも、彼にそう問うた。そして彼は直後僕には目線をスライドせず、妹に固定した視点に更なる温かさと抱擁を送り込みながら、ソンナモノハナイヨ、と囁いた。次の瞬間、やや表情を強張らせて妹が何かしら決意したのか、一歩前へ歩み出てこう叫んだ。
――本当のことをいってください。
妹のこの言葉は意外にも彼を萎縮させるのに成功した。彼は表面が極めてデリケートな甘いプリンを食べ損なったような惜しさを顔中に滲ませながら、夏の南仏の小麦畑にも近い黄金色を放つ長髪の中に日焼けした指先を差し込んだ。
――おっと、そんな怒らないでくれ。それほど真剣にたずねるなら、俺も正直にいうさ。起きたのはエスカレーターの階段の上だよ。もちろん、降りではなく、上りのね。その先に何があるのかなんて知らないね。ここがデパートじゃないことくらいわかっているが、エスカレーターで下に向かえば地上に出られるのは当然だろう?むしろ、上ろうとしていた君たちこそ、屋上にでも向かうつもりなのかい?
僕は彼に返す言葉を憂鬱な気分から口に出す前に取り消した。僕は彼に「屋上が地上と等号で結ばれる可能性がある」ことを紳士的に示唆したかったが、それも意識の襞にこびり付いて離れない灰色の粘土によって押し潰されたのだった。彼のような非現実的な人物が、この非現実的な空間において登場するということが、僕に死に物狂いのある特殊な葛藤を呼び起こすに充分なものだった。それまで読んでいた本に、突如別の本の日向臭い頁が挟まり込んだのにも類似した、けして許すことのできない予期せぬ問題だった。この悪夢において登場すべき人物とは僕と妹以外には存在しないのであり、この女好きそうな美形アイドルは、何としてでも排除せねばならないと、僕は冷静さを装いながら酷く葛藤した。そして、僕は所詮非現実的な場所であるのだから、このかつてのクラスメイト、すなわち現WHALES+DОLPHINSのリーダー兼ボーカルであるOrcinus orcaを、あのゴリラが不良少年を殴り殺そうとしたような目に合わせても構わないと思うようにしたのであった。彼の存在を示す透明の名札には、小学生時代の僕のヒロインであった担任の女教師の恋心を、わずか十一歳にして奪ったという底知れない罪状が銘記されているのでもあったから。しかし僕は腕力に自信がなく、加えて殴り殺せるような道具も所持していなかったので、最も簡単に彼を殺す手段として、階段から力を込めて突き落とすという方法を取らざるを得なかった。しかも、この殺害方法を、断じて妹に目撃されてはならないのである。もしも彼女が、僕がエスカレーターの上で彼の背中を強く押したことを知れば、彼女は出口に到着したと同時に警察署へ実の兄が犯した罪悪について洗い浚い吐露するだろう。妹は、そのような正義感の一際強い少女であったのだから。そこで、僕は彼を階段から突き落とすに当たっては、決して妹にその行為を目撃されてはならないよう、二人の位置関係に細心の注意を払わなければならないと思い巡らせた。そうして僕があれこれ殺害する時点での僕の立つべき場所について思案していると、彼は不意に妹の前に近付いて、その顎を指先で柔かく愛撫したのだった。「君のことについて、もっと知りたいんだ」という類の野獣的な御世辞を捲し立てながら。それはいつもステージから下手な逆立ちをしながら飛び降りる彼が、任意に選んだ女性ファンの顎に触れるときの仕草そのものであった。僕はその光景が今ここで、それも実の妹に対して行為されていることに怒気の火事嵐を胸の裡で発生させつつ、抑制し難い震える両腕の暴走を沈静化させるのに必死だった。できることなら、もう今すぐにでも殺してあの肥えた芋虫のような彼の生殖器の脈動を停止させ、勃起をなきものとしてやりたい、僕はそう心の底から強靭に思ったのだった。
――本当に可愛いな。俺のタイプだよ。なあ、将来、俺のお嫁さんになってくれないかい?
僕はそのあまりにも切実な性的事情に感けた、粘液のように生温かい彼の台詞に僕自身の裡で、ある一線を越えたことで溜まりに溜まった泥水が壁を決壊しアチラ側へと流出していくのを確かに感じた。それは憤怒の泥水であること、そしてそれは彼をエスカレーターのある場所へと誘導して簡潔に突き落とす行為に繋がる殺意の泥水であること、を僕の意識の鋼鉄ダムに対する勇猛果敢な挑戦として僕は受け容れる。突き落としてしまえ、と絶叫するのは僕ではなく、僕を映し込む闘争の鏡である。しかし、僕はこの怒号を今まさに水の運動として、泥水の豊饒な流れとしてイメェジを固定させている自身の想像的な作業を、足りない、より残忍に想像せよ、と激励しながらも戒める分身となるべき己自身をも見出すのであった。激甚な怒りの熱量が不足している、と僕はひどく残念がりもする。ここでは彼を殺してしまうという行為に関しては、長期的な視野を踏まえ現段階では留保せよ、そう内的な絶叫者を演じるのは鏡に写った僕の似姿でなく僕ソノモノなのだが。
――とりあえず、いっしょに行動してくれませんか?妹も、より多くの人と出口を探すほうが安心すると思うんです。僕のほうからお願いします。
紳士的、あまりに紳士的な礼儀作法を尽くして懇切丁寧にそう嘆願する僕を、彼は短く笑った。しかし、それはひどく友好的な、同盟関係を結ぶに至った軍事的な策略家が洩らすべき油断の微笑ともいうべきものであった。彼は清潔な感じで首を大きく縦に振り、何故か「アリガトウ」と少年のように囁いた。僕は彼のその、今まさに口にした感謝の言葉に力強い仲間意識を結合させながら、コノモノハソレホドノ悪人デハナイ、とかつての僕自身を懲戒せざるを得ない。妹は、彼の猥らな誘いかけに辟易しているのでもあった。しかし、今の彼自身があまりにも自然に垣間見せた少年のように無垢な恐怖(彼もこの建造物の内部で孤独に苦しみ嘆いていたことを想像しながら)を克服した、まさにその直後の希望と歓喜の入り混じった純真なる感謝の言葉を、拒絶し、何を血迷ってか抹殺にまで到らざるを得ない道がどこに分岐していよう?僕ら三人のちっぽけな囚人は、共に出口を探索する力強くも協調性を重んじる頼り甲斐のあるグループを形成するのだろう、と僕は安堵の溜息を吐きながら妹の背負う熊の縫い包みの、どこで付着したか定かではない一つの大きな黄ばんだ埃を取り払う。僕はここで、ボルヘスが晩年に洩らした偉大な言葉を関連性が掴めないと自覚しつつも正確に回想する。
《我々一人ひとりは、なんらかの形で、既に死んでしまった全ての人間なのである。》
水平部は終わり、やがて僕らは彼自身が目覚めた場所さえも内在する新たなスパイラル・エスカレーターをゆっくりと上昇し続けていた。彼の話によると、彼は目覚めてから下降し続けてきたから上に何があるか見当もつかない、ということである。彼は頂上を目指す僕らの意向に同化したのでもあるから、少々妹を誑かすような悪戯に走ろうとも、今後僕は怒りの泥水を大規模な洪水ほどにも発展させることはないだろう。ふと、彼はズボンの左ポケットからテープレコーダーを取り出して、僕らにそれを見せびらかした。その小さい録音装置の前で、眼を釘付けにする妹の興味津々な表情に、僕は彼女の幼さの断片を汲み取りもする。彼はあくまで西洋の御伽噺に登場する美しい王子様が洩らすような耀かしい微笑をキザに浮かべながらも、再生ボタンに指を置く。
――実はね、これは俺が目覚めたときに手にした機械なんだよ。俺はこれで君らと出会った瞬間にも、ずっと録音していたんだ。聞いてみるかい?
僕は今になって小さな真相を告げる図々しい彼の神経に、泥水に沈殿する泥の量をわずかに増加させながらも、どこか警戒心を殺がれるような想いでいた。彼は僕ではなく、むしろ妹のみのためにその再生スイッチを押すとでもいわんばかりに、彼女の関心の的と化した己の手にする録音装置を優しく撫で擦った。
彼は奇妙にも自信に溢れながら妹に愛情的なウィンクをして、再生スイッチを右手の薬指でゆっくりと押す。
――「お兄ちゃん、なんで私たち、こんな場所にいるの?…知らないよ、こんなの。私のじゃないよ。……お兄ちゃん、あのポスターなんだろ。………ねえお兄ちゃん、いなくならないでね。わたし、自分が怖いの。だから、絶対に傍にいてね。お願いよ。………ごめんね、お兄ちゃん。わたし、お兄ちゃんに嘘ついてたの。わたしね、さっきのポスターのこと、お兄ちゃんに何も話さなかったけどね、本当は知ってるのよ。五日前の、数学の授業のとき、先生が突然へんなことを黒板に書き始めてね、それで、みんなに一枚ずつ白い紙を渡して、板書しておくようにっていったの。平常点に入れるからって、みんないうとおりにしたわ。その黒板の内容はね、お兄ちゃんがさっき読んだあの紙と同じものだったのよ。お兄ちゃん、わたしのいいたいこと、わかるよね?わたしが書いたものなのよ、今お兄ちゃんが握っている紙は。ごめんね、今までいい出せなくて、本当にごめんね。………本当のことをいってください。」
その音声を耳にした僕ら二人の顔色を、恐怖という一字で表現した者がいるとすれば、彼は正確である。しかし、驚愕し戦慄の眼差しで両手を痙攣させているのは他でもないこの音声を録音したと疑われるべき彼なのでもあった。彼は自分が疑念を持たれることに対して圧倒的な不安を浮かべながら、僕らにこのように絶叫した。
――違う。これは俺が録音したものじゃない。
しかし、彼以外の誰が、彼自身が目覚めてからずっと携帯していたと告げるこのテープレコーダーに妹の声を封入することができよう?僕と妹が、彼と出会うまで二人で行動していたのは真実であり、第三者は少なくとも存在していなかった。彼の瞼を開いた場所が、僕らの瞼を開いた場所に限りなく近接していない限りは。だが他方で、妹が実は熊の縫い包み型のリュック以外に、この録音装置までをも所有しており、僕の声だけ巧く除きながら自分の声を録音していたことを今なお隠匿している、ということは無きにしも非ずである。その場合、妹が彼の所有物である録音装置をどこかでポケットから抜き取り、それを彼女の元来の所有物であった録音装置とすり返るという行為を前提にすることはいうまでもない。だが、彼女は果たしてそのような過激極まる冒険を、危険さえ冒してまで遂行するだろうか?少なくとも、彼が録音装置に関する話を始めたのは数分前であり、それ以後僕は彼の言動を注意深く観察していたのであるから、彼女は彼の録音装置がズボンのポケットに入っているということを、彼が話し始める以前に察知しておかねばならない。しかし、彼の白色の背広は彼の白色のズボンをすっかりポケットの部分まで包み込んでいるのであり、決して事前の発見は容易いことではないのである。僕は妹が予めテープレコーダーを所有していたという仮定を唾棄し、彼自身を怪しむことにした。彼はこの建造物のありとある幾何学的・建築学的構造について数十の論文を書き連ねるほどその内情に関して詳細な情報を所持している、いわば建築関係者であり、僕らを拉致した武装グループと間接的に接点を持つ者ドモの一人ではなかろうか、と。しかし彼が紛れもない人気絶頂期にある男性アイドルであることも事実であり、僕と妹が昨夜彼が出演するあのハプニング番組を閲覧することを何者かが予測していたとまで考えることは明らかに机上の空論である。だが、僕は最も大きな推理の陥穽を自覚してもいる。彼、乃至は妹に疑念を向ける以前に、このテープレコーダーについて怪しむことをせよ、と内面的な鏡像が問い詰め始めていることを僕は知っているのだ。この録音装置は、広範囲の音声を録音することができ、彼が録音スイッチを押す/押さない、に関わらず規定音声として入力された妹の声のみを識別し、その音声信号を録音ヘッドに伝え、動き続けるテープの内部の磁性体粒子を磁化し、すなわちアナログ録音したのではないか。しかし、雑音低減システムを稼動しているであろう、このノイズを一切流さなかった録音装置は、旧型の装丁をしたディジタル録音装置なのかもしれない。いずれにせよ、怪しむべきはこの得体の知れない録音装置そのものなのであるという結論に、僕は到達したのである。そこで僕は彼にこういった。
――そんなものはここへ置いて、先へ急ごう。
この言葉の持つ破壊力は彼ではなく、僕の妹に強烈なインパクトを与えたらしかった。彼女は僕の顔を不審な眼差しで見据えながら、明らかにわたしの兄は何かを知りながらそれを秘匿している、と自分自身の額に無色透明な油性マジックで書き込んでいる。考えてみれば、僕と同じことを妹も僕に置き換えて疑念のメスを向けながら推察していることは大いに考えられるべきことだった。きっと彼女は、僕が妹と録音装置の関係性について考えたことと見事に相似形を成す推論を展開していたのだろう。それに、録音されている被害者的役割を担っているのは、この場合妹の方でもあったので、僕により疑いの眼が向けられることは必然でもあった。しかし、妹は僕と彼にこう柔かい笑みを浮かべながら囁いたのだった。
――お兄ちゃんのいうとおりね。先へ急ぎましょ。
この一言で、僕らは録音装置に関する問題を放棄し、再び光あるところを目指して螺旋状エスカレーターを上昇し始めた。
やがて、僕らの眼前に光の海が飛び込んできた。上方の階段の深奥から、溢れんばかりの陽光の洪水が、僕らの眼を射した。それは早過ぎる頂上への到達を僕に感じさせはしたが、出口と思しき地点にまでいよいよ到着することを思えば、喜劇的な悪夢の消尽は本来望むべきものでもあった。時間にして、約十二分の短い探索ではあったが、これでようやく僕らはこれらを計画した者どもを牢に閉じ込めることができるだろう。出口に接近しながら、僕はここがやはり地下に建造された巨大なパイプライン状の構造をした施設であることを悟った。光あるところには樹木が生い茂り、簡潔に整備された美しい森林公園の片隅を思わせた。内部の息苦しい澱み湿った空気とは異なる、新鮮で清涼感に満ちた大自然の空気が、既に僕らの立つ階梯にまで及んでいた。
――お兄ちゃん。出口だよ。わたしたち到着したんだね。
妹は落涙して感極まるまでには至らなかったが、明らかに活気を取り戻したその表情は、かつて絵本を読んであげて眠る前の安らかな、明るく悦ばしい無垢な乙女の耀きへと回帰したのだった。
――こんなことなら、降りるんじゃなかったよ。さあ出口だ。
彼も喜悦を噛み締めながら興奮を顕わにしてそう叫んだ。僕ら三人は互いに昔からの仲睦まじい幼馴染たちのように、手を取り合い、口笛を吹き遊みながら、口元を綻ばせた。アーチ型をした花輪で煌びやかに飾られた出口が、僕らの頭上で夏風に靡いている。僕らは遂に、エスカレーターから歩を脱し、逞しい青草の生した大地を踏んだ。僕らには自動的に上昇していた遊離的な感覚がまだ残っていたが、それは三人が手を繋ぎ合って行進することで掻き消されるものである。付近の木箱の中に、僕らは建造物の内部で入手した道具・機械類を収めた。辺りを見渡しながら、《複合商業施設》と看板に赤ペンキで記された人気アトラクションから僕らは名残惜しむようにして遠ざかった。遊園地のシンボルでもある青銅製ガリバー像は、両肩に昼下がりの眩しい木漏れ日を燦然と浴びている。噴水のある広場からは、無数の色取り取りの風船たちが空へと放たれたばかりであった。僕はOrcinus orcaと抱き締め合い濃厚な接吻をする妹を微笑ましく見つめながら、胸元から取り出した安物のナイフを、彼女の背には向けず、己の喉元に近づけた。,,#000000,,220.35.14.46,0
2006年06月07日(水) 19時34分16秒,20060607193416,20060610193416,gOPRw4lJknJhI,血塗られた少女 08.,朱鷺,iruka_609@hotmail.com,,暗黒。
その中に私が一人、立っている。
此処は何処なの?
私は何でこんなとこにいるの?
誰もいないの・・・?
遠くから聞こえる・・・とても小さく、耳を澄ませないと聞こえんないような。
すごく低く、背筋がゾッとしてしまうような・・・
悪魔のような声。
聞こえてくる、耳を塞いでも聞こえくる悪魔の声。
「オマエハ、ハハオヤヲ殺シタンダ。」
・・・やめて・・・・。
「オマエガ、ハハオヤを自分ノ手デ殺シタンダ。」
「やめてよっ!!!!!」
起きるとそこは、自分の部屋でないどこかの個室。
本当になにもなくベッドと私の通学鞄が置いてあるだけだった。
―さっきのは夢だったんだ。
「朝から・・・何なのよ、此処何処よ・・・」
・・・?
何で私泣いてるの?
目に触れると、目が腫れていることが分かる。
「そうじゃん・・・私、羽野・・・とかいう人に・・・」
自分の母親を、自分で殺した現実。
あの夢は凄く現実味があって・・・
涙が頬を伝っていく。
泣きたくなんてないんだよ
泣くのは家だけでいいのに
こんな知らないとこで・・・
そう思っていると、部屋のドアが開く
「おはよう。よく眠れた?」
入ってきたのは昨日の・・・羽野 綾子だった。
・・・寝てたのかな、私。
頭がズキズキして体が動かなく、だるい。
・・・。
無言で黙っていると
「まぁ、焦らずじっくり行きましょう。」
そう言って部屋を出て行こうとする羽野。
―でも私にはどうしても、どうしても聞かなきゃいけないことがあるんだ。
「昨日見た事は・・・本当にあったんですか?あの遙という小さい子は―」
私が言い終わる前に、羽野は口を開いた
「昨日見たのは昔の貴方と貴方の母親よ。真実なの」
そう言って部屋を足早に出て行った。
――本当なんだ。
私が・・・私自身が自分の母親を・・・
―4日後。
何度も何度もキーを解除してやっと辿りつける場所。
監視カメラの映像を全て見ることのできる場所
「蒼井はどう?」
羽野が、映像を見ている其田に向かって口を開いた
「寝ずにこの4日間、ずっと部屋で泣いています。」
―・・・・。
少しの沈黙が流れた。
沈黙を破ったのは、羽野だった。
「そう・・・やっぱり駄目だったかしら。」
部屋を出て行こうとする羽野に呼びかける其田
「蒼井・・・遙の携帯がずっと鳴っていますが、どうしましょう。」
一瞬戸惑いを見せた羽野だったが、すぐ冷静に戻る。
「おかしいわね。調査によると友達など居ないハズよ?」
確かに。遙に友達といえる人は居なかった。
―1人を除いては。
「いえ・・・。最近纏わりついてる者だと思われますが―」
其田は話を続ける。
「蒼井の携帯に1名だけ、学校の者と思われる人が入っているんです。
―・・・。
「名前は?」
羽野が問う。
「河合・・・和泉です。」
カーテンも開けず、真っ暗闇の遙の居る部屋。
その部屋から聞こえる音は、枯れ果てる寸前の・・・遙の泣き声。
―私がお母さんを殺したんだ。
お母さんは幼き頃の私の腕から勝手に出た血に触れ、死んでいた。
あれは絶対、私の血によって殺されていたんだ。
私によって・・・。
鞄が開いている。
瞼が重く、目を開ける事は必死にしないと出来ない事で、一瞬しか見えなかったが
確かに開いていた。
開いてても別にいいんだけど・・・
鞄の中には・・・筆箱とお財布のみ。
私はおもむろに、筆箱を取り出した。
その中から・・・・・
カッターを取り出した。
丁度、授業で使うので持っていたカッター。
刃を出す音が部屋中に広がる。
カチカチカチカチカチカチカチ・・・
私の血は一体何なの?
何が起こるの?
左手首の上ですっとカッターを引いた。
血がゆっくり流れだす。
痛みも・・・何も感じない私の手首を伝い、足にポトポトと落ちていく。
―こんなんじゃ、何も分からない。
もう一度・・・何度も、何度も。
いつの間にか、凄い量の血が私の手首を、足を伝い床に染みていく。
真っ赤な床。
いくら切っても、何も分からない。
もう、いいや・・・
血を止めようなどは思っていなかった。
床に手を置く。
「・・・どうするんですか?」
其田は、外に出て行こうと廊下を歩く羽野に問う。
羽野の手には遙の携帯が握られていた。
「あのままじゃいけない。この子・・・和泉を使わせてもらうわ。」
話している間に外。
周りにはやはり、山しかない。
羽野は遙の携帯のボタンを何個か押し、携帯を耳に当てた。,久しぶり?に書きましたー。
自分で書いてて、遙がとても可哀想です。
最近話がどんどん進んでいくので、書いてる側としてはやっぱり楽しいですね^^
進まないと、同じことばっかりになるので;
では、もう8話になった「血塗られた少女」
よければ9話もぜひお楽しみ下さい^^,#0000A0,./bg_c.gif,220.51.148.83,0
2006年06月07日(水) 01時13分49秒,20060607011349,20060610011349,g9h7dLK080X1.,デザイアと呼ばれた男 VOL 18,D・二プル,,, 3
バイトが終わった後、俺とマユミは近所の洋風居酒屋にいた。
薄暗い店内と微かに流れるジャズのメロディーがムーディーな空気をかもし出し、大人の空間を演出している。
店内はカップルがほとんどだった。
はたから見れば俺とマユミもその中の一組に見えたかもしれない。
俺とマユミは向き合って奥の個室に座っていた。
俺はウーロンハイ、マユミは生を注文しとりあえず乾杯した。
少しすると適当に頼んだツマミを店員が持ってきてテーブルに並べ消えていった。
俺とマユミはツマミをつつきながら世間話をしながらジョッキの中のアルコールを喉の奥へ流し込んだ。
二人とも二杯目のジョッキを注文し、店員が消えた時マユミが本題を切り出してきた。
「昼間はごめんね。白坂の前で変なこと言って。でも、驚いた。まさか、あいつと五味君が知り合いだったなんて」
「ええ、あいつとは昔いろいろあったんですけど……安久津さんは白坂と付き合ってたんですか?」
俺は心の中にずっと溜め込んでいた質問を自然にマユミに聞くことができた。
「あたしがあいつと?やめてよ。あんな奴と付き合うわけないじゃん。本当にあいつとはなんでもないの。初めは『ワールド』の客だったんだけど、クライム≠フファンだって聞いて話が盛り上がっただけなの。そうしたらあいつが勝手に電話かけてきたり、メールしてきたりしてほんとウザかった」
「そうなんですか。よかった」
「ん?何が」
「……いや、あんな奴と安久津さんが付き合ってなくてよかったと思って。あいつは本当にたち悪い男ですからね」
「心配してくれたんだ。ありがと」
マユミはジョッキの生ビールを喉に流し込み、わずかな沈黙が流れた。
微かに聞こえるジャズと他の客や店員の声が沈黙の間をもたせた。
「ねぇ、前にあたしの元彼の話したの覚えてる?」
「……ええ、事故で亡くなったって」
「実はあれね、本当は事故じゃなかったの。うちの店と契約してる回収業者いるでしょ。あいつらヤクザみたいなもんで、長期延滞者にギリギリの追い込みかけてるの。彼は回収業者に追い詰められて殺されたの」
「……」
俺は初めてその話を知ったように驚いた表情を作っていた。
「それなのに何で『ワールド』で働いてるんだと思うでしょ。実はあたし、あいつらに復讐しようと思ってるの。あたしは彼を殺したあいつらをどうしても許すことができなかった。女一人に何もできないことは分かってる。でも、あいつらだけはどうしても許せなかったの。だから、あたしは『ワールド』で働きながら情報を集めてあいつらに復讐するチャンスをうかがってたの」
マユミの目からは涙が溢れ出していた。
「でもね、最近ちょっといいことがあったの。実はあいつらに追い討ちをかけるように長期延滞者を助けてる人がいるんだって。顔も名前も分からないけど、その人はもう、何人もの回収業者を潰して病院送りにしてるんだって。何か『ワールド』の上の方でも問題になってるらしくて店長がこぼしてたんだ」
マユミは目をキラキラと輝かせデザイア≠フ話を俺に聞かせた。
「……でも、どんな奴なんですかね?そんなヤクザと戦うような男って」
「分からないけど、きっと素敵な人だと思うな。一回でいいからあってみたいな」
「安久津さん、昼間言ってた好きな男ってもしかしてその男ですか?」
「そう。ごめんね。昼間は白坂の前で変なこと言って。あの時はあいつの鼻を明かしたくてまるで五味君と付き合ってるみたいに言っちゃたけど、びっくりしたでしょ」
「……いや、そんな」
「あたしね、彼が死んでからずっと人を好きになれなかったの。前に父の話したでしょ。あの件もあてあたしあんまり男を信用できないでいたの。そして、彼が死んでしばらくはずっと一人でいいやって思ってた。でも、その回収業者と戦う男の話を聞いた時、久しぶりに忘れてた感情が甦ってきたような感じがしたの。久しぶりに胸の奥がキュンとしたんだ。ああ、一回その人に会ってみたいな」
俺はマユミの話を複雑な気持ちで聞いていた。
マユミは俺をまるで男と意識していない。
マユミが想いを寄せているのは回収業者と戦う謎の男デザイア≠セ。
しかし、デザイア≠ヘ俺自身だ。
恋のライバルが自分自身だというのか?
しかし、今マユミにデザイア≠フ正体を明かすわけにはいかない。
まだ計画の途中だし、それにへたにばらしたら逆に嫌われる恐れもある。
よく考えればここまでは國無の計画通りにコトが進んでいる。
マユミは確かにデザイア≠ノ興味を示している。
ここは下手な行動を起こすより、國無の言う通りに行動したほうがいい。
俺は自分の想いを秘めたままウーロンハイと一緒に喉の奥へ流し込んだ。
「ごめんね。あたしの話ばっかり聞いてもらっちゃて。こんな話まともに聞いてもらえるの五味君だけだからさ。あ、こんどは君の恋話聞かせてよ。前に言ってたじゃん。好きな人がいるって。その後、どうなった?進展した?」
「……いや、俺、奥手でなかなか好きな子の前だと何も言えなくなっちゃうんですよ」
「だめだよ、そんなんじゃ。男はちょっと強引ぐらいの方がいいんだよ。どれ、お姉さんに相談してごらん。きっとその娘とうまくいくようにしてあげるから。あ、ごめんね。ちょっとトイレ行ってくる。帰ってきたらみっちり聞くから」
そう言い残してマユミは席を立った。
マユミの言葉を聞いてうれしい反面、妙な空しさが心の奥を駆け巡っていた。
俺はジョッキに残っていたアルコールを一気に飲み干して、おかわりを注文した。
その後、俺とマユミは店を変え、朝まで飲み通した。
二件目の居酒屋は朝までやっている沖縄料理屋でゴーやチャンプルと泡盛を大量に摂取した。
そこでの会話はほとんど覚えていない。
たぶんたわいもない話をしていたと思う。
沖縄料理屋を出たマユミは帰るのが面倒だと出だし、「ワールド」に泊まっていくと言い出した。
以前にもマユミは深酒をして翌日もシフトに入っている場合は「ワールド」に泊まりそのまま働いていたという。
一端家に帰ってしまうと起きられず必ず遅刻するというのだった。
俺とマユミは肩を組んで千鳥足で「ワールド」に向かって歩き出した。
「ワールド」に着くとマユミは慣れた手つきダンボールを棚から取り出し、休憩室の冷蔵庫の前に敷くと腹をだしたまま大の字で眠ってしまった。
マユミは俺のことをまるで警戒していない。
男として見ていないのだ。
俺はすごく悲しくなった。
一気に孤独感が押し寄せてきた。
イスに腰掛け、タバコをふかしながら露になったマユミのお腹を見つめていた。
今、マユミの目の前にいるのは、連続レンプ魔デザイア≠セ。
國無由自の完璧な仕事のおかげで警察沙汰にはなっていないが、何人もの女たちを犯してきた語極悪非道の犯罪者だ。
俺の前でこんなにも無防備な姿を見せることがどれほど怖いことか思い知らせてやろうか。
俺は一瞬、マユミを犯している自分を想像した。
しかし、俺は動くことができなかった。
こんなにも俺を信じ、無防備な姿を見せるマユミがとても愛おしく思えた。
こんなマユミを犯すことなどできなかった。
俺はマユミにダンボールを掛けると明かりを消して、ドアに鍵を掛け「ワールド」を後にした。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
時にピンチはチャンスに逆転する場合があります。
白坂の思わぬ出現によって確実に凛一郎とマユミの距離は縮まりました。
しかし、これでうまくいくほど男と女の関係は単純ではありません。
この先凛一郎は思わぬ問題に突き当たっていきます。
そして、更なる悲劇が凛一郎を待ち受けているのです。
ますます目が離せない展開にご期待下さい。
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年06月07日(水) 00時46分18秒,20060607004618,20060610004618,gktqzwJj8j77M,今は九月,四季,,, 今は九月。
森はそれを思い出す。
布団を出て、無意識にキャメルに火をつけた。
そういえば奥さんの姿が見当たらない。
「そうか、美容室に行くといって出て行った」
時計は十時を指そうとしている。
午後一時には美容室を出られそうだと、メールが来た。
「そういえば、今日は買い物をする予定だったな」
だるい体を起こすと、身支度を整える。
靴を履き、玄関に置いたバッグを手に取った。
その時。
目の端を何かが横切る。
! ?
奴だ。
間違いない。
すばやく靴を脱ぐと、奴に勝るとも劣らない速度で武器を探す。
多々ある武器の中から噴射系を選択。
「大丈夫」
まだ、奴の位置は捕らえている。
気づかれぬよう、ゆっくりと奴に近づいた。
奴はトイレ下の敷居で停止する。
「それで隠れているつもりか!」
ロックオン。
すさまじい勢いでミストが噴射された!
奴は必死で逃げ惑う。
そして、羽を開こうとしている。
「飛行という、最悪の事態は避けなければ!」
高速移動する奴を逃さぬよう、力の限り噴射する。
「ミストの残量は大丈夫か?」
しかし、カラフルなパッケージが邪魔をして中身は確認不能。
背後にはドアがあり、逃げ場は無い。
奴の勝ち誇った顔が脳裏に浮かぶ。
有害なミストの充満する玄関での持久戦。
負ければ確実に、奴の餌食(飛んできて服とかに止まる)だろう。
「そうはさせん!!」
数秒にわたる死闘の末、 程なく奴はおとなしくなり、ついには腹ばいで動きを止めた。
「…他愛も無い」
黒く光るボディ。
長く伸びた触角。
在り過ぎる足。
全てを停止させ、奴は息絶えた。
ティッシュペーパーを数枚取ると、奴を覆う。
そして、指圧によって確実に頭をつぶした。
奴の亡骸をゴミ箱に捨て、ミスト後をきれいに拭き取ると、 森は再び靴を履いた。
夏にしか出逢えない奴。
しかし…。
今は九月。
森はそれを思い出す。
,日常にある、小さな驚きを書いてみました。
皆さんの投稿作品を見せていただくためにも、一つ作品を投稿すべきかと思いまして。。。,#000000,,219.165.27.170,0
2006年06月06日(火) 21時18分41秒,20060606211841,20060609211841,gHUbh3XT59h7Y,Going My Way @,青夜,,,「おっはよー」
2年3組の教室に、浅原七海(なつみ)の元気な声が響きわたる。
教室には3人の男子が居て、真ん中の机にたむろしながらこっちを見ている。
「おー、浅原さん。今日も元気だねぇ」
「おぅ!!元気がとりえみたいなもんですからー」
七海は自分の机がある教室の隅に鞄を置くと、男子の集団にまざっていった。
その集団のひとり、加賀裕也に七海は夢中になっている。
集団の中ではあまり目立たないが、優しくて真面目な彼をいつの間にか目で追っている。
好きだと気付くまで、そんなに時間はかからなかった。
「浅原さんってあんまり女子とツルまないよね」
集団のリーダー、野田淳が突然不思議そうに言った。
「そういえばそうだね。なんで?」
それに続いて、牧瀬光一が七海を見てニッコリ言った。
「なんか…女子って苦手…」
「あんたもじゃん」
変な顔をしながら淳が言う。
「そうだけどさー」
七海は、ギャル系ばかりが集まっているこのクラスの女子達が苦手だった。
爽やかで面白い、妬みあったりしない、男子の方がすきだった。
ガラッ
「佐久間。おはよう。元気?」
「…」
いつものことだが、佐久間竜太は七海を無視した。
佐久間はこのクラスで浮いている。
無口でいつも寝ている。移動教室は来ない。
屋上でやっぱり寝ていると聞いている。
「なぁ、佐久間って小学校の頃からあんななの?」
裕也の視線はずっと佐久間に向いている。
淳と光一は目を合わせて困った顔をした。どうやらあんまりよくない話らしい。
淳が声のトーンを下げて話し出した。
「実は、あいつ小学校の頃は普通にいいヤツだったし成績もよくてモテてたんだよ。でもな…一回死にかけたんだよ。めっちゃ可愛い子に告られて、その子の元彼…高校生だったらしいけど…何でかキレてさ。ボッコボコにやられたんだ。今じゃタブーだから秘密だぞ」
「なんでタブーなんだ?」
裕也は深く追求する。
「その子、死んだんだ。つぅか、殺された。その…元彼に」
七海と裕也は二人とも言葉を失くした。
きっとその元彼、今刑務所だぞ、と光一が付け足してから、四人の会話は途切れた。
いつの間にか人が増えている。
四人とも、新しい話題を探すが出てこない。
「どうしたの?黙り込んで」
なにも知らない、集団の最後の一人、クラスで一番ガキの岡本大輔が七海の頭の上から顔を出した。
「おはよ♪」
「あ…おはよう…」
挨拶を交わしたところで、先生が教室に入ってきた。
「いつまで話してんだー。席つけー」
立ち歩いていたみんなが一斉に自分の席に戻った。
気まずかった五人(何も知らないヤツ一名)は安心したようにそれぞれの席に戻った。
ふと前を見ると、いつもは机に頭を伏せている佐久間が鋭くこっちを見ている。
―聞こえたのだろうか?
嫌な予感がした。
,一応、初の連載物を書くことになりました、青夜です。(わかっとるわ
しょっぱなから成功するか不安ですが、頑張っていきたいと、気合は十分です!!
では、しばらくよろしくお願いします。
,#0000A0,./bg_c.gif,59.140.62.153,0
2006年06月04日(日) 17時08分27秒,20060604170827,20060607170827,g7b7umZZZ.xJo,ありがとう。,しぃ,,, あれは、小学3、4年生の頃の話。
兄と一緒にスイミングスクールのバスに乗った後の事です。
ガタガタ揺れるバスの中は、憂鬱でした。ある人が話しかけてくるまでは……
「何?この仔、―くんの妹?めっちゃ可愛いやん!」
気が付くと、隣に誰かが立っていました。
小柄な体格で、整った声に似合わないハスキーボイス。筒抜けに明るい笑顔。この時、私は完全に一目ぼれしました。胸がこんなにきゅんってなったのは、初めてでしたから。
恥ずかしくて、思わず俯いてしまいました。顔が熱くて見られたくありませんでした。
兄「は?どこがやって。ブスやし。y、趣味悪っ」
y?「はあ?かわいいやん!なあ?」
私「え?え?そんな、カワイイだなんて…」
y「ほら、めっちゃ照れてる。かわいいー」
そう言うと、y?くんは私の隣に腰を下ろしました。
あまり兄や父以外の異性と仲がよくなかった私は、あせりました。予想外の展開に。
そのまま、スイミングスクールについて……。
これが私の恋の始まりでした。というより、もう始まってました……。
本題は、中学生になってからです。
あの思い出から何年も、yくんとは会っていませんでした。スイミングをやめたからです。気まぐれでした。yくんのことは、あ、いいな。ぐらいだったので。
それから、私はyくんの事を忘れかけていました。
兄に学校に置き忘れたスパイクを取ってくるように頼まれた私は、サッカー部のキャプテンに会いに行きました。
キ「−くんの?もしかして、妹?ちょっとまっとって。すぐ持ってくる」
キャプテンは、背が高く、頭もよさそうで、何より顔が他の人より垢抜けていました。外で運動しているはずなのに、顔もあまり焼けてなく、完璧という言葉が良く似合いました。
キ「はい。これやろ?」
私「あ、あ、ありがとうございます」
それから、グラウンドを駆け抜け、走って教室に帰りました。
私(キャプテン、カッコイイ!)
私、たぶんうぬぼれているんです。なんでも、スベテ。
一目惚れしてた人をわすれ、他の人に目を向けて……。この人、じつは私の事好きだったり…。とよく考えます。これを、妄想?と呼ぶんでしょう。
だから、その時、気付かなかったんです。y君も、その後ろにいたことを。
y「―くんの妹?」
そのから何日後、私は軟式テニス部の見学に行きました。
A(友)「テニス部はいらん?って先輩から誘われててさ。しょうがないか。みたいな」
私「でも、テニス部って、怖い先輩いるらしいじゃん」
A「そんなのどこも一緒だって」
他愛もない話をしてクラブハウス(部室が沢山ある建物)を通り過ぎようとした時
y「ーくんの妹やろ?久しぶり」
私「え?……!」
そこで、yくんと再会しました。顔は黒く焼け、髪も少し茶色くなっていました。大人っぽくなっていて、どきどきしてしまいした。
A「だれ?」
私「…あ!なんでもないの。知り合い?かな。さ、行こう」
私は慌てて友達の手首を握って引っ張りました。
どうしてここに?そうか、先輩か……。先輩、ね。
A「痛いよ!何すんの?」
私「あ、ごめん。…ごめん」
A「いいよ。もう、いこうで」
避けてしまいました。ひどい事です。
そのまま、私はテニス部に入部届けをだしました。そして、何日か過ぎた日の事。
私がコートにテニスの荷物を運んでいるときでした。他の子は、色々あるらしく、私が一人で何回も行き来してはこんでいました。これも、私が勝手にした事です。
y「お前、よく働くな。えらい」
え、ら、い?
その言葉は、私の脳天を突きました。yくんとの思い出の中で一番強いモノです。
その日から、私が学校に行く理由が出来ました。
yくんの笑顔がみたい。傍にいたい。話がしたい。同じ時間を過ごしたい。と、私の中で、欲求だけが重なっていきました。こんなことをもし、本人が知ったら、さぞ気持ち悪がるでしょう。でも、止まりませんでした。
でも、私には、勇気がありませんでした。何も出来ず、ただ怖がっていました。嫌がられるかもしれない。そう思うと、頭の中で、悪いことだけが連鎖し続けました。
そして、時は過ぎ、着て欲しくなかった、卒業式当日。
何も出来ていない自分が情けなかったし、幼すぎる自分が嫌いになりました。もう二度とこないような、恋だと思いました。キャプテンに抱いていた思いも、どこかへ消え、yくんだけしか頭にありませんでした。
ねぇ、気付いてください。私の想いに。脆い想いに。
私の願いもむなしく、消えて行きました。
卒業式が終わり、私は、ぼーっと教室に戻りました。友達の笑い声も、聞こえませんでした。俯いていました。すると、Aが、私の背中をそっとさすってくれました。
A「哀しかったな?泣きたい時には、泣かないと。ね?」
とてもありがたかった。でも、切ない事には変わりませんでした。
教室に戻った後も、作り笑いしか出来ませんでした。幸いだれも気がつきませんでした。A以外。
A「ねぇ、行かんでいいの?後悔するよ。いっておいで」
その時の、いっておいでの意味が、言うなのか、行くのなのか、今でも解りません。でも、強く心を後ろから押された気がしました。
教室を走って出て行き、廊下を駆け抜け、階段を駆け下り、靴を履きました。
?「あれ?どこ行くの?もうすぐ先生くるよ」
私「大事な用があるの。じゃね」
私は、誰かに問いかけられ、反射で答えました。
好きな人が居なくなる。離れていく。もう会えない。これだけの気持ちになったのは、生まれて初めてでした。
卒業生でにぎわうグラウンド。先生と写真を撮っていたり、ボタンを貰ったりしていました。その人だかりを私は駆け抜けました。幾度も先輩にぶつかりました。
私「す、スイマセン」
そう言ったのは、何回だったかな。それだけ人にぶつかったということです。人と、人をすり抜け、止まる事の無い涙を拭いながらも、必死に探しました。
誰かの足に引っ掛かり、バランスを崩し、倒れてしまいました。
足から真っ赤な血が出てきました。痛みは、感じなかったです。
yくん、私、こんなに探してるよ。どこなの?
急に情けなくなりました。必死に走る私を知らない。何処かで、誰かと笑っているのかも知れない。私の事なんて、きっと考えていない。
テニス部の先輩が私を起こしてくれました。さっきぶつかったのも、同一人物です。
先「どうしたの?あら、あら。怪我してるじゃない。保健室いこうね」
そう言うと先輩は先生を呼んできて、私を運ばせました。
その間も、涙は止まらなかったです。一生止まらないかと思いました。
私は、右ひざを骨折していました。昔から骨は丈夫じゃありませんでした。
保健の先生に強制送還させられました。先輩にお礼を言うと、いいの。お礼は、部活で頑張る事でいいよ、と言って帰っていきました。
外はもう月が光っていました。
先輩、ずっと傍に居てくれたんだ。
涙は、もう止まっていました。
yくんは、私にとって、掛け替えの無い人でした。でも、勇気が無い私には、遠い存在でした。この出来事をすべて、神様が私に勇気の大切さを教えてくれた。そう思うようにしています。yくんにとっては、些細な事でも、私にとっては、宝箱にでもつめたいくらいです。後悔はもちろんしました。あの時こうすればよかった。もっと笑って話しかければよかった。と、悔やまれる所はいくつもでてきます。でも、もしも、もう一度yくんに会えたなら、好きの前に、こういいたいです。
yくん。ありがとう
,この話は、実話をもとにした話です。
登場した”私”は、もちろん、このしぃです。こんなクダラナイお話を書かせてもらった理由は、勇気をみんなに持ってもらいたい。もう持っていると思う人は、後悔をして欲しくない。勇気は、むつかしい。
だけど、手に入れるのは、自分次第。,#000000,./bg_e.gif,220.20.125.15,0
2006年06月03日(土) 00時42分50秒,20060603004250,20060606004250,g6b7ZhinwNDUc,デザイアと呼ばれた男 VOL 17,D・二プル,,, 2
あの悪夢からすでに一週間が経っていた。
病魔に悩まされながらデザイア≠フ幻に犯された翌日に、俺はすっかり回復した。
これまで俺に取り付いていたウイルスが嘘のようにどこかに行ってしまった。
あんな禁断症状を見た俺だったが、その後特に変わった様子はなかった。
食欲と性欲もすっかり戻り、「ワールド」にもいつも通りバイトに行った。
マユミもすっかり元気を取り戻していて、表面的にはいつもの日常生活に戻っていった。
その日も俺はいつものようにマユミと一緒のシフトに入り、すっかり慣れた仕事をこなしていた。
今日は新入荷の商品が入る日で、大量の洋画、邦画、アニメ、AV、洋楽、邦楽が入ってきた。
俺とマユミはカウンターでの接客業務をしながら、商品作りをもくもくとこなしていった。
「あ、ちょっとそれ見せて」
俺があるCDに新作シールを貼っていると横で作業していたマユミが突然騒ぎだした。
俺が持っていたCDを渡すとマユミは少女のように瞳を輝かせキャッキャと一人で騒ぎながらジャケットの中からCDを取り出し、今まで掛かっていたユウセンを止め、CDプレイヤーにセットした。
突然、ジャズ風の静かなピアノのメロディーが流れ始めたと思うとその曲はガラッと変わり、けたたましい轟音を響かせながらミクスチャーのハードコアに変化した。
マユミはさらにボリュームを上げ、体でリズムを取りながら奥の休憩室から戻ってきた。
「これ今一番好きな曲なんだ」
そう言ってマユミは俺にそのCDのジャケットを手渡してきた。
それはクライム≠フ新作「ブロークンハートジャンキー」だった。
これが前にマユミが話していたクライム≠ゥ。
俺はクライム≠フ曲を初めて聴いた。
激しい轟音を撒き散らしているのにどこか悲しげな印象が伝わってきた。
それはたぶんクライム≠フボーカルの影響だろうと俺は思った。
クライム≠フ詞は個人的な日常生活の中に潜む恋愛体験や失恋した悲しみを歌っているものだった。
以前、マユミが歌っていたラブサイケデリコの「ラストスマイル」と共通する何かを感じた。
俺はクライム≠フ曲を聞きながらマユミの音楽センスに改めて惚れ直した。
俺はいつの間にか作業していた手がすっかり止まったままクライム≠フジャケットを見つめたまま涙を流していた。
クライム≠フ曲は俺の中に眠る何かを呼び起こしたようだった。
そんな俺をマユミが横でジッと見つめていた。
「どうしたの?大丈夫?」
マユミの言葉で俺は我に帰り、自分が涙を流していたことに気づいた。
俺は慌てて涙を拳で拭き、作り笑いを浮かべた。
「大丈夫です。何かすっかり入っちゃって……。良い曲ですね」
「うん。大好き」
その瞬間、俺とマユミの目が合い、視線が絡み合った。
俺はこの時、いつも以上にマユミとの距離が縮まったような気がした。
しかし、楽しい時間はいつまでも続かなかった。
「あれ、お前五味じゃないか?」
その声で俺は夢の世界から現実世界へ引き戻された。
それはクライム≠フ「ブロークンハートジャンキー」はちょうど終わった時のことだった。
マユミは休憩室に曲を変えに行っていた。
俺の目の前にはスーツ姿の白坂が立っていた。
「……白坂」
「やっぱり五味か。何だお前ここでバイトしてたのか?」
「……」
俺は黙って白坂を睨んでいた。
「相変わらず嫌な目つきしてるな。今の俺は客だぜ。もっと微笑めよ」
その時奥からマユミが出てきた。
「あれ、白坂くんどうしたの?」
「いや、チケット取れたから持ってきたんだよ」
そう言って白坂は内ポケットから封筒に入ったクライムのチケットをマユミに手渡した。
「わぁー、取れたんだ。ありがと」
白坂は二枚あるチケットのうち一枚を引き抜いた。
「一枚は俺のだぞ。後でまた連絡する」
「……うん、わかった」
俺は二人のやりとりをカウンターの隅で見ていた。
俺の頭の奥で眠っていたあの夜の記憶が甦ってきた。
俺はどうすることもできずに金縛りにあったようにその場に突っ立って二人を見つめていた。
そんな俺の視線に気づいたのか、白坂が余計な口を開いた。
「そうそう、お前知ってた?俺とこいつ元同じ制作会社にいたんだぜ」
「え、五味君が?そうなんだ」
「こいつ俺の部下だったんだけどさ。昔から本当に使えない奴で、よくいじめてやったもんだよ。そうしたらこいつ俺に手出してきやがって、当然クビだよな。まあ、辞めてよかったよ。お前才能無いもんな」
その瞬間、俺はぶちキレた。
頭では分かっていた。
ここでまた白坂を殴れば俺は「ワールド」をクビになる。
そうなればますます白坂の思うつぼだった。
しかし、俺はどうしても我慢できなかった。
俺が拳を握り締めた瞬間、マユミが白坂の頬に平手打ちをぶちかました。
予想外の展開に俺は我に帰った。
「あんた、言いすぎよ。そういうデリカシーの無さが嫌いなの」
マユミはさらに白坂を殴ろうとしている。
俺は必死にマユミを止めた。
「安久津さん、落ち着いて。俺のことはいいですから」
「……何すんだこのアマ。せっかくチケット取ってきてやったのに」
マユミは持っていたチケットをカウンターの上に叩きつけた。
「せっかく取ってもらったけど、やっぱりいらないわ。それにあんたと行く予定なんて全然なかったし」
「なんだと……」
「ちょっとクライム≠フ話題で盛り上がったぐらいでなれなれしいのよ。それにあたし他に好きな人がいるの。だからあんたと付き合う気はないから。もう連絡しないで」
「……他に好きな男だと。そんなもんいたってしょうがねえだろ。誰がお前みたいな女を相手にするかよ」
白坂の言葉の暴力に俺は再びキレそうになった。
その時、マユミが俺の腕を組んで言った。
「……悪いけど、あたしたち付き合ってるから。だからもう邪魔しないで」
「は?五味と?こいつはいいぜ。お前ら似合ってるよ。とんだバカップルだな」
白坂の言葉は既に俺の耳には届いていなかった。
俺はマユミの予想外の行動に心臓をバクバクさせ、ただ呆然と突っ立っていた。
そんな俺を前に白坂はマユミに叩かれた頬を抑えながらゆっくりと立ち上がった。
「ふざけやがって。絶対に後悔させてやるからな……」
カッコ悪い捨て台詞を吐き捨て、白坂は「ワールド」から出て行った。
「ごめんね。突然あんなこと言って。びっくりしたでしょ」
「いや、それより俺なんかの為にありかとうございました」
マユミは既に俺の腕を離していた。
俺はマユミが組んでいた腕の感触を心の中で味わっていた。
「ねえ、五味君、今日バイトの後って時間ある?ちょっと話したいことがあるんだけど、よかったら一緒に飲みに行かない?」
「……はい」
俺は今聞いたばかりのマユミの言葉が信じられなかった。
白坂の存在が俺とマユミの距離を縮めたようだった。
次々に起こる予想外の展開に俺の心は激しく揺れ動いていた。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
人は誰でも過去を持っている。過去に出会った人物の中には二度と会いたくない者もいるはずです。そんな過去の人物と再会した時、人はどうするのでしょうか?
過去に立ち向かおうとしている男を見た時、女はどうするのでしょうか?
白坂の出現で凛とマユミの関係にも変化が訪れた。
果たしてこの先どうなってしまうのか?
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年06月09日(金) 10時51分08秒,20060602202800,20060612105108,hmk4aUV8lqRC6,オリーブ,青夜,,,大きな森の小さな小屋に
月光に照らされた少女がたたずんでいる
彼女はオリーブと呼ばれた
「オリーブ、こっちに来て」
「水が足りないの」
彼女は笑って呼ばれる方に走っていった
水が、彼女の足元に現れた
人は水に群がった
彼女の姿は消えていた
「オリーブ…」
人々は水を飲んで活気を取り戻した
乾いていたはずの川にはキラキラと水が流れている
「お母さ〜ん!!川に水が!!」
オリーブの居た小屋は消え、
オリーブの葉が一枚落ちていた
,天光さんのアドバイスを受けて、直してみました。
良くなってるといいなぁ。
(本当にアドバイス受けたとこだけ直した)
,#5400A8,./bg_b.gif,59.140.62.153,1
2006年06月01日(木) 18時47分25秒,20060601184725,20060604184725,gTT7YS03xEwBQ,孤独の天使,満月悠,etsuzaki@yahoo.co.jp,,
一人だった。
闇色に染まった、森の中で。
深い森の奥で。
周りには大木が茂っていて。
その中に一人。
罪を犯してしまった今、もう戻れない。
帰る場所が、ない。
なんだか遠い昔にもそんな大きな罪を犯してしまったような気がする。
淋しかった。
胸に深い悲しみと罪悪感が充満している。
自分は、罪人。
自分は、罪を犯してしまった。
ふっ、と閉じていた瞳が、ガサリという音で開いた。
「悠里・・・。ここにいたんだね」
少年だった。
自分より数センチほど背の高い黒髪の少年。
綺麗で、どこかで見た絵本に出てくる天使だと思った。
「一緒に、帰ろう」
静かに微笑むと膝をついてそっと細い体を抱きしめてきた。
冷たく冷え切ってしまった体を、少年の温かい体温が包んでいく。
「ね・・?一緒に帰ろう」
「あ・・・」
少年の優しい言葉と瞳に、一時やっと止まりかけていた大粒の涙がまた瞳から流れ出していた。
いく筋もの涙跡を新しく流れ出したものが濡らしていく。
「ひ・・っく・・・ん・・・」
いつの間にか少年の背に腕を回して抱きつき、泣きじゃくっていた。
まるで、涙を流すことで、罪を忘れようとするかのように。
,初めまして。
初投稿の悠です。
まだまだ下手ですが、今後も長編として投稿していきたいので、以後よろしくお願いします。,#000000,./bg_g.gif,218.139.212.69,0
2006年06月01日(木) 18時17分28秒,20060601181728,20060604181728,gOPRw4lJknJhI,血塗られた少女 07.,朱鷺,iruka_609@hotmail.com,,放課後。
誰もいない廊下を一人歩いているとき
「ちょっと」
廊下で担任に引き止められた。
「何スか?」
日直で遅くなってんだから早く帰りたいんだけどなぁ・・・
「蒼井さんに伝えて欲しいんだけど、進路希望調査出しなさいって」
何で俺に・・・あ、遙友達いないもんな。
頷きその場を去った。
―前に遙の携帯番号教えてもらっといてよかった。
「はっ?携帯?あんたに教えてメリットあんの?」
昼休み。いつも冷たい彼女が携帯をもっていることを知った。
「いいじゃーん!俺と遙の仲でしょ?」
彼女は冷たくどんなんだよ。とツッコム。
「いいからーはい、俺のも教えてあげるから!」
「いらん。」
こんな会話を続けて15分―
「あーもう!分かったよ!はいどうぞ」
念願の携帯番号。
やっとの思いで・・・てか携帯ぐらいいいじゃん。
「いっぱい電話するからね!」
「やめて?」
ピリリリリ、ピリリリリリリ。
「其田?」
助手席に座った黒いコートを纏った女が言う。
「いえ、蒼井遙のものだと思われますが。」
音源は遙の鞄の中だと推測される。
「そう。」
《着信:河合 和泉》
携帯の持ち主。遙は熟睡中である。
「・・・何だよ出ねーじゃん・・・」
―ここはどこかの山奥。
正直何もなく山だけ。
山奥にひっそりと建っているこの大きな建物。
何かの施設だと思われる。
そこで車は止まった
「連れて行って」
黒スーツを纏った女の命令通り遙を連れて黒スーツの男が中に入っていく。
・・・うるさいなぁ。誰だよ笑ってんの。
もうちょっと静かにしようとか思わないわけ?
何かあたし縛られてる?動けないんだけど・・・
・・・てゆーかあたしどうしたんだっけ・・・
此処は何処?
微かに聞こえる誰かの喋り声。
きっと女の子と男の子の二人だろう
「ねー凌ちゃんこれ誰?新しい仲間なのかなぁ?」
「凌ちゃんって言うなって。てか俺に聞くなよバカ奈緒」
「あー!バカって言った!バカって言う方がバカなんだよぉー!」
眼を開けると、やはり女の子と男の子。
左側の女の子はジーンズ生地のミニスカートに黒のベルト、
上は膝まであるかないかぐらいの白の半そで。
右側の男の子は黒のノースリーブに普通のジーンズ。
見たこともない二人だった。
「わっ。凌ちゃん、起きちゃったよ?」
「あれ?本当だ。綾子呼んでこなきゃ。」
・・・何言ってんのこの人たち・・?
凌ちゃん?綾子?誰・・・。
「凌。奈緒。起きた?」
そう言って入って来たのは白のカッターシャツに黒のズボンの女の人。
・・・あれ?この人・・・。
学校の校門前の人だ!
「起きたよぉー今さっきだけどー」
″奈緒″と呼ばれていた女の子が言う。
「そう。じゃあ部屋に戻ってなさい」
はーいと長めの返事をした女の子に″凌ちゃん″と呼ばれていた男の子がついていった
で、此処は・・・
「あなた誰なんですか?此処は?」
「嗚呼、私の名前は羽野 綾子。あなたのような人たちを集める団体、ERの・・・って今一気に言ってもわからないわよね。」
・・・?
何?私みたいなって・・・もしかして私が変な怪物を殺してるって事を知って・・・?
「とりあえず貴方には真実を教える意味があるわ。」
そう言って彼女・・・羽野綾子と名乗った女性は部屋を出て行った。
「一気にやっていいわよ。」
「え・・・いきなりですか?まだ初めてですよ?」
「いいから・・・。あの子には強くなってもらわないと困るの。」
「―はい。」
どこからともなく声が聞こえる。
羽野の声だった。
「蒼井さん。これから起こることに手出ししちゃダメよ。」
はっ・・・これからって何・・・?
そう思っていると世界が変わる。
何もない暗黒の中にいつの間にか私が一人で居た。
何処・・・何か怖いとは別の不思議な感じがする
いきなり周りが明るくなった。
どこかで見た事のある風景―
人の家だと思われる。
「遙・・・お母さんはもうだめだから・・・あなたは生きるのよ・・・」
遙・・・って私!?
私の名を呼んだ人は目の前の小さな子供・・・小学生くらいの。
その子に向かって確かに″遙″と言った。
次の瞬間。
母親らしき人の姿が変わった。
・・・私が倒していた怪物の姿だった。
小さな私が泣く
「嫌・・・お母さん・・・」
すると、怪物になった母親が子供に襲い掛かった。
その瞬間がとまって見えた。
まだ触れられてもいない子供から血が滲み出してくる。
目つきが変わった。
見ているとまた、景色が変わった。
スッ。そんな音がした
一瞬だった。
母親と子供の位置が逆になり、母親は倒れ込んで血を大量に流している。
目つきが変わっていた子供が母親にかけより叫び続ける。
子供もそのとき、何故か血だらけだった。
「は・・・遙・・・貴方は私の・・・一番・・・・大切な子・・・だよ・・・」
そう言って母親は目を閉じた
「お母さんっ・・・・お母さん!!!!!」
泣き叫ぶ子供。
″遙″と言う名前の子供。
私。
泣きじゃくる子供は分かっていないのか?
今母親を殺したのはあんただよ。
・・・・・・私。幼い時の私が自ら母親の命を絶たせた。
それを今・・・真実を。見たのだ。
″私が自分の母親をこの手で殺していた″
この真実を―,久しぶり(?)なことはないかw
もう早くも6月です。時間が過ぎるのって早いですねー;
早くも7話です。
一体いつまで続くのかコレ・・・w
今のままだと30話とかいきそう・・・^^;,#0000A0,./bg_c.gif,220.51.148.83,0
2006年06月03日(土) 14時52分38秒,20060531194626,20060606145238,gmnKFXKr7RSxc,失われた時間を取り戻した瞬間,美奈子,,,「祐之助先生?」
日本でトップ級クラスの聖徳総合病院内にある精神科の診療室に、男性医師
と女性患者が丁度良い位の距離で一対一で目線を合わせながら、カウンセリン
グを行なっている。
「祐之助先生?」と女性患者に下の名で呼ばれた男は精神科医で、つい最近
三十代半ばでこの大型病院の理事長に就任したエリートサラブレットの聖徳祐
之助。テレビなどで活躍している俳優陣と引けをとらぬ程、きいれいな端整な
顔にスマートで長身、その上乗せのように性格は上品で誰に対しても海のよう
な無限の優しさと寛容さで接するマナーをわきまえた大人の男性。
「どうしました?紗々原さん」
物心ついた頃から内気で人見知りな性格で罪意識や強迫観念が強く、不安な
気持ちに敏感で硝子細工よりもろく傷つきやすい心を持つ半面、プライドが高
く、上昇志向を望みながら年を重ねれば重ねるほど遥か遠く彼方まで彼女のな
りたい自分には届かず鰻のようにするすると彼女の手からすべり落ち彼女の願
望は川へとポチャンという水音を残して逃げてゆき、少し悲劇な顔に精一杯の
見栄の笑いを歪ませながら
「鰻は好物なのに。でもあの鰻は私にふさわしくなかったのよ。私にはもっ
ともっと上級な鰻がふさわしいから逃しただけ・・・」
そう思いながらその場で座り込み大粒の涙を流し、人生の中の一部の貴重な
十代の時間を自ら止め心を閉ざした思春期の自分を未だに引きずり何とか今ま
で生きてきた女の名は紗々原星(ティアラ)。
「どうしました?紗々原さん」再度聞く祐之助。素敵な笑顔が消え心配顔で
星に聞いてくれる祐之助。星は祐之助だけにしか見せない最高な笑顔で「大丈
夫です。ごめんなさい」と謝る。そう私は見つけたの。私という存在を認め
理解してくれる、かけがえのない男性。私に生きる希望と人生の時間をもう一
度開けてもいいかと思わせてくれた、愛しい祐之助。星(ティアラ)が見せる
夜空に輝くきらきらとした星(ほし)のうな笑顔を見て祐之助にも笑顔が戻り
ながら「今日は立場が逆になっちゃったかな。僕は医者としてまだまだ・・だ
な」と言うが星は「そんな事、全然ないです。私にとって祐之助先生は世界
一、宇宙一、優秀な精神科医です」祐之助は照れくさい笑顔を浮かべている
が、星は心底そう思っているのが素直に言葉として出しただけ。他人を褒め
る。自分の声で言葉として伝える勇気を教えてくれたのも祐之助。
「さっき僕に言いたかったことがあったのでは?」
「うーん。やっぱりいいです」と言いながらもちらちらと診療室の窓側のテ
ラスを見ている星の視線に気づく祐之助が「今日も暑いですね。紗々原さん暑
いの苦手でしたね。遮光カーテンを引きましょう」と自動リモコンを取り出
そうとした瞬間、「あっいいです。このままにしていてください」と急ぎ口
調でお願いする星。
「外に気になるものがあるんじゃないですか?」と祐之助が聞くと、
「・・・花々がとてもきれいだと思って・・・」と本心の気持ちと少し違う
返答を信頼している祐之助に語っている自分に軽い罪悪感を抱きながらも、星
の大嫌いな真夏のギラギラした太陽。星の心身を変調にきたし苦しめる鋭い温
度と紫外線も、現在クーラーが効き涼しい診療室にいる星にとって敵ではない
が、どうしてもテラスに咲き誇っている夏の花々達の一種の花のあたりに星が
気になる物体がいるのだ。最初その物体を発見した星は驚き、この世に本当に
存在する生命体?だったのか・・それとも、夏の暑さで頭がおかしくなり自分
だけ幻覚を見ているのではと恐怖で軽いパニックを起こしかけたが、祐之助の
顔を見るとすーと心が落ち着くのである。一人の時にその物体を見ていたら一
日中不安と恐怖に怯え心も体も身動きがとれなくなっていただろう。祐之助は
星にとって心の安定剤になり癒し効果のある人物だ。「二十四時間ずっと祐之
助先生と一緒にいれたら私の病気は永遠に完治し、私を苦しめるもの何もなく
なるのに」と思う。祐之助にはその物体は見えてないようだが、それでも祐之
助と一緒だから恐くない。星がちらちらと見ている方向に祐之助も視線をうつ
し、星に優しく教えてくれた。「あの花の名はエンゼルトランペット。ご存知
でしたか?」と聞かれ首を振る星に「花が下向きで天使がラッパを吹いてる
ように見えるからエンゼルトランペットと名付けられたようです。花を身近
で見せましょう」と祐之助がテラスに向かっている時に、星は「これで謎は
解けた・・」と推理漫画や小説などによく出てくる合言葉を推理探偵になった
気どりで心の中で軽く楽しげに叫んでいた。祐之助が窓硝子を開けると星の大
嫌いなミーンミーンという声を出し泣いているセミの声と同時に、涼しい診療
室にモァと暑い熱風が入ってきて星の顔が歪む。昔の記憶が本人の意識と関わ
らず思い出される。十代の頃から嫌な出来事は必ず夏に起きた。小学校五年の
夏の初旬に突然クラスメイト全員から無視をされ、いじめにあった。今まで仲
の良かった女友達も、クラスのリーダー的存在の今野という男児に「紗々原と
仲良くしたらお前らも同然の扱いだからな」と威圧で脅迫的な言葉で、星と
目も合わせなく話もせず、しだいに今野達と一緒に精神的にも肉体的にも暴
力を奮う獣達の仲間に加わり、おもしろいゲームを楽しむかのように星をスト
レスの捌け口のおもちゃのように遊ぶ。「やめて」の言葉も救いを求める勇気
と気力も失せながら、夏の太陽を、目が悪くなるのではと思うぐらい長い時間
睨み、涙を心と体の傷の痛みの分まで流し続けた。
「お前の家、超貧乏」「カビ臭い。近寄るな」「紗々原さん勉強全然できな
いよね。運動もダメだし、クラスの恥」「私正直紗々原さんみたいな人大嫌
い」
大嫌い。大嫌い。私もみんなが大嫌い。
星は五年生の少女時代に心がタイムスリップしていた。祐之助がそっと星の背
中を優しくさすってくれている。星は自分で気付かないうちに過去の出来事を
口に出し、興奮しすぎたのか過呼吸になり息苦しい状態になっていた。
「ゆっくりとゆっくりと落ち着いて深呼吸して。出来なかったら軽い呼吸し
て」と祐之助が落ち着いた態度で適切な処置方法を教えてくれ、星はその通
りにする。数分して呼吸が楽になると言った。
「私、まだ話したいこといっぱいあるんです。ネガティブで暗い過去の話
が・・・人が聞いたら、何だ、そんな馬鹿馬鹿しいことで悩んで苦しんでア
ホらしい、と思われて変な顔されるのがおちなんですけど・・・」
「そんな事はないと思いますよ。紗々原さんが今まで経験した事で馬鹿馬鹿し
いで片付く問題は何一つないと思います。それに本人が馬鹿馬鹿しいと思っ
ている内容の方が、誰にも相談できず苦しみ、重要な話だったりします。
紗々原さん、自分の過去を馬鹿馬鹿しいものと思うことはありません。紗々
原さんの過去はすべて貴重で意味のあるものです。僕でよければ話してくだ
さい。僕は紗々原さんのネガティブで暗い話を聞く耳を持っています」
星はその祐之助の言葉で、「やっぱりこの人には何でもさらけだせる」と心
に希望が少しずつまた築まれてゆくのを実感した。
「中学に入ったら、生徒を差別する先生がいて私は目の敵にされました。「蚊
の泣くような声で喋るな」「鶴も折れない奴は人間をやめろ」他にもたくさ
ん言葉の暴力を言われ、一言一言が未だに私の脳に残ってるけど・・・」
「無理して言わなくていいですよ」祐之助は自分の診察イスに座りながら、先
程と同じように木製の机を挟み星の座る患者用イスに丁度良い距離感から星の
ひとつひとつの目線を優しく逃さず聞きながら言ってくれる。
「クラスメイトの子達も雰囲気的に「可哀想な奴」「でもあの子ネクラっぽく
て気味悪いし、自業自得」とひそひそ話されて、私を目の敵にした梅原先
生の授業の時は先生もクラスメイトも敵になり、誰かとペアになって授業を
する時は誰一人私とペアになってくれなかった。それを見て先生もクラスメ
イトもクスクスと笑い、私の些細な失敗も大笑いして楽しんでいるかのよう
だった。私はだんだん学校に行くのが嫌になった。教室にも学校のどこを捜
しても私の居場所は見つけられなくて、教室で次の授業が始まるのを惜しよ
うに仲良しグループでお喋りをしてる子達を背に一人で時間をもてあま
し、平気なフリをしているようで出来ず、教科書を何回もペラペラとめくっ
たり、机を拭いたり、挙動不振の態度になり「情けない奴」と男子生徒にか
らかわれ、一番つらかったのは私という人間が存在していないかのような言
い方をされたり、わざと無視したり。でも一人の時は誰一人そんな事しない
んですよ。数人集まった時だけ小学生と同じように、一人の人間をとことん
あきるまで奈落の底に突き落とす勢い。私はついに学校に行かなくなり、不
登校児になりました。三日ぐらい仮病で休んでいたんですけど、自分の為に
学校は地獄みたいな場所だけど行かなくてはと思った矢先に担任と副担任が
心配して家を訪ねてきてくれた時に、私が不登校児なのではと親に話してい
るのを聞き、もういいや。楽になろう、無理して行く場所ではない。自分が
本当に楽しいと思える学校でなければと・・」
家が貧乏で毎日食べていくのがやっとの我が家にはクーラーなどなかった。
蒸し蒸しした狭い家で私は一日中寝ていました。眠っている時だけは辛い事、
悲しい事もすべて消え去り忘れさせてくれ、時には楽しい夢も見せてくれ、時
には学校での恐ろしい悪夢にうなされ汗びっしょりになりながら、夢の世界と
現実のギャップに落ち込み・・・ミーンミーンと星にとっては耳障りなセミの
声を聞きながら「私の周りには低レベルの人間しかいない憎い奴らばかり」そ
う星は呟き、濃い塩分の涙が頬に生ぬるく伝う。中学時代の星の心の痛みがま
た涙として祐之助の前で形として表れ、祐之助はさりげなく、ティッシュ箱を
目の前に置く。星はティッシュを一枚取り出し、目と頬の涙を拭く。最後に少
し気になっていた鼻水を祐之助に見られないように、うつむき加減で拭きと
る。拭きとると、また正面を向き祐之助を見る。
「そういえば今まで診てもらってた精神科医の人達と目を合わせて話せること
なかったのに、不思議」星は呟き思う。
ほんの数秒だけなら目を合わせられるが、それ以上は人の目が恐くて限界な
のだ。よく注意された。梅原先生にも、少しの間だけど働いていた職場の先輩
達にも。
「人の目を見れん奴は人間失格」「親の躾がなってないみたいね」と。
「祐之助先生。自分でも本当は心の中では思ってるんです。人と話す時は目を
合わせなくてはダメなこと。でも出来ないんです。私、出来ないことがこの
年になってもたくさんあって、いっぱい落ち込んで、自分に自信がなくなっ
てしまうんです」
「人と目を合わせられない・・出来ない事の内容を良かったら話してもらえま
すか」
祐之助がそう言うと星は、
「知ってる人ほど挨拶出来ず、心臓がドキドキして上手に会話ができませ
ん。血縁関係のある親戚の人たちに強い抵抗があり、従妹達が社交的に物怖
じせず、遠い親戚の人達と話をしたり、お茶や料理を私以外の親戚達が男性
の親戚達の為に振舞っていても、私は「手伝います」の言葉もかけられない
んです。誰かに声をかけてもらうのを待っている・・きちんと挨拶をした
り、お手伝いしたい気持ちがあっても行動にうつせてなかったら無意味です
よね」
「知っている人程、親戚」とカルテに書きながら祐之助が「意外と血縁関係
ほど人間関係というのは難しいものです。幼い頃の紗々原さんを知ってる方
ばかりですから、何かしら紗々原さんの心の中で身動きとれない違和感があ
るんでしょうね」
星は祐之助の言葉が自分にあてはまるような気がし、静かに頷く。
「今は初対面であろうとなかろうと昔よりは社交的になった気もするし、し
ないような気もするし、人と触れ合いを求めたい気持ちがあっても時間がか
かります」
「僕も人と仲良くなるのは時間がかかります」
「嘘!私の為にそんな事言ってらっしゃるんでしょ」
「嘘じゃない。僕も人間だから嘘をついてしまった過去はありますが、僕の
担当患者さんには決して嘘はつきません」
「・・私も嘘をついたことたくさんあります。現在も時々・・自分を守る為
の嘘を・・嘘つき呼ばわりしてしまってすみませんでした」星は顔をひきつ
らせながら祐之助に頭を下げ、謝罪をする。星にとって祐之助はどこから見て
も社交的で、人がほっとかないぐらい愛される人気者の人物に見え、自分とは
正反対だと思っていたのでとっさ的にでた発言だったが、少し自分と祐之助に
似てる部分があると知り、心の中で喜びの感情と申し訳ないという気持ちが入り混じっていた。
「紗々原さん、僕は気にしてません。顔を上げて下さい」
祐之助の言葉の元、顔を上げる星の瞳に映ったのは変わらない祐之助の優し
い笑顔で、星の心は安堵な気持ちになる。
「ですが、紗々原さんと僕の人付き合いが苦手という部分には差があるんでし
ょうね。自分の満足ゆく部分範囲まで到達しきれず、人と比べもどかしい気
持ちを紗々原さんは悪いことだと感じ苦しんでいる?」
「その通りです。幼い頃から人と接するのが苦手で、小学校低学年の頃は友達
が私の母親に告げ口したりして・・・」
「星ちゃんは学校ではものすごく大人しくて、先生に話しかけられたらすぐ泣
くのに、お家ではこんなに明るいね。どっちが本物の星ちゃん?先生とかは
何でも明るくハキハキと人と話しなさいと言うのに星ちゃん、きちんとでき
てないからいけない子だよねぇ、星ちゃんのお母さん?」
幼い過去の友人達が決して悪気があって「いけない子」と言ったのではない
というのは、成人した星、今分かる。
「人格形成の段階で大人に教わったことは、すべて正しいと純粋で真っ直ぐな
心を持った子供達は思うこと。特に両親や先生という立場は絶対的な存在
で、その人達が言ってることと反することをしている人を悪かろうと良かろ
うと、言葉は悪いかもしれないけど、告げ口という形でまだ幼かった私の心
を傷つけ、また私も誰かの悪口や告げ口を言ってしまい私のように傷つき、
私を憎んでいる人がいるかもしれません。・・幼稚園、小学校、中学校・・
その後出会った人達・・」
「幼い頃の記憶はたいがいの人は忘れ去ってますよ。たとえ紗々原さんの言葉
で未だに傷ついている人がいたとしても自身で乗り越えたり、誰かに傷を癒
してもらってる場合もあるし、紗々原さんがそこまで罪悪感を抱く必要もな
いです。それよりも紗々原さんは今の・・未だに幼い頃の記憶をしっかりと
覚えていて、それが紗々原さんの生き方に困難な心の壁になってるんです
ね」
「私の母親も、大人しいのは将来大人になった時デメリットになるとの考え
で、悪いこととみなし私に明るくなるよう教養しましたが、無理やりされれ
ばされるほど自分を見失い、自信をなくし、現在の人格形成ができてしまっ
た。大人しくて暗い子は悪い子で、誰も相手してくれない。実際に学生時代
が証拠そのもの・・」
「大人しいのも個性のひとつなんですけどね。いろんなタイプの人間がいるか
ら面白味があって飽きないですし、大人しい以外の紗々原さんの良い部分を
見つけ出してくれる学友に少し恵まれなかったようですね。しかし、学校だ
けがすべてではありませんし・・・」と祐之助がまだ語ろうとするのを星は
遮り、「私に良い部分なんて何ひとつありません。怠け病、仮病、裏切り者、
わがまま病、甘え病、人間のクズ」そう言い、今まで以上の激しい涙を溢れ
させかすれた声で、「父親がそう言いました。私も自分でそう思い・・。父が
嫌いです」
星の顔は今まで祐之助に見せたことのなかった、憎しみで歪みひきつった表
情になりながら話を続ける。
「中学生の頃の不登校あたりから父親と少しずつ溝が生まれ、今まで私が知
る優しいパパじゃなくなっていきました。学校に行かない娘は情けない。こ
んな奴俺の娘じゃない。俺の娘だったらこんな奴に育たないし、俺の家系の
血筋じゃない。親戚や友人、会社の人達に俺ら親の育て方が悪いだのなんや
らと。なぜ真面目に働いている俺がそんな事言われなくてはならないんだ。
私に向かって、お前のせいでどこに行っても恥をかくと無理やり学校に行か
せようとしたり、学校に行く約束をさせられたけど、守れませんでした。父
は私に、お前と同級生の子らもそれなりに悩みがあって、学校に行くのが毎
日楽しいと思って登校する子なんて今の日本じゃ少ない方だ。それでも我慢
して登校してる同級生をお前も見習え、一人だけ逃げるんじゃない。俺との
約束も守れずに、その上心配してくれている友達との約束も守れないお前は
最低だ。人間のクズ・・」
星はまた過呼吸になり、祐之助が正しい処置をしてくれながら「紗々原さ
ん、話すのが辛かったらやめてかまいませんよ」と優しく諭すが、星が「今
日はすべて吐き出したい」と答えると「分かりました。話を聞かせてもらい
ます」と祐之助は返答する。
「担任と副担任、少数の友人と両親は私が思っていた以上に心配してくれて
いたと思います。親戚や先生、両親達も、自分達が言わなければ誰が言うみ
たいな、あえて悪人になってくれたのかもしれません。学校側も、私が自分
の教室、クラスメイトのいる場所に行ける日までと、使用していない小さな
教室を私専用の教室にしてくれ、学校は辛い場所ではないと個人授業をして
もらいながら話を聞かされ、私に考える余裕と時間をくれました。私が不登
校という形で悲鳴を出すことで、私にとってはひとときの良い環境でした
が、後々研修センターで、私みたいな不登校児達との話し場でのことで、私
が通っていた学校側の対応はとても素晴らしくて「羨ましい」「そこまでし
てもらって、どうしてあなたは学校に行けないの」「贅沢すぎる」と不登校
児の一人の親に言われ、ショックでした。確かにSOSを出したことで、私が
学校に行けなくなった理由の梅原先生やクラスメイトとその親達に校長先生
などが話し合いの場を持ち、クラスメイトとその親達には温和な態度で一人
の生徒、私の気持ちを代理で伝えて分かってもらおうと努力して下さったよ
うで、梅原先生には大層な御灸がすえられたようです。私はそんな状態に正
直「ざまあ見ろ」と優越感に浸ってたのも事実ですが、でも私は学校に一人
で行ける健康な足は持っているはずなのに、不健康な心が学校に行くのを邪
魔します。私の弱い心が善意を無駄にする行為の私に父親はものすごく激怒
し、生まれて初めて殴られ、蹴られ、暴力を奮われました。私だって本当は
人の善意を無駄にしたいとは思ってはいない。逆に感謝していて、その親切
な善意に応えたいと思っても心が身動きとれず、人の優しさを棒にする自分
が嫌いで許せなかった。でも父親や母親にはそのことを分かってほしかった
けど、お前の話など聞いても無意味だと、それ以来から親子の関係が崩壊し
てゆき、父親に肉体的暴力、言葉の暴力は高校を一ヶ月で中退し仕事も長続
きしない私に日々襲い、私が悪い事でない内容も「矛盾だらけのお前は何し
ても悪い。働かない奴は飯を食うな。生意気な事をお前が言う権利はない。
お前は誰からも愛されない存在。お前以上に最低な人間いない」と。もう何
年も両親に星という名前で呼ばれず、言葉と肉体の暴力に耐え、自分を惨め
で情けない奴と思う日々が続きました。私の生き方が間違っていた?私だけ
が悪いの?「あんたさ、真面目にもなれなきゃ不良にもなれない中途半端よ
ね。もう正直学生でもなく社会人でもないあんたの面倒まで見れるほど、我
が家は余裕がないから出て行ってよ」母親も星と名を呼んでくれず・・精神
的苦痛しか与えてくれず。「大家族のドキュメンタリーとか見てるとさ、一
番上の子とか他の下の子達も親の助けになって働いて家計を助けて頑張って
る子ばかりなのに、あんたはダメよね」私は一番痛い所をつかれ深く傷つ
き、惨めな気分で、大家族の子や、家がたとえ経済的に余裕があったとして
も親や兄弟の為に頑張ってる自分と同年代の子とのその差は何で起きるんだ
ろう。私は他人から見ても落ちこぼれに見られてる」
星は祐之助に対してタメ語で喋っている自分に気付き、こんな自分の家のし
がらみを真面目な瞳で耳を貸してくれる人に悪いと思い、改めなきゃいけない
と思った瞬間、またもやエンゼルトランペットの側にいる物体が気になりだ
す。エンゼルトランペットは祐之助の右手側の机に置いてある。祐之助はエン
ゼルトランペットの花を星の方にさり気なく置いてくれる。オレンジ色の花が
下向きに咲き、生命力満ち溢れんばかりの強い香りが星の鼻から吸い上げられ
脳に浸透してゆき、祐之助のように、星に対して優しく星の心と脳に癒しとい
う元気を補給してくれる。
「私、今日からエンゼルトランペットが一番好きな花になった気がします」と星が言うと、
「早いなぁ。でも花も人間の言葉を理解出来るらしいし、エンゼルトランペ
ット、きっと今の紗々原さんの言葉喜んで聞いて、今以上に美しく咲いてく
れるでしょう」と祐之助が優しく微笑み、星も自然と同じ顔になる。
「紗々原さん自身が嫌でなければご両親も交えてお話をしてみたいのです
が。どうでしょう」
「私もそう思ってはいます。やっぱり現在の私の置かれている家での環境や
立場も私の病気の引き金になっています。でも、母は必ず先生と会ってくれ
ると思いますが、父親は頑なに拒否すると思います。今までお世話になった
先生方にも会おうとしませんでしたし、祐之助先生みたいに医師から会いた
いと申し出て下さる先生はいらっしゃいませんでしたし・・」星は黙り込
み、エンゼルトランペットの花をちょんちょんと小さな指で楽しく遊んでいる
物体の可愛らしさに微笑し、
「家庭でのことはある程度把握しないと容易に介入出来るものではないし、
自分で努力して親と解決出来ることもあるだろうと・・。それに私の話して
ることは意味が分からないと言われて・・」と、そのような発言をした心療
内科医の木戸に対しての信頼感はその時点で失っていた。この世界に私を理解
してくれる人は結局おらず、歳月が経つとみな、私のことを嫌ってゆくんだと
いう絶望感と軽い被害妄想に悩まされ、心の病を治してくれるはずの専門医師
に余計ヒドクされた傷も祐之助先生との出会いで消され、むしろ木戸の「私に
は、あなたを診れる自信がない」からと祐之助を紹介してくれ、紹介状を書い
てくれた木戸。そして「自分の知識だけじゃあなたを治せない」と素直に自分
の能力不足を認めた木戸には感謝しているが、時折、やっかいな患者、星を祐
之助に押し付けたのだろうかとも思うが、でも木戸の発言で今も気になる言葉
があった。
「祐之助先生。私の話してること、意味分かりませんか?」
祐之助は「話をして下さった部分ではきちんと僕は理解をしているつもりで
すが、星さんとはゆっくりお話してみないと分からない部分もあるかも知れ
ません」
「私、変じゃないですよね?普通の人より劣っていて、心の殻に閉じこもり
引きこもりをしている時間が長くて、家族や人と喋る機会も少ない半生を送
ってきた分・・まぁ元々人とのコミュニケーションをとるのが苦手なタイプ
ですけど。私の話し方は人に上手に伝わりにくいみたいなんです」
「紗々原さんの話は十分伝わってます。それに紗々原さんは全然人より劣っ
てないし、比べることもありません。長い時間心の殻に閉じこもり、引きこ
もりをしていたとしても、心の中では他の人が考えない深い悩みと葛藤し、
きっと一人でもがき苦しみ、答えを見つけ出そうと一生懸命だったんじゃな
いですか。辛かったですね。そして一人で答えを見つけようとしたことは偉
いことですよ。自分で自分を褒めてあげてください。紗々原さんは自分は逃
げてばかりの人生と言い、思っていると言いましたが、僕から見た紗々原さ
んは、人からにもはっきりと見てとれる世界観では病気のせいで逃げてると
しか認知されなかったかも知れませんが、人が見にくい世界、星さんしか見
れない星さんの心の世界では決して逃げたりなど一度もしてませんね。いつ
も紗々原さんは自分の心と向き合い、一度たりとも逃げず生きてきたんで
す。だから現在の、今の紗々原さんがいらっしゃるし・・。見方を変えまし
ょう。過去の心に、殻を閉じ引きこもりをしていたのも、紗々原さんのオリ
ジナリティです。個性です。親戚や、学生時代の仲間、仕事仲間と上手にコ
ミュニケーションをとれなかったのも紗々原さんの個性。目を合わせられな
かったことも、家族との関係すべて。紗々原さんだからこそ、すべての辛さ
や苦しみを乗り越えられる力を他の誰よりも持っていたから、あえて紗々原
さんの遺伝子が人間的成長の為に作動させてくれたと。貴重な体験をしたん
だと、あえて思って見ませんか?」
星の瞳から、半分以上のネガティブな感情が星の体内から噴出してゆくのを感
じ、心がクリアになって晴れやかな感情だけが今は入ってゆくような涙と笑顔
がこぼれる。
「祐之助先生の言葉は人の心を美しくしてくれる力がありますよね」
一回だけ星と下の名で星を呼んだ祐之助。そこに何が隠されてるのか、今の
二人は気付いていない。
「そんな風に言って頂いたのは初めてです。ありがとうございます」
「お礼を言うのは私の方です。ありがとうございます。祐之助先生は私が求め
てた言葉と、生きる希望を見つけて下さった方。本当に感謝しています」
星は十分なカウンセリング、悲しみの涙から始まり最後は生きる希望の持て
る祐之助の愛のこもった言葉で嬉し泣きで涙を終わらせ、ティッシュは半分以
上使ってしまい、今後はタオルを持ってこようと思いながら過去の木戸のこと
を思い出す。私の心と考えを理解してくれる人はおらず、自らが創り出した不
安と恐怖、孤独感、自分の未来に絶望感を抱き、心もささがら体も変調をきた
し、胸焼けと激しい吐き気に襲われ、食べ物を見るだけでも拒絶反応で、この
まま衰弱して死んでしまうかもしれないと、不安と強迫観念に一人で闘いなが
ら、姉が作ってくれた卵粥を一口二口と、食事中にも容赦なく胸焼けと吐き気
が襲い、精神的苦痛でうっすらと涙目になりながらもワカメの味噌汁を汁だけ
飲み干し、最後に大好きな緑茶を命欲しさに飲む。一番辛かったのは、食後消
化するまでの胸焼けと吐き気の激しい辛さ。少ししか消化するものを食べてい
ない分早くお腹がすき、星は憂うつになるのだ。こんな苦しい思いをしながら
も、「私は人間だから、食べ物を口にしないといけない」そう思うだけでも胸
焼けと吐き気は日々を重ねる度ひどくなる。
「食べ物を口にしなくても平気で、死ぬことを恐がらなくてすむ永遠の命を
持つ人になりたい」そうすれば、私を恐がらせるものはなくなる・・・。
星の心と体はどんどん日々変調をきたす。頭がどっすりと重く、本もテレビ
も集中して読めず、観れず、あの頃星が好きだった彼氏にも興味が持てなくな
り、何をしても楽しくなく、逆に疲れるばかりで気分は落ち込み、息苦しさも
感じ、どんどん自分が生気を失い、自分は重い病気ではないだろうか。命も危
ないのに親はどちらも私を助けようせず、知らぬふり。死神だけが手招きして
る感じがし、不安や恐怖も絶頂をきたし、死神と思うと神様と唱え、テレビな
どで、殺人事件や無意味で尊い命を犠牲にされ亡くなった人、一人暮らしの老
人が孤独死したニュースをベッドで横たわりながらすべては我が身に起こるの
ではと、ニュースキャスターが死、死、死と仕事とはいえ連発する度に、小声
で生きる生きる、私は生きると、星は自分の不安と恐怖から逃れるように震え
声で出して叫ぶ。星はほとんど寝たきりの状態になってゆく。起きているのが
とても辛い。ベッドに横たわっていても、心の不安と恐怖は取り除かれない。
取り除かれるのは一時の睡眠に入る時間だけだが、時には悪夢にうなされ、余
計心と体のダメージが激しく、もう完全に生きている実感がゼロ状態。あまり
の不安と恐怖に、ついに気が狂ってしまったのではないかと、母親に受け止め
てもらえないと分かってるのに泣きすがる。星はその頃の自分の未来像は、病
院のベッドで点滴をうたれ、人間じゃなくなった自分のまま、人生の最後を送
るシナリオまで思い描いていた。そんな星を影から心配していてくれた兄弟
達。星と十歳離れた、バツイチで一人の男の子の母親である姉の愛。星と三歳
離れている弟の航。そして六歳離れている妹の麗と、末っ子で星と十一歳離れ
ている妹の凛。弟の航は、姉の星の「病院に行かせて」のSOSをすぐさま受け
止め、病院代の壱万円を仕事の昼休みに星に「早い方がいいでしょう。姉さ
ん」と渡しに、わざわざ仕事着のまま戻ってきてくれ、星がその頃の、現在
も手放せないでいるポカリスエットとヨーグルトまで買ってきてくれ、「これ
なら星姉さん食べれるかな?」という気遣い。姉の愛は、「きちんとした栄
養分のあるもの食べないと怖い」という妹の為に、毎日卵粥と、これも手放
せない、味噌汁を作ってくれた。正直、愛は幼い息子もいる身で、昼間はパ
ート働きで、愛も精神的に辛かった時期であろうと後になって星は気付くが、
時に星に両親と同じような言葉の暴力発言もあったが、それでも星の介抱を母
親の変わりにしてくれ、母親に「星の病院はお母さんがちゃんと責任持って連
れて行って」と言ってくれ、母親も渋々ながらもだったが、木戸のいる病院
を知人に紹介してもらい星を連れて行ってくれた。
星が母親の若子と木戸のいる病院に行く日は残暑の厳しい照りつく太陽も暑
さはなく、星の心とそのものの大雨と暴風で、空の色はどす黒い灰色の世界だ
った。かっぱを被っても下半身部分はびしょ濡れで 子は「何でこんな日に外
出しないといけないの」と苛立ってる中、星は不安と恐怖の心と闘いながら
「天気は私の味方になってくれた」と小声で呟く。車の免許を取得していな
い、星と若子の交通手段は徒歩か電車かバスで、木戸のいる病院に行くにはバ
スが良いと、若子が長年この町の交通機関を知り尽くしている心強い発言だっ
たが、もし若子と途中ではぐれてしまったら星は家に帰る手段も知らず、お金
も持っていない状況を考えると「大人のくせに本当に何も知らなくて、情けな
い状態で迷子になった子供が大泣きするような、そんな行動を起こすんだ」と
思い、大雨と暴風で視界が見えにくい若子を後ろの方から一生懸命歩み寄る星
の気持ちを知らずに、ズカズカと早足で歩く若子。十分程歩いた所にあるバス
停に二人がたどり着くと、運良くバスがきた。星は濡れた格好で申し訳ない気
持ちになりながらも、若子が指定した座席に座る。若子も一段落したみたい
で、小声で星に話しかける。
「知り合いにあんたの事話したらさ、何かの霊にとり憑かれてるんじゃないか
って」
星の恐怖の度数が最高値に上がる。実の娘が精神的に不安定な時に、何故余計
不安がらせることを言うのか。若子の人間性を疑いながら、震えかすれた声で
「だったら病院じゃなくて、お祓いをして下さる神社かお寺に連れて行って
よ」
「何言ってんの。そんな場所知らないし、銭がないわよ。病院代より高くつい
たら大変だわ」と星を目で威嚇する。星自身も自分の言葉に百パーセント責
任をとれる程の人格は持ち合わせていないが、若子の悪びた態度もなく、娘の
気持ちを分かろうとせずに無責任な言葉だけ投げかける姿勢は、今まで星を言
葉の暴力でさんざん傷つけ、傷つけた部分を放置し、自分達の心からその記憶
を消去させ、たぶん平然な顔をして今を生きて、星の傷の深さの責任を償わな
いまま一生平気で生きてゆくのだろうと思う。過去、星の心を言葉の暴力で傷
つけた人達すべての顔を思い出しながら、「責任とらないんだったら、最初か
ら無責任な言葉を口に出さないで。そして私も・・」。
心の中の不安と恐怖に負けないように、何とか病院までもつようにと、同じ
バスに乗り合わせた乗客達を見渡す星。
バスの中では携帯での通話やメールは禁止だと分かっているはずなのに、平
気で携帯での会話を楽しむ、星と同年代の会社員らしき女性。耳にはイヤホン
をつけ音楽を聴きながら、メールを打ちまくる高校生らしき男の子。中学生ら
しき女の子二人組は自分達の立っている場所が空席にも関わらず、座らない所
か、他にも座りたくても立っている人達を無視して、大声で喋り、笑い、自分
達専用のバスと勘違いしてるような振る舞い。他の人達の、何の悩みもなく、
図太く元気そうに、偏見に近い目でバスの中を見てしまう。
「死にたい程の不安や恐怖をこの人達一度も味わったことないの?今私みた
いに生き地獄のような感情を抱いてる人はいないの?私だけなの?こんな感
情を自ら創り出す人間は私だけなの?・・恐い、恐い」
そう思うと、何か衝動的に、このバス乗客人達を一人残らず殴り、蹴り、傷
つけ、私の心と同じくらいの痛みを分からせてやりたい。バスの窓全部叩き割
り、暴れまくりたい。私の心の痛みに気付いてと、恐ろしい考えが星の脳みそ
から離れず実行に移しだそうかと思った瞬間、若子が座席から立ち上がり「こ
ちら、どうぞ」と高齢の女性に席を勧め、その高齢の女性は「いいんです
か。すみません」と星の隣りの席に、若子と星に深々とお辞儀をし座る。高
齢の女性の付き添いらしき中年の女性も若子に「ありがとうございます。私の
母は足が悪いので助かります」と若子に笑顔でお礼を言う。若子は「いえい
え。お互い様ですから」と二人はささやかな親切を通し、仲の良いムードで
話し合っている。そんな光景を見た影響だろうか。
「前野さん、そして雪菜。そこ席、座る気がないんだったら、他の方に席を
譲ってさしあげたら」大声で喋り、大笑いしていた二人組に、同じ制服を着
た少女が語りかける。二人組の女の子、どっちが前野でどっちが雪菜かは分か
らないが、
「うっせーな。言われなくてもしてやるよ」「優月、いい子ぶんなよ。だか
ら信幸先輩にも振られるんだよ」と二人は優月と呼ばれた少女を睨みつけ、
後座席の方に逃げてゆく。若子が信号が赤になりバスが止まったのを見計ら
い、高齢の女性と中年の女性を優月の勇気発言で空席になった方が「二人にと
っていいんじゃないか」と勧め、後座席の方へは帰りづらくなった優月を星
の隣りに座らせる。
「失礼します」とさっきの威勢の良い態度とは逆に、顔が引きつり元気がな
い優月。
星は彼女が元気がなくなってしまった瞬間を見逃していなかった。その後バス
が数分走った後また信号が赤になり、若子が「星、お母さん回数券買ってくる
から」と運転手の所へゆく。そのタイミングに合わせ、星は優月に話しかけ
た。普段の星なら、初対面の人間にこんな言動を起こすことはまずありえな
い。あと数時間後に木戸に会い、カウンセリングを続けてゆくまでもそんな人
物ではなかった星のはずなのに。
この優月との出会いは、二年後に出会う祐之助と会う頃には、すっかりと星
の記憶から消えてしまっていた。その後の貴重な出会いなのに。
「優月さん?」
「はい」とやはり元気のない声の優月。
「勇敢で中々出来ない行動でしたね。そんな自分に自信持って下さい。私が
言うのもどんなもんかと思いますけど・・。信幸さんという男性とどういう
関係なのか分かりませんが、まだ一パーセントの確立でも残っているのな
ら、時間を見計らって再度アタックなされたら」
星は言い終え深い後悔に襲われた。安易に他人の心に土足で入ってゆくよう
な、自分が逆の立場だったら嫌悪感を抱くだろうに。
「はぁ。大きなお世話だ」と、ずっと治ってくれない不安と恐怖の心の中
に、新たに嫌な感情が混ざり合う。
「ありがとうございます」
星は優月の顔を見た。優月は優しく朗らかな笑顔を星に向けていた。陶器の
ような美しい美肌にまつ毛の長いぱっちりした瞳、ふっくらした唇は口角に曲
がり、天使の輪っかが出来ている、ロングの黒髪。星は引きつった笑顔で優月
の言葉を受け取る。意外な言葉が返ってきて、戸惑いと嬉しさの感情の中で
も、不安と恐怖は和らいでくれない。人に何かしてあげられる身でもなければ
立場でもないのに、どうして優月に話しかけたのだろう。しまいには名前まで
呼んでしまって・・・。星と若子は優月よりも先にバスを降り、木戸がいる病
院を迷子になりながらやっと見つけだしたが、トラブルは続く。トラブルと言
っても、星だけが感じ、みんなは思わない難題。木戸に診察室を見てもらうに
は予約が必要らしく、それを聞いた星は絶望的になる。しまいには木戸の診察
は午後からだと、星が全身の力が抜けるような脱力感とめまい、心の叫びな
ど、たいしたことないだろうと思っているような、冷たい態度の事務員。見た
目では星の病気は専門の知識を持ち合わせている人間でないと分かりにくいだ
ろう。むしろ若子や星に対して、予約なしに診てくれ、な態度に「常識がない
んじゃないの」という冷たい視線。
「すみません。予約制とは知らなかったもので。今日の午後に予約は無理で
すかね」
木戸のスケジュール確認を、一人の看護師にめんどくさそうに聞きにゆく事
務員。看護師も困った表情だ。
若子が星に「今日はやめて、出直そう」と言った。星はその言葉に驚愕と落
胆の気持ちが怒りとして表面に表れ、この場で泣くまいと思いながらも、うっ
すらと涙目になり、
「お母さんやあなた達には、私は見た目は元気そうで病院に来る程でもない
し、すぐに木戸先生に診せる人間でないと思ってるかも知れませんけど、私
はもう限界の域に達していて、ここに来るのがやっとだったのよ」
待合室で待っている、星とは違う病気で病院に来ていた患者達、その場にい
た看護師に事務員、若子も一斉に星に注目して、先程までの雰囲気が激変。若
子が星に怒りを露にした目で駆け寄り、小声で「いい加減にしなさい。診ても
らえないわけじゃないんだから、子供みたいなわがまま言うんじゃないわ
よ。恥ずかしい。本当あんたと一緒だと恥ずかしいことばかり」と星をなじ
る。星は心の中で叫び続けていた。
健康な心を持っている人には今日、そしてこの瞬間の時の流れも普通に過ご
せるでしょう。でも今の私の心は他の人と同じような時間を過ごす余裕が持て
ないの。常識のない態度にみんなには私が見え、思うでしょう。本当に苦しい
の。父親が言うような仮病じゃないの。この待合室で、体調が悪くても静かに
マナー良く待てず、他の患者を飛び越してでも、一分一秒この強度な心の不
安、恐怖、孤独、痛み、苦しみを木戸という医師に治して欲しいのよ。もう心
と体が自分の意志と関係なく死のうとしてるのよ。
星は涙をポロポロ流しながら、すぐさま診察室に通され、OX形式の心理テス
トを集中出来ない脳みそで「先にこのペーパーテストだけでも」と言われ、や
るようにと看護師に促される。数十分程木戸を待つ。星の非常識な態度は無視
されるどころか、他の患者さんの「このお嬢さん、本当かなり苦しんでる感じ
よ。木戸先生は今入院患者さん診てらっしゃる時間帯で、この病院内にはい
らっしゃるんでしょう。初診の方でこの病院の運営方針をご存知なかったよ
うですし、何とか今日だけは早めに診てもらうように木戸先生に頼んでさし
あげたら」と、看護師や事務員に助け舟を出してくれたのは、左足に包帯を
巻いている、若子と同年代くらいの女性で、待合室にいた他の患者さんも小さ
な拍手で同意してくれた。そんな光景を見た看護師と事務員は慌てて対応の処
置に出た。星は待合室にいる患者達の気持ちに言葉にならないぐらいの感謝の
気持ちでいっぱいで、患者さん達に深々とお辞儀をして、看護師の誘導でその
場を立ち去る。その後ろには若子が「本当に非常識な娘でご迷惑かけます。申
し訳ございません」と星以上に深々とお辞儀をしている。誰にもお勧めでき
ないし、してはいけない行為だが、星はもう命の瀬戸際まできている感じだ。
その後若子に話すと、「大袈裟な」と言われたが木戸は「大袈裟ではないです
よ。今までよくこんな精神状態で、頑張って自ら病院に来てくれ、SOSを素
直にさらけだしてくれましたね。本当辛かったでしょう。でもね、もう大丈
夫よ。一人じゃないから安心して」と、星のとった先程の軽率な行為も病気
がさせた言動であり、本来の星の人間性がさせたものじゃないから安心してと
何度も語りかけた。
ぽっちゃり型の五十代半ばの心療内科医の木戸先生。近所にいそうでいない
感じの女性というイメージ。星はその後、今年の夏、星を苦しめた心と体の異
変、誰も理解してくれなかった症状を、今この瞬間に吐き出さないといけない
と思われる事をすべて心を裸にして伝えた。家に帰宅した後に後悔が残らない
よう、自分のため、そして唯一星を心配してくれていた兄弟達の心とお金を無
駄にしない為にも。
木戸は受け止め、理解してくれた。私の心の叫びを分かってくれる人が、こ
の地球のこの世界のこの町に存在してくれる人がいた。星はその事だけで、こ
の数ヶ月の生き地獄の世界から少しずつ抜け出し、どす黒く灰色の心の世界か
ら、希望の明るく真っ白で、クリアな心の世界になってゆくのを感じ、過去の
感情が現在の二年後の今、祐之助の寛容な言葉で半分以上のネガティブな感情
が星の体内から噴き出してゆき、心がクリアになって晴れやかな感情とリンク
し、二年前の記憶を緩やかに色んな場面を思い出しながら、決して忘れてはい
けなくて、これからの人生経験に生かせ、大切な新たな出会いの為に必要な気
持ちと、たとえ傷つけられたり、嫌な思いをされた記憶も、人間的に成長
する為に必要不可欠な出来事で、星の遺伝子が会わせてくれた、人の痛みを深
く理解する心に気付かせてくれたのだ。無意味だと思っていたことすべてが、
意味のある、価値のある貴重な体験だったのだと祐之助が星に語ってくれたそ
のものだと実感し、二年前よりも、私はゆっくりでも進歩しており、人の縁と
縁に結ばれ、幸福な方向に導かれている自分の恵まれた環境に感謝する気持ち
で、幸福感に包まれた嬉し涙を流している星に、にこにこと笑顔で見つめてい
る物体。
星はエンゼルトランペットの花から離れずにいる物体に手を差し伸べると、
その物体はふわっと少し飛び、星の手にちょこんと座り込む。
「かわいい」
祐之助はずっと星の行動を見続けている。
「紗々原さんには何が見えてるんですか?」と訊ねると、星は普通に答え る。
「天使です」
「天使。その天使は紗々原さんにとって良い存在ですか?」
星は少し不思議そうな顔をしながら、笑顔で「白くて丸い顔に、サファイヤ
のような瞳で、カーリーヘアの金髪の男の子の赤ちゃん。私の片手にフィッ
トするサイズで、小さな純白の羽をパタつかせて、にこにこしていてすごく
愛らしい」
「天使が見えるなんて羨ましいなぁ」と本心からそう思ってる祐之助の顔
は、童心の顔がちらちらと垣間見れた。
「祐之助先生に見えないなんて不思議。 私よりも祐之助先生の心の方が美
しいのに」
祐之助は苦笑いしながら「紗々原さんは僕を美化しすぎてます」と言い、星
と天使が気に入ったエンゼルトランペットを二人にプレゼントしてくれ、その
後一日も早く星の為に両親に会いたいと、お昼時に両方の親の職場に病院専用
の携帯電話から掛け、今日の祐之助の診察時間終了の一時間前に両方の親が病
院に来る約束をしてくれたと、病院内にある「天使のこころ」という食堂で牡
蠣とひじき夏野菜たっぷりのグラタンを昼食で食べていた星の元に「少しでも
早く教えてあげたいと思って」と祐之助は現れる。星は若子は来ると予想して
いたが、父親の星二が星の為に来るなんて信じられないと思った。今までだっ
て、木戸や他の星が通っていた精神科医に会うのも拒み、「お前の為に時間を
使うくらいだったらパチンコにでも行くわ。 それにお前の病気は俺とはな
んの関係もない」と。木戸にそのことを伝えると「お父様はあなたを病気と
して認識するのがきっと恐いのよ。病院に来れば嫌という程認めないといけ
ないし、あなたのこと普通の子と信じたい気持ちであなたの病気から逃げて
るのね」
そう言う木戸もそれ以上、祐之助みたいに星の父親、星二と接触する行為は
強く拒んでいるかのように見受け取れ、「本人が娘の為に病院で担当医と話し
たくないのならしょうがないじゃないの」という雰囲気で、「家族の問題は
家族同士で解決しなさい。あなたも幾分、精神状態も落ち着いているし、年
齢的には大人。あなたから変わり、話しの場を持てば親御さんの気持ちも変
わってくるはずだわ。それ以上は私は何も言えない。家族の問題に私が介入
する義務はないから」と。しかし祐之助は、家族との関係も星の心の病を治
す部分もあり、他人であり精神科医である第三者が紗々原家に介入すること
で、家族同士だと見えなかった視野が見える可能性があるという方針で、これ
までもさまざまな患者の親達ともコミュニケーションをとってきたという。
患者にはカウンセリング、親達には患者の病気の知識と理解、そして患者の親
という立場の悩みも解消させる上でのコミュニケーションらしい。しかし星
は、本当に未だに信じられずにいる。頑なで、自分よりも格下の弱い奴だと思
えばとことん乱暴で強気な態度に出る性格の星二。その上自分よりも格上の奴
だと分かると、負け犬状態の情けない態度しか見せない星二をここ数年見てき
た星は祐之助に聞く。
「祐之助先生。私の父は先生に対して失礼な発言をしませんでしたか?」と
心配顔で祐之助をずっと見つめている。祐之助は物腰が優しく、話し方も誰に
対しても丁寧で、星二の標的になりやすいタイプだ。本当に星二は娘から見て
も、過去星をいじめた人間達と同類の低レベルな奴だからだ。
「そんな事はなかったですよ。時間は結構かかりましたが、お父様の仕事に
支障がない時間帯にはご自身から最後には必ず病院に来る事を約束して下さ
いましたよ」
時間は結構かかった。そうだろうな、と星は思いながらも「祐之助先生っ
て、ものすごい天才的な説得術を獲得なさってたりします?」と何気に聞く
と「職業柄色んなタイプの方と接してますから」と笑顔で答える。
その後、祐之助も星と同じ牡蠣とひじき夏野菜たっぷりのグラタンを昼食に
食べ、「紗々原さん。このグラタンものすごくおいしいです」と、本当にもの
すごくおいしく食べる祐之助の姿に喜びが溢れ「ありがとうございます」と返
答する星。
「星、グラタンおいしいね」という声が星の耳に届き、聞こえたグラタンの
方へ目を置くと、さっきまで肩で眠っていた天使が星のグラタンを手掴みで食
べている。
「天ちゃん、手熱いでしょう」と星が叫ぶと、天ちゃんと呼ばれた天使は
「大丈夫」とパクパク平気そうに食べる。祐之助の食べる手が止まったのに気
付き、星は「さっきの天使が手でグラタンを食べていたんですけど、熱いのは
平気みたいです」と説明する。
祐之助は興味深々の顔で「天使と話しも出来るんですね。すごいなぁ。グラタ
ンも食べてるんだ。羨ましい。天使においしいと言われたのは、紗々原さん
が人間として初めてかも知れませんね。よかったですね。天使に名前付けた
んですね。天ちゃん」
「あっ。とっさ的に言っちゃいましたけど、きちんと応答してくれたの
で・・・」
と言い終わる前に二人はなぜだか爆笑してしまい、天ちゃんと呼ばれた天使は
そんな二人を、ほっぺにクリームをつけながら不思議そうに見つめた後に、同
じマネをするかのように大笑いする。祐之助との心の間が近づき広がっている
のを星は心で感じ、三人での食事がとても楽しかったせいか、グラタンと一緒
にセットになっていたガーリックライスとかぼちゃの冷スープ全食完食出来
た。久しぶりに食べ物をこんなにおいしくたくさんの量の栄養分を摂取したこ
とで、心身共に自信と安心感が戻り、祐之助と天ちゃんに感謝した。祐之助は
精神科も含め、他の科の病棟の入院患者の診察、カウンセリングの必要な人の
為に、星達より先に「天使のこころ」を出た。星は先程、祐之助に処方しても
らった薬を取り出す。祐之助は星が一ヶ月前に聖徳総合病院に初来院した時、
星に薬の作用を詳しく丁寧に分かりやすく教えてくれた。木戸にはなかった行
為であったが、二年前心療内科を訪れ木戸と出会い、星の心を治す薬、不安、
恐怖、孤独を取り除いてくれる薬が存在していたことに驚き、勇気づけさせて
くれた。まずその一錠を取り出し、次は過呼吸や脈拍を正常にする薬、その次
は食欲を出し気分を明るくさせてくれ、トラウマを抑える薬、合計三錠を白湯
で飲み干す。その後、両親が病院に来る時間までリラクゼーションルームのベ
ッドで横になっていても、「天使のこころとからだのリハビリ室」で好きなこ
とをいつものようにしていて構わないという祐之助の言葉通り、星は「天使の
こころとからだのリハビリ室」の精神科と他の科の入院患者と、星のような外
来患者が一緒に共有する二号スペースに入る。一号スペースは精神科患者専用
で、三号スペースは他の科専用である。星は最初にここに訪れた時は心臓がド
キドキで、誰かに話しかけられても感じの悪い無視ばかりしていたが、心療内
科の研修医、幸田知花の優しいコミュニケーションと心配りで、徐々にこの場
にも慣れ、今日は初めてトライする手芸コースを選ぶ。手芸の先生を病院に呼
ぶ、専門的なお稽古コースだ。星が作りたいと提案したのは、自分の赤色の携
帯電話を取り出し、「全身でこのサイズの男の子用の人形の洋服を作りたい」
だった。このサイズが赤ちゃんのジャストサイズだと気付いたのは、天ちゃん
が先程、星のバッグの中に入り電源の入っていない携帯電話で遊んでいる時に
発見したのだ。当人の天ちゃんは、現在も星のバッグの中を探索中である。三
人での作業が始まった。しかし知花は星だけには構っておられず、他の患者達
の指導もしないとならないので、基礎的な部分を星に教え、「また分からない
ことがあったら聞いてくださいね」と言い、二人は「はい」と返事をする。知
花が星達の元から去る前に一言「今日は本当に天気がいいわ。今年最高の気温
を記録したらしいわよ。さっきニュースで言ってたわ。外は暑いでしょう
ね」と言った。星は天ちゃんが入っているバッグから素早くポカリスエット
を取り出し、二〜三口飲み干す。知花は星のその姿を冷静に温かい目で見つめ
る。三年前の夏に熱中症っぽくなってから、スポーツドリンクは手放せないの
である。味噌汁も朝と入浴後の夜にも欠かせず、梅干も欠かせない。春夏秋冬
と変わらずに、塩分が多めかなと心配もあるが、それ以上に星の元に一品でも
なければ、不安でパニックになるのだ。
「また熱中症っぽくなるかも知れない」という強迫観念から逃れず、ポカリス
エットや味噌汁、そして梅干は星にとって命を守る大切な栄養源なのだ。
「紗々原さんは低血圧気味だから、人よりも少し多めの塩分や水分を補給した
ほうが逆に体にいいから、今は安心して自分の思うがままにね」と祐之助が教
えてくれ、今はこれでいいんだと楽に思え、祐之助は三年程前から星が星二や
若子に「働かないくせに、自分で買いにも行かないくせに、ポカリやら味噌
汁、梅干を買って来いって自分の欲しいものばかりたかって、家の家計を赤字
にして苦しませてるのはあんた」と二重で苦しんでいた星の悩みも現在、解消
させてくれた。
知花がさり気なく「今日は病院には何で来たの?」と聞く。星は「聖徳総合
病院専用バス」と答える。聖徳総合病院専用バスとは、聖徳総合病院の患者さ
んで自分の力で来院できそうになくても、診察を望む患者の自宅まで来てくれ
る送迎バスだ。星は夏恐怖症で外に出るのが精神的苦痛で、現在は治療の妨げ
になるとの祐之助の診断で専用バスの許可証が貰えたのだ。このことも、星の
精神状態を安定させてくれる作用をもたらしてくれた。
「本当、祐之助先生がこの病院に来て下さってから患者さんの為にメリット
になる導入ばかりで、私もこの病院で祐之助先生と働けて幸せ者だわ。職員
にとってもメリットばかりだし」と話す。
祐之助先生が来る以前の聖徳総合病院にはメンタルクリニックを診察する科
はなかったらしいが、祐之助先生は前理事長の父親から「私と同じ外科医にな
れ」という発言に、「心の病を治す知識はお父様の患者さんにも必要で、プラ
スになるはずです」と言い、アメリカとイギリスで精神医療を学びその知識を
最大限に生かし、精神科以外でも、手術前後のアフターケアや長期入院患者の
話し相手をしながらのカウンセリング、そして聖徳総合病院の患者や、実はホ
ームレスの人達の為に「天使のこころ」の食堂、「リラクゼーションルーム」
「天使のこころとからだのリハビリ室」に送迎バスと次々に病院経営に導入し
てゆき、在宅診察も立ち上げた。最初の頃は病院幹部や一部の患者に受け入れ
られず、悪戦苦闘の日々だったらしい。一番冷ややかに思われたのは、ホーム
レスの人間達の治療と「天使のこころ」で働かせていることだった。しかし祐
之助はあるホームレスの言葉が忘れられずにいたらしい。
「病院には行きたいが金もないし、不潔な服着てるしな」との話を聞き、祐
之助はホームレスの人にも気軽に来院してもらうように、そして他の患者の迷
惑にならぬようにシャワールームを増やし、お金のない場合は病気が治ったら
「天使のこころ」で働いて少しずつ治療代を返金する約束をし、その後は自立
支援団の方にお願いするという仕組みにしたらしい。その後祐之助はキャリア
を積み、現在に至るらしいとのこと。星は知花に教えてもらった祐之助の武勇
伝を聞き、ますます祐之助に信頼と尊敬を感じた。天ちゃんの洋服を作る作業
をしながら、知花はまた新たな話を星に聞かせてくれた。
「実はね、私は祐之助先生が初めて担当した患者なの」と意外な発言だった
が、その後も知花の話は続く。いつもなら星の話を何でも聞いてくれる聞き役
の知花が、
「私が幼い頃、よく公園とかで遊んでくれていた中年のおじさんに性的虐待
を受けたの。最初はスカートの中から手を入れその手がパンツの中に入って
きて、幼い頃の私はこの行為が、またおもしろい遊びを教えてくれてるんだ
このおじさん、と思うくらいだったけどどんどんエスカレートしてきて、幼
い私でもやっと分かったの。嫌だ。これはいけない事だって。でも力強くて
恐い顔のおじさんに抵抗出来ず、幼い頃の私は精神的ショックで一時声が出
なくなったの。親は心配して病院に連れて行ってくれたけど、恐いおじさん
に「この事をバラしたらこんな風にするぞ」と言われ、私が持っていたお人
形を切り刻んだの。だから言えずに、幼い心で醜い記憶に怯えながらも誰に
も話せなくなってた。でも恐いおじさんは逮捕されたの。他の女の子にも私
と同じ醜い行為をしていたんだって。私も被害者だということは犯人の自白
ですぐ分かり、警察の人が私の両親に伝えて、親もものすごいショックを受
け泣き叫んでいたけど、私が母を抱きしめて、父が「知花、恐いおじさんは
もう二度と知花の所には来ないよ。パパとママがずっとずっと知花を守り続
けるから恐くないよ。大丈夫だよ」、父はさらに泣きながら「パパとママが
知花から悪い者すべてをやっつけるから」って、その言葉で幼い私は安心
し、その時点からあの醜い記憶だけが消され、成長して成人してOLになった
の」
知花の想像以上の痛ましく許せない過去の話を聞き、星は吐き気をもよおし
た。知花には申し訳ないと思いながらも、聞くだけでもかなりの精神的ダメー
ジが大きいのに、当人はそれ以上のダメージのはずだ。涙を見せるのは失礼だ
と思うのに涙がこぼれ、かすれた声で「ごめんなさい」と謝る星に知花は優し
く背中をさすり、逆に「ごめんなさい。星さんに話すべき内容ではなかったわ
ね。どうしましょう。祐之助先生を呼んだ方がいいかしら。私ったら本当に
何てことを・・・」と研修医の顔に戻り、困惑気味の知花。そんな知花を見
て、星は聞いてよいのか分からない質問を投げかけた。知花の話をこのまま
中途半端に終わらされる方が精神状態に悪いし、なぜだか星にとっても聞か
ないといけない話のような気がしたのだ。
「大丈夫です。もし嫌でなければ話の続きを・・・」
知花はその問いに「私は嫌ではないわ。だって祐之助先生の力と自分の力で
その醜い記憶を浄化して乗り越えて、そして今の自分がいるから」
祐之助の力と自分の力で醜い記憶を乗り越えた。その言葉が星の心に深く響
き渡る。
「私OLになるまでは記憶をすっかり忘れていたし、それで良かったのかも知れ
ない。でも思い出してしまった。つい、夜のバイトでいい仕事があるって友
人に誘われて水商売をしたの。当時の私は軽はずみで、興味本位、そしてお
金もゲットできるというのに目がくらみ、昼はOL、夜はスナックで働き始め
たけど、客が私の乳を揉んできたり乳首をつまんだり、その店はいやらしい
行為は禁止で、お酒を飲ませて話をして笑顔で振舞うだけと言ったけど、酔
っ払った客は私を人として見ず、奴隷のような扱いをしているかのように私
は見え「こいつはこんな店で働いてるんだから何したって構わない」と言わ
んばかりに私の下半身に手を持っていった時、私の幼い記憶がフラッシュバ
ックされて・・・。それで私は祐之助先生に出会って、自分が醜い存在にし
か思えないと話した。私の魂、私の心、私の体すべて汚れてしまっていて、
私の人生はこれから先も醜い人生で終わる。それならいっそ死にたいので安
楽死させてくれ、と頼んだわ。今考えると、安楽死なんて発想よく思いつい
たなぁと思うけど・・・」
「でも知花先生はそれ程苦しみ、絶望の淵にさ迷っていた・・・」
知花はゆっくりと頷く。
「祐之助先生は、「幸田さん。僕は幸田さんを安楽死させる事は出来ませ
ん。そして幸田さんには生きて欲しいです。幸田さんはどこも醜く汚れて
いません。幸田知花という人間を醜く汚す権利は誰一人持っていません。
幸田さんの人生を醜く汚すものにするかしないかは、幸田さんの心にかか
っています。幼いあなたを傷つけた悪意ある者の魂と心と体は醜く汚れて
いるが、幸田さんの魂と心と体は清らかで美しいです。それを物語るよう
に悪意ある者は悪行の罰を受け、幸田さんは何一つ罰を受けていない。幸
田さんの心の傷は時間をかけてゆっくりと治していきましょう。幸田さ
ん、あなたなら心の傷を乗り越えて、前へ進んで歩いてゆけます。僕も幸田
さんが良いというのなら、お手伝いさせてください」って、祐之助先生初め
ての診察の時に言ってくださったの」
知花の心臓の部分をポンポンと天ちゃんが小さな手で軽く叩いている。
「時間はかかったけど、醜い記憶を乗り越えた分、今の私は幸せなの」と、
人生の悟りを開いたかのような満面の笑顔を見せる知花。確かに今星が見て
いる知花はとても魅力的だ。最初に知花に会った日もそう感じていた。祐之
助先生みたいな医者になりたくて、そして自分と同じ傷を背負った人達と一
人でも多く手助けできる医者になりたいと前向きに努力し人生を送り、自分
は今幸せだと胸を張って言え、癒される方から癒す方へと力強く生きている
知花が星にとって眩しく映り、憧れの女性の一人になった。星はその気持ち
をそのまま知花に伝えると、「星さんの言葉で幸せが倍増しました。ありが
とう」と知花が言い、星も知花に「ありがとう」とお礼を言う。
天ちゃんの洋服が完成した。かなりの小さいサイズなので苦戦したが、星と
知花の場所からかなり離れて作業をしていた手芸の先生や患者さん達も褒めて
くれた黄色のTシャツ。真ん中には天と黒文字で天ちゃんの名前が描かれ、下
は紺色のハーフパンツ。
「お人形に着せるんですか?」と左腕に点滴を付けている男性に聞かれ、星
は「はい」と目を合わせ笑顔で答える。本当は天使に着せるのだが。
星は一人でやり遂げたわけではないが満足だった。一人じゃなく誰かと同じ
目的を果たす喜び、そして祐之助や知花、他の病院スタッフに二十四時間体制
で守られる時期であり、ここの病院の患者さん達との触れ合いで、心のリハビ
リをして社会復帰に備える準備の期間でもあると力強く思う。変わりたい。変
わろう。私は変われる、と感じた。天ちゃんは星の笑顔を見て、何回もバンザ
イをしてくれている。星の気持ちを表現している。そして知花は新米ドクター
であり、心の友人に、この日なれた気がした。いつの間にかお互いにタメ口に
なっていたし、知花も同じ気持ちでいてくれたらいいな、と知花の横顔を見つ
めながら思う星。時間は過ぎ、再度星は、プライバシー完全保護の診察室にい
た。星二と若子も同席だが、星は診察室内で流れているモーツアルトの曲を、
目を閉じ耳を澄ましながら一人の空間を作り、親との心の壁を作る。祐之助が
間に入る前に醜い争い事をしたくなかったので、天国の音楽と称賛され、さま
ざまな病気を克服させたり人をポジティブに元気にさせてくれる曲で気持ちを
落ち着かせる。気が病なら、モーツアルトは副作用なしの特効薬なのだろうか
と星は「クラリネット協奏曲イ長調K622」を聞きながら思い、現在祐之助
から処方してもらっている薬もそれに近いのだろうと、曲が終わるのと同時に
目をゆっくりと開けると、若子がすばやく星に話しかけてくる。
「この病院は年中無休で二十四時間運営しているのね」
星は少し間を空けた後に「そうよ。夜、ふと不安や恐怖が襲っても、私の病
気を理解してくれない親と大喧嘩して心が死にそうなくらい孤独な夜も、当
直の先生や心理カウンセラーの方々が電話で私の心を癒して落ち着かせてく
れ、嫌な態度一つ感じさせず話をじっくり聞いてくれ、理解してくれて、こ
の病院に出会えて良かったわ」
親への憎しみから、刺々しい話し方で自分でも嫌なくらい皮肉っぽい口調
で、あんた達とここの病院スタッフの対応は天と地の差があることを話す。い
つもだったら二人して逆上し星を罵倒し、親の威厳と立場を多いに使い、必要
なしの矛盾な精神的発言と暴力を娘に投げかけるのに、今この瞬間は我が家じ
ゃないせいか、親は喧嘩を売ろうとはしない。
「お待たせしました」と祐之助が診察室に入ってきた。若子はお辞儀をし
「お願いします」と答えているが、星二は祐之助を憮然とした顔で、自分が優
位になれる立場になれるかどうか見定めているかのようだ。祐之助と目が合っ
た星は、「再度、お願いします」と軽く礼をする。礼をして前かがみになる
と、ふと自分の左手をぎゅっと小さな手で優しく掴み、朗らかな笑顔で見てい
る天ちゃんと目が合う。星も朗らかな笑顔で返し、正面を見据えた時には覚悟
が出来ていた。親との崩壊寸前の確執にピリオドが打て、新しい関係が築ける
かも知れない貴重な場を設けてもらった分、吐き出すものすべて吐き出さなく
てはならない。憎く醜い親と子の修羅場な光景は、祐之助に幻滅されるかも知
れないという気持ちと、今までの祐之助の人間性と立場から、そんな心では見
ないという自信を持ちながらも「そうだ。祐之助先生は医者で、私はその一人
の患者なんだ」と改めて確信する星の元にエンゼルトランペットも置かれ、味
方がたくさんいるような雰囲気の中、星の言葉から話し合いが始まる。
「私は中学生の頃不登校児になり、今まで通りの良い子の路線から自らの意
思で外れた頃から、親にいつ見捨てられてもおかしくない環境に身を委ねる
ことしか出来ない場に置き、置かされ続けていました」
「自分の意思でって本人も言ってるんだから、お前が自分の人生をダメにし
たんだよ」と星二が口を開く。星の目にはすぐさま怒りと悲しみの涙が溢れ
てきた。
「私の人生はダメなものじゃない。これからだって私にも希望があって、夢
を持つ資格がある」星は星二と目を合わすことなくそう告げると、
「お前はもう手遅れだ。何事も長続きせず、親やなにしろ自分に甘えて、つ
いには変な病気になりやがって。もう取り返しもつかないくらい、人間以下
の存在になっちまってんだよ。希望も夢もクソくらえだよ。それに、お前み
たいな女を嫁にもらってくれる男も現れねぇしな。惨めな女なんだよ、お前
は」と、星を見て苦笑する。
気味悪い笑みを顔に浮かべ続けている。いつも家で見せている顔で、二年前
まで付き合っていた男と星二の顔がだぶる。
「なんだよ、うつ病って。星、お前頭が狂ってしまったのか。俺そんな奴と
付き合えないよ。それに病名が嫌だよな。心臓とかだったらかっこいいけ
ど、うつ病の彼女って自慢出来ないし。何しろ健康な女が一番だし、元々星
は体弱そうだなぁと思ったけど、顔が好みだったから我慢してたんだ。んー
悪いけど、もう俺とこれ以上関わり持つのやめてくれ。じゃあな。病気早く
治せよ」
病気だから捨てられるの?病名にかっこいいって区別があるわけ?病気で苦
しんでいるのは同じで、病人の彼女は自慢出来ないって、あなたは私のプライ
バシーを誰かに平気な顔をしてペラペラと喋るの?
上辺だけの部分しか愛してくれなかった、星より一歳年下の彼氏だった人。
未練は何一つないが、この男も無責任な言葉だけ残し、去って行った一人。
「お父様。娘さんの人格を、そして星さんの心の病を侮辱する考えや言葉は
今日で終わりにしましょう。そして星さんと冷静に向き合い、お互いに話し
合いましょう」
星二は祐之助の言葉に逆上し、「こいつには何言ってもムダなんだよ。こい
つも妻の前で言ったことがあるらしいけど、私は中学時代のあの頃で成長が
止まってるし、自分で閉じたんだとさ。努力もしないで何言いやがるんだと
思うよ。こいつにはよく言ってるよ。同級生の子らと比べたらお前は人並み
の事何一つ出来ず、この年齢になっても親におんぶされてる状態で夢だのな
んだの語る資格は本当にないんだってな。こいつの病気は甘え病。そう、仮
病なんだよ」
祐之助は星二の威嚇を同じ威嚇の表情や体制になる事なく、大人の男性のマ
ナーを崩さない。とても余裕があり、星二に対しても決して嫌悪感を抱いてな
い表情だ。人間も動物だから男と男、女と女なり、時には男と女と本能的に威
嚇してくる者には同じ感情を剥き出しにするものなのに、祐之助は本当に星が
今まで出会ってきた人と違う。高次元のレベルの人間だ。人柄がそうさせてい
るのか、精神科医という職業がさせているのだろうか。
「こいつは無価値な人間なんだ。こいつが俺の娘だなんて、恥ずかしくてみ
っともない」
「お父様。日頃思ったことはありませんか?そのお父様の一言や態度が、星
さんの心の成長を閉ざさせ、せっかくの星さんの大切な希望や夢を、つぼみ
になる前に摘んでしまっていることを」
星二は祐之助のシャツを両手でおもいっきり引っ張る。星はその一瞬の光景
を目にして、星二が祐之助をおもいっきりひっぱったのと同様に、星二を祐之
助から離す。星二に祐之助を触れて欲しくなかった。祐之助に危害を及ぼした
くなく、自分が身代わりになって構わない程、星は祐之助を守りたかった。こ
の世界で唯一私を理解してくれる男性を。案の定、星二の怒りはいつものよう
に、星へ暴力という牙で向かってこようとしたが、星二が殴ろうとした右腕は
祐之助の力強い腕力で遮られた。体格のいい星二が華奢な祐之助に太刀打ち出
来ず情けない姿は、二年前の、星が心と体の限界にきたしているのを知ってか
知らぬか、些細で矛盾した口論の末星二が星に暴力を奮っていた時、息子の航
に両腕を掴まれ身動きがとれず、「父さん俺が子供の頃、女に暴力は絶対奮う
なって言っただろう。なんで父さんが姉ちゃんを傷つけるんだよ。実の娘だ
ろうと、女性に手をあげたら最低じゃないか。昔俺に躾た言葉は無意味じゃ
ないか」、航にそこまで言われた星二は気まずそうで情けない大人に見え、
航がとても勇敢で立派な大人の男に思えた記憶が蘇る。星二ががっくりと肩を
落とし、呟く。
「あぁ。全部俺が悪いんだよな。娘をこんな風にしちまって。世間にも
散々、大黒柱の俺が一番悪いって言われまくったよ。その腹いせをこいつ
に、憎しみと憎しみきれない感情のままぶつけたよ」
若子も泣きながら、「私も同罪です。私も世間で傷つけられた分、娘に八つ
当たりして傷つけました。腹立たしかった・・」
「誰一人完全に悪いわけではありません。紗々原さん家族は、数年と世間の
冷たい態度で本来ある家族愛が薄れてしまい、家族の中で一番弱い立場にい
た星さんが犠牲になってしまった。世間は色々と言うでしょうが、最終的に
は責任をとってくれないものです。悲しい時代かも知れませんが、人に非難
されるような生き方、大きな悩みや苦しみを抱える人のほうが、真剣に人生
の事を考え十分に心の成長を遂げている人が多いように、私はこの仕事を通
じて深く感じ、患者さんやその親御さん達に日々学ばせてもらってます。星
さんもその一人ですし、お父様、お母様もそうです。この病院では心の病を
持つ患者さんの家族の話を聞く場も設けています。もしよかったら、お父様
とお母様もその場を利用して、心と体の疲れを癒してもらえたらと思いま
す」
星二と若子は黙ったまま祐之助の言葉を聞いていたが、祐之助の心遣いは身
に染みたようで─これは娘だから感じたことだが─二人とも星が思っているよ
うに「この人なら信頼出来る」という確信を持ったように感じとれた。
「では今日は、星さんの話を温かく冷静に、再度聞いて下さい」
二人は夫婦らしく同時に「はい」と答えた。
「正直、父や母の事憎むくらい嫌いだけど、自分が思ってる時はその人達も
自分を嫌っているという言葉をよく耳にする。そうなると親も私を嫌ってい
ることになるけど、私の心の中では完全に親を憎むことも嫌うことも出来な
い部分もあって、その部分が親にも私と同じくらい、贅沢に言えば私以上に
思ってくれてるんじゃないかと期待するけど、やはり見捨てられ感情の方が
強く、強迫的で自分を見失うことが多かった気がします」星は遠い目をしな
がら、過去の記憶を黙々と語りだす。
「我が家は貧乏です。親や兄弟達がどんなに働いても親が作った借金はなか
なか返済出来ないまま、私は仕事も長続きせず軽い引きこもり状態の日々
に、チンピラ風の借金取りがやってきます。「親を出せ。親は何しとんじ
ゃ、金返せや。親が返せんのだったら、お前が返せ」、当時十七歳の私は
その男がとても恐かったけど、負けたらだめだ。なめられたら何もかも破綻
してしまう気がして、私はチンピラ風の男と対等にやりあいその場をしの
ぎ、「夜にまた来るからな。覚えとけよ」と言い残し去っていった男の事
を、父と母に震える指で電話のボタンを押し、泣きながら震えた心細い声で
「早く帰ってきて」と伝えたのに親は帰ってこなかった。私一人家に置い
て、他の兄弟達を連れて親戚の家に自分達だけ避難していて、私は一晩置き
去りにされました。借金取りの男はその日の夜来ることはなかったけど、一
人暗い部屋で家族が誰一人帰ってこない中、一人ぼっち、いつ来るか分から
ない借金取りの男に怯え、不安と恐怖で心がいっぱいで、家族みんなに私は
見捨てられたのだと思い、その気持ちの方が数倍に私を怯えさせました。次
の日家族みんなが帰ってきて私は心底安心し、兄弟達から「ごめんね」の言
葉が飛び交い、親に反抗出来なかったことを知り、私は反抗の出来る唯一の
子供だったので、父に食って掛かって昨夜の事を問いただしました。
「何で帰ってきて借金取りの男と話し合いをしてくれなかったの。いつも私
に何事も逃げるなと説教してるくせに、自分は平気で逃げるんだ」父は怒り
「うるせー。お前に言われる筋合いはない。借金もお前のせいだ」と、私に
は理解し難い言葉を浴びせ、母は「あんたの心配なんてする分けない。二階
に行ってな」と私の孤独を無視し、心も言動も見放されたまま。ずっと、一
言「ごめんね。悪かった」という発言が欲しかった。ただそれだけで十分だ
ったのに。私は二階で一人で声を殺し泣き、一階のリビングから聞こえる私
抜きの家族団欒の笑い声、父と母はあえて私の耳にわざと聞こえるように大
きい声で私の悪口を言い、笑ってる親達。兄弟達はその時だけは笑ってな
い。どうして私だけ除け者にされるのだろう。家でも学校でも職場でも、無
気力で人に愛をあげる力がない私に、両手で私より先に愛を与えてくれる人
は誰一人いなかった。あの頃に祐之助先生に出会っていたかったです。そし
たら私の人生も少し変わってたかも知れません。私の考え方は一般的には間
違ってるから人に嫌われるんでしょうね。職場は仕事だけきちんとしていて
も、人間関係が上手に成立しないとはじけ者にされて、特に女同士しかいな
い職場はそれが強くて。この子いじめていいんだと分かれば、三十代だろう
が五十代だろうが平気で人をいじめる大人がいる。決して子供だけの世界で
はないいじめ。大人のいじめほどみっともなく情けないものはないのに、十
代の私を親と同じ顔でいじめる。そんな場所で働きたいとはとても思えなか
ったし、私のお給料の半分は嫌いな親達に生活費として渡さないといけな
い。私は自分の為じゃなく人の為に働くロボットみたいで嫌だったし、親も
私を金稼ぎだけの奴みたいにしか思わず、働いている時にはとても優しく、
少しだけ偽物の愛だけど触れられて心地良かったけど、でも私は限界だっ
た。根性なしとか、いじめに耐えてあえて大人だとも言われたけど、大人が
いじめをする世界で何を見習えばいいのか。そしてそんなキタナラシイ世界
に私は染まりたくなかった。働かなく、家にお金を一銭も出さない私は能無
し人間とみなされ、父や母のストレスの捌け口になり、言葉と肉体の暴力の
餌食にされ。家のお金が底つき、電気、ガス、水道、あらゆる現代の人間が
必要な物が止められ、世の中冷たい人ばかりで、私達家族は死んでしまうか
も知れないという恐怖とパニックに陥っている私がやはり親のストレスの餌
食。もし六人しか乗れない船があってその船に乗らないと命がないとして
も、親は躊躇いもなく私を見捨て、私以外の兄弟を乗っけて行くだろうとい
う想像もしました。私が一番屈辱的で悲観的になったのは、我が家で買って
いた猫が子供をたくさん産み繁殖し、室内では飼えきれなくなり、一時の間
は父が作った狭い小屋に数匹の猫が入れられたが、とてもじゃないがペット
をきちんと育て飼っている状態ではなく、キャットフードを買うお金も底を
つき、ついに父が猫達をどこかへ捨ててしまい私は泣きながら文句を言った
ら、
「野良猫になった方が幸せなんだ。冬の間小屋に入れてた猫が病気になった
り死んだりしたのも、すべてお前が仕事をしないからだ。お前さえ働いとけ
ば最初の猫の去勢も出来たし、これ以上不幸な猫が誕生することはなかった
んだ。お前が最初に猫を飼うって言い出したんだから、責任が取れなかった
お前が悪い。俺は何一つ悪くないぞ」と。確かに私が悪かったんだと思いま
す。でも、動物ボランティアの人にお願いしたり、猫が欲しい人にもらって
頂く手段もあったはずじゃない、と父に言うと、「誰が大人猫で血統筋でも
ない猫をもらってくれるか。お前と同じで価値のない猫達なんだよ。なんな
らあの空になった猫小屋、お前が住んでも構わんぞ。お似合いだし、お前も
いつか猫と同じ運命だからな」と。決定的に私は親に見捨てられてるんだと
実感し、強迫観念と自分の無力さを呪いました」
星はそこまで話を言い終え、天ちゃんを見つめながら「あなたも私は守って
あげられなかった」と、天ちゃんだけに聞こえる声で呟く。天ちゃんはその
言葉を十分認識してるようだが何も返答はない。
「今まで大変辛い思いをしたようですね。本当にその頃、僕も星さんと出会
っていたかったです。何かに役立つことも出来たかも知れません」祐之助は
星の目を見て、星二と若子に話しかける。
「星さんは幼い頃、思春期といじめにあい、その上にご両親とも折り合いが
上手に出来ず、自分に自信を持てず、愛も中々実感することのない環境で育
ち、精神的に不安定で人格も否定され、人間関係を築く学生時代の頃、もう
かなり以前から星さんは心のSOSを出していたと見られます。本人は語ろう
としなかったとしても、彼女は今以上に心の闇の世界で、一人で人生の迷路
に迷い困惑していたと思われます。そんな中で高校を退学してしまったから
といって、社会の世界で働くのはとても困難で、余計星さんを追い込んでし
まった。健常者でさえ新しい世界に進むときは多少なり不安がありますが、
星さんのような症状の方は健常者が感じる不安よりも何十倍の不安で、身動
きがとれなくなるんです。それに加え、罪悪感も極めて強い。平気で仕事を
辞めて、何も考えてないように伺えても、本人は親御さんが考えてるより申
し訳ないことをしてしまった。真面目に働けない人間はダメな人間なんだと
自分を責め、自信をなくし、社会から遠のいてしまうんです。引きこもりに
なる人は、子供時代に子供らしい生活が送れなかった人が多いんです。星さ
んはやたらと親御さんに、早く大人になれと言われて育ったと見受けられま
すし、精神的、肉体的な暴力がかなり長い期間あり、星さん一人だけが悪者
になった時期が長期化して。今この瞬間から星さんに、精神的、肉体的暴力
を直ちにやめると断言して下さい。星さんを、一人のかけがえのない娘とし
てきちんと見てあげて下さい。ご両親も星さんが語っていたように、本気で
星さんを憎み嫌っていたわけではないはずです。星さんを傷つけてしまった
後に、後悔の自念にかられた日もあったのではないでしょうか?お父様お母
様から星さんを離すのは、第一の治療としてしてはいけない気が僕はするん
です。まず星さんに親の愛を感じる瞬間を時間をかけて作るのが一番の特効
薬で、自立の第一歩だと思います」
若子が祐之助に言う。「この年齢になって恥ずかしくないですか?」
祐之助は即答する。「年齢は関係ありません。星さんの場合は先程も述べた
ように、自立する為に必要な栄養の元なんです。親の支配で軽んじられ、疎
まれ育ち、侮辱や見捨ての脅しにあうと、誰しもが強い情動、憤努、嫌悪、
絶望の非嘆しか表面に現れず、大人の人格が現れてくれないのです」
若子はまだ納得出来てない様子で、「この子も散々親を馬鹿にして、生意気
で、未だに反抗剥き出しで。私達も悪いと分かってるつもりですけど」
星が若子と星ニを見つめ「私も今日から、今からなるべく改めないといけな
い所は直します。でもね、私が今までお母さんが言ったような態度で接して
いたのはね、最後の、最終的な自分を守る為の手段だったの。誰も守ってく
れないのなら、自分が自分を守ってあげないといけないと思ったから。でも
ありがとう」
星ニと若子が星の「ありがとう」という言葉に驚き顔で星を見る。
「愛姉さん、航、麗、凛という兄弟がいて救いだった。私は他の兄弟達に今
まで何もしてあげたことないはずなのに、みんな私に優しくて、救いだった
の。兄弟がいなくてお父さんお母さんとこんな関係だったら、私きっともう
この世にいなかったと思う。木戸先生から祐之助先生に会うまで生きてこれ
たのは、兄弟の親の目を気にしながらでも、ささやかな愛を私に与えてくれ
たから。兄弟の元に私を産んでくれてありがとうございました」
星も、そして星ニと若子も泣いていた。星ニが星の元に駆け寄り星を抱きし
め、「ごめんな。今までずっとすまなかった。父さんも今日から一新して変わ
る」
若子も星ニの後に星を抱きしめ何度も何度も謝る。星も二人に何度も謝り、顔
を上げ「私お願いがあるんです。私の名前を呼んで。唯一父さんの名からもら
った私が、最初にお父さんお母さんからもらった愛を」
星ニと若子は夫婦らしく同時に「星」と目を合わせ、名を呼ぶ。星は祐之助
にしか見せなかった、夜空に輝くきらきらとした星のような笑顔を二人に見
せ、診察室にいるみんな笑顔になる。自ら閉じた心の扉が開き始めているのを
星は全身で受け止め、祐之助と今だ謎に包まれている天ちゃんに言う。
「人間生きていると、失った時間を取り戻す瞬間があるんですね」
,この小説を読んで、誰かが少しでも何かを感じていただけたら幸いです。天光さんのアドバイスで、改行して再投稿しました。少しは見やすくなりましたでしょうか??アドバイスをくれた天光さん、ありがとうございました。みなさんの感想お待ちしてます。よろしくお願いします。
,#5400A8,./bg_f.gif,61.113.181.254,1
2006年05月31日(水) 12時59分43秒,20060531125943,20060603125943,fVleK6C8NgKvY,謎の転校生 第5話 戻りゆく時間,雪,,,皆、部活へ行くか帰るかしたようで教室には誰もいなかった。
自分の席へと歩いていった舞は、そこでくるりとこちらに向き直って
「あの時の、話をすればいいんだよね?」
ゆっくりと確かめるように言った。
「ええ。つらいだろうけど、出来るだけ詳しくお願いね。」
そんな風に言う神月の横顔を見ながら、
明日香は何のことかを考えていた。
一つ、一つ思い出すように舞が話し始める。
「あの日は、私と明日香、そして数人の友達と一緒に裏庭の掃除だったの。」
裏庭の掃除・・・?なんだろう、この感じ。。。
水・・・?
明日香の頭の中に何故だか分からないが
水という単語が浮かんでいた。
そして、同時にそれは怖いという思いも。
「私や、他の友達は箒で周りを掃いてたんだけど、明日香だけは、・・・」
私だけ・・・?
「池の周りをやるって言って、岩の間なんかの草むしりを始めたの。」
「危ないって言ったけど、明日香は平気だって言って私の方を向いた瞬間、」
明日香の頭に、テレビのワンシーンみたいに映像が流れた。
『ちょっっ誰か・・・・』
『明日香!!!』
え・・・・私?・・・そうだ思い出した。
私、あの時。。。
舞の涙声と重なる。
「池に落ちたの。」
「池に落ちたんだ。」
そう言うと、明日香はがっくりと力が抜けてその場に座り込んでしまった。
私、なんてバカなんだろ。。皆が私と話さなかったのはイジメてたんじゃなくて、
「私が死んでたからなんだ。。。」
気付けば、頬につたっていた涙を神月がそっと拭ってくれていた。
「思い出したみたいね。大丈夫。泣くことないわよ。」
神月が優しく言うからよけいに涙が止まらなくなる。
「神月さん。明日香、そこにいるの?」
心配そうな舞の声が頭の上から聞こえた。
「そうよ。」
神月が明日香の手を握って、舞の方に差し出した。
そして、ゆっくりと2人の手が重なった。
「あすかぁ〜〜。」
泣きながら舞が明日香の名前を呼んだ。
「舞。。。」
明日香は、自分がこれからどうするべきなのか分かっていた。
けれど・・・
「今は、話しても大丈夫よ。」
神月が見透かしたように言った。
明日香は深呼吸をした。
気持ちを落ち着かせるために。
「舞、私の分まで、ちゃんと生きてね。私、また舞と会えるって信じてるから。」
舞が首を立てに振りながら、
「分かってる!私も信じてるから。」
その言葉を聞くと、すっと体が軽くなった。
「バイバイ。舞。」
「明日香っっ。」
だんだんと、周囲の景色から自分が消えていくのが分かる。
明日香は最後に神月の方を向いて言った。
「ありがとう。神月さん。」
,いつもの私にしてはすごく長いものになってしまいました。
つまらないうえに長いですが、読んでいただければ嬉しいです!
残すのはあとエピローグのみですので、
もう少しお付き合い頂ければ幸いです。,#0000A0,./bg_b.gif,221.76.135.26,0
2006年05月31日(水) 00時19分13秒,20060531001913,20060603001913,fXdobz0J2kGvY,パズル,雪,,,いつか
知らない遠い町へ行きたい
心がなく
それは
満ち足りぬ月が仲間を求める
夜ではなく
いつかの猫は軒下で雨宿り
それは机上の空論であり儚い
ひとり
放り出される交差点
行き場もなく
ゆえに
声も出さずに
静かになく
ひとりの町からだからピースがなくなり
ゆえに完成には近くなく遠い,お久しぶりです。謎の転校生を書いている途中ですが、
詩を書かせて頂きました。
平和について書いたつもりなのですが
なんだか分かりにくくてだめですね((汗
また時間が出来た時に謎の転校生の続きを
投稿したいと思います。
では、感想等頂けるとうれしいです!,#0000A0,./bg_b.gif,221.76.135.137,0
2006年05月29日(月) 22時04分53秒,20060529220453,20060601220453,f1/aQDhTlaiNE,素のままの君が好き 【番外編】,青夜,,,私は今公園で弟のサッカーの試合を見ている。
私の手の中には、不恰好なおにぎりが二つ。
私が新藤くんにあげるお弁当を作った朝、なぜか新藤くんが家に来て、
「はい。あげる」
と爽やかな笑顔でこのおにぎり弁当を置いていった。
「え、ちょっと待って、私もおべんと」
「じゃあねー★☆」
行っちゃったよ…
あーあ。お弁当、弟にあげよう…。
「んあー!!腹減った!!お弁当、ある?」
「はい」
「お。さんきゅー…これ、俺宛てじゃないでしょ」
「うん」
「ふーん。不味かったら吐くぞ」
「自分で片付けろよ」
弟は「可愛くね」と呟いてお弁当にがっつき始めた。
そしてむせた。
「ごふっ、げほっげほっ…なんか、苦い」
「あー…卵でしょ」
「…わかっててやったのか」
「どーせ上総(弟)だし」
焦がしちゃったんだよね…
新藤くんがおにぎり弁当置いていったあとだから…
もう、なんでよりによって!!
せっかくさ、女の子らしくお弁当作ったのに…
酷いよ…
「なに、やってんの」
「…え?」
新藤くん…だ…
あのときと同じ言葉…
「浮気?」
「ち…違うよ…弟」
「…まじでか」
「うん…ていうか…新藤くんこそ仕事じゃないの?」
「なんか明日23:00までになった」
「…へぇ…」
弟は苦い卵焼きを一生懸命食べている。
…不味そう。
ごめんね、上総。
新藤くんはいつもの笑顔で笑っていた。
「ね、上総。帰っていい?」
「…帰れば」
「じゃあ、ごめんね。バイバイ」
「おう」
新藤くんと、律。
ふたりの影は真ん中でひとつに繋がっている。
これから先、テレビでは見せない、素のままのあなたとずっと一緒にいたいな。
,はい、そんなにコメントもらってないけど
(しぃさん、ありがとうございます!!)
ヒマなんで番外編いっちゃいました。
今回、異様に台詞が多いのね…
でも、がんばりましたよぅ。,#5400A8,./bg_d.gif,59.140.62.153,0
2006年05月29日(月) 01時49分27秒,20060529014927,20060601014927,fxBuZUJVH8BiI,デザイアと呼ばれた男 VOL 16,D・二プル,,,第五章 狂い始めた歯車
1
俺が病院を訪れた日から三日後、安久津は病院の屋上から飛び降りた。
夜勤明け間際の早朝に屋上に上がり、下の駐車場のコンクリートへダイブした。
屋上には綺麗に揃えられた安久津の靴だけがポツリと残されていた。
病院の安久津の机の中から「すまない」と一言書かれたメモ書きが見つかったが、他に遺書のようなものはなかった。
マユミは一週間「ワールド」を休んだ。
マユミが休んだことで俺は安久津の死を知った。
そして、國無からそれが自殺だったと聞かされた。
俺はショックだった。
まさか俺が原因で安久津は自殺したのか?
もし、そうだとしたら大変なことだ。
俺はマユミを救おうとして行動したのに、逆にマユミから大切なものを奪ってしまった。
しかし、安久津はどうして自殺したんだろうか?
ひき逃げ?
入院患者との情事を目撃されたから?
自分の悪癖をマユミが知っていたから?
少なくとも俺が安久津を追い込んだことに変わりはない。
國無は俺を廃屋団地に呼び出し、安久津の自殺についてしつこく質問された。
「お前、何か俺に隠していることがあるんじゃないのか?まさか、単独で行動してないだろうな?」
俺は洗いざらい國無に全てを話した。
一人で病院に行ったこと。
そこで見たこと。
そして、安久津にしたことを細かく説明した。
國無は黙って俺の話を聞いていたが、話が終わると冷静に言った。
「しばらくデザイアとして行動することを禁じる。しばらくは普通にバイトでもして頭を冷やせ。それからもう二度と俺の指示無しで勝手に行動するな。今回はこれぐらいで済んだからよかったようなものの、今度勝手な行動をとったらどうなるか責任持てないぞ。マユミをお前の女にする約束も果たせなくなるかもしれないぞ。今回のことでもオレのシナリオはだいぶ狂ってしまったからな」
俺に説教を終えると國無は俺を帰らせた。
それからしばらくは「ワールド」でのバイトだけの生活が続いた。
レイプも暴力も無しのごく普通の生活。
以前はそれが当たり前だったはずなのに何か物足りないようなモヤモヤ感が心にへばりついているようだった。
一週間後、マユミは「ワールド」に出てきたが、仕事上必要なこと意外はほとんど話さなかった。
俺も安久津の死については一言も話さなかったが、マユミは俺の話もまるで聞いておらず、上の空だった。
抜け殻のようになったマユミは黙々と仕事をこなしていたが、心の中で泣いているのがはっきりと分かった。
そんなマユミを見ていると、俺まで元気をなくし落ちていった。
バイトから帰ると酒を飲み、罪悪感に悩まされながら荒れた。
部屋中の物を投げ、家具を破壊し、ストレスを発散させた。
それでもストレスは溜まる一方だった。
そんな荒みきった生活は俺を病気にした。
熱にうなされ、体の節々が痛くなり、喉はやられ声も出ず、鼻もつまり、腹も痛くなり、吐き気がし、ひどい頭痛に悩まされた。
もちろん、「ワールド」もしばらくの間休んだ。
それでもずっと寝ていると体が余計に悲鳴を上げるので無理やり起き上がり、TVに蛇崩庵娯の「カトリーナ」を流しながらボーとしていた。
半分死んだような俺は「カトリーナ」を繰り返し見続けた。
問題のラストシーンも何回もみるうちに不思議と快感に思えるようになった。
それにも飽きると俺はパソコンに電源を入れ、音楽を聞きながら何をするわけでもなく、デスクトップの画面をボケッと眺めていた。
画面にはどこかの国の花畑の真ん中を通る曲がりくねった一本道が映っている。
不思議なことにただじっとその画面を見ているだけなのに退屈しなかった。
俺はこの見えない一本道の先から誰かがやってくるように思えてしかたなかった。
すると不思議なことに本当に道の先から人影が現れたのだ。
その人影は次第にこっちに近づいてきた。
やがて、輪郭がはっきりして人影の正体が分かった。
それはデザイア≠ニなった俺自身だった。
デザイア≠ヘものすごい形相でこっちに近づいてくる。
そして、画面から切れたて通り過ぎたと思った次の瞬間、なんと画面の中からデザイア≠ェ現れたのだ。
眼を見開き、呆然としている俺をデザイア≠ヘ押し倒し、服を引きちぎると後ろから俺を犯し始めた。
俺は必死に抵抗したが、抵抗すればするほどデザイア≠ヘ欲情し、息を乱しながら腰を振り続けた。
俺はもがきながら今まで自分が犯してきた女たちの気持ちを考えていた。
ああ、女たちもこんな気持ちだったのかな?
そう思った直後、デザイア≠ヘ絶頂に達し、俺は意識を失った。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
時に人は目的の為に狂気に走ります。
他人から見ればそれは狂気にしか見えませんが、本人はもがき苦しみながら自分と葛藤しているのです。
まさに今の凛一郎はそんな感じです。
狂気の果てに何が待ち受けているのか?
ますます目が離せなくなっていく展開にご期待下さい。
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年05月28日(日) 21時55分48秒,20060528215548,20060531215548,fuobBkueji8Bw,素のままの君が好き,青夜,,,「律」
「新藤くん」
「おはよう」
「うん、おはよ」
私の顔を見て、彼氏の新藤くんはいきなり笑い始めた。
「な、なに…?」
「いや、可愛いなぁ、と思って」
私の顔が、隣の桜の木と同じようなピンク色に染まっていくのが自分でもわかった。
私たちの出会いはほんの一ヶ月くらい前。
友達のお供で新藤くんがベースを勤めるインディーズグループ「パオ」のライヴに行ったときだった。
チケットを無くしちゃった私が、なぜか楽屋の前の薄暗い通路に迷い込んで、うろうろしてたとき。
彼は私を見つけて、特等席に案内してくれた。
その上余っているチケットを私にくれた。(最後尾の列だったけど)
特等席とは…『楽屋』という名の天国だった。
『なに、してんの』
『えっと…チケットなくしちゃって…』
『…で、どうやってここまで来れたの?警備員居たはずだけど』
『それが…全然知らないうちに来ちゃってたみたいで…ごめんなさい』
『へ〜…変なの。ま、いいや。こっちおいで』
…手、大きいんだなぁ、この人…
私の手首を掴んでいる手を見て思った。
当時、たいして興味もなかった「パオ」。
でも楽屋でライヴより楽しい思いをさせてもらって、私はどんどん「パオ」にハマっていった。
「今日も仕事なの?」
「うん…」
「そっか。頑張って」
「律、寂しくない?」
…寂しい?
そんなこと、一度だって思ったことなかった…
普通の恋人って、相手が忙しくてなかなか逢えないと、寂しいものなのかな…
「毎日忙しくてさ。なかなか遊べないじゃん?」
「…大丈夫。新藤くんが頑張ってくれてると私も頑張れるから」
「…そっか」
「それにさ、普通のファンの人たちよりいい思いしてるもん。寂しいなんて贅沢言ってらんないよ」
新藤くんは微笑んで、また「そっか」と言った。
「…俺、時々寂しかった」
新藤くんの口が私の頬に触れた。
「でも、もう大丈夫」
無邪気な笑顔。
18歳のアーティストとはとても思えないくらい童顔。(でも私だって負けないよ!!)
それでニッコリされると、たまらなく可愛いんだな。
「二回目♪」
…そうだったね。やっぱりまだぎこちない。
「じゃあ、行ってくるから!!」
セカンドキスを奪って去っていった私の彼氏は、いつも以上に嬉しそうだった。
あ。行ってらっしゃいって言うの忘れてた。
でも、いいものもらったな。
いつも、寂しかったんだなぁ。
じゃあ私は可愛い可愛い新藤くんに『お弁当』作ってあげようかな…
今日はいつ、帰ってくるんだろう?
,はじめまして、青夜です。
夏の話にしようと思ってたら、春になりました。なぜ!!!!
…まぁ、そこは置いておくとして…
続きは、まだあるかどうかわかりません。
それに誰かの作品とかぶってそうなくらい平平凡凡な作品です。
もしかぶっていたらお知らせください。
消去します。
でも…結構いい感じに仕上がったと、私は思います。感想お待ちしてます。
青夜でした!,#0000A0,./bg_c.gif,59.140.62.153,0
2006年05月28日(日) 20時53分31秒,20060528205331,20060531205331,f7cbWQ2uNUq36,気付いて,しぃ,,,幸せは、君の横にいる。
消える前に掴んで。
ほら、早く。
逃げちゃうよ。
後悔、しないで。
私の願いは、それだけだよ。
君が、何気ない幸せを逃さぬように
願う事だけだよ。
手を伸ばせば届くよ。
人生一度っきりなんだから。
命尽きる前に気付いて。,私は、後悔を良くします。
恋も勉強も部活も、後悔はつき物です。
だからこそ、”後悔”という言葉から逃げないようになりました。
皆さんも、人生が好いものモノになるように、幸せが傍に居る事手を伸ばせば届く事を忘れないで下さい。,#000000,./bg_e.gif,220.20.125.15,0
2006年05月28日(日) 07時46分05秒,20060528074605,20060531074605,fTIHSLm6GYs6I,歩く道,雅,,,僕達の旅はいつまでも新しく いつまでも続くもの
一人で歩く時 二人で歩く時 みんなで歩く時も
旅は続いてる けれどずっとずっと歩いていたら
どこかで疲れちゃう だから今は休もう
これからの僕の旅の為に
君と歩き始めた旅は 今までの旅の中で一番輝いていた
いつまでもこの輝きを失わないようにと 二人で誓った
あの場所から歩き始め どれだけ歩いただろう
とても長い距離を二人で歩いたよね けれど今はもう
歩くことは出来ない 僕達の輝きは失ってしまった
君を心から愛し続けると約束した いつまでもずっとずっと
二人で歩き続けようと交した言葉は 全て儚い夢物語
幻にすぎない 僕らの記憶と思い出
夢なら夢だと言ってほしい また覚め新しい夢を見たいから
でも次は夢物語じゃなく いつまでも君と歩いていきたい
はてしない この長い道にそって
僕らの行く先には何があるんだろう どんな物が待っているんだろ
辛く険しい物なのか 楽しく明るい物なのか
誰も知らない 誰も答えない その時が来るまで待つしかない
疲れ休みまた立ち上がる その繰り返しが今日も始まる
いつこの旅が終るのだろうか いつ疲れる日が来るのだろうか
終る日をただ待つんじゃない 僕が探しに行こう
永遠という名の終りを掴むために
どれだけ君を思っても それは君に伝わない
何れだけ祈っても 決して叶わぬ願い事
今僕に出来ることは 泣き くずれ なげくだけ
時は解決してくれない 日に日に積もる君への思い
愛してる ただこの気持ちだけを伝えたい
君の幸せ それが僕の幸せで そんな馬鹿がここにいる
自分の幸せより人の幸せ 身を削り人に尽くす
どんなに辛くても笑顔で笑い 作るそんな馬鹿がいる
けれど僕はこの道を歩いて行く 例え間違っていても
辛く 険しく 大変な道だとさても その道を信じ
今までも これからもずっと歩いて行きたい
君を愛した事を後悔はしてない 君と出会えて本当に良かった
出来ることならもう一度 一緒に歩いていきたい
君が幸せなら僕はそれだけでいい 寂しい時 辛いとき
戻っておいで 君の止まり木になるから
例え君が僕を忘れたとしても 僕はいつまでも忘れない
思い出が色あせないように 閉まっておくよ
いつかまた 君と一緒に歩ける日が来るまで,久しぶりの作品です ついこの間起こったことを書きました,#0000A0,./bg_f.gif,58.87.241.43,0
2006年05月27日(土) 10時59分09秒,20060527105909,20060530105909,fTXDGQMiD.Dx2,血塗られた少女 06.,朱鷺,iruka_609@hotmail.com,,今日一日中河合の隣でどうだった?
という唯一の友人Aの質問に対して。
「おせっかいが半端ない。」と回答
まあ、そんな事はどうでもいいんだけど・・・
―放課後
「遙ぁー♪一緒に帰ろっ!」
・・・こう、一日中一緒だと今までマイペースだった私の生活が崩されていく
普段はしゃがないのでかなり疲れる。
放課後まで一緒かよ・・・
「・・・週番でしょ?忘れてない?」
私がそう続けると一瞬固まった後、考えはじめた
てゆーか・・・席隣同士が週番やるなんて誰が決めたんだよ。
怒ってもしょーがないんだけどね
・・・そんなにこのペースは嫌いじゃないし
・・・・・・だから別にすきとかじゃなくて!元々友達居なかったしちょっと嬉しいだけで〜・・・
自分が虚しくなってくるわ、はぁ・・・
「遙ぁ!2時間目って何やってた?」
黒板を消しながら私は英語。とだけ言ってまた作業を始めた。
だからこんなに冷たくしなくてもいいじゃないか!私!
「3時間目はー?」
授業中ずっと寝てたり外眺めたりしてたから分かってないんだな。
そう思った私は河合の机の前まで足を運ぶ
「貸して。私がやるからあんた黒板ね」
そう言って私は日誌を取り上げ席にすとんと座った
「えーいいけどーあんたじゃなくて和泉!!」
・・・別にどっちでもいいじゃん。
思っているとまたあいつ・・・和泉が続けて喋りだした
「和泉って言ってくれんと返事せんからねー!」
「別に呼ぶ時なんてないけど。」
日誌の空白の場所を埋めていく
その時だった。
また鞄の中から携帯が光を放った
朝のと一緒の番号だった。
―誰?知り合いとか?
まあ、そんなはずはないのだが、2回も間違い電話をかける奴なんていないだろう。と思い携帯を鞄の中から取り出す。
「もしもし?」
私がそういうと静かに女の人の声がした
「蒼井・・・遙さん?」
知らない人の声だった。
何故私の名前を知っているんだろう?
「そうですけど?」と、私が続けると
「話があるの、今・・・校門のところに居るから来てちょうだい」
そう言って電話は切られた
・・・何なんだよ?
「何?深刻ー?」
軽々しく・・・・和泉・・が、喋りかけてきた
「さぁ・・・わかんない」
言いながら私は鞄に携帯をしまった
「あと、鍵閉めるだけだから行ってきてもいいよ?」
いつの間にか黒板は綺麗になっていた
気になるし行ってみるか・・・
「うん、じゃあお願いする」
和泉に書き終えた日誌を渡し、すこし早足で教室を出て行った
校門の前には全てが黒といっていいような黒の車に、黒スーツの女性と男性が立っていた
やはりどちらも知らない顔だった
「まぁ、そんなに急かさないでよ。―すぐに分かるんだから」
そう言った彼女の手には白いハンカチのようなものがあった
それが私の口に当たると、急に意識が遠のいた。
「―これも運命なの。悪く思わないでね蒼井さん・・・」
それが最後に聞いた声だった。
「其田。この子中に運んで出発させて」
そういう彼女に対して其田と言う男は一礼し言われた通りにした
「私だってこんなことはしたくないのよ・・」
彼女は外を見ながら呟いた。,えーとまたまた長く;
ついに変な人達が行動に出て来ましたw
ちなみに其田はそのだ、と読みます・・。
最近よく小説を書いたり、読んだりすることが多くなってきました^^;
いろんな方のを読んでいて「次はこんな風にまとめよう」などと思ってもすることをできずに精進することができません;
ちょっとずつ改善していければなぁ・・。,#0000A0,./bg_c.gif,220.51.148.33,0
2006年05月26日(金) 15時08分21秒,20060526150821,20060529150821,fvIlISDOuWTSw,血塗られた少女 05.,朱鷺,iruka_609@hotmail.com,,コノ世界ノ終焉ストーリニツイテコレルカ?
ストーリーハマダハジマッタバカリ。
オレラナンテマダ終焉ニハ程遠イ
描クタメノ序章デシカナイ
コノ過酷ナストーリーノ中デ
イキテイケルカ―?
がばっ!!
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
朝から変な夢を見たもんだ・・・
ベッド、テレビ、小さなテーブル。
ただそれだけの置いてある大きな殺風景な部屋
朝。いつも私は此処で目を覚ます
起きて出迎える人なんかは居ない。
―当たり前なんだけど。
いつも通り身支度をしてコーヒーを飲んで学校へ行く。
あの夢は・・・何だったんだろう・・・
終焉が何とか・・・
凄く嫌な感じの夢だった
暗闇の中で私が背景と同化するような真っ黒な服で、
地面に足なんてついてなくって・・・浮いてるようだった
ただただ暗い中で声がするのだ。
悪寒が走った。
今日だっていつも通りしてるだけなのに
誰かに見られてる気さえするような・・・?
嫌な予感がする
私の勘は結構当たるので自分でも怖い。
何もなければいいんだけど―
自分のクラスまで足を運ぶ
2階の奥なので結構遠かったりする。
3階よりマシなんだけどね
そんな文句ばっかりも言ってられないし・・・
自分のクラスももう目の前。
ドアを開け一歩を踏み入れる
・・・。
何で河合が私の席に座ってんの!?
冷たい視線で見ていると私に気付いた河合が
「おはようっ!あ、この席は席替えで当たった席であってけして遙の席にいるわけじゃないから!」
別に席替えだけ言えばいいじゃん。
言い訳なんてしなくても
焦っている河合を置いて教卓の上にある箱に手を伸ばす
手を箱の中から抜き出すと15番と書かれただけの小さな紙が手の中にあった。
黒板を見ると席順が書いてある
15―って・・・
河合の隣じゃん・・・。
「あれっ!?遙隣?よかったー」
・・・何がいいんだか。
おせっかいが隣なんてありえない・・・
そう思っていると鞄の中で携帯が光っている。
・・・かかってくるはずのこの携帯に
私はどうせ間違い電話だろ、と思いほっておいた
「―・・・。」
此処、校門前。
せっかくここまで来たのにあの娘・・・
電話ぐらい出なさいよ。
身長が170くらいあるのか、平均よりは高い黒いスーツを身に纏った女。
胸にはプレートのようなものが掲げあげられている。
「本当にあの子で合ってるんでしょうね?其田。」
彼女の問いに答えたのは後ろに立っていた黒スーツの男だった。
彼女の胸のプレートは無かった。
その其田と呼ばれた男はこう続ける
「はい。間違いありません。」
「なら、もう時期会うことになりそうね―」
そう言った彼女は黒塗りの車に足を運んだ。,なんだかよくわからない展開?にw
今回はいつもに比べ、結構長めな感じがします^^;
でも読んで頂ければ幸いです!,#0000A0,./bg_c.gif,220.51.148.33,0
2006年05月26日(金) 02時32分04秒,20060526023204,20060529023204,fuwb51maq96/.,デザイアと呼ばれた男 VOL 15,D・二プル,,, 5
深夜、俺は一人デザイア≠ニなり三宿病院に来ていた。
俺は駐車場から敷地内へ侵入し、非常階段を使って院内に入った。
非常口には鍵が掛かっていたが、俺は國無からもらった道具を使い、鍵を壊さずに開けた。
「ニガー」との戦いの合間に俺は國無からピッキングの技術を習っていた。
俺は鍵を鍵穴に差し込むタイプのものであればどんな鍵でも開けられるようになっていた。
俺は誰もいない廊下をスタスタ進んでいった。
院内の見取り図は全て頭に叩き込んであった。
後は見回りの警備員や当直の看護士に気をつければいいだけだ。
以外にも俺は冷静だった。
これまでの経験が俺に自信をつけさせていた。
しかし、今日は油断できない。
今日はいつもと違い、國無のサポートは一切無い。
俺は國無にも黙って単独で今日ここに来ていた。
「ワールド」でマユミから父 安久津の話を聞いた俺は居ても経ってもいられなくなった。
俺がマユミを救う。
今の俺の頭の中にはそれしかなかった。
勝算はあった。
安久津はあの日、俺を轢いたことを隠している。
それをネタに脅し、悪癖を直させる。
全ては國無が言っていた情報が頼りだった。
もし、この情報が嘘ならどうにもならない。
しかし、俺は國無の情報にある程度の信用を寄せていた。
國無は嘘の情報を使うほど安っぽくないように思えた。
あいつはもっと巨大な悪の根をもっているような気がした。
俺は体を縮め、ナースステーションのカウンターの下を早足ですり抜けた。
ここをクリアしてしまえば後は病室が広がっているだけだ。
俺は暗視ゴーグルを付け、安久津を捜した。
安久津が今日、夜勤なのは分かっていた。
当直室を覗いてみたが安久津の姿はなかった。
仮眠室にもトイレにもシャワー室にもいなかった。
まさか、手術でもしてるんじゃないだろうな。
途方にくれて俺が廊下をあるいている時、妙な音が俺の耳に入ってきた。
それは聞き覚えのある音だった。
俺は耳を澄まし、音の出所を探った。
音はある個室の中から出ていた。
俺は静かにその個室のドアを開けた。
ドアを開けるとはっきりと音の正体が分かった。
それはベッドのきしむ音だった。
よく聞くときしみ音に混じって女のあえぎ声まで聞こえ始めた。
間違えなく誰かがヤッているのだ。
俺は身を屈め、音を殺しながら、ゆっくりとベッドに近づいていき、そっとカーテンの隙間から中を覗いた。
男は女に覆いかぶさっていて、俺からは後ろ姿しか見えなかった。
男は俺に気づかず激しく腰を動かしている。
女は目をつぶり、なるべく声がもれないように手で口を塞いでいる。
しかし、荒々しい男の攻めに耐え切れず口から音が漏れてしまっている。
その時、女が目を開き、俺と目が合ってしまった。
女は慌てて男に俺の存在を知らせようとしている。
異変に気づき、男が振り向いた。
その瞬間、俺は男の腹にパンチを叩き込んでいた。
俺は男の顔を見て唖然となった。
その男は安久津だったのだ。
安久津は俺に腹を殴られ、苦しそうに床に膝を付きもがいている。
俺はとっさに安久津の首筋に当身を喰らわせ気絶させた。
そして、女の口にクロロホルムが染み込んだハンカチを当て、眠らせた。
俺は床で失神している安久津を引きずり、病室を出た。
俺は安久津を男子トイレに連れ込んだ。
安久津を引きずったまま個室に入って鍵を掛けた。
安久津を便器座らせ、ビニールテープで口を塞いだ。
そして、手錠を手足に掛け自由を奪った。
安久津はまだ意識を失っている。
俺は安久津の頬を叩き、意識を呼び戻した。
意識を取り戻した安久津は俺を見てギョッとなった。
しかし、手足の自由が奪われていることが分かるとあがくのをやめ大人しくなった。
「いいか、今から俺の質問に答えろ。YESなら一回、NOなら二回瞬きをしろ。分かったな」
安久津は不自然なほど大きく瞬きをした。
「俺が誰だか分かるか?」
安久津は瞬きを二回した。
「お前は数ヶ月前、ある男を車で撥ねたな。覚えてるか?」
安久津の表情が明らかに変わったのが分かった。
「どうなんだ。ひき逃げしたことを認めるのか?」
安久津は観念したように瞬きを一回した。
「よし、次の質問だ。お前は自分の娘がお前が裏でしていることを知っていることを知ってるのか?」
安久津は顔色を変え、瞬きを二回した。
俺はマユミの写真を取り出し、安久津の目の前に差し出した。
「いいか、もし、お前がこれ以上、悪癖を続けるようなら、娘の身に何が起きても責任は持てないぞ。それにお前がひき逃げをした証拠もそろってる。あれを世間に流せばお前の社会的地位も終わりだろうな」
安久津は目を見開いたまま瞬きしなかった。
「いいか、今日限りで女に手を出すことを辞めるんだ。でなければ……わかってるな」
安久津は瞬きを大きく一回した。
「それから、今日のことももちろん他言無用だ。いいな」
安久津が瞬きを一回した瞬間、俺は催眠スプレーンを吹きかけた。
安久津が眠ったことを確認し、俺は手足に手錠とビニールテープを剥がし、その場を後にした。
俺は予想以上にコトがうまくいったと思っていた。
しかし、それは大きな間違いだった。
その時、俺は國無由自の力の大きさを感じた。
今までしてきた数々のことは、國無がいたからこそうまくいっていたのだ。
初めて単独で行動し、俺は自分の愚かさを知った。
まさか、こんな結果になるなんて……。
安久津が病院の屋上から飛び降り自殺をしたのは、それから三日後のことだった。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
世の中、何が正しいのか分からない時があります。自分がした行動が果たして本当に正しかったのか悩む時はないでしょうか?
それでも私たちは自分の行動に責任を持って尚且つ自然に身を任せ生きていかなければならないのです。
その結果、思わぬ事態になってもそれを受け入れた上でもがき続けなければならないのです。
それが生きる≠ニいうことではないでしょうか?
凛一郎に次々と襲い掛かる悲劇。凛もまたもがき続けるしかない人間の一人なのです。
次回、新章突入です。
乞うご期待!
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年05月22日(月) 19時09分08秒,20060522190908,20060525190908,eek8bqIaEEI06,血塗られた少女 04.,朱鷺,iruka_609@hotmail.com,,「朝は来てたみたいだけど、授業も出ないで何処いってたの?」
此処は職員室。長々と担任の説教が続いているところだ。
「全く・・・河合くんは前からあったけど、蒼井さん最近増えたわね」
だってしょうがないじゃん。あんたら守ってあげてるんだから感謝しろよ。
とは言えないのでとりあえず頷いておく
「・・・こんなこと言っちゃ悪いけど、河合くんに連れられてるんじゃないでしょうね?」
・・・は?コイツは全然関係ないんだってば。
「河合くんは関係ないんです。今日のコトは私が全部悪いんです」
これで制服とタオルを貸してもらった恩はチャラね。
「あっそう・・・。とりあえず今後こんなことがもう二度とないようにね」
はいと私は返事をすると即座に職員室を出て行く。
ちょっと待って、そう後ろから聞こえた気がしたので振り向く
まあ、予想はつく通りアイツだった
何?私は冷たくアイツにそういう。
「別に俺のせいにしてくれてもよかったのに」
・・・できるわけないでしょ。私が全部悪いんだから
そう思っていると続けて喋りだした
「内心下がっても知らないよ?」
・・・どうでもいいや。
「とりあえず・・・次移動だから戻ってもいい?」
そう言ってその場を去った
あぁ・・・私はなんて可愛くないのさ・・・
助けてもらったクセに、ね
でもこのことで嫌われたら気が楽だわ・・・
私に仲間なんていらないんだから。
誰もいらないんだもん。
孤独が一番いいんだもん・・・
そう思っているとなんだか悲しくなってきた
いつものことなのに・・・
アイツの優しさに気づいてしまったから・・・
普段通りにしていたかったのに
平凡とはかけ離れた平凡の中に居たのに引きずりだされてしまうなんて―,今はノリノリなので連続で掲載させて頂きました^^
というか暇なだけなんですが・・・。
,#0000A0,./bg_c.gif,220.51.148.33,0
2006年05月22日(月) 18時30分54秒,20060522183054,20060525183054,eotgxa9SNRsi2,血塗られた少女 03.,朱鷺,iruka_609@hotmail.com,,一番苦手なアイツにバレテしまったわけで・・・。
明日から・・・学校どうしようかな。
とりあえず返り血を浴びたことはもうわからないだろう。
でも―・・・
私はチラっとアイツを見る。
アイツはただ遠くをぼーっと眺めていた
何を考えてるのかな・・・
「あの・・・」
私はおそるおそるアイツに話かける。
「えっ・・・うん?何?」
びっくりした表情でこちらを見返してくる
本当は言いたくないんだけど・・・
「・・・・ありがとう。」
私がそういうとアイツはちょっと頬を赤らめていえいえ。と返してくる
いい奴なのかな・・・。
・・・・・・すきなんかじゃないけどね!
「・・・あの、学校戻る?」
一人で葛藤しているとアイツが話かけてきた
「えっ・・・あ、うん。」
一人なら帰るつもりだったが、せっかく制服まで用意してもらったし・・・
「じゃ、いこっか」
私はこくりと頷き坂をとことこと降りはじめる
沈黙が続いた。
アイツはどうにも思ってないのだろうか。
私が血だらけになって山に立って居たことについて
気になるはず―でもそのことに関しては一切口に出してない
「あのさ・・・気にならないの?」
バレてしまったものはしょうがないんだから・・・
「・・・言いたくないんでしょ?何か理由があるんだって思っとく」
・・・・・。
こんなキャラだっけ?
そんなことを思ってるうちに学校についてしまった。
これで良かったのかな・・・
私とアイツの何かがプツっと切れた気がした。
―何かは未だわからない。
もしこれが定めならばこれから何かが起こるだろう
―ここからが本当の始まりだったことを、私は未だ考えがしなかった,3話ですw
どこでどう切ってどの話を使おうかかなり迷いました;
でも結局コレに・・・
読んでいただけると幸いですw,#0000A0,./bg_c.gif,220.51.148.33,0
2006年05月22日(月) 02時01分34秒,20060522020134,20060525020134,eVh3CQKIMv6gM,デザイアと呼ばれた男 VOL 14,D・二プル,,,4
鬼頭は久しぶりに絶望していた。
これまで幾度となく修羅場を潜り抜け、絶望を味わってきた。
友人の死、恋人の死、部下の死……。
無数の絶望の果てに生き残り、今の自分があった。
鬼頭が作った渋谷最強最悪のチームニガー=B
その巨大な組織の頭として君臨していた鬼頭はその力を使い、取立て回収業者を設立した。
そして、顧客の信用を得る為に完璧に仕事をこなしてきた。
その結果、鬼頭の取立て回収代行会社「ニガー」は不動の地位を確保した。
最近では仕事も起動に乗り、安定した毎日を過ごしていた。
鬼頭は久しく絶望≠忘れていた。
そんな時、この事件が起きた。
鬼頭は今、三宿病院の病室の中にいた。
目の前のベッド上には顔にマスクを着け、機械に繋がれた恋人 和美の変わり果てた姿だった。
数時間前、和美はある男に襲われ、暴行を受けたと聞かされた。
医者の話では命に別状はないという。
それでも鬼頭の心は煮えくり返っていた。
鬼頭は和美の手をやさしく握り締めると静かに病室を出た。
鬼頭は廊下の壁を思いっきり殴りつけた。
白い壁に亀裂が入る。
鬼頭の顔はまるで悪魔のようなものすごい形相だった。
鬼頭がこんな顔をするのは何年ぶりだろうか。
三宿病院を出ると鬼頭は部下にメールを送信した。
「全員集合!これから緊急収集をかける。最優先事項で行う仕事ができた」
そのメールは「ニガー」の全社員に一斉に送信された。
今回の事件によって鬼頭は会社設立以前の渋谷最大の極悪チームの頭だった頃に戻っていた。
経済最優先でなるべくもめごとを避け利益をあげてきたが、今、鬼頭の頭にあるのは自分の女に手を出した犯人を殺すという極めて単純なことだった。
以前も鬼頭は自分の女に手を出した男を実際に殺していた。
その時はメンバーの末端を一人出頭させ警察を黙らせた。
鬼頭の極悪ぶりはチームの誰もが恐れていた。
気に食わない奴は殺す。
やりたい女は犯す。
そのやり方で鬼頭は今の地位を手に入れた。
どんな手段を使ってでも犯人を見つけ出す。
そして、殺す。
鬼頭は心の中でそう繰り返していた。
回収業者を潰してから数日が経っていた。
伊藤の家で「ニガー」の連中を潰した後、俺は同じ手口で3回「ニガー」の連中を襲い、長期延滞者を助けた。
助け出した長期延滞者は全員國無が車でどこかに連れて行った。
國無は「ニガー」から守る為に別の場所にしばらくかくまうと言っていたが、その行方は不明だった。
そういえば、以前國無は俺が修行の為に喧嘩を売り倒した男や、犯した女をどこかに連れて行っていた。
その時も、「足がつかないように後始末をしてくる」と言っていた。
その時は特に疑わなかったが、やはり國無の行動は謎に包まれていた。
しかし、俺は特に追及しなかった。
それはマユミとの仲が急速に良くなり、バイトが最高に楽しかったからだ。
俺は今、マユミとの距離を確実に縮めていた。
國無の特訓のおかげもあり、俺はみるみるうちに仕事を覚え「ワールド」の中で頭角を現していた。
仕事が早い俺をマユミが一番認めてくれた。
仕事を早く終えることで生まれる余裕がマユミとのおしゃべりの時間を作り出した。
客が来ない間、カウンターの中で二人で横に並び、壁に持たれかけながらする話はいつも俺の心の中の渇きを潤してくれた。
初めはたわいも無い話だった。
しかし、そのたわいも無い話が俺にはとても楽しいひと時だった。
そのうちにマユミは俺に相談を持ちかけてくるようになった。
マユミは様々な悩みを俺に問いかけてきた。
父親の悪癖に悩まされている事。
マユミの母親はマユミが小さい頃に交通事故でなくなっていた。
幼い頃からマユミは父と二人で暮らしていた。
父親はマユミをとても可愛がり、一生懸命働いてくれた。
マユミはそんな父が昔から大好きだった。
女手が無い分マユミは自分のことは全て自分でやった。
初潮も自分の知識で父の手を煩わせずに乗り切った。
毎日夜遅くまで病院で働いている父になるべく負担をかけないように家事も全て自分でやった。
しかし、そんな時、マユミは父の悪癖を知ってしまった。
ある日、マユミが夜勤の父に差し入れを持ってこっそり病院に行くと父は同じく夜勤の若い看護士と仮眠室で情事を交わしていた。
マユミはショックを受け、慌てて病院から走り去った。
それから秘かに父の生活を調べたマユミは、これまでにも父が病院の女医や看護士と関係を持っていた事実を知った。
そればかりか父は病院に入院している患者にも性行為を求めていた。
それは明らかに職権乱用であり犯罪だった。
マユミは父を軽蔑した。
それでも父はマユミの前では良い父親≠演じていた。
マユミのことも真剣に愛してくれた。
マユミにもそんな父のやさしさは充分に伝わっていた。
だからこそマユミは悩んでいた。
何とかして父の悪癖を直したい。
そんなことをマユミは俺に話してくれた。
それは明らかに俺を信用してくれているからこそ話してくれているのだと思った。
俺は何とかしてマユミの力になってやりたいと思った。
そして、マユミの口からあの話が出た時、俺はある行動に出ることを決意した。
それは以前、國無から聞かされた昔の彼氏のことだった。
初めは普通の恋愛話から互いの恋愛感を話している内に、マユミはついにあの話題を切り出した。
それは恐らくマユミにとってはパンドラの箱だったと思う。
マユミが語ったのはまだ話の断片に過ぎなかった。
國無から話の全貌を聞かされ全てを知っている俺にとっては、氷山の一角だった。
しかし、俺はマユミが自ら俺にその話をしてくれたことがすごくうれしかった。
話の途中でカウンターに客が来て話は途切れてしまい、マユミはその続きを話そうとしなかった。
俺も無理に聞きだそうとしなかった。
しかし、その日を境に俺は改めてマユミに惚れ直した。
そして、俺は初めて國無の命令ではなく、自分の判断で行動してしまう。
それが思わぬ落とし穴だとも知らずに……。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
目の前には闇が広がっています。
それは小説の世界ではなく、現実のリアルな話です。
小説の中のようなとっぴな展開ではなく、現実は何気ない些細な出来事でさえ絶望することがあります。
人は毎日心に傷を負って生きています。
そんな厳しい現実世界で生きていく為に、私は書き続けています。
そんな気持ちを込めて凛一郎を中心に「デザイアと呼ばれた男」を書いています。
皆さんはどんな気持ちで毎日を生きているでしょうか?
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年05月16日(火) 01時01分16秒,20060516010116,20060519010116,dnSQfL9uBzBKc,デザイアと呼ばれた男 VOL 13,D・二プル,,, 3
10時を回り、辺りは静まり返っていた。
月明かりがこれから起ころうとしている事実を全て悟ったようにやさしく辺りを照らしていた。
車を停め、俺と國無は回収業者が来るのを待っていた。
俺は「ワールド」から取ってきた長期延滞者のリストと國無が事前に調べていた回収業者のタイムテーブルのリストを照らし合わせていた。
そこには長期延滞者の勤め先や何時ごろ帰宅するかなど細かい個人情報が鮮明に記載されていた。
初めの長期延滞者は伊藤大輔という35歳のサラリーマンで、5本のアダルトDVDを58日延滞した時点でブラック会員になった。
延滞料金は総額8万7千円。
伊藤は回収業者からの再三の電話を全て着信拒否し、勤め先でも居留守を使っている確信犯だった。
そこで業者は今日、伊藤の帰宅時に強制徴収を結構する予定になっていた。
回収業者の車は通りを挟んで俺たちのバンの斜め前に停車していた。
回収業者は勿論俺たちの存在を知らない。
國無は俺に以前渡したデザイア&マ装時に使うトランクの他にもう一つ別の小さなトランクを手渡した。
そこには以前にも増して様々な武器が入っていた。
サイレンサー付きのブローニング、特殊合金でできた携帯用ワイヤー、猛獣撃退用スプレー、改造スタンガン、ナイフ各種……どれもTVや映画で見るような現実離れした代物bかりがぎっしりと詰まっていた。
「これ本物かよ?」
俺はサイレンサー付きのブローニングを手に取って言った。
「当たり前だ。ここから先は本当に実戦だ。弾はまだ入っていないから自分で詰めろ。銃の扱いはくれぐれも注意しろよ」
「……あんた何者だよ。前から思ってたけどこういう物をどこから仕入れてくるんだ?」
「そんな事はどうでもいい。気を引き締めろ。もうすぐ、伊藤が帰ってくるぞ。奴らが乗り込んで五分したら行動開始だ。分かったな」
「……ああ」
國無はいつも俺の質問をあいまいに誤魔化し、まともに答えた事はない。
俺はいつも國無のことをもっと知りたいと心のどこかで思っていた。
しかし、俺は自然と自分の興味にブレーキを掛けていた。
國無の秘密を興味本位で覗いてしまえば後で取り返しのつかない状況に陥ってしまうような気がしていたのだ。
俺は車のシートの上で体をくねらせながら、デザイア≠ノなる為の準備をしていた。
不思議なことに最近ではサングラスと帽子を付け声を変えると、本当に別人になったような感覚にとらわれ、まるで罪悪感を感じることなく思いっきり行動することができるのだ。
そうしている間に伊藤が帰宅してきた。
部屋に明かりが点くと回収業者の男達はすぐさま車から降り、伊藤の部屋へと向かっていった。
俺は車の中から男達の姿を確認した。
「三人か……」
「いいか、まずは鍵がかかっているか確認しろ。もし、掛かっているようならドアの前で待機しろ。業者が出てきたところを襲う。もし、鍵が掛かっていなかったら、そっとドアを開け、すぐにブレーカーを落とせ。そうしたら、回収業者を一人ずつ倒していけ。心配するな。相手は暗闇でお前の姿は見えない。お前はこの暗視装置付きの特殊ゴーグルをつけているから、相手の動きが手に取るように分かるはずだ。いいか、自信を持て。お前は数々の修羅場を潜り抜けてきたデザイア≠セ」
不思議なことに國無の言葉を聞くと自信が湧いてきた。
俺は車を降り、伊藤のアパートの階段を上っていった。
不思議と心の不安と緊張は徐々におさまっていった。
伊藤の部屋の前に着くと俺は大きく深呼吸をして、ドアノブをゆっくりと回した。
鍵は掛かっていなかった。
俺はゆっくりとドアを開け、中に入った。
薄暗い玄関の中に俺は身を潜めていた。
目の前の廊下の先には薄っすらと明かりが点いたリビングのドアがあり、そこからうめき声と罵声が漏れていた。
恐らく伊藤はあの三人組の回収業者に痛めつけられているはずだ。
俺の本心を言えば、伊藤は痛めつけられて当たり前の男だった。
借りたものを返さない伊藤が悪いのだ。
だが、國無からマユミの過去を聞かされて以来、俺の心は決まっていた。
例え気に食わない長期延滞者を助ける事になっても、ヤクザのような回収業者を敵に回しても、マユミの心の闇を救うことができるなら、俺はどんな事でもやろうと思っていた。
そうだ、俺はその為に悪魔と契約したんだ。
その瞬間、俺の中で急に力がみなぎってきた。
俺は國無に言われた通り、玄関先にあるブレーカーを落とした。
その瞬間、辺りは闇に飲み込まれた。
「……なんだこりゃ。どうなってんだ」
回収業者の三人は突然の出来事にパニックになっている。
三人組は以外にも若く、俺と年は同じか年下のようだった。
三人組の足元に伊藤が口から血を流して倒れている。
俺は冷静に辺りの状況を確認していた。
暗視ゴーグルのおかげで俺は昼間のようにくっきりと部屋中を見渡すことができた。
俺はゆっくりと回収業者の背後に忍び寄り、首筋にスタンガンを近づけた。
暗闇の中をスタンガンの電流が走り、回収業者は一人ひとり床に倒れていく。
あっという間に三人は撃沈した。
俺は訳が分からずにきょろきょろしている伊藤に催眠スプレーを吹きかける。
伊藤はたちまち意識を失って、その場に倒れこんだ。
俺は意識の失った伊藤を引きずって部屋を出た。
アパートの階段の下に國無が車をつけて待っていた。
「どうだった?」
「任務完了だ」
俺は伊藤を担ぎ上げながら言った。
伊藤を車の後部座席に座らせ、シートベルトを締めると、國無は車を出した。
俺は助手席で変装をときながら、危険な任務をやり遂げた達成感に酔いしれていた。
その頃、伊藤のアパートに一人の男がやって来た。
男はブレーカーを上げ、室内の電気を点けた。
床に倒れている回収業者を見て、男は眉間にしわを寄せる。
男は荒々しく回収業者の腹を蹴りつけた。
回収業者の男達は痛みで意識を取り戻した。
「何だ、この有様は」
「きっ鬼頭さん……」
「連絡がなかったのはお前達の班だけだ。延滞金は回収したんだろうな」
「……いえ、それが、途中で何者かが妨害を……」
鬼頭は回収業者の腹に強烈な前蹴りを喰らわせた。
「バカやロー、何やってんだ。で、長期延滞者はどうした?」
「それは……」
次の瞬間、鬼頭は倒れている部下の顔を踏みつけた。
「いいか、なんとしても伊藤とその邪魔した奴を見つけ出せ。さもなきゃお前らを殺すからな」
「……はっはい」
三人組は慌てて部屋から出て行った。
「くそ、バカが……」
鬼頭が部屋を出て行こうとした時、携帯が鳴った。
「何だ、どうした?……何だと?和美が……それで今どこに?分かったすぐ行く」
鬼頭は携帯を切り、急いで部屋を出た。
電話で鬼頭は恋人の小林和美が病院に運ばれたという知らせを受けた。
この後、鬼頭は和美が暴行を受けたという事実を知らされる。
それは俺にとって最大の敵が生まれた瞬間だった。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
好きな女を手に入れる為に犯罪者となった凛一郎。
そして、恋人を陵辱され傷ついた犯罪者の鬼頭。
この二人が対峙する時、確実に殺し合いの火蓋が切って落とされる。
人を愛する者たちが命を賭ける物語デザイア≠フ世界は見るもの全ての者の欲望を掻き立てる。
果たして凛一郎はマユミの心を掴むことができるのか?
乞うご期待!
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2006年05月10日(水) 22時22分37秒,20060510222237,20060513222237,cD/rl0Do8GiUU,戦場のクリスマス〜不思議な出来事〜,しぃ,,,どうしてだろう。こんなにうれしい日なのに、悲しいのは…
遠い空の向こうは火の海。
叫び声や弾丸の走る音。爆発音に戦車のの歯車の音。
果てしない日々。
「ねぇ、唯衣。どうして戦争は起こるの?」
麻衣はクッションを抱きながら私に聞いて来た。
「うーん。解らない。解ったらやめるでしょ」
私が冷蔵庫からケーキを出したら唯衣がクッションを投げて飛んできた。
「イチゴだっ。美味しそう!」
外は闇に包まれている。暗いくらい闇に。
テーブルの上にケーキを置くとまたキッチンに戻り、ナイフやお皿、フォークを出す。
”貴方はどんなプレゼントをサンタさんにお願いしましたか?それでは良い休日を……”
テレビから流れるアナウンサーの声に唯衣は今日って何の日?と私に聞いた。
「麻衣、貴方今日、どんな日か知らないの?決まってるじゃない。………よ」
「え?何?聞こえなかった。もう一度言って」
唯衣が私に迫ってきた
あれ?聞こえなかった?
「………よ。あれ?………!言えない?」
どうしたんだろう?声が出ない。
時計の針が動く音が部屋に響く。唯衣は首を傾けて私から目を離しケーキを切り始めた。
「麻衣、今日はどうしてお祝いするか解る?」
「え?」
唯衣は、ケーキを切り分けながらお皿に乗せていた。にこにこ笑いながら。
「今日、何年か前の今日。知らない誰かが生まれたんだ。その誰かが生まれた日は戦争の真っ最中で、淡い雪の中で何人もの人の命がなくなっちゃうんだ。
おばあちゃんがね、その死んじゃった人のお国のために戦った英雄の栄光をたたえてお祝いするんだって」
唯衣はナイフから手を放してあまりのケーキを箱に戻した。
唯衣の話を聞きながら私はコップとジュースを出していた。唯衣らしくない長い話を聞いたのは、初めてだった。
「ふーん、そうなんだ。唯衣はその日の事、なんて呼ぶ?」
「そうだな……戦場の………かな。あれ?いえないや」
私はコップとジュースをもって唯衣のところに行き、テーブルに置いた。
すると、ケーキの上に乗っているチョコレートに少しずつ字が浮かび上がった。
”メリークリスマス”
「麻衣、メリークリスマス…」
「唯衣、クリスマスって、悲しいね」
「そうだね。でも、死んだ人も天国で、ケーキ食べてるよ」
「うん、そうだね」
メリークリスマス,季節外れの小説でスイマセン。
クリスマスってやっぱり不思議です。
クリスマスの由来、違いますけど、こんな考え方もいいかな?と思います。,#000000,./bg_c.gif,220.20.125.15,0
2006年05月08日(月) 01時05分45秒,20060508010545,20060511010545,cAX7tk7faMbUk,デザイアと呼ばれた男 VOL 12,D・二プル,,, 2
その日、小林和美は仕事帰りに「ワールド」に向かっていた。
借りていたDVDはすでに三日延滞していた。
駅の改札を出て246沿いを早足で歩いていた。
今日は9時から見たい映画があった。
だから今日はDVDを返したらすぐに帰宅しようと和美は思っていた。
「ワールド」でDVDを返し、三日分の延滞料金を払うと、他の商品に目もくれず一目散に店を出た。
時計を見るとすでに8時55分を回っていた。
和美は足を速めた。
246沿いから細い路地に入る。
普段、帰りは明るい246沿いを通って帰るのだが、この路地を通った方がずっと時間を短縮できるのだった。
和美は路地を早足で歩いていた。
その時、突然、和美は後ろに気配を感じた。
そして、次の瞬間、見知らぬ男が背後から急に襲いかかってきた。
男は慣れた手つきで和美の口を塞ぎながらもう一方の手で和美の手首にて手錠をはめた。
全身に鳥肌が立ち、和美は恐怖を感じた。
和美は男の顔を見た。
男はサングラスと帽子で顔を隠している。
男はまったく慌てた様子もなく和美の手に手袋をはめた。
そして和美は男にさらに細い路地裏に連れ込まれた。
和美は泣きながら必死に抵抗したが、抵抗すればするほど、俺は欲情した。
和美を路地の壁に押し付け、服をめくりあげる。
和美の露になった胸を獣のように舌でいやらしく嘗めまくる。
それでも和美は必死に抵抗する。
俺は和美のショーツの中に手を突っ込み、指でグジュグジュに濡れた和美の中を探索する。
和美の抵抗が最大限に高まった。
「もっと抵抗しろよ」
ボイスチェンジャードロップで変化した俺の声が低く唸る。
それは逆効果だった。
和美の抵抗はみるみるなくなり、諦めの極地へと達した。
そろそろ潮時だった。
俺は腕で和美の体を持ち上げながら股を開かせ、挿入する準備に移った。
最近は立ったままヤルのにもだいぶ慣れてきた。
俺はズボンを下げゴムを装着すると、ペニスを手で導きながら和美の膣の中に入れた。
俺は限界寸前まで激しく腰を動かし続けた。
和美はすでに抵抗をやめ、されるがままに俺に身を預けている。
それでも俺はその直後に射精した。
ペニスを抜き、ザーメンがたっぷり入ったゴムを外してトランクの中にしまった。
和美は涙の痕を残したまま路地にぐったりと座り込んでいる。
和美の顔はすでに無表情だった。
俺は手錠と手袋を外して、即座に立ち去った。
俺は薄暗い路地裏でゴーグルとニット帽を外し、ドロップを捨てて水を飲んだ。
246沿いの明るい大通りに出る頃にはすっかりデザイア≠ゥら凛一郎へと戻っていた。
俺はやってきたタクシーを止め、少し走らせてからUターンするように指示し、世田谷公園近くのファミリーレストランの前の道でタクシーを降りた。
ファミリーレストランの階段のゆっくりと上っていき、乗ってきたタクシーが走り去るのを見届けると、何事もなかったように階段を下り、公園の横の路地に入った。
路地を抜け、公園の駐車場の前まで来ると國無がバンに乗ってまっていた。
バンはいつもと同じ型だが、色とナンバープレートは違っていた。
國無がいつも当たり前のように用意してくる車や必要な道具に初めはいちいち驚いていたが、もう慣れてしまった。
俺を拾って國無が運転するバンは走りだした。
「どうだ、たっぷり出してきたか?」
「ああ、楽しんできたぜ」
「いい感じだ。だいぶ余裕も出てきたな。だが、油断するなよ。とくに今日から段三段階に入るんだからな」
「ああ、分かってる」
國無は前を見たまま俺にこれから行う事の説明を始めた。
「いいか、第三段階からは訓練じゃない。お前がマユミを手に入れる為の実戦だ。一つミスも許されない。小さなミスが命取りになるからな。それを肝に銘じておけよ」
「ああ、分かった。で、具体的に何をするんだよ」
「お前が『ワールド』から調べてきたリストがあだろ。今からそのリストの家を一軒一軒回るんだ」
俺はダッシュボードの中からリストを取り出した。
それは長期延滞者のリストで「ワールド」内のブラックリストのメンバーのものだった。
「ワールド」はあまりに悪質な客や長期延滞者をブラック会員とし、業者にそのリストを送る。
一度業者に送った客とは一切取引はしない。
会員証も無効になり、再入会もできない。
業者は闇金の借金取りと同じような輩で、力ずくで延滞者から延滞料金を回収する。
そのやり方は荒っぽく、違法な手段が用いられる場合も少なくなかった。
延滞料金と共に回収された商品は一応「ワールド」に返す決まりになっていたが、必ずしも商品が戻ってくることは無かった。
場合によっては商品を紛失、または壊してしまったということにして、その料金も上乗せして回収する場合もあるからだ。
だから「ワールド」側も無理に商品の返却を望まなかった。
業者送りになった会員の商品はすでに無いものと考えたほうがいいのだ。
「で、長期延滞者の所に行ってどうするんだよ。商品を回収するのか?」
「その逆だ。取立てにきた業者を一人ひとり潰していくんだ。相手はプロだ。武器も携帯している可能性があるから気をぬくんじゃないぞ」
「……ちょっと待ってくれよ。何で俺が回収業者を相手にしなきゃいけないんだよ。あいつらヤクザと変わらないんだぜ」
「言っただろ。マユミを手に入れる為さ。お前にはまだ話していないだろろうが、マユミの心の闇はそこにあるんだよ」
「どういう事だよ」
「マユミは昔、付き合っていた恋人を業者の手によって殺されてるんだよ。表向きには事故死ってことになっているが、真実はそうじゃない。回収業者に抵抗して殺されたんだ。おまけにマユミ自身も恋人の目の前で業者たちに輪姦されている。マユミはいずれ業者たちに復讐しようと思っている。それをお前が手伝ってやるんだ。あくまでそれは偶然なことのように見せなければならない。そしてそれを間接的にマユミに知らせる。そうする事でマユミはお前を特別な目で見るようになるだろう。そうなればお前はマユミを9割は手に入れたと同じだ。段三段階が終わった時、お前の未来は変わるぞ」
「……そんな事があったのか」
「前にマユミが喫茶店で客をボコボコにしたって言ってたろ」
「ああ」
「あれは業者の一人だ。マユミは初めからそれを知ってて実行した。しかし、女手一つでどうにかなる連中じゃない。このまま行けば間違いなく命にかかわる。それを止める為にもお前がやらなくちゃいけないんだよ」
「……」
國無の話を聞いて俺の心は怒りで煮えくり返っていた。
そこにはマユミを自分の女にしたいとか、快楽を求めたいとか、そんな気持ちはどこかに吹っ飛んでいた。
ただ、マユミを苦しめている業者たちが憎かった。
それはこれから俺がやろうとしている行為に意味があるということの証だった。
そんな俺を國無は横目で見ていた。
いつの間にか車は初めの長期延滞者の家の前についていた。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
人には全て過去がある。過去があるからこそ今の自分がいる。
自分が愛する者の過去を知った時、あなたならどうするだろうか?
過去の闇が愛する者を苦しめているとしたら?
マユミの闇に触れた凛一郎はどんな行動をとるのか?
目が離せない展開に乞うご期待!
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年05月06日(土) 19時09分48秒,20060506190948,20060509190948,cSLDRqnTi3kM2,私の天使No,2 ”真実を知った?”,しぃ,,,知らないでしょう?私の苦しみ………。
「名前を呼ぶ君の声が今も胸に残る。何処にいても、大人になっても君の事を忘れられない」
一人で本を読んでいた。孤独の中で唯一集中出来る時。今日の朝一時を回った時、私にヒゲキが降りかかった。
「くるみちゃん、余命半年だって。かわいそうねぇ。だってまだ13歳でしょ?今一番楽しい時期じゃない?でも、むかつく子が一人減るわね」
「そうね。くるみちゃん、愛想悪いし、ろくに病室から出ようとしないし、友達も居ないんじゃない?」
うるさいな。悪かったね、私が愛想悪くて。もう、死ぬんだから優しくしてよ。上辺だけでもさ。でも、気持ちこもってない愛情貰ってもうれしくないけど……。ねぇ璃駒、璃駒も離れていく?勇人みたいに……。
コンコンッ
「はい。どうぞ」
ガチャッ
「どうも。くるみ、今大丈夫?」
璃駒か。なんか色々考えてたからひとりがいいなぁ。
「今は一人がいいんだけど…」
「そう言うなよ。あのな、俺、彼氏としてくるみにプレゼントあるんだけど」
人の言う事まったくきいてないよね、君。
「何?」
「はい。コレ」
璃駒は茶色い紙袋を渡してきた。
がさがさっ
「コレ、指輪?」
「うん。ペアリング。サイズわかんないからフリーサイズにした」
「ありがとう」
「うん。どういたしまして」
「ねぇ、聞きたい事あるんだけど、いい?」
「いいよ。別に。何でも聞いて」
「……あのね、私、余命半年なの。わかる?後半年で死ぬの。この世からきえちゃうんだよ。それでも、私と付き合う?」
璃駒は驚いてて、手を口に当ててた。私は、目に涙を溜めていた。
「そっか。半年で死ぬのか……。じゃあ、俺たち、後半年思い出たっくさん作らなくちゃいけないな!」
その言葉を聴いて、すごく安心して、もう涙が止まらなくて璃駒にしがみ付いた。
「璃駒、私、死にたくないよ。まだ生きたいよお。ヒック……璃駒のこと、まだ全然知らないのにぃ……ヒッ……」
「俺は、関係ないと思うよ?人間みんな最後には死ぬんだもん。時期が違うだけ。だから、 別れたりなんか。ほら、泣かないで。ね?」
璃駒は私を優しく抱きしめてくれて背中をポンポンッて叩いたり撫でたりしてくれた。この前抱きついてきた時より、暖かかった。
「璃駒、私の事、スキでいてくれるの?」
璃駒は私の言葉を聴いて、一瞬驚いたけど、優しく笑った。
「もちろん」
,うわ!恥ずかしい!きゃッッ!恋愛モード全開でごめんなさい……。璃駒くんとくるみちゃんラブラブやないか!すこしずつじゃなかったんかい!ま、今回はくるみちゃんの弱さが出てて、くるみちゃん守ってあげたくなってしまいました。えへへ。璃駒くんの優しい所も掛けて、惚れ惚れしているしぃなのでした。次回はしょれーっと出てきた勇人くんについて書きたいと思います☆,#800040,./bg_g.gif,220.20.125.15,0
2006年05月06日(土) 00時55分38秒,20060506005538,20060509005538,c6RvDGBug7aLc,デザイアと呼ばれた男 VOL 11,D・二プル,,,第四章 暴れだした欲望
1
コツコツと階段を上る足音が鳴り響く。
俺は二階にある鍵を差込み、オープン前の店内に入る。
始めにもう一つの鍵を使い、セキュリティーを解除する。
それから扉の鍵を閉め、レジのコンピューターを起動させる。
その間に業務用のエプロンを着けて、レジ金を数え、レジにしまっておく。
これでオープン準備は完了した。
俺は店内の音楽を掛け、レジの画面に視線を寄せた。
國無の言っていた事は瞬く間に現実のものとなった。
これまで週5で朝番に入っていたアケミが極端にシフトを減らし、週1、2のペースになった為、その穴埋めとして俺が朝のシフトに入ることになった。
それによってマユミと一緒に働く機会が増え、俺はとても楽しい時を過ごしていた。
マユミとは仕事の合間に様々な世間話をした。
映画のこと、音楽のこと、話題のニュースについて、そして互いの恋愛間について……。
マユミと話すうちに今まで知らなかった色々な情報を聞き出すことができた。
マユミはロックが好きで様々なバンドのおっかけをしているという事。
その中でも「クライム」というバンドが一番好きだという。
将来は自分でカフェかバーを経営したいという夢を持っていること。
その為にバイトを掛け持ちしているということ。
「ワールド」の他にファミレスでバイトをしているという。
実は俺より2歳年上だということ。
そして、今、付き合っている彼氏はいないということ。
それを聞いた時、俺は危うく白坂との関係を口走りそうになり慌てて思いとどまった。
マユミは白坂と付き合っているわけではなかったのか?
じゃあ、白坂とはどんな関係なんだろうか?
マユミは俺に付き合っている相手がいるのか聞いてきた。
俺が相手はいないことを告げると、
「好きな人はいないの?」と聞いてきた。
俺は心の中で「マユミが好きだ」と即座に答えたが、声には出さず、
「気になってる人はいるけど、安久津さんの知らない人ですよ」
と嘘をついた。
俺の嘘の言葉にマユミは興味を示し、あれこれと細かい事を聞いてきた。
「どんな人?どこで知り合ったの?そこ娘は五味君のことどう思ってるのかな?」
それは俺がマユミに一番聞きたいことだった。
俺はマユミの質問に言葉を詰まらせた。
その時、たまたま客がカウンターに来て会話が途切れ、俺は命拾いした。
結局、その話題はそこで途切れたが、いまだにマユミと親密になることはできず、相変わらず距離は縮まっていなかった。
マユミとの距離を縮める為に俺はシフトの一時間前に「ワールド」に来ていた。
マユミが来るまでの間の二時間の間に会員登録データベースを開き、國無の作ったリストの人物の住所、携帯番号を書き写した。
國無がどういう意図でこのリストを作ったのかは疑問だったが、とにかく今は國無の言う通り行動するしかない。
俺はマユミを手に入れる為に悪魔と契約したのだ。
修行の第二段階は俺が会員の中で気に入った女の身元をデータベースの中から調べ、その女の自宅と「ワールド」の間でレイプできるポイントを見つけ出し、自らプランを立て、実行するというものだった。
その間、國無のサポートは一切無し。
國無から渡された道具入りのトランクだけを頼りに俺一人で犯行に及ぶというものだった。
本当の緊急時用に渡された携帯も持っていたがまだ、一度も使ったことは無かった。
レイプの腕はみるみる内に上達し、俺は次第にその禁断の快楽に溺れていった。
それまで、女とSEXしてもイクことのできなかった俺が、レイプすることで必ず射精することができるのだ。
國無の言いつけを守り、俺は必ずゴムを付け、精子の入った使用済みのゴムは持ち帰って処分した。
警察の手を逃れる為に、女には必ず手袋をはめ、爪の中に俺の皮膚が入らないように気をつけた。
皮膚からDNA鑑定されれば身元が割れる恐れがあるという。
それから俺はゴーグルとニット帽で素顔を隠し、ボイスチェンジャードロップで声を低くして別人になりきった。
時には女にも、アイマスクや猿轡を使い、自分の正体がばれないように細心の注意を払った。
俺は國無由自に導かれるように、自分の欲望に忠実に女を犯し、暴力に明け暮れていた。
それにも次第に慣れ、いつしか俺の中でデザイア≠ニいうもう一つの人格が生まれる頃、國無の計画は第三段階へと突入しようとしていた。
第三段階で國無が作り、俺がデータベースから書き写したリストが役に立つ時がやってきた。
それはこれまでの意味不明だった行動の真意が明らかになる時でもあった。
そして、マユミの悩みの一つが明らかになるのだった。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
次第に距離を縮めていく凛一郎とマユミ。
その裏で次第にエスカレートしていくデザイア≠フ犯行!
この愛の矛盾の先に待ち受けているものは果たして?
ひと時も目が離せない展開に乞うご期待!
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年05月05日(金) 18時26分36秒,20060505182636,20060508182636,cmmLML6cX3Qsw,血塗られた少女 02.,朱鷺,iruka_609@hotmail.com,,誰かが私も呼んでも気には止めずに、
ただただひたすらに走った。
都会にある小さな山へ向かって―
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
結構学校から距離のある小さな山
私の直感ではアイツはここにいる。
少し太陽に雲がかかり始めた頃―
アイツの嘆き声が近くなっている事に気づく。
物凄く近くにアイツの声を感じられる
アイツは人の形をした化け物で、見分け方はすごく簡単
どこかに真紅の色をした印がついてる。
何故かアイツは言葉を話せる。
でもそんなことは気にしない・・・化け物だもん
―さぁ、いよいよショータイムの始まりだ
「出ておいでよ―」
私が声のする方へと近づいて行くとその怪物が姿を現した
いつもと変わらぬ人姿
両手を大きく真横に広げ、怪物へと向かっていく。
この時自分が獣にでもなったかのように思える程自分が怖い
何のためらいもなく怪物を真っ二つにすると、
真紅の血が私を包む。
怪物の血が私に染み込んでいく
「あーあ・・・まだ朝なのに。制服変えにいかなきゃ・・・」
ため息をつくながら血の拭く怪物を残し歩いてゆく
予想外の出来事で、私は息を呑んだ。
「河合っ・・・・・・和泉・・・?」
私の目の前にはあの河合 和泉が呆然と立っていた。
アイツは私をずっと見ている。
まるで怪物を見るかのように―
でもその目はすぐに色を変える
「え?遙!どうしたんだよ!」
私に駆け寄って来るアイツにむけて私は何もすることができなかった
何故アイツ此処にいるんだ?
答えのない自問自答を心の中で繰り返す
―バレてしまった。
よりによってあの男に。
・・・もう私、あの学校には行けなくなるな
いろんな言葉が頭を過ぎる。
何も言わない私に対してアイツは・・・
「・・・ちょっと待ってて」
そう言って山を下り降りていった。
―数十分後
私はただアイツに見つかったあの場所でただ呆然と景色を見ていた。
何故こんなことになった?
見つかった私はバカだ。
アイツが秘密を守るわけない
ただのお調子者なんだから
遠くのビルの波を見ながら言う。
「ほら、早く着替えて」
そんな声が私の耳に届いた。
アイツだった
そう言って渡された袋の中には真新しい制服とタオルが入っていた
「別に・・・いいよ」
もうバレてしまったんだから、今更・・・
「いいから、そんなんじゃ帰れないでしょ?」
アイツの眼は真剣だった。
渋々袋を受け取った
頭を拭く私とただ横に居てくれるだけのアイツ
そんな私たちの間を風がすり抜けていった―。,2話目ですー。
話が長くなりそうだと思い切ったんですが切り方がイマイチ上手くいきませんでした;
ちょっと長くなったかもしれないです・・・。,#0000A0,./bg_c.gif,220.51.148.87,0
2006年05月04日(木) 22時48分05秒,20060504224805,20060507224805,cvPAgYnS459ck,私の天使 No 1 ”出会い”,しぃ,,,窓から青い空が見える。手の届かない高い空が………。
私、早河くるみ。幼い頃から入院している。理由は、軽い病気。すぐ直る軽い。でも、そんなの嘘。すぐ直るなら、七年も入院しない……。
「空、高いな」
私の部屋は、東病棟。西病棟は、老人ホーム。
東病棟は、若い人や、子供ばかり。大体の子は、ガンや、白血病にみたいな、直る確率の割と少ない子ばかり。私もそこの中の一人。
コンコンッ
「はい。どうぞ」
丁度。夕方七時を回った頃、私のドアがなった。
「失礼しまーす」
ドアを開けて入ってきたのは、身長の高い細身の男の子だった。その子は、入ってくるなり、とんでもない事を言った。
「俺、君の事が好きです!」
「………は?」
その子は、かぶっていた帽子で、顔を隠した。
「俺、偶然この病院に入院してたんだ。骨折してて」
「だから、なんで急に……」
私は夕方のご飯でも運んできてくれるのかと思ってたのに。そんな急に告白されてもって……ねぇ。
「ごめん、ごめん。えっと、俺は松岡璃駒(まつおかりく)。入院してる時、君の部屋の窓から声が聞こえて、窓見たら君が居て……。それで、一目ぼれって奴かな、世間的に」
「そう。……別に良いよ」
どうせ、私の病気の事聞けば逃げていくでしょ。何が一目惚れよ。笑わせる。
「マジで?やった!で、君、名前は?」
「は?知らないで告白したの?信じられない」
呆れた私はベッドに潜り込んだ。
「で、で?名前は?」
「くるみ」
璃駒は毛布ごしに私に抱きついた。
「くるみ大スキー!」
「もう、やめてよ!うざいなぁ」
抱きつく璃駒を突き放して言い放った。
あ。言い過ぎたかな……。
「……ごめん。俺、ちょっとはしゃぎすぎた?」
「誤らないでよ。その、抱きつくとかは、やめて……ほしいだけ」
そう言うと璃駒は顔を上げ、笑った。その顔をまじかに見て少しドキッとした。
「わかった。少しずつラブラブになろうな。くるみ」
「え?ラブラブって………」
ぎゅっ
「な!」
璃駒は照れ隠しにまた俯きながら手を握ってきた。
「少しずつ…な」
その日は波乱万丈な日で、平穏な日々はもう二度と帰ってこないと思った。
そう思ったのは、その日の夜中までで、その夜中には、別の意味でもう、二度と平穏には過ごせないと思った。璃駒には悪いけど、少しずつだったら、間に合わないと思う。ごめんね。璃駒の告白、無駄になっちゃうね………。,はいッこんにちは。いや、こんばんわ?
連載物なんですけど、読んでくださると良いです。くるみちゃんのぎこちない恋を描くつもりなのですが、璃駒くんの天然で積極的な感じも出していけるといいなぁと思っています。,#000000,./bg_d.gif,220.20.125.15,0
2006年05月04日(木) 18時47分57秒,20060504184757,20060507184757,cnSMj0vcT9rkw,血塗られた少女 01.,朱鷺,iruka_609@hotmail.com,,空が少し明るみを帯びてゆく頃。
まだ全てがぐっすりと眠っている時、
私蒼井 遙(あおい はるか)の一日が始まる。
今日もまた何処かで、怪物が嘆いている
私の秘密の任務―。
本当は誰にも知られてはいけないものだった。
―でもいつかは誰かにバレテしまうだろう
そう思いはじめている今日。
いくら考えても何があっても日は昇るので・・・
いつもは普通の高校1年生。
普通の―。
いつも通り学校へ行き席に着く。
誰にも声はかけずに、
私には独りが似合うんだ。
でも―。
「遙っー♪おはよー」
最近になってよくつっかかってくる奴。
こいつの名前は確か、河合 和泉(かわい いずみ)
何故かモテるこいつだが、何故私のとこに来るのか。
「・・・おはよう。ってゆーか」
私はずっと此処に入られても困るので話を切り出す。
「河合くんが来ると私に災難が振りかかるんだけど」
こいつはモテるから、その辺のミーハー女子がうるさいのだ。
「えーだって俺遙と喋りたいしぃー」
最近の生活が乱れたのは全てあんたのせいだってのに・・・。
でもこいつは意外と何故か勘が鋭いのだ。
そのときだった。
何かの歯車が壊れたかのような出来事だった。
遠くから・・・空から、嘆き声が聞こえた
アイツ、だ。
私は両親が亡くなってから何故か変な力を授けられた。
この世に存在する名前は知らない・・・が、
変な怪物を倒す。という普通の女子高生にはないことをしなくては
ならなくなった。
実際あの怪物はなんなのか、自分は何なのか、何も知らない。
でも私にできることはしなければ―。
学校なんて関係ない。
河合 和泉が喋っていることなど気にせず私は教室を出ていく
あの化け物を探しに―。,初めましてー^^
朱鷺(とき)と言いますー!
初めて此処に小説を書きに着ました!!
いきなりの連載モノでごめんなさい;
この作品は、私が書く初めての恋愛×戦闘モノ(?)なので上手くいくか不安です・・。
でも頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします^^,#0000A0,./bg_c.gif,220.51.148.87,0
2006年05月03日(水) 01時22分54秒,20060503012254,20060506012254,bESoDhLCjKk7k,デザイアと呼ばれた男 VOL 10,D・二プル,,, 4
その日もいつものように昼の修行を終え、俺は一息ついていた。
今日は潰れた病院に出前のラーメン屋の男を呼び出し、アッという間にぶちのめした。
最近は相手に喧嘩を売るのにも慣れ、ほとんど怪我無しで相手を倒すことができた。
これまで男34人と戦い、女28人を犯してきた。
初めの頃にあった不安や罪悪感はまったく無くなり、かなり自信を付いてきた。
地面の上でのびているラーメン屋の男を見下ろしながら汗を拭いている俺に、それまで遠くから黙って見ていた國無が近づいてきて口を開いた。
「よし、だいぶ動けるようになってきたな。順調な仕上がりだ。今日から第二段階に入る」
「第二段階?何するんだ?今日も夜からバイトだぞ」
「いいんだよ。第二段階は『ワールド』で準備するんだからな」
「準備って?」
「話は後だ。とりあえずアジトに戻ってからだ」
國無は床で伸びているラーメン屋の男を担ぎ上げ、表に停めてあったバンの後部座席に放り込みながら言った。
「お前は先にアジトに戻ってろ。オレはいつものようにこいつを始末してから戻る」
國無はバンに乗り走り出した。
そう言えば、今まで男女問わず、俺がヤリ終えた相手を國無は必ずどこかに運んでいた。
國無は用済みになったあいつらを一体どうするんだろうか?
「始末する」と言っているが、まさか全員殺しているんじゃないだろうか?
これまで國無と付き合ってきたが、いまだにアイツの正体も目的もはっきりしていなかった。
俺は心のどこかで國無由自の得体の知れない恐怖に怯えていた。
俺は自転車にまたがり、廃屋団地へ戻った。
俺はいつものように自宅に自転車を置き、歩いて廃屋団地に向かった。
人目を気にしながらゲートを潜り、二階の踊り場からハシゴで中に入る。
初めに来た時は不気味だったこの団地もだいぶ慣れてきた。
階段を上る足音が静かに響きわたる。
俺は國無から渡されていた合鍵で中に入った。
國無はまだ来ていないようだった。
部屋の中は静まり返っている。
俺はいつものソファーに横になり、まったりとくつろいでいた。
そういえば、いつも疑問に思っていたんだが、この団地の他の部屋の中は一体どうなっているんだろうか?
いつも使っている最上階のアジト≠ヘ外からは想像できないほど綺麗に整理されている。
しかし、他の部屋に入ったことは一度もなかった。
一度、國無に他の部屋は使われてないのか聞いてみたことがあった。
その時國無は「他は使ってないし、入ることもできない」と言っていたが、俺は半信半疑だった。
あの國無が他の部屋をそのまま遊ばせておくだろうか?
確かに國無は無断でこの団地を使っている。
それは明らかに違法行為でいつ、警察や行政の手入れがあってもおかしくない状態だ。
それを考えれば部屋は最小限に絞った方がいい。
しかし、國無という男は警察や行政などまったく恐れていないような気がする。
仮に手入れがあったとしても國無は恐らくまったく動揺せずにいつも通りクールに対応するだろう。
だとすれば、他の部屋も自分の目的の為に使っていて当たり前のような感じもする。
もしかすると、他の部屋に國無由自の知られざる秘密が隠されているのかもしてない。
だとすれば何とか他の部屋を見てみたいと思った。
しかし、そこには見てはいけない何かが隠されているような気もした。
下手な好奇心で覗いてしまえば、せっかく手に入れたモノが音をたてて崩れてしまいそうな気がした。
その時、ドアが開く音がした。
國無が帰ってきたのだ。
俺は慌てて体を起こした。
「待たせたな」
「いや、いいよ。それより早く第二段階の話を聞かせてくれよ」
「ああ、今話してやるよ」
國無はキッチンでコーヒーを入れ、一つを俺の前に置くと反対側のソファーに腰掛けた。
「どうだ、バイトはだいぶ慣れてきたか?」
「ああ、あんたに教えてもらったビデオ屋のイロハのおかげで順調に進んでるよ」
「レジ操作も覚えたか?」
「ああ、大体はね。そんなことより第二段階の話を……」
「第二段階はそのレジ操作が重要になってくるんだよ」
「え?……」
「第二段階は『ワールド』の会員登録されている者たちをターゲットにする。今まではこっちが指定した場所に呼び出して犯行に及んでいたが、今度はターゲットの住所と『ワールド』との間の道で犯行に及ぶ。場合によっては車でさらったり、ターゲットの自宅で犯行に及ぶこともある」
「おいおい、大丈夫かよ?ますます危なくなってきてるじゃないか」
「言うまでもないが第二段階はさらに危険が増す。今度は素顔を隠し、声も変える。それに女を犯す場合は相手に手袋をつける。爪の間にお前の皮膚が入らないようにする為だ。それから、ザーメンも現場に残すな。必ずゴムを付け、使用済みのゴムは必ず持ち帰れ」
「……」
そう言うと國無はテーブルの上に小さなトランクを置き、中を開けて見せた。
その中には様々な道具が入っていた。
左目にシェードのかかったゴーグル、黒のニット帽、声を低くするキャンディー、相手にはめる手袋、手錠、ナイフ、ロープ、アイマスク、猿轡、防犯用スプレー、コンドーム……。
それを見た瞬間、俺は再び恐怖を感じた。
ここまで完璧にそろっていると、完全に犯罪者の仲間入りだ。
しかし、それを口に出して言っても始まらない。
俺は一瞬頭の中で考え、言葉を選んで口に出した。
「……でもさ、こんな事してて本当にマユミを俺の女にできるのか?もうすぐバイトを始めて一ヶ月になるけど、未だにマユミとの距離は縮まってないぜ」
「その事なら心配するな。この第二段階でお前とマユミとの距離はだいぶ縮まるはずだ。まあ、それもお前のがんばり次第だけどな」
「……具体的にどう縮まるんだよ」
「相変わらずせっかちな奴だな。まず、来週からお前は朝番のシフトにも入れるようになる。それでマユミと同じ時間帯のシフトに入れるというわけだ。そこでの会話でお前がどれぐらいマユミと親密になれるかが問題だが、それは大した問題じゃない。本当に大切なのはお前が会員登録されている者を襲う事に意味があるんだよ。その中にマユミの真の悩みが隠されているんだからな。それをお前が影ながら解決してやるわけだ」
「……マユミの悩みって何なんだよ」
「それはまだ教えるわけにはいかない。今お前に教えると、はずみで口走る恐れがある。今、マユミに変な疑いをかけられるのは望ましくない。今はまだ知らない方がいい」
「……」
「それから、これだけは肝に銘じておけ。変装して犯行を繰り返すお前は五味凛一郎≠カゃない。お前はこれからデザイア≠ニ名乗り、その名で世間を震撼させるんだ」
「デザイア?……」
俺は何も言い返すことが出来なかった。
國無の計画は全て完璧だった。
まさにシナリオ通りといった感じだった。
やがて、俺は伝説のレイパーデザイア≠ニして裏の世界でその名を轟かせることとなる。
しかし、このシナリオの最後には果たしてハッピーエンドが書かれているんだろうか?
俺の中で妙な胸騒ぎが静かに膨れ上がっていた。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
今日も、また地震がありました。そろそろ巨大地震がやってくる予感がするんですが、その時、もし、手を失い、書くことができなくなってしまったらどうしようと≠ニ思い、ひたすら書きまくってます。
地震だけではなく、いつ私たちは思いもよらぬ事件、事故に巻き込まれるかわからないのです。
だから、今日を大切に生きたいと思います。今できている当たり前のことができなくなった時、私の言葉はあなたの中で芽をひらくでしょう。
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年05月01日(月) 21時02分36秒,20060501210117,20060504210236,bCpqXewm1fiTE,野に咲く花のように,紗枝,,,「ずっと、友達だよ」
そんな言葉を交わしたあの日
君は覚えている?
それは当たり前のことだと思ってた
変わることのないことだと思ってた
あのころ確かに 楽しかったけど
今は 廊下ですれ違っても 声さえかけられない
「友達」
それは野に咲く一輪の花のよう・・・
春に芽吹き 冬を乗り越えられず散ってゆく
ずっと咲き続けることなど無理なのだろうか
それでも私は
芽吹くことのないかもしれない その種を
胸に抱き 次の春を待っているのだろう
「ずっと、友達でいよう」
私はまた誰かに 言うのだろう
その言葉を忘れぬよう しっかりとかみ締めながら・・・
,これは、私の実際の経験から
書いた詩です。
ちょっと暗めになってしまいましたが、つらいことがあっても友達は必要なんだということが伝わってほしいです。
,#5400A8,,221.27.51.3,1
2006年05月01日(月) 01時19分22秒,20060501011922,20060504011922,bkOKEMZO6sQ6w,デザイアと呼ばれた男 VOL 9,D・二プル,,, 2
「じゃあ、明日から来られるかな?」
「はい、大丈夫です。よろしくお願いします」
今日、俺は「ワールド」の面接を受け、見事採用された。
明日からマユミと同じ職場で働くことになった。
國無の修行が始まってからすでに一ヶ月が過ぎていた。
あのピザ屋との死闘を終えてから、俺は毎日のようにあの修行を繰り返していた。
出前に電話し、男が来れば殺し合い、女が来ればレイプする。
驚いたことに初日のピザ屋との殺し合いのような喧嘩を経験してからは、流れるように順調に修行は進んだ。
二日目に来たラーメン屋の男は、初日のピザ屋に比べまるで弱い普通の男だった。
ピザ屋の時と同様に代金のことで口論になった末喧嘩となったが、すぐにぶちのめすことができた。
そして、三日目にはついに女がやってきた。
性感マッサージの女を國無が用意した空きアパートの一室に呼び出し、レイプした。
頭ではうまくできるか心配していたが、思っていた以上にコトはうまく進んだ。
今まで常識だった考えから逸脱し、俺は本能のまま女に襲い掛かった。
マッサージ女は初めものすごい抵抗をみせたが、それによって俺の欲望はより一層掻き立てられ女を押し倒した。
その後は何度も夢の中でやっていたとおりにことが進んだ。
やはり俺は無意識のうちにこうなることを望んでいたのか?
初めは自分が狂っているんじゃないかと思っていたが、次第に慣れ、俺はいつの間にかこの狂った修行が日常生活の一部となっていった。
そんな中、國無が突然、「ワールド」の面接を受けてくるように言った。
國無が言うには突然欠員が出て今日から募集を掛けているとのことだった。
俺は國無に言われた通り、面接に出かけ、すぐに合格した。
合格した時は驚いたが、やはりマユミと同じ職場で働けることがうれしかった。
國無との修行を始めて以来、俺はこれまで経験したことのない修羅場をたくさん踏み、それによって確実に自信を得ていた。
國無のシナリオは確実に現実のものとなっていった。
それは確実に地獄へのカウントダウンだった。
翌日、俺は「ワールド」にやってきた。
不思議と俺は緊張していなかった。
これも修行の成果なのか?
「ワールド」に入るとそこには当たり前のようにマユミがいた。
「おはようございます。今日から入ることになりました五味です。よろしくお願いします」
「おはようございます。驚いた。今日から新人が入るって店長が言ってたけど、あなただったんだね。安久津です。よろしくね」
マユミとの普通の会話がとても新鮮だった。
これで俺たちは客と店員という関係から同じバイト仲間へと進展したのだ。
「とりあえず奥で着替えてきな」
相変わらずマユミはさばさばと言った。
カーテンの奥へ入るとそこはスタッフの休憩室になっていて店長の小原が待っていた。
「おはようございます。さっそくですけど、これに着替えて店内に出てください」
俺は小原店長が渡したエプロンをつけてカウンターに出た。
これで今日からマユミと一緒に働けるんだ。
俺はわくわくしていた。
実はこの一ヶ月の間に國無からビデオ屋のカウンター業務のレクチャーを受けていたのだ。
カウンターでの接客、商品の返却、会員登録、棚卸し、ビデオ、DVD、CDの知識など、喧嘩とレイプの実践の後はレンタルビデオ屋の店員として最低限の訓練をみっちり勉強した。
國無は潰れたレンタルビデオ屋に俺を連れて行き、実践に近い形で俺に教えてくれた。
そのおかげで俺がある程度自信を持っていた。
これでマユミに良いところを見せられる。
「それじゃあ、まず今日は返却からやってもらいます。この棚に入っているものは全て返却された商品なんで、巻き戻ってるか確認して、裏の棚番シールをもとに棚を探して、タイトルとコード番号を間違えないように確認して返却して下さい。初めはゆっくりでいいんで、タイトルを間違えないようにして下さい」
そう言って小原は俺にビデオを手渡した。
以前から、客として「ワールド」に出入りしていた俺はどこにどのジャンルの映画が置かれているか全て把握していた。
そして、國無の訓練のおかげで俺はみるみるうちに返却を終えていった。
「わぁ、早い。五味君やるじゃん」
後ろを振り返ると私服に着替えたマユミが立っていた。
マユミは濃いグリーンのキャミソーの上から黒のジャケットをはおい、ぴちぴちのジーパン姿だった。
「お先です。がんばってね」
そう言ってマユミは帰って行った。
後で知ったことだが、基本的にマユミは朝番で俺は夜番だった。
朝番と夜番は引き継ぎの時しか合わないのだ。
俺は出鼻を折られたようにやりきれない気分になった。
そういえば、ここに来る前に國無が言っていた。
「とにかく初めはその場に慣れることだ。そして、信用を得る。相手がお前に相談を持ちかけるほどにな。そうなれば必ずチャンスは訪れる。それまで耐えろ」
俺はがむしゃらに返却業務を続けた。
「店長、終わりました」
「お、早いね。じゃあ、次はこっちのDVD頼むね」
「はい、分かりました」
「いや〜、五味君はよく働くねえ。前にいた橋本とは大違いだね。いや〜、ひどかったよ。遅刻はするわ。無断欠勤はするわ。おまけに最後は客とケンカしてクビだからね。ほんと、あいつはひどかった」
小原は作業をしながら独り言を続けた。
この時、俺は小原の話を聞き流していたが、その裏には恐ろしいバックボーンが隠されていた。
この橋本がクビになった傷害事件には國無由自が一枚かんでいたのだ。
というよりも、國無が俺を「ワールド」に入れるために仕組んだ事件だった。
この些細な事件が後に巨大な荒波となって押し寄せることになるとは、この時の俺には知る由もなかった。
3
確実に俺の日常生活は変わりつつあった。
昼間は國無とアウトローな修行をし、夜は「ワールド」にバイトに行く。
「ワールド」のバイトは週5、6のペースでほとんど毎日入っていた。
マユミもまたほとんど毎日「ワールド」に入っていて、数分の引継ぎの時間だけだが、毎日顔を合わせた。
その数分の時間が俺にとってはとても大切な時間だった。
その日の挨拶を交わし、簡単な世間話をしたり、仕事の引継ぎの延長で映画や音楽の話をしたりした。
それだけでもただの客だった頃から比べれば確実に進歩しているように思えた。
マユミが帰った後は、小原や他のバイト仲間との会話の中でマユミの話しをすることも珍しくなかった。
「ワールド」のメンバーは小原を入れて全員で9人で、その中で女はマユミを入れ3人だったが、トラブルメーカーのマユミの話題はしばしば登場した。
ここで「ワールド」のメンバーを簡単に紹介しておこう。
まず、店長で三十路前の小原はメンバーの中で一番背が低く、いまどき珍しい坊ちゃん刈りのなで肩でディズニーアニメのキャラクターのような男だった。
その小原よりキャリアが長く「ワールド」最年長の通称ボス≠ニ呼ばれているのがミシマだった。
ミシマは35歳で肌の色が黒く、髪も長く、大抵後ろで留めていた。
そして、昼間には別の仕事をしているらしかったがその仕事は謎で小原でさえ知らなかった。
そのミシマの部下的存在のノジリは昔かなりやんちゃをしていたらしく、十代の頃は暴走族で暴れ周り、その後はヤクザの事務所に出入りするチンピラという異色の経歴の持ち主だった。
そして、ある理由からヤクザに追い込まれていたところをミシマに助けられ「ワールド」に入ったという。
ノジリの後輩的立場のアカイとヒラノはそれぞれマニアックな奴らだった。
アカイは映画、音楽マニアで「ワールド」にある全ての商品の棚の位置を記憶していた。
だから商品の検索をする時はパソコンで調べるよりもアカイに聞いた方が早かった。
ヒラノはAVオタクで店内の全てのAVを見たと豪語する変態で、下ネタを話し出すと永遠に話し出した。
そのくせ女友達が多くよく店にもヒラノの友達という女が遊びに来たがみんなかわいい娘ばかりだった。
メンバーの中で最年少のアケミは19歳のギャルだった。
アケミは昼は「ワールド」、夜はキャバクラでバイトしていた。
いつも露出の高い過激な服装で入店し、アケミ目当てで来る男性客も少なくなかった。
昔、カウンター越しでしつこくナンパされ、一緒に入っていたマユミがブチキレ、あわや大喧嘩になりかけたというエピソードも聞いた。
そして、マユミと正反対の性格のユカは24歳の若さでバツイチ子持ちのシングルマザーだった。
ユカは清楚でやさしかったが、仕事上マユミとよく対立していた。
キャリアはマユミの方が上だったが、大雑把なマユミに対し、几帳面な性格のユカはしばしば口を挟むことが多かった。
二人は共に仕事も出来たが、お互いを意識しあい、ライバル的な関係が続いていた。
この個性的なメンバーの中で俺は毎日を過ごすようになり、新鮮で楽しい日々が続いた。
マユミには特別な感情を持っていたが、他のメンバーともわけ隔てなく話し、初めのうちは皆仲が良さそうに見えた。
しかしそれはうわべの関係で、その裏にはドロドロした人間関係が隠されていた。
やがて俺はそのドロドロの中に足を踏み入れていくこととなる。
そして、このメンバーの中の一人が、マユミに対するある異常な感情を露にし、俺をも巻き込んだ大事件へと発展する事となるのだった。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
ついに始まった「ワールド」での新生活。この中で凛一郎は何を得て何を失っていくのか?
何気ない日常生活の中に隠された狂気が芽を開く。
ますますエスカレートする狂気の波にあなたは耐えられるか?
絶えられない者は今すぐここから逃げ出しな。
まともな者は私の小説の世界についていけないはずだ。
覚悟のある者のみ先へお進み下さい。
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年04月30日(日) 12時31分55秒,20060429231904,20060503123155,bRBtEHefI7CNc,飛び立とう,スケハチ,,,
風は僕らの歌声を花びらと共に運び
雲は歓迎と祝福を込め自由自在に姿を現す
雨は生命の誕生を育み
雪は心地よい永い眠りへと導いてくれる
地図のない大海原の空は全てを受け止めてくれるだろう
目を見開きその世界へ飛び込めば
嘆き流れた涙は僕らの糧となり
真っ直ぐに歩いて行ける
見上げれば遠く近い存在で
高く飛ぼうとした幼い日
ペンキで塗りつぶしたあの空へ行ってみたいと
何度思ったことだろう
あの空へ届けと小さな手を伸す仕草を
何度試したことだろう
その思い一つ鞄に詰めて夢を追おう
他の荷物を置いていっても
それだけは一緒に持って
でももし――……
怖くて
逃げたくて
忘れそうになったら
後ろを振り返って過去の自分と手を繋ごう
目が合った途端お互い無邪気に笑い出して
きっと思い出させてくれる
つまらない現実だと
顔を埋め座り込みたくない
耳を澄ませれば
空が風と遊びながら言葉を囁く
現実を作るのは自分次第
つまらなければ楽しくすればいい
立ち上がって顔を上げれば
ピースを作って笑ってやる
さあ飛び立とう
線が引かれない自由の旗を掲げる空へ
感謝を込め仲間達に大きく手を振ったならば
エンジンをかけ走り出そう
歓声を受けて操縦管をゆっくりと引けば
ゴーグルの中から前を見据えて
果てしない旅のチケットを僕はこの手で手に入れる
,どもスケハチです。
ええっと、話にしようとしたところ難しかったので詩(?)になりました。
『少年が飛行気乗りになる』というイメージなんですが……すいません、わかり難いですね(汗)
,#5400A8,./bg_c.gif,220.60.200.63,1
2006年04月25日(火) 00時42分27秒,20060425004227,20060428004227,aJEX78FJ6e8eM,デザイアと呼ばれた男 VOL 8,D・二プル,,,第三章 悪魔の修行
1
俺と國無は自転車で二子玉川園にやってきた。
多摩川の河川敷で自転車を降り、駅の高架下に自転車を停めた。
「何でこんなところまで自転車で来たんだよ。電車かタクシーの方が速いし楽だったのに」
「大した距離じゃなかっただろ。もう、訓練は始まってるんだ。自転車は足腰を鍛えるいい訓練になる。お前はこれから毎日これを行うんだ」
「こんな所まで連れてきて何をする気だよ」
「修行第一弾はお前の肉体と度胸を鍛える」
そう言って國無は自転車のカゴに入れてきたタウンページを俺の前に置いた。
「これからピザ屋に電話する」
「何だ、訓練の前の腹ごしらえか?」
「そうじゃない。出前を持ってきた奴が女だったらその場で犯す。もし、男ならぶちのめす。分かったな」
「何だって?こんな場所で昼間からそんなことやったらすぐ警察が来る。やめよう」
「始める前からガタガタ言ってんじゃない。周りのことは心配するな。俺が見張っててやる。それにこの場所を選んだのにはワケがある。ここは東京都と神奈川県の県境だ。警察の管轄がちょうど分かれてる。通報されても到着まで時間が稼げるんだ。それに今日は月曜だ。週末は、バーベキューや遊びに来た家族連れなどで盛んになるが、平日はほとんど人は来ない。近くにいるのはホームレスか会社や学校をサボってる奴らだけだ。そんな心に後ろめたさを持っている人間がオレたちに近づいてくるはずがない。もし、近づいてきたとしても俺が守ってやる。だからお前は訓練に集中するんだ」
「……でも、いきなり喧嘩かレイプなんて。そんな事うまくできる自信ないよ」
「初めからうまくできる奴なんていない。ようは経験を積むことだ。さっきも言ったようにこれはお前の度胸を上げる特訓でもある。とにかく、お前は一日一回レイプか喧嘩を経験する。それを毎日繰り返すうちにお前の腕は上がってくる。そして度胸もつく。さあ、始めるぞ。時間がもったいない」
そう言って國無は携帯で電話をかけ始めた。
「はい、ピザホットです」
「あ、注文したいんですけど……」
俺はドキドキしながら國無が電話をしているのを見ていた。
「さあ、電話したぞ。30分以内にピザ屋がくる。覚悟はできたか?」
「だけどさ、相手が男だった場合喧嘩売るんだろ?何て言えばいい?もし、相手が乗ってこなかったらどうする?」
「そんな事はどうにでもなることだ。必ず向こうから殴りかかってくる。お前はそれを返り討ちにすればいいんだよ。とにかく死ぬ気で全力でやれ。相手を殺すつもりでな。相手を白坂だと思えばいいんだ。お前が好きなマユミを毎晩のように弄んでいるあの男だ。お前は白坂とマユミを賭けた闘いをしている。もし、負けたらマユミは永遠にお前のところには来ないと思え」
「……わかった」
ピザ屋がやって来るまでの時間が異様に長く感じた。
やって来るのは男か女か?
喧嘩か、レイプか?
これから俺は確実にそのどちらかを実行するのか?
俺にできるのか?
俺は河川敷に横になっている國無を横目で見た。
本当に國無の言うことを聞いていて大丈夫なんだろうか?
俺は一体どこへ向かっているのか?
そんなことを考えている間についにピザ屋がやってきた。
ピザ屋は河川敷に原チャリを止め、ヒョコヒョコとピザの入った箱を持って歩いてきた。
ピザ屋は男だった。
メガネをかけ、中肉中背でどこにでもいるような大学生風の男だった。
ピザ屋の男は河川敷に寝転ぶ國無を見つけ、近づいていった。
男は國無に話しかけ何やら話をしている。
ピザ屋の男は國無にピザの箱を渡して、こっちに歩いてきた。
國無はピザを口に頬張りながらニヤニヤしてこっちを眺めている。
早足で歩いてきたピザ屋は俺の前にやってきた。
「ありがとうございます。3840円になります」
「……え?俺、金持ってないけど」
突然のピザ屋の言葉に俺は台詞を噛んでしまった。
「ア?」
ピザ屋の表情が一変する。
「おい、あそこのじいさんはお前の連れだろ?あいつがお前が払うって言ったんだぞ。ごたごた言ってないでさっさと払え」
「……とにかく何度言われても俺は金を持ってないんだピザ代はあいつからもらってくれ」
俺は國無に視線を送った。
次の瞬間、俺は唖然となった。
さっきまで河川敷でピザを食べていた國無の姿がいつの間にか消えているのだ。
「あいつ、ハメやがった」
「……わけわかんねえこと言ってないでさっさと払え」
「だから俺は……」
そこまで言いかけた時、ピザ屋の右拳が俺の顔面に命中した。
俺は初め何が起きたのか分からなかったが、後から痛みがじわじわと伝わってきて、自分が殴られたということに気づいた。
「目が覚めたか?これ以上俺を怒らせるなよ」
ピザ屋はさっきまでのどこにでもいそうな大学生風の仮面を完全に脱ぎ捨て、普段生活していてはめったにかかわることのない者が持つ、独特なオーラを発していた。
「……だから、金は持ってないって言ってるだろ」
俺の言葉を聞いたピザ屋は眉間にしわを寄せ、雨のように攻撃してきた。
俺は地面に這い蹲り、完全な無抵抗な状態だった。
それでもピザ屋は攻撃をやめず、横たわる俺の腹に何度も蹴りを入れ、顔面を踏み潰した。
みるみるうちに辺りは俺の血で染まっていった。
ピザ屋は地面に横たわる俺の胸倉を掴み無理やり立たせると、片手で俺を抑えた状態で殴り始めた。
次第に痛みが感じなくなっていった。
だんだん意識が薄れていく。
「お前、これで済むと思うなよ。金を持っていかなきゃ俺がどやされるんだ。これから消費者金融で金作らせてでも払わせるからな」
「……」
ピザ屋の言葉はすでに俺の頭の中に届いていなかった。
そもそも俺は何でこんな事をやってるんだろうか?
國無由自にここに連れてこられて修行だといっていきなりこんなことをやらされている。
何のためにこんなに痛い想いをしなければならないんだ?
マユミを自分の女にする為?
こんなことをしていてマユミが手に入るのか?
俺は本当に自分の為にこんな想いをしているのか?
「……本当にゴミ以下だなテメーは」
その言葉が妙に耳にこびりついた。
子供の頃、よく「ゴミ、ゴミ」と言われていじめられていた。
昔から五味≠ニいう苗字が死ぬほど嫌いだった。
ゴミ呼ばわりする奴らに負けないように生きていこうと子供の頃誓った。
しかし、それからしばらくその誓いを忘れていた。
そう、最近思い出したのは映画の制作会社にいた時だ。
上司である白坂に「お前は本当に使えないゴミ以下だな」と言われて思い出した。
その結果、俺はキレ、白坂を現場で殴り、会社を辞めた。
事実上クビになったのだ。
その瞬間、俺の脳裏に再びあの夜の映像が甦ってきた。
白坂と楽しそうに歩くマユミの姿だ。
その時、俺は目を大きく見開いた。
目の前にいるピザ屋が白坂に見えたのだ。
白坂はボロボロの俺の身体を引きずって河川敷を歩いていた。
「さっさと来いよ。この生ゴミ!」
その瞬間、俺の中で何かが弾けた。
俺は白坂の手を振り払い、顔面におもいっきり拳を叩き込んだ。
突然、意表をつかれた白坂は地面に腰を付き、何が起きたのか分かっていないようだった。
それでも俺は止まらなかった。
俺は膝をついている白坂の頭をサッカーボールのようにおもいっきり蹴り飛ばした。
白坂の歯と血が宙を舞った。
白坂は顔面を抑え、その場でのた打ち回っていた。
俺はその白坂の上にマウントポジションを取り、顔面を押さえる両手の上からデタラメな数の拳を叩き込んだ。
気が付くと、俺は息を乱し、河川敷の上で寝そべっていた。
しばらくして、横に視線を送ると、血だらけでその場に動かなくなっているピザ屋の男が横たわっていた。
俺は勝ったのか?
そんなことを思いながら俺は意識を失った。
横たわる俺とピザ屋の前にどこからともなく國無由自が現れた。
「まさか、こいつに勝っちまうとはな。大健闘じゃないか」
この時俺は國無の言葉の意味を理解していなかった。
國無はどこから用意したのか大きなバンの中に俺とピザ屋を担ぎいれ、車を走らせた。
俺と死闘を繰り広げたこのピザ屋は実は國無が仕込んだ偽ピザ屋だった。
彼は元格闘技経験者で、今は現役を離れ、チンピラのような生活を送っていたところを國無に雇われたのだった。
後になって思えば、彼もまた國無の口車に乗って人生を誤った被害者だったのかもしれない。
しかし、彼と会うことは二度となかった。
そして、俺の記憶からも消えていった。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
ついに始まった國無由自の悪魔の修行。やがて、凛一郎は巨大な力をつけていく。
それは巨大な欲望となって多くの人間を巻き込んでいくことになる。
人は経験によって強くなっていきます。とてつもない経験をした者は間違いなく強くなる。私の作品を読んで何かを感じ、多くの事を経験してもらえればうれしいです。
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年04月23日(日) 01時46分49秒,20060423014649,20060426014649,a5smJGiTSmR/M,デザイアと呼ばれた男 VOL 7,D・二プル,,, 4
闇の中を俺は全裸で走っていた。
俺の視界の先には美しい女が走っていた。
女は俺から必死に逃げていた。
俺はジワジワと女を追いかけていた。
俺は逃げる女に追いつき、後ろから羽交い絞めにして、地面に押し倒した。
俺は慣れた手つきで女の服を引き裂いていった。
ブラウスを力任せに破り、中から現れたブラジャーをたくし上げ、大きな乳房をむき出しにした。
女は泣き叫びながら必死に胸を隠し抵抗したが、俺は容赦せずにその行為を続けた。
スカートの中に手を突っ込み、太ももを撫で回しながらゆっくりと上に上っていく。
そして根元までたどり着くと、ショーツの中に指を忍ばせ、秘境の谷間にゆっくりと鍵を差し込む。
その際も俺の舌は女の身体を全身嘗め回している。
女は俺の頭や腕を押さえ抵抗を続けるが、女が抵抗すればするほど、俺は欲情していった。
みるみるうちに女はむき出しの全裸になった。
俺はまだ、舌で女の淫らな肉体を味わっている。
勿論、両手では胸を鷲摑みにし、クリトリスを転がして、その感触を思う存分楽しんでいた。
女の声は次第に鳴き声からあえぎ声へと変わっていった。
女の頭と体が分離を始めた。
頭では嫌がっていても、身体は俺を求めているのだ。
俺にはそれが感覚的に判った。
女のヴァギナはぐっしょり濡れている。
女のあそこはとても原始的なもので、例え犯されてる状態でも、自らの肉体を守る為に本能的に体液を分泌させるのだった。
俺のペニスはギンギンに膨れ上がり、準備万端だった。
俺は真っ赤に膨張した熱々の肉棒を女の谷間に挿入した。
女の声が一層高まる。
俺は奥深くまで鍵を差込み、突いて突いて突きまくった。
女のあそこが壊れるぐらいに自分の欲望をその場に叩きつけた。
俺は何度も体位を変え、インアウトを続けた。
そして、俺は絶頂を迎え、昇天した。
女の腹の上には真っ白な精子がたっぷりと産み落とされていた。
俺はぐったりとその場に倒れこんだ。
全身汗だくになり、頭の中は真っ白だった。
そのうち霧が晴れるように、頭の中は冷静さを取り戻し、俺は我に帰った。
何気なく横でうずくまっている女の顔を眺めてみる。
女は確かに綺麗な顔立ちの美しい女だったが、まるで見たことの無い、言い換えればどこにでもいるような若い女だった。
俺はこの何でもない女とSEXしてイッたのか?
この女が俺が捜し求めていた女なのか?
その時、突然闇の中から光が差し込んできた。
光はみるみるうちに闇を飲み込んでいき、無に還していった。
そして、光は俺までも飲み込んでいった。
そこで俺は目を覚ました。
俺が体を起こすと、そこはさっき訪れた國無の部屋のソファーの上だった。
俺は全身汗だくになり、あの羽根枕には俺のヨダレがべっとりとこびりついていた。
「よう、お目覚めか。ぐっすり寝てたな。かなりうなされていたが」
向かい側のソファーでは國無がノートパソコンを広げ、何やら書き込んでいた。
「……おっさん、俺はずっと夢を見てたよ」
「ほう、どんな夢だった?」
「それは……」
俺は言葉を詰まらせた。
「……まあいい。それよりお前が寝ている間にシナリオが完成したぞ。このシナリオ通りに行動すればお前は必ずマユミを手に入れることができるぞ」
「……ほんとかよ」
俺はソファーから降り、テーブルに向き直ると、さっきのコーヒーの残りを飲もうとした。
寝ている間にすごく喉が渇いていたのだ。
その時、俺はさっきのコーヒーカップが片付けられていることに気づいた。
「あれ、さっきのコーヒー片付けちゃったのか?」
「ああ、今新しいのを入れてやるから待ってろ」
「悪いな」
國無は席を立ち、キッチンに消えていった。
俺はソファーから立ち上がり、大きく伸びをした。
その時、俺は何気なく、國無のノートパソコンを覗いてみた。
そこには映画のシナリオのようにト書きと台詞がビッシリと書き綴られていた。
何気なく目を通していた俺は唖然とした。
台詞にもト書きにも俺の名前が書かれていることに気づいたのだ。
凛一郎「もっと抵抗してみろ。その方が興奮するんだ」
凛一郎、嫌がる女に無理やり挿入する。
「……何だこれ?」
その時、國無が戻ってきて、ノートパソコンを閉じた。
「覗き見は関心せんな。そう、焦らなくてもゆっくり見せてやるから」
「何だよあれ。脚本に俺の名前が出てたぞ」
「ああ、そうだ。これはお前がマユミを自分のものにするまでの脚本だからな。いわば、これはお前を主人公にした映画だ。しかし、これはスクリーンの中の物語ではない。現実に起こりえるお前の人生の一部だ」
「それにしたって何だよあのト書きは?」
「いいだろう。それじゃあ、お前にいいことを教えてやろう。まず初めにお前がずっと捜し求めていたお前がイケる女≠ヘこの世に存在しない」
「……なんだと!」
俺は思わず立ち上がった。
「まあ、待て。そう慌てるな。存在しないと言ったが、言い換えればどこにでもいるということだ」
「……は?意味が分からないよ」
「お前が女とSEXしても絶頂できなかったのは女に問題があるからじゃない。お前が真に興奮していないだけなんだ」
「……」
「結論から言うと、お前は普通のSEXでは絶頂することはできない。例えマユミとヤッても恐らく結果は同じだろう。なぜならばお前はレイプでしか絶頂できないからだ」
「……?」
「これは仕方のないことだ。お前の潜在意識がそうなってしまっているのだ。もしかしたらお前の過去の出来事が原因なのかもしれないがそれはまだ解らない。重要なのはお前がまだ、自分の真の欲望を解放していないということだ。お前自身が自分の欲望に気づいていなかったように、それではお前の魅力は半減されてしまっている。マユミを手に入れる為にはその力を解放するしかない」
「俺に犯罪者になれっていうのか?冗談じゃないぜ」
「凛一郎、お前は何て言った?マユミを手に入れる為ならなんだってする≠チて言っただろう。あれは嘘だったのか?」
「……嘘じゃないけど、やっぱり犯罪者になるのは嫌だ」
「いいか、犯罪というのは法を犯すということだ。法というのは昔の役人が自分たちの利益の為に作ったルールにすぎないんだ。そんなルールに囚われるな。大切なのは己の正義に反しないことだ。自分の中のルールを破らなければいいんだ」
「でも、やっぱり警察にも捕まるかもしれないし……」
「何だ、お前は警察を恐れてるのか?じゃあ、約束しよう。お前が俺の言う通りに行動しているうちは絶対に警察に捕まらないことを約束しよう。当たり前のことだ。契約した者を危険から守るのは俺の仕事だ。どうだ、それでも嫌か?」
「……」
「まあ、無理強いはしないよ。ただし、その場合はここで計画は中止だ。お前は一生マユミを自分の女にはできないばかりか、絶頂することもできずに老いて死んでいくだけだ。後には何も残らない。まあ、それまでにお前は心の傷を余計に広げるだけだがな。お前の元上司の白坂は確実にマユミを騙し自分の女にするだろうな。あいつは今やTV局のディレクターの位置に座っている。マユミの気を引く材料はたくさんもってるだろうな。それにお前は一生白坂のような奴にすら勝てずに死んでいくんだ。さあ、どうする?お前の意思を示せ」
「……そんなのもう決まってるよ。やるよ。マユミを手に入れる為なら何だってやるよ」
「よし、いいだろう。これで本当に契約成立だ。さっそく今日から訓練を開始する」
「訓練?」
「さっきも言ったろ。お前はやらなければならないことがたくさんある。まずは肉体的に鍛えなければならない。それには実践が一番だ。何事も実践に勝るものはない。実践によってお前は豊富な経験を手に入れる。着いて来い。場所を変えるぞ」
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
ついに明かされた凛一郎の欲望。それはあまりにも巨大で悲しいものだった。
そして、その悲劇はさらに加速していくことになる。
次回、ついに國無由自の特訓が幕を開ける。
乞うご期待!
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年04月22日(土) 12時10分54秒,20060422121054,20060425121054,a/vikg6W1i2Mc,君の抜け殻,しぃ,,,朝、目覚めるたびに、君の幻を見る。僕の隣ですやすやと眠っている君のやわらかい背中を思うんだ。でも、君の、僕を暖かく包んでくれていた背中は、もう冷たい。君は、もう、イナイから…さぁ、暗い思いを振り切って未来に行こう。でも、ふとした時に思い出すのは、夕日の中で君が見せた泣き顔。小さな肩が泣いていた。何よりも代えがたい僕の宝物―忘れようとしても、僕は、心で、体で、今も全身で君を愛しているんだ。
目をつぶって君の姿を目の前に浮かべるよ。まるで、本当に君がそこにいるように思えるよ。それだけでいい。君に会えるなら、思い出だけでもいい。たとえ時が過ぎ去って、僕自身が置き去りにされても。
いつかは、君の事を忘れてしまうときがくるのだろうか。それに比べれば、今がどんなに辛くても、君の事を覚えてるほうがいいのだろうか?あの時、二人の幸せを願った流れ星の光。君は今でも僕の心の中で輝いているんだ。
決めた。たとえ時が過ぎ去っても、君の事は忘れないよ。ずっと忘れない。そして君との思い出を抱えながら、未来に進んでいくよ。それは、君が僕にくれた強さだから。君との愛が、僕にくれたものだから…,愛する人を失うとき、人は何を思うんだろう?私たちは、出会いと別れを繰り返して生きている。卒業、失恋、そして、死という最大の別れが待ち受けている。主人公はそんな別れの中で前で、迷い苦しんでいる。忘れなければいけない。でも、愛する人の声や仕草をそんな簡単に忘れられるだろうか?人間は機械じゃない。分かっていても、どうしてもやりたくない事がある。この詩には、そんな弱さや、迷いを隠さずに書いたつもり。
この詩を見て、思いをただ引きずるだけなのではなく、明日への糧として、生きていってもらえると、うれしいです。だって、それは、真に思い出を大切にすることだから…,#5400A8,./bg_c.gif,220.20.125.7,0
2006年04月20日(木) 01時33分49秒,20060420013349,20060423013349,TTGL9Isj5nBMU,デザイアと呼ばれた男 VOL 6,D・二プル,,, 3
翌日、俺は國無に言われた通りの場所に向かっていた。
時刻はすでに午後一時を回っていた。
しかし、俺はまだ目的地にたどり着いてなかった。
國無が指定した場所は自衛隊中央病院近くの住宅街の一角にあるアパートだった。
恐らくそこが國無の家か会社があるものだと俺は思っていた。
しかし、指定された住所を辿っていくと廃墟と化し、封鎖されている団地にたどり着いてしまう。
この辺りは入り組んでいて、俺は道を間違えたのかと思い、何度も辺りを歩き回ったが、他にそれらしい建物は無く、どうしてもこの廃屋団地に戻ってきてしまうのだった。
携帯を見るとすでに午後一時を回っていた。
俺は國無に電話を掛けようとした時、突然携帯が鳴り響いた。
電話を取ると相手は國無だった。
「何してるんだ。早く入って来い」
「入るってどこに?」
「お前の目の前のゲートをくぐり抜け、左方向に回り込み、一番奥の入り口の前に行け。入り口は閉鎖されているがすぐ後ろの茂みの中にハシゴが倒れているからそれを使って踊り場から上って入って来い。踊り場に上がったら、ハシゴを踊り場に隠し、最上階の一番奥の部屋まで上がって来い。そこで携帯をワン切りしろ」
國無は一歩的に話し、電話を切った。
俺は改めて自分の前に聳え立つ廃屋団地を見上げた。
使われなくなってからどれぐらいたつのだろうか?
とても人が出入りしているとは思えなかった。
こんな所に入るのは区の業者か、ホームレスか、犯罪者ぐらいだと思った。
俺は國無にからかわれているんじゃないか?
それでも俺はしかたなく、國無に指示された通りに針金で封鎖されているゲートを潜り、廃屋団地の敷地内へ入って行った。
中に入る時、俺は辺りをきょろきょろと見回したが、人影はまったくなかった。
他人が見たら俺は明らかに挙動不審な不審者だった。
敷地内は無差別に生えた雑草で生い茂っていた。
昔は子供の遊び場だったはずの小さな公園の遊具はすっかり錆び付いていて、風に揺れているブランコが寂しさをかもし出していた。
俺は一番奥の入り口の前まで行き、茂みの中からハシゴを取り出し、踊り場に立てかけ、中へ入っていった。
ハシゴを踊り場に隠し、俺はゆっくりと階段を上っていった。
団地内は薄暗く、冷たい空気が漂いとても静かだった。
しかし、同時に妙な不気味さも漂っていた。
まるでホラー映画のワンシーンのように、突然、殺人鬼や化け物が飛びしてきても不思議ではない感じだった。
俺は内心びくびくしながら早足で最上階を目指した。
最上階の一番奥の部屋の前で俺は携帯をワン切りした。
すると、次の瞬間、扉がギシギシと音を立てて開き、目の前に國無が姿を見せた。
國無の顔を見て俺はほっとした。
「早く入れ」
國無は俺の腕を掴み、中へ引きずり込むように引き入れた。
俺は國無に案内され奥の部屋に進んでいった。
俺の目の前に信じられないような光景が広がっていた。
ワンルームのこの部屋は外からは想像できないほど綺麗に片付けられていて、普通に毎日生活できるぐらいの快適な空間だった。
一人暮らしの俺の部屋よりも遥かに綺麗に整理されていた。
「何ボケっと突っ立ってるんだ。早く座れ」
「おっさん、ここに住んでるのか?不法占拠だろ?」
「……いいから座れ。話は後だ」
俺は國無に指示されたとおりソファーに腰を下ろした。
辺りを見回すとそこには難しそうな本が本棚いっぱいに所狭しと並べられ、見たことの無いような機械が部屋の隅々に置かれていた。
國無は俺にコーヒーを差し出し、向かい側のソファーに座った。
「さあ、契約だ」
「契約って契約書とかにサインするのか?」
「そんなものは必要ない。とにかくお前は俺の話を聞き、納得するということが大切だ。オレの話を聞いて分からないことがあったら何でも質問しろ。ここまではいいか?」
「ああ、分かった」
俺はコーヒーを飲みながら返事した。
「まず、お前の目標は安久津真由美を自分の女にすることだ。オレはそれを必ず現実のものにしてやる。その代わりお前は俺の指示に従え、それが契約の条件だ。お前が一見何の意意味も分からないようなことでもそれは必ず目的の為にオレが考えたシナリオの一部だ。だから、契約を交わしたら質問は一切無し、俺の言うことに逆らうな。ここまではどうだ?納得できるか?」
「質問は一切無し?あんたの言うことに逆らうなだって?それでマユミを俺の女にできるのか?具体的に何をしてくれるか聞かせてくれよ」
「そうだな。簡単に言えばまずお前はマユミの働いている『ワールド』で働き始める。そして、まずはバイト仲間としてマユミに接するんだ。その後はお前がマユミが抱える問題を一つ一つ解決していく。まあ、その為にやらなければならないことがたくさんあるが、それはまあ、これから徐々に話していくよ。どうだ?」
「分かった。あんたの言うとおり行動するよ。それより、すんなり『ワールド』にバイトとして入れるのか?都合よく今募集かてるのか?」
「そんな事は簡単なことだ。それよりも大変なのはお前がマユミの心を掴む為に心も体も鍛えなければならないということだ。途中で根をあげればそこで終わりだ。それに耐える覚悟はあるか?」
俺の脳裏に昨日見た白坂と歩くマユミの映像が甦ってきた。
「大丈夫だ。マユミを手に入れる為なら俺は何だってする」
「その言葉を忘れるなよ」
「ああ……」
そんな中、突然俺は睡魔に襲われた。
「どうした、眠いのか?」
「ああ、何だか急に眠くなってきた」
「少しここで休んでいくといい。起きたらさっそく行動開始だ。お前が寝てる間にオレはシナリオを完成させておくから、ゆっくり休め。ほら、この枕を使え」
そう言って國無は俺にふっくらとした羽根枕を手渡してくれた。
俺は羽根枕に頭を沈め、ソファーに横になった。
羽根枕の気持ち良さに俺はすぐに深い眠りについてしまった。
俺が眠っている前で國無由自は忙しそうに動いていた。
國無はまず俺が飲んでいたコーヒーカップをキッチンに片付けた。
流しの横には睡眠薬のビンが置かれていた。
國無はリビングに戻り、テーブルの上にノートパソコンを取り出し、コードを伸ばし、俺が眠っている枕に取り付けた。
俺が知る由も無かったが、この枕にはある機械が埋め込まれていた。
國無のパソコンの画面にある映像が映し出されていた。
そこに映し出されていたのは俺が見ている夢だった。
その映像を見て國無は不適な笑みを見せる。
「すばらしい。これがこいつのデザイアか」
國無は独り言をもらし、書類に何かを書き込み始めた。
書類にはこう書かかれていた。
「バク計画 五味凛一郎のデザイア」
それは俺が予想もしていなかった恐ろしい計画だった。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
ついに動き出した國無由自の計画!
凛一郎はどんな未来を歩んでいくのか?
ごゆっくりお楽しみ下さい!
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年04月17日(月) 01時30分39秒,20060417013039,20060420013039,WWn6fblTJby7g,デザイアと呼ばれた男 VOL 5,D・二プル,,, 2
あっという間に一週間の月日は流れていた。
國無が病室に訪れた翌日に俺は三宿病院から退院した。
結局、俺は安久津に何も言わずに病院を後にした。
安久津が言っていた通り、簡単な書類にサインしただけで俺は入院費などを一切払わずに出てこられた。
やはり國無の言うとおり安久津が俺を轢いた犯人なのか?
俺はこの真実をそのうちに必ず解明するつもりだった。
俺の知らないところで何かが起ころうとしているような気がした。
確実に俺の人生は変化を見せようとしている。
こんなことはいままで感じたことは無かった。
普通に生きていればそんなことは判らないはずだ。
誰かが意図的に俺の人生を操作しようとしているようだった。
そう言えば國無は自分の気に入った相手の欲望を現実のものに具現化するのが仕事だと俺に言った。
俺が昔の自分に似ているから気に入ったと。
既に俺の中の決意は決まっていた。
國無の話には乗らない。
正直、俺はアイツの言葉に惹かれていた。
俺がSEXでイクことのできる女。
そんな女が本当に存在するのか興味があった。
マユミを自分のものにできたらどんなに幸せだろう。
今の俺にとってマユミは全てだった。
マユミの存在だけが俺の救いだった。
しかし、それは決して手に入らない高嶺の花だった。
今まではただマユミを見ているだけで幸せだった。
しかし、今の俺の心の中ではそうではなかった。
もうそれだけでは満足できないほどマユミのことが好きになっていた。
しかし、どうやってそれを表現すればいいのか分からなかった。
はっきり言って自分に自信がなかった。
どうすればマユミとうまくいくのかがまるで想像できなかった。
今の状態でマユミとうまくいく可能性は限りなくゼロに近いことは自分でもはっきりと分かっていた。
玉砕覚悟で告白する気にはなれなかった。
そこで俺の出した結論はマユミのことを忘れることだった。
もう二度と「ワールド」にもいくつもりはなかった。
しかし、自分で決断したばかりだというのに頭の中では確実にマユミの存在が膨らみ続けていた。
そんな煮え切らない俺自身に苛立ちを感じていた。
今、この世で一番むかつく人間は自分自身だった。
俺は自分の決意を固めつる為に「ワールド」に向かって歩きだした。
最後に一目マユミを見て完全に忘れよう。
そう心に決めた。
「ワールド」に向かう道のりで俺の鼓動は確実に早くなっていた。
別に告白するわけでもないのに、心臓が壊れたようにドキドキしていた。
俺は必死に自分の気持ちを落ちつかせた。
もう間もなく「ワールド」に到着する。
確かこの時間ならマユミはシフトに入っているはずだった。
もしマユミが「ワールド」にいなかったとしてもそれで終わりにしようと心に決めた。
その時、俺は信じられないような光景を目にした。
道路の反対側にマユミが男と楽しそうに手をつないで歩いていたのだ。
マユミのその笑顔は「ワールド」では見たことのない、確実に女の目をしていた。
しかも、マユミと一緒に歩いていた男を俺は知っていた。
男の名は白坂 清己。
俺が映画の制作会社で働いていた時の上司で俺が知る限り最悪の男だった。
自分より目上の者にはへつらい、逆に下の者には絶対的権力を振りかざし、高圧的な態度で接するそんな男だった。
自分の利益だけを常に考え、他人は利用する為だけに存在する道具だと思っているや奴だった。
俺がADをしていた頃、あいつはディレクターで、散々俺をゴミのように扱ってきた。
俺の事をゴミ′トばわりして、自分の気分次第で無駄な仕事を永遠と押し付け、全てのチャンスを奪っていった。
マユミは白坂の正体を知って付き合っているのか?
あいつは上辺では女を大切にするそぶりを見せているが、裏では女を性の捌け口ぐらいにしか思っていない最低の男なのだ。
絶対にマユミは白坂に騙されていると思った。
しかし、信号待ちをしながらじゃれあっているマユミの姿は心の底から楽しそうだった。
俺が今、二人の前に出て行って白坂のことを洗いざらい暴露したとしても、マユミはまるで相手にしないだろう。
俺とマユミとはただの客と店員の関係でしかなく、まったくの他人だからだ。
俺は道路の反対側で呆然と二人の様子を立ち止まって見つめていた。
やがて二人は人ごみにまぎれ、どこかへ消えてしまった。
それでも俺はしばらくその場で立ち止まり、動くことができなかった。
通行人と肩がぶつかり、俺は道路に倒れこんだ。
その時道路に手を着き、掌を切ってしまった。
その時のコンクリートの感触がやけに冷たく、俺はひどく孤独を感じた。
今まで自分自身を誤魔化して感じないようにしていた孤独感が一気に押し寄せてきた感じだった。
この時俺は、孤独感に押しつぶされそうだった。
その時、俺の中で何かが弾けた。
俺は國無にもらった名刺を取り出し、携帯で電話を掛けた。
俺の行動をまるで見ていたかのように國無はワンコール目で電話にでた。
「で、結論はでたのか?凛一郎」
「……ああ、あんたと契約する。俺はマユミを自分の女にしたい。それが俺の欲望だ。その為だったら何だってやる。悪魔に魂を売ったっていい」
「いい覚悟だ。その答えが聞きたかった。それじゃあ、今から言う場所に明日の午後一時に来い。場所は……」
この時の俺の決断は本当に正しかったのか?
衝動的に國無と契約した俺は思っても見なかったような人生を歩んでいくことになる。
その中で俺は自分の知られざる欲望を知ることになる。
その結果、俺は大切なものを失い自分の過ちに気づくことになる。
しかし、それはまだまだ先の話だった。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
人生には度々自分で決断しなければならない時が訪れます。その結果、どんな答えが出ようとそれを他人のせいにすることは出来ません。あくまで自分が選択した結果なのです。
凛一郎も自分の下した選択が正しかったのか間違っていたのかやがて気づく時が来るのです。
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年04月16日(日) 08時30分34秒,20060416083034,20060419083034,AAyrN47XF0h/6,杉沢村,比奈子,,, 地図から消せれた村 杉沢村
そこは昔、東北地方の青森県に実在した村だと言われている。
村の場所を知っている人は数少ない。
ではなぜ地図から消されたのか?
数十年前、杉沢村に起こった事件
ある時、村の一人の青年が斧を手に取り、村人を次々と殺した。
なぜ殺したのかは不明。
そして村人全員を殺し終えた青年は、手に持っていた斧で自ら命を絶ったと言う。
その後、村は廃村し、地図からも名前を消された。
怨念がまだ残っているのだろうか……
その村に足を踏み入れる者は、次々と変死するのだと言う。
ある男女のカップルが杉沢村に興味を示し、現地へ向かった。
街の人にもいろいろと情報と場所を尋ね続け、ようやく居場所をつかむ事が出来た時にはもう夜になっていた。
せめて鳥居ぐらい見に行こうと車を走らせた。
目的地の道を進むが、村が見えるどころか、山をしか見えない。
夜の山は暗いので、彼女は不安を感じた。
山を登っていると、その先には小さな明かりが見えた。
ひとまずその先の人々に話を聞こうと再び車を走らせた。
しかし、進んでも一向に明かりの場所にたどり着かない。
月明かりだったのだろうか……彼は短い言葉でそう思った。
さらに奥に行くと、とうせんぼうされていて、車は来れ以上進めない。
しかたなく車を降り、とうせんぼうをどかして奥へと進んだ。
懐中電灯を照らしながらトンネルを通り、奥に進むと、折れている鳥居があった。
これで満足だろうと彼女が後ろを振り向いた。
が、彼の姿が見当たらない。
どこだろうと目を左右に動かしても、姿がない。
先に車に戻っているのかも、と彼女は車が置いてあるところまで走った。
車の場所についたが、彼はいなかった。
その内戻ってくるだろうと彼女は先に車に乗った。
戻ってくるまで不安だったので、車のすべてをロックをした。
暗い山道に残された彼女は少々怯えながらもウトウトと眠気が襲った。
バンッ!
彼女は車のウィンドーを叩く音で眠気が覚めた。
帰ってきた? と思ったが、誰もいない。
しかし、確かに叩く音が聞こえた。
バンッ!
また聞こえた、音が近い。
音が聞こえるほうに顔を向けた。
車のウィンドーに二つの赤い手形がついていた。
バァァァァァァァァァンッ!!
今度はウィンドーをほぼ埋めつくすほどの血まみれの手が無数に出てきた。
「キャァァァァァァァァァ!!」
彼女の叫びが車の中いっぱいに響き渡った。
鍵も無いはずなのに、車のロックがすべて解除された。
数日後、車の中で倒れている彼女が登山をしていた人によって発見された。
ちなみに彼は他の山で遺体となって発見された。
幸い彼女には命の別状はなかった。
が、その姿は変わり果てていた。
黒髪が恐怖によってすべて白髪になり、体重が酷く落ち、声にならない叫びを繰り返していると言う。
,長編を書く前に、まず練習のつもりでこれを書いてみました。
セリフがほとんどありません。
が、読んでやってください。,#000000,,61.26.209.209,0
2006年04月13日(木) 01時57分44秒,20060413015744,20060416015744,/ix1EccGnqd7M,デザイアと呼ばれた男 VOL 4,D・二プル,,,第二章 動き出した運命
1
それから一週間が経った。
一週間三宿病院に入院していた俺は、安久津に言われるままに精密検査を受けていた。
検査の結果、体に異常は見られないということが解った。
俺は入院代や検査代がいくらになるのかが気になっていた。
俺の所持金は1280円。
銀行の貯金もほとんど残っていなかった。
場合によっては親から金を送ってもらわなければならない。
親に電話するにしても金額を知らなければ電話できなかった。
ある時俺は安久津に入院代と検査代がどれくらいかかるのか聞いてみた。
しかし、安久津はまだはっきりしたことは分からないと口をにごしてはっきり金額を提示してくれなかった。
安久津が言うには保険の割合や、交通事故にあった場合加害者が入院費を出したり、色々事情が変わってくるからもう少し計算するのに時間がかかると言う。
俺が事情を説明すると、とりあえず書類にサインすれば退院時に所持金がなくても大丈夫だと言うのだ。
安久津の言葉を聞いてとりあえず安心した俺は、翌日の退院の準備をしていた。
準備といっても特に荷物があるわけではなかったので、屋上に行って羽をのばしたり、病院内をうろうろしていた。
そんな中、俺が自分の病室に戻ろうと廊下を歩いていると正面からマユミが歩いてきたのだった。
久しぶりのマユミの姿を見て俺はうれしかった。
マユミは俺と目が合うとアッというような表情をして立ち止まった。
「こんにちは。最近見かけないと思ったら入院されてたんですか?」
寝巻き姿の俺を見てマユミは話しかけてきた。
「そうなんですよ。ちょっと交通事故にあって、でも、明日退院するんですけどね」
「そうなんですか。大変でしたね」
「今日はどうしたんですか?」
「私はちょっと父に話があってきたんです」
「お父さんもここに入院されてるんですか?」
「いいえ、父はここの医師なんです。それじゃ失礼します」
そう言ってマユミは去っていった。
マユミの父親がここの医者だったとは驚きだった。
そうと分かれば挨拶の一つでもして、今後彼女との仲を深めていく上でポイントを稼いでおけばよかった。
彼女の本名は安久津 真由美。
ん?
安久津?
まさか、俺の担当医の安久津がマユミの父親だったのか?
なんたる偶然だろうか。
俺はマユミとの運命を感じながら自分の病室に戻って行った。
俺が個室に入るとベッドの前の見舞い客ようのパイプイスに一人の男が座っていた。
ここの個室に人が入っているとは思ってもみなかった俺はギョッとなった。
男は振り返ると俺の眼を見つめて呟いた。
「よお、元気そうじゃないか」
男の顔を見て俺はハッとなった。
男はマユミの働くレンタルビデオ屋「ワールド」で会った老人、國無由自だった。
なぜ國無がここにいるんだ?
俺は國無に蛇崩庵娯の話や蛇崩交差点の話を色々聞きたかった。
しかし、今ここに彼がいることが明らかに不自然だった。
なぜ、國無はここにいるんだろうか?
次の瞬間、俺の脳裏にある疑惑が浮上した。
確かにあの日、俺は國無に言われるまま午前二時に蛇崩交差点に行った。
そして車に撥ねられてここに運ばれた。
俺を撥ねた車のドライバーはいまだに捕まっておらずここにも顔を出していない。
そこに國無由自が現れた。
自然と点と線が繋がる。
俺を撥ねたドライバーは國無由自ではないか?
「何、突っ立ってんだ。座れよ」
棒立ちになったまま頭の中で考えを張り巡らせていた俺に國無は静かに行った。
俺は言われるままにベッドに腰をかけた。
「で、どうだった?蛇崩庵娯の『カトリーナ』は。見たんだろう?」
「……ああ」
「最後まで見たのか?」
「最後のシーンで気分が悪くなった」
「ああ、あのシーンは最高に狂ってるからな」
「それより……」
「何でオレがここにいるのかが気になるんだろ?」
國無は俺の言葉をさえぎるように言った。
「今日はお前とゆっくりは話をしようと思ってここに来たんだ」
「回りくどい言い方してんじゃねえよ。何で俺がここに入院してることを知ってる?俺はあんたに言われた時刻に蛇崩交差点に行って車に撥ねられた。轢いたのはあんたじゃないのか?どういう目的か知らないが、これ以上俺にかまうとこっちにも考えがあるぞ」
突然大声を出した俺に國無は驚きながらも平然と不適な笑みを見せた。
「それじゃあ、その考えというのを聞こうか?」
「え?」
「お前の考えというのを聞かせてみろよ」
「それは……」
俺は言葉に詰まった。
國無の食い入るような眼が完全に俺を飲み込んでいた。
「……まあ、そう焦るな。今日ここに来たのはな、お前を撥ねた犯人を教えに来たんだ」
「えっ、知ってるのか?」
「よく考えてみればお前にもすぐに分かったはずだ。何で金も持たないお前がこんな最高級の個室に一人で入院しているんだ。入院費や検査代もかかっていないはずだ。これは明らかに不自然じゃないか?それは誰かが負担しているということだ。それじゃあそいつは何のためにそんな事をするんだ?自分に後ろめたいことがあるからだろう。そいつがお前を撥ねた犯人だ」
「……誰が一体?本当にあんたじゃないのか?」
「ここで誰がお前の面倒を一番見てくれた。担当医の安久津だろう?」
「安久津?じゃあ、彼が俺を……」
「あの日、安久津はイライラしていて相当酒を飲んでいた。そして、かなりのスピードを出して走っていた。それでお前を撥ねたんだ。安久津は自分が飲酒運転をしていた上に人を撥ねたことを世間に知られたくなかった。もしそうなれば教授になる野望が崩れてしまうからな。そうすぐ選挙も近いことだし、彼は騒ぎを大きくしたくなかったんだ。それで犯人はひき逃げしたことにして、自分は善意の第一発見者を装い、自分の病院に運んだんだ」
「……何であんたはそれを知ってるんだ?」
「あの日、オレはお前をあそこに呼び出し話をしようと思っていた。だが、ある事情で少し遅れてしまい、蛇崩交差点に付いた時はお前はすでに車に引かれた後だった。そして、お前を自分の車に運び込む安久津の姿を目撃したんだ。俺が秘かに安久津の車の後を尾行した。それで三宿病院に運び込まれたことを知ったんだ」
「……あの野郎、何で黙ってやがったんだ」
俺はベッドから立ち上がった。
「一緒に来てくれ。あんたの証言であいつの犯行を暴いてやる」
「まあ、待て。だからそう慌てるな。あいつの犯行を明かすことなんていつでもできる。それよりもここからが大事な話だ。俺はお前と契約する為に今日ここに来た」
「契約?」
國無の言葉の意味が俺には理解できなかった。
國無は俺に一枚の名刺を差し出した。
そこには『株式会社バク企画 代表取締役 國無由自』と書かれていた。
「オレは他人の欲望を現実に具現化することを仕事にしているんだ。悪いが君のことは調べさせてもらった。君は昔のオレに良く似ている。だから君に力を貸したくなったんだ」
「……話が見えないな。調べたなら分かると思うけど俺はニートだし金は持ってないよ。あんたがどんな仕事をしてようが契約なんて出来ないよ」
「オレの目的は金じゃない。まあ、金は他から手に入れるが、オレの欲望は他人の望みをオレの手で適えることだ。それも自分が気に入った奴のな。さっきも言ったがお前は昔のオレに似ている。だから気に入ったんだ。さあ、お前の望みを言ってみろ。俺が何でも適えてやるぞ」
「……別に望みなんてないよ」
「自分の欲望に正直になれよ。あの女を手に入れたくないのか?ずぅっと通ってたよな。あの店に。マユミを自分の女にしたくないのか?」
「……」
「さらに言うならお前はずっと捜しているはずだ。お前がイケる女を。もしかしたらそれがマユミかもしれないぞ」
國無由自の言葉に俺は呆然となっていた。
國無はどこまで俺のことを知っているんだ。
マユミのことはもとよりなぜ、俺が今まで女とSEXしてイッたことのないことまで知っているんだ?それは誰にも話したことの無い秘密のはずなのに……」
「それからお前はまだ、自分でも気づいていない欲望がある。俺はそれを埋めることができる。長々と話したが決めるのはお前の自由だ。オレの話を信じられなければそれでもいい。ただし、それでは今までと何も変わらないぞ。今までお前が見たことの無い世界を見たいなら一週間以内にその名刺に書いてある住所まで来い。嫌なら来ないで名刺は捨てればいい。どちらにしても自分の意思を示せ」
そう言って國無は立ち上がると部屋を出て行った。
俺は國無にもっと聞きたいことが山ほどあったが、聞けなかった。
國無が言っていた自分でも気づいていない欲望とは何のことだ?
俺がイケる女が見つかる?
マユミが俺のものになる?
頭の中がごちゃごちゃになり、俺はベッドに倒れこんだ。
一週間前、蛇崩交差点でロバート・ジョンソンのことを思い出した時、俺も悪魔に魂を売っても欲望を適えたいと思った。
それが今現実のものとなって俺の前に現れている。
しかし、あの國無由自を信用していいのだろうか?
あの全てを知り尽くしたような口調と相手を食い入るような眼は信用できない。
しかし、俺には失うものは何も無い。
金もなく、女もいない。
それでいいのか?
ずっとこのままの人生でいいのか?
もしかしたらこれは大きなチャンスではないか?
人生のターニングポイントなのではないか?
期限は一週間、それまでに答えを出さなければならない。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
ついに第二章突入です。さらに危険にヒートアップしていく凛一郎の生活にご期待下さい。
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年04月10日(月) 01時33分50秒,20060410013350,20060413013350,/U40Iz.ySrDlo,デザイアと呼ばれた男 VOL 3,D・二プル,,, 4
蛇崩交差点には30分もかからずに到着した。
辺りには人の気配はなく静まり返っていた。
俺は自転車をガードレールの脇に停め、コンビニの入り口前でタバコをくわえて立っていた。
交差点の信号が赤から青に、また青から赤に変わるのを繰り返し見ていた。
車道に車はまったく走っていなかった。
それでも信号は休むことなく赤から青に、青から赤に繰り返し点滅していた。
気が付くと俺は蛇崩交差点の真ん中に立っていた。
車がやってくる気配はない。
俺は得体の知れない優越感に包まれたように交差点の真ん中で両手を大きく広げ目を閉じた。
俺はふと伝説のブルースマン ロバート・ジョンソンの伝説を思い出していた。
ロバート・ジョンソンは十字路で悪魔に魂を売って人間業とは思えないほどのギター技術を手に入れた。
その代償にロバート・ジョンソンは妻と子供を失ったとされている。
俺は頭の中で妄想を掻き立てていた。
ああ、俺も悪魔に魂を売ってもいいから自分の満たされない欲望を適えたいものだ。
その為に何かを失ってもいいから……
その時、突然けたたましいエンジンの音とブレーキの音が鳴り響いた。
俺が目を開けると目の前に黒のワンボックスカーが突っ込んできていた。
アッと思った次の瞬間、俺は車に撥ねられ宙を舞い、そのまま地面に叩きつけられた。
遠のいていく意識の中でドライバーが車から降りてこっちに近づいてくるのが分かった。
しかし、ドライバーの顔を見る前に俺の意識はぷっつりと途切れた。
目の前には真っ白な空間が広がっていた。
ここはどこだ?
そこは何も無いただの真っ白な空間だった。
まるで雪の中にいるようだった。
だがそこは寒いわけでも暑いわけでもなく、ただ白い闇がどこまでも広がっているだけだった。
その時、俺の目の前に一人の美女が現れた。
女はどこかで見たことのなるようなグラビアアイドルのような顔をしていたが誰だか解らなかった。
その女はいかにも男受けしそうな慢心の笑顔で俺に微笑みかけた。
そして、呆然と見とれている俺の目の前で服を脱ぎ始めた。
全裸になった女の体は男の欲望を満たすのに完璧な姿だった。
ふっくらと桃色に輝き重量感のある胸。
その乳房は少し上を向いている。
腰はキュッと引き締まったくびれを見せ、形のいい尻は大きすぎず小さすぎず、まさに理想的だった。
すでに俺のペニスはギンギンに膨張していた。
瞬きもせずに微動だにしない俺の首に腕を回し女は軽く唇を重ねてきた。
その瞬間、俺はすごくうれしかった。
女は次第に自分の舌を俺の口の奥にねじ込んでいき、俺の舌に自分の舌をネッチョリと絡ませた。
自然と俺の両腕は目の前の見ず知らずの女をしっかりと抱いていた。
女はゆっくりと唇を外すと俺の目を見つめながら服を脱がし始めた。
その間にも俺は彼女の胸を揉み、首筋にキスしていた。
女が服を脱がし終わると同時に俺は女をその場に押し倒した。
女は相変わらず俺の目を見て微笑んでいる。
俺は爆発寸前の自分のペニスを女のヴァギナに接近させた。
すると女はやさしく俺のペニスを掴み、自らヴァギナへ導いてくれた。
みるみるうちに俺のペニスは彼女のヴァギナに飲み込まれていった。
俺は何も考えず、欲望に身を任せr、衝動的に腰を動かした。
女は体をいやらしくくねらせ、喘いで見せた。
俺は繰り返し、繰り返し腰を動かし、ピストン運動を繰り返した。
女は喘ぎながらそれを笑顔で見つめている。
次第に俺は疲れを感じてきた。
いくらピストン運動を繰りかえしても一向にイク気配がないのだ。
それでも俺はがんばって腰を動かし、ペニスを上下させたが、まったく絶頂する気配はなかった。
いつの間にか俺はペニスをヴァギナから抜いていた。
見ると俺のペニスはすっかり萎えてしまっている。
ふと女の顔を見ると女から笑顔は消え真顔で俺の目を見つめていた。
「思い出したか?これが現実だよ」
「……」
「オマエはいくら女とヤッても絶頂できない駄目男だ。絶頂できないということはオマエは子孫を残せない人間失格ということだ。何よりも悲しいのはお前は昇天の快楽をまだ一度もしらないでぬくぬくと生きているということだ」
「……」
「オマエに生きた女を抱く資格は無い。お前は死体とでもヤッてな」
そう言ったかと思うと女は突然息絶、あっという間に白骨化した。
俺は叫びだしその場から逃げ出した。
気が付くと俺の目の前に真っ白な天井が広がっていた。
俺は夢を見ていた。
しかし、あれが俺の潜在意識の中のトラウマだった。
俺は今まで女とSEXしても絶頂したことがなかった。
自分でオナニーすればイクことはできるが、女との絡みでは絶頂することが一度も無いのだ。
その為かここ何年か女とSEXしていなかった。
心の中では自分の女が欲しいと願いつつも実際に彼女を作る努力はしてなかった。
次第にそんな生活にも慣れ、ぬるま湯の中を浸っていた。
あの夢は俺に何かを知らせる為のものだったのか?
俺は無意識に体を起こすとしたがそれはできなかった。
代わりにものすごい痛みが全身を襲った。
そうだ、俺は車に撥ねられたんだ。
という事はここは病院だろうか?
その時、コツコツと足音が近づいてきた。
足音は俺の部屋の前でいったん止まると個室のドアをノックする音がして、誰かが室内に入ってきた。
俺の視界の中に見たことのない白衣を着た男が現れた。
白衣の男はメガネをかけ、無精ヒゲを生やした初老の男だった。
恐らく医者だろう。
ということはやはりここは病院だろうか?
「気が付いたかい?私の声が聞こえてるかな?」
俺はゆっくりと頷いた。
「君は車に撥ねられたんだ。覚えてるかい?まあ、いい。とりあえず命に別状はないから心配はいらないよ。どうやら君はひき逃げにあったようだ。覚えているかい?」
「……」
俺は無言で首を横に振った。
「まあ、いい。今はゆっくり休むことだ。後で警察が事情聴取にくるかもしれないから何か思い出したら話すといい。ここは三宿病院。私はここの医師 安久津だ。何かあったら何でも言ってくれ。じゃあ、また後で様子を見に来るから」
そう言って安久津は出て行った。
俺は再び見知らぬ部屋で一人になった。
これからどうなるんだろう?
俺の頭の中ではここの治療費や入院代といった現実的な金の心配が広がっていた。
そして時間が経つにつれて、車に撥ねられた時の事を思い出していた。
俺は何であんな時間にあんな所に行ったんだろう?
そして、國無由自のことを思い出した。
あのじいさんに言われるままに俺は蛇崩交差点に行って、こんな目にあった。
つくづく俺は運の無い男だと思った。
あのじいさんが悪いんだろうか?
それとも見ず知らずのじいさんの言葉を信じた俺がバカなんだろうか?
出かける前に見た蛇崩庵娯の映画に変な影響を受けたのだろうか?
考えても答えの出ない問いかけが頭の中でいっぱいになり俺は睡魔に襲われた。
昔から難しいことを考えると頭がオーバーヒートしたように睡魔が襲ってくるのだった。
俺は考えるのをやめ、重たいまぶたを閉じた。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
突然のひき逃げ事故にあった凛一郎。運命のクロスロードがもたらすものとは一体?
次回、第二章に突入。乞うご期待!
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2006年04月09日(日) 14時58分14秒,20060409145814,20060412145814,/2.TqT.HtaXNo,ホットミルク,しぃ,,,西暦二千百年 寒い冬の事…
僕は、憧れの青い地球にやって来た。地球探索のためだ。モチロン極秘だ。
しかし、僕の憧れは儚くも敗れ去った。空気も悪く、人間に溢れている。
「―報告 地球探索の結果は、空気も悪く、我々が住む環境では無かった。」
その時僕は、報告書に筆を走らせつつ、フラフラ暗い道を歩いていた。気分が悪い。なんたって、このよどんだ濃い二酸化炭素に満ちた空気など、吸い慣れていないから……。
『君、変わった格好してるのね』
“セーラー服“を着た若くて可愛らしい女の子が立っていた。
どうしよう!人間にばれてしまった!実験室とかに連れて行かれるの?
「僕、人間に化けてたのに、どうして分かった?」
彼女がまた笑った。
『私、君が化けてるの、分かったなんて言ってないよ。自分で言ってどうするの?面白いね』
僕を馬鹿にしているの?腹が立ったけど、彼女の笑う姿に、ドキッとしてしまった。これを、一目ぼれと人間は言っていたな。
「思い切って聞くけど、どうしてこんなに地球は汚れているの?」
その問いに、彼女はうーんと考え込んでしまった。そして、こう答えた。
『根拠はないけど、人間って楽がスキなの。だから、自分で動かなくても、暮らしていける環境を求めている。そのせいで、機械を作るたびに地球が汚れる。と、思うけど?』
先走りするたびに、人間は廃棄物を生み出してしまうんだな。きっと。
「そっか。人間も、楽が好きなんだね」
僕は俯いてしまった。僕の惑星もそうだから。楽園が出来るから、住む奴も楽になって、何もしなくなって壊れていったんだ。この地球は、みんな働いて、一生懸命生きてるって、信じてたのに……。楽園は然程いい所じゃない。楽園だって、いずれつまらなくなって、刺激が欲しくなる。それが殺すことに繋がる。僕の父さんもそう。それで死刑になっちゃった。
『ねぇ、宇宙人くん。家でホットミルク飲まない?』
彼女の突然の誘いに驚いた。
「え?…ホットミルクって、おいしいの?」
僕の興味深々ぶりに驚いて、笑顔を見せてくれた。
『すっごく美味しいよ。心がこう、落ち着くの。考えても始まらないし、今日は、私と宇宙人くんが出会った記念日にしよう!家でお話しようよ!』
彼女の素直な言葉に自分の悲しさが消し飛ばされた。彼女には不思議な力がある気がした。
「うん」
僕も素直に笑って見せた。
『やっぱり君、笑うとカワイイね』
そんな事、初めて言われて、恥ずかしかったけど、嬉しかった。
彼女に案内されて、白い大きな家に着いた。
「ここ?大きいね」
僕が家の外壁を見上げていると、彼女が玄関を開けて手招きした。
『早く早く!』
暖炉がある、高級感溢れる部屋に案内されて、ふかふかのソファーに座った。
そこで、夢中で彼女について聞いた。好きなこと、嫌いなこと、思い出や、将来の夢、何もかも素直な心で話してくれた。一切僕のことを聞かなかったけれど……。
その分、時間もあっと言う間に過ぎていった。
暖炉の火が暖かかった。彼女の話が面白かった。離れたくなかった…。
彼女の笑顔に魅せられたのだ。
「もう、帰らなきゃ。ばいばい、人間」
『またね。まだ君の事聞いてないから、今度話してね』
そういうことか。今度話すときのために……。
そのとき、別れる実感が湧いて来て、涙が出た。
『泣かないで。不細工になるよ!』
彼女も泣いていた。実際ではないけれど、心で泣いてくれた。僕にはわかる。
仕事で来たのだから、帰らなくてはいけない。ごめんね。
でも、また来るよ。根拠はないけど、また会える気がする。
―報告 地球探索の結果、空気が悪く、我々が住める環境では無かった。
付け加え…根拠はないが人間は、抜けているけど、素直で、いい奴だ。
ホットミルクと言う物が美味しかった。また行く事を志望する―,えっと、こんにちわ!初めまして、しぃです。この作品は、宇宙人のなぞを研究していると言う、番組を見て思いつきました。
もし私が宇宙人を見つけても、恐ろしくて、近づけません……。ぶるるッッ!!!,#000000,./bg_f.gif,220.20.125.1,0
2006年04月07日(金) 01時48分49秒,20060407014849,20060410014849,/X8tNAA9R5SgI,デザイアと呼ばれた男 VOL 2,D・二プル,,, 2
その日俺はとくに見たい映画も無く途方に暮れていた。
マユミと話す口実を作る為映画を見まくっていた俺は、見たい映画が無くなってしまったのだ。
何か適当に借りてカウンターにいるマユミと少し話し帰るのも空しかった。
そんな時、俺は背後から急に声を掛けられた。
「何をお探しかな…」
俺が振り返るとそこにはスキンヘッドの小柄な一人の老人が立っていた。
「…いや、別に。何かおもしろい映画ないかと思ってブラブラしてるだけですよ」
「もし、今日借りる映画が決まっていないならお勧めの一本があるんだがどうかな?」
「………何て映画ですか?俺大抵の映画は見てますよ」
「蛇崩庵娯の『カトリーナ』をご存知かな?」
その瞬間、俺の中を電撃が走った。
蛇崩庵娯は俺に映画という生き方を教えてくれた伝説の映画監督だった。
しかし、その素性は一切謎に包まれていて、マスコミなどにも一度も顔写真が載ったことはなかった。
その一方で蛇崩庵娯の撮る映画は問題作としてよく世間を騒がせていた。
それそのはず、蛇崩庵娯は映画の為に自ら考えたシナリオを元に実際に事件(ドラマ)を起し、それをカメラに収めて映画を製作していたのだ。
しかし、蛇崩庵娯の映画製作は社会的には問題だったが、その内容は他の誰にもマネできないすばらしいものだった(と俺は衝撃を受け感動した)。
しかし、蛇崩庵娯はヨハネスブルグの黒人たちの抗争を画いた「黒人の歯の中のあれ」を最後に映画界から姿を消したのだった。
噂ではヨハネスブルグで消されたとか、FBIに捕まったとか、様々なことが言われたが、どれも信憑性はなくやがて人々の記憶から忘れ去られていった。
しかし、蛇崩庵娯は俺にしっかりと自分の魂を伝えていった。
その蛇崩庵娯の名を目の前の老人の口から聞いた時、俺の中で今まで忘れていた何かが浮かび上がってきたのを感じた。
呆然と自分の過去の世界に入っていた俺に老人は言った。
「今夜、深夜2時に目黒区の蛇崩交差点に行ってみな。そうすればお前の暗い欲望が花開くはずさ」
「………」
俺は老人の言った意味が分からなかった。
蛇崩庵娯の『カトリーナ』はどうした?
そんな俺の疑問をものともせず、老人は俺の前から姿を消した。
気が着くと俺は見知らぬレンタル袋を抱えていた。
その中には一本のビデオテープが入っていた。
ビデオには何のシールも貼ってなく、妖しげな雰囲気を漂わせていた。
俺はそのビデオをレンタル袋の中に戻し、無意識に家に帰って行った。
3
俺は自分の部屋で見てもいないTVを流しながらウトウトしていた。
ふと周りを見るとそこは砂漠だった。
太陽がギンギンに振りかざし、風は無く、蒸し暑い空気が辺りを支配していた。
俺の靴の中は砂でいっぱいだった。
靴を脱ぎ砂を捨てても、またすぐに靴は砂で覆い尽くされていった。
次第に俺は面倒くさくなりそのまま歩き続けた。
足は重く、汗は噴出し、喉はカラカラに渇いていた。
俺は歩くのも面倒になり、その場に座り込んだ。
辺りには人はおろか何もなかった。
俺は自分がとんでもない場所にいるような感じがして、すぐにここから離れたくなった。
俺は慌てて立ち上がろうとしたが、立ち上がる事はできなかった。
気がつくと俺の足は砂に埋まっているのだ。
俺は何とか砂から抜け出そうとしたが、もがけばもがくほど砂は俺を飲み込んでいく。
俺は必死にもがいた。
しかし、砂は俺を完全に飲み込んでしまった。
息は出来なくなりそこには死が待つだけだった。
俺はそこで目を覚ました。
俺は全身にびっしょり汗をかいていた。
ウトウトしていた俺はいつの間にか寝てしまい夢を見ていたのだ。
あの夢は何を暗示していたのだろうか?
俺はキッチンに行き蛇口をひねり水をがぶ飲みした。
俺はそうとう喉が渇いていたようだった。
あの夢の中の砂漠≠ヘ現実世界の退屈な日常≠表しているんじゃないのか?
このままでは俺は死んでしまうということを警告しているのではないだろうか。
実際に死ななくても死んでいるのと同じようになってしまう気がしてきた。
待っていても何も来ない。だだ老いが来るだけだ。
俺の心の中で誰かが叫んだ。
このままじゃダメだ。
でも今の俺に何ができるだろうか。
その時、俺の視線の先にビデオ屋でじいさんに渡されたレンタル袋が転がっていた。
俺は何となく中のビデオテープを取り出してビデオデッキの中に入れた。
テープはツメが折れていて自動的に再生された。
それは今までに見たことの無い映像だった。
ゆったりと流れるジャズと共に一人の男が現れる。
その男は伝説の女カトリーナ≠捜して放浪の旅を続けていた。
旅の途中で男は様々な人に出会い、いろいろな経験をしていく。
それまで自分が知らなかった世界中の様々なことを経験し、男は大きく成長していく。
そしてクライマックスでついに捜し求めていたカトリーナ≠見つける。
しかし、カトリーナ≠ヘ男の目の前で強盗に殺されてしまう。
男は強盗を殺し、死んだカトリーナ≠犯す。
男は憧れていたカトリーナ≠ニSEXして物語は終わるのだが、男がエクスタシーに達した瞬間の映像が半端じゃなくヤバかった。
映画のフィルムは一秒間に24コマで創られているがその24コマ全てに違うカットが映っていた。
そのカットというのが人間のあらゆる汚い部分が凝縮していて、一分間続いた。
その映像を見て俺はおかしくなった。
激しい頭痛と吐き気が押し寄せ、胸が苦しくなった。
何だ、この映像は?
俺はしばらく床に這いつくばり、動く事ができなかった。
それからどれぐらい時間が経っただろうか?
俺は再び目を覚ました。
時計を見ると時刻は深夜一時を回っていた。
TVの画面見ると、くだらない深夜のバラエティー番組がやっていた。
ビデオはすでに初めまで巻き戻っていた。
俺が寝ている間に映画は終わっていた。
それにしてもすごい映画だった。
内容も斬新だったが、見終わった後の高揚感が半端じゃなかった。
何度でも繰り返し見たくなるようなまるで麻薬のような映画だった。
俺は冷蔵庫の中からウーロン茶を取り出し、ペットボトルのままガブガブ飲み干した。
やけに喉が渇いていた。
俺は冷静になって昼間國無由自に言われたことを思い出していた。
「今夜、深夜2時に目黒区の蛇崩交差点に行ってみな。そうすればお前の暗い欲望が花開くはずさ」
時計を見ると午前1時を回ったところだった。
今ならまだ間に合うな。
俺は上着を着て外へ飛び出した。
俺は自転車にまたがり蛇崩交差点に向かった。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
人は人と出会い人生が作られていきます。そしてそこには必ずドラマが生まれるのです。
國無由自と出会い、凛一郎の人生は大きく変化していきます。
果たしてその先に待ち受けているものは一体?
ごゆっくりお楽しみ下さい。
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2006年04月03日(月) 01時54分10秒,20060403015410,20060406015410,9Yy/CdFOXPvPU,デザイアと呼ばれた男,D・二プル,,,
この物語を日ごろの日常生活に不満を持ちながらも懸命に生きる全ての人たちに捧げる!
親愛なる読者よ、この世でもっとも恐ろしい、そして悲しい話をお聞かせしよう。
しかし、それはTVや映画の中の話ではない。
現実の世界の、実に身近なあなたのすぐ近くで起こる物語だ。
誰もが日ごろの日常生活に満足しているわけではない。
誰もが何かしらの不満を抱き、しがらみの中で生きている。
この物語の主人公の少年も我々と同じそんな仲間の一人だった。
ただ、少年が一つだけ我々と違ったのはあの男≠ニ出遭ってしまったということだろう。
その男との出会いが少年の運命を大きく変えてしまった。
少年の中の眠っていた欲望をその男は解放したのだ。
それによって少年は自らの趣くままに行動し、そして大切なものを失ってしまった。
さあ、心して聞くがいい。
生半可な気持ではこの厳しい現実の世界を生きる少年の話を聞き入れることはできない。
これはあなた自身にも起こりえることなのだから……。
しかし、この物語が終わっても生きる希望を捨てないで欲しい。
この不幸な少年の物語を糧に明日からまた自由に人生を使って欲しい。
D・二プル
プロローグ
今から十数年前、日本である一本の映画が公開され世間を震撼させた。
その映画はある日本の裏社会の秘密を暴いたものだったが、内容は極めて過激でどうやって公開に持ち込んだのかも当時から謎に包まれていた。
そればかりかこの映画にはエンドロールが存在せず、スタッフ、キャストはおろか、撮影場所さえも定かではなく、多くの謎に包まれていた。
しかし、一つだけ記されていたのはこの映画を作ったと思われる監督名だった。
監督の名は蛇崩庵娯=B
映画関係者もマスコミも一切この名を知らなかった。
これだけ騒がれたこの映画も一部の熱狂的なファンを除き、時間と共に次第に忘れられていった。
第一章 運命のクロスロード
1
カーテンの隙間から差し込む太陽の日差しが薄暗い部屋の中をぼんやりと照らしていた。
俺はベッドの上で寝返りをうち、重たいまぶたを開いた。
携帯の時計を見るとすでに正午を回っていた。
俺はゆっくりと起き上がり、トイレで用をたし、再びまだぬくもりが残るベッドにもぐりこみ二度寝を始めた。
俺の名は五味 凛一郎。
今は無職のニートだ。
毎月送られてくる親からの仕送りでギリギリの生活をしている。
幼い頃、ある映画を見て衝撃的な感動を受けた俺は、高校を卒業すると同時に上京し、映画の専門学校に入学した。
当時は映画監督を目指し、夢と希望を胸に秘めて毎日を過ごしていた。
しかし、映画学校を卒業した俺は製作会社に入社して現実を思い知った。
学生時代とは違う厳しい現実の波は社会人デビューをしたばかりの俺に容赦なく襲いかかってきた。
大量の雑用、面倒くさい人間関係、わずかしかない睡眠時間、理不尽な上司、おもしろくない撮影現場、通らない企画………。
俺はわずか一年で製作会社を辞めた。
フリーターに戻った俺は喰う為に日雇いの肉体労働を始めたが長くは続かなかった。
退屈な日常生活が続き、俺はマンネリ化した日々に嫌気をさしていた。
このままじゃダメだと思いつつも何をしていいのか分からず、だらけ切った毎日が続いた。
そのうち俺は最低限の生活をする為に登録制の日雇いのバイトをする以外はとくに働こうという気力もなく、ただ漠然とあり限りある人生を無駄に過ごしていた。
そして、俺は次第に働かなくなった。
そんな俺の唯一の生きがいがマユミだった。
マユミは俺が今まで出会った事がない不思議な女だった。
俺がマユミと初めて会ったのは一ヶ月前の事だった。
マユミは近所の喫茶店「カナリア」でバイトしている女だった。
その頃俺は、製作会社を辞めたばかりで次の仕事を探しながら毎日ダラダラと過ごしていいた。
俺はバイト雑誌を片手によく「カナリア」でお茶していた。
マユミはそこでウエイトレスをしていた。
初めはマユミの事をとくに意識していなかった。
しかし、ある事件がきっかけで俺はマユミを意識するようになった。
ある日、俺はいつものようにバイト雑誌をめくりながらこれから何をして生きていこうかとぼんやり考えていた。
その日もマユミは「カナリア」のフロアーで働いていた。
マユミがテーブルの上の食器類を片付けていると、隣の席に座っていたチンピラ風のおっさんがマユミにカラミ始めた。
おっさんは猥褻な下ネタを連発しマユミをからかっていた。
マユミはおっさんをまともに相手にせず、軽く流してかわしていたが、悪乗りしたおっさんはマユミの尻を嘗めるように触った。
次の瞬間、マユミはもっていたグラスをおっさんの頭に叩きつけた。
そして、おっさんの顔面に何発も殴りつけた。
あわてて他の店員がマユミを止めに来たが、マユミはバイト仲間の静止を振り切りおっさんが気を失うまで殴り続けた。
俺はその一部始終を見ていた。
翌日から「カナリア」からマユミは姿を消した。
当然のようにマユミはクビになっていた。
相手が酷く酔っていた事と、周りにいた客がおっさんの悪態ぶりを証言した事でマユミは立件されなかったが、一歩間違えればりっぱな傷害事件になっていた。
次に俺がマユミを見たのはレンタルビデオ屋「ワールド」だった。
マユミは職を一転しレンタルビデオ屋の店員になっていた。
マユミのことなどすっかり忘れていた俺がたまたま立ち寄ったレンタルビデオ屋でマユミと再会した。
マユミは床にしゃがみこみ、鼻歌を歌いながらビデオの返却をしていた。
マユミが歌っていたのはラブサイケでリコの「ラストスマイル」だった。
その姿を見た瞬間、俺の中に電撃が走った。
「カナリア」で見た暴力的なマユミと、鼻歌を歌うどこかのんびりとしたのどかな雰囲気をかもし出しているマユミのギャップが絶妙にブレンドされ俺の恋心に火を点けた。
その日から俺はちょくちょく「ワールド」に通い始めた。
映画を捜してもらう口実で話し掛け、仲のいい常連客になっていった。
マユミと話していると俺は和やかになっている自分に気づいた。
マユミは女にしては低い声だったが、俺はその声がとても好きだった。
しかし、マユミと仲良くなればなるほど俺の空しさも広がっていった。
いくら親しくなってもそこには客と店員≠フ見えない壁が広がっていた。
かといって俺は今の関係のままマユミに自分の気持ちを告白するほどの勇気もなかった。
そんな平行線の関係が永遠に続くのかと俺が考えていたある日、俺は一人の老人と出会った。
老人の名前は國無由自………。
この國無由自との出会いが俺の人生を変える事になるとは思いもよらなかった………。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
お待たせしました。ついに長編最新作「デザイアと呼ばれた男」が始動します。
前回の「麻薬のような女」とは一味違った作品ですが。ごゆっくりお楽しみ下さい。
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2006年03月30日(木) 19時36分31秒,20060330190845,20060402193631,9VfEkwAEwrlfI,苦しすぎる愛は、愛ではなかったんだ,比奈子,,,あなたを見送った
遠くに飛んでいる秋の鳥に別れを告げるように
愛する人を涙で見送り
盃の前に座ると涙があふれる
あなたを見送って
降るような星空を仰ぎ見ると
言い尽くせなかった言葉が涙になって流れ落ちる
この悲しい愛を忘れることができるだろうか
ある日 雨が思い出のように舞う野原で
寂しい愛に包まれてうつむくと
聞こえてくるあなたの声
苦しすぎる愛は愛ではなかったんだ
ある日 濡れた肩が風がかすめ
私の疲れた時間が窓に映ると
あなたが憎くなる
苦しすぎる愛は愛ではなかったんだ
僕たちは愛という名で二度とこの世に生まれきてはいけない
懐かしい日々も封印しよう
かなわなかった愛
苦しすぎる愛は愛ではなかったんだ
,母と初恋の手紙の番外詩です。
これが本当に最後です。
「あなたにとって私は僕にとって君は」
↓
「愛すれば愛するほど」
↓
「苦しすぎる愛は愛ではなかったんだ」
という順番に読んで見て下さい。
読んで下さった人には大変感謝しております。
ありがとうございました。
,#0000A0,./bg_c.gif,61.26.209.209,1
2006年03月30日(木) 19時19分55秒,20060330020333,20060402191955,9lsvr5UJxSJS6,愛すれば愛するほど,比奈子,,,夕暮れの丘からの向こうから
君は僕を見つめていたね
言葉にできない僕の気持ちを
君は知っていただろうか
僕たちの出会いは偶然のように思えるけれど
虹の道を渡って天国へ行っても
君を愛する気持ちは変わらない
愛すれば愛するほど
君の想いで胸が痛む
でも信じてほしい
これが別れではないことを
ようやく気がついたんだ
愛は隠せないものだということを
偶然のように突然現れた君
今 君は僕の運命になったんだ
愛すれば愛するほど
君が遠ざかる気がして怖かった
でも信じてほしい
これが別れではないことを
,母と初恋の人の手紙の最終詩です。
これは恋人が戦争に行く前夜に書いた手紙の元の文章と私が考えた文章をうまく(かな?)組み合わせて投稿しました。
『今きっと天国にいるあの人は幸せに暮らしているでしょう……』
と母がそう言いました。
私もそう祈ります。
,#0000A0,./bg_c.gif,61.26.209.209,1
2006年03月30日(木) 19時18分59秒,20060330014104,20060402191859,9t9EUKNiiaiDo,あなたにとって私は、僕にとって君は,比奈子,,,あなたにとって私はまるで夕日のように
一つの美しい思い出になりたい
大切な若い日々を記憶に焼きつけ
悔いのないよう絵画のように残したい
僕にとって君は孤独だった過去の時間を
明るく照らしてくれた日差しになりたい
君の小さな手の上で宝石のように輝いて
永遠の約束を果たしたい
あなたにとって私はまるで夕日のように
一つの美しい思い出になりたい
大切な若い日々を記憶に焼きつけ
悔いのないよう絵画のように残したい
僕にとって君は緑の悲しい歌になり
僕の小さな胸の中に生きている
きらめく君の美しい瞳の中で
いくつもの星になって永遠に輝きたい
,こんばんは、比奈子です。
このサイトで初投稿です。
この詩は私の母と戦争で若くして亡くなった母の初恋の人と最初から最後まで交し合った手紙を母の許可を得て詩にして見ました。
沢山の愛が詰まった手紙を読んで、この詩を投稿させてもらいました。
ちなみに前者が母、後者が初恋の人です。
この手紙を見るたび母は涙を流していました。
これは私が考えた作品ではありませんので、この作品の感想を母に伝えるつもりで書いて見てください。
難しかったら、普通の感想で良いです。
ついでにもう一つ投稿します。
,#0000A0,./bg_c.gif,61.26.209.209,1
2006年03月28日(火) 17時32分44秒,20060328173244,20060331173244,8UrQYiP2g36mU,『WORとして生きているコト』 −4−,蝶。。,,,血生臭い戦場――ついさっき戦争が行われたのか、と察知する。
数々の息の根を止めた死体が、俺達の目に次々と入るのは、事態が酷かったせい
だろう。ざっとみても何千何万という数だ。
その中、あの西技野郎に任務を命令され、この場に辿りついた俺達が居た。
俺、朝祢(あさね)と、クール男深來(みらい)の2人。
深來は男というのに、男性からかなり人気があるヤツだ。
こんなヤツと同じメンバーになって、嬉しいのかイヤなのか…。
俺の心は少々――いやかなり複雑だが、WORの俺はその場を逃げるわけにも
いかなかったのだ。
そんな心を抱える俺は、イヤな過去のせいで深來への視線が変わっている。
『過去の記憶を消されたんだ、深來ってヤツ』
同僚の雫季(だき)から全てを聞かされた俺は、その場に泣き崩れた程だ。
実はその深來の記憶を消したのが、『俺』だったってコト…。
そして俺の目の前で、何もなかったように振舞う深來の姿があるコト…。
「……ゴメンな、深來――…。」
俺は急なのだが土下座をし、俯いて深來へ発した。
スグ顔を上げると、深來はえっ?という感じで俺を見つめてくる。
俺が発した言葉を理解できていない様子だ。
まぁ其れも当たり前か。
急にゴメンとか言われて「いいよ別に」とか言うヤツがいるワケない。
いたらなんていうか…俺の心見破られてる様で逆に怖い…しな。
「な、何が?っていうかアンタ汗だくだぞ!? 大丈夫か!?」
大丈夫なワケねぇだろ……。
汗だくで急にゴメンとか言うヤツが何もないなんてオカしいだろフツー…。
心で苦笑しながらツッコむ俺だが、スグに現実に戻り深來を見つめ返す。
「あ、だからさ――その、汗だくとかそんなのじゃなくてよ。
アンタに謝りたいんだって」
「謝る!? 過去のコトなんて謝って欲しくないし! か、過去って決まったワケ
でもナイケドさ…。でもイイから、アンタの言いたいコト分かるからッ!」
深來は、「でも」らへんから笑みを浮かべ、有り難うでもいいたげな表情に
なった。そして何故かうんうん、と頷く。
ん?コイツ何か勘違いしてる?
俺の心に微妙な不安がよぎったが、まぁ深來のコトだ、と其の心を抑えた。
「あ―――分かるか…ならイイ…じゃないってだからコレはッ――許されない
コトだろ?深來の人生を変えたんだぜ俺は?」
さらに深來は分かってる、と頷き始め、オマケに腕まで組む。
「分かってるって、だから」
「…本当にか?」
「あぁ、お前のコトだ、許してやりたいところだな」
偉そうな口だなオイ――――今の俺の顔は、かなり複雑な表情だろう。
大体俺が言いたいコトわかったのかよ……と深來の能力を疑う俺がいる。
でもな―――何だこの気持ちは…。
深來が何か勘違いしてるんじゃないかって心が一気に膨らんでる。
俺が言いたいのは、さっき言った、深來の過去の記憶を消してしまったコト。
つまり深來の父や母のいた頃、その父や母の存在、そして幼少時代の頃の記憶を
深來の頭から、俺が消してしまっているというのだ。
其れは俺が同僚の雫季から聞いただけであって、もしかしたら冗談のつもりでアイツは言ったのかも知れないし、そんなコトを本気にする俺が間違っているのかも
知れない。
でももしそれが本当なら…俺が深來の記憶を消したのを忘れているだけなら…。
謝って済むコトではナイと思っても、深來の心を傷つけるだけなら謝るべきだと、
俺の心はそう決断されたのだった。
だから俺はこんな風に、謝りたくもない深來の前で本気になって謝っていると
いうのに、(しかも汗だくで土下座まで)深來にそのコトを勘違いされていると
いうのなら其れは――まぁ、ヒドいというか悲しいというか残酷だというか。
兎に角誤解はされたくないな、と。
「あ、のさ、本当に分かってる? 俺が言いたいコト――」
微妙な笑みを返し深來に呟くと、深來は何回もいうな、と逆に怒り出した。
「分かってるって、言ってるだろ! 要するに、いつも俺の前で見せる
お前のそのハイテンションを謝ってくれてるんだろ!?
大丈夫だ、いつものコトだから慣れてたし。ていうか最初からヤメとけよな
そういうの! 分かったか!?」
……。
……。
あぁ、やっぱり?
勘違いしてた、深來。
俺の日常を謝っている、とコイツは見たんだな?
……。
あぁ、なんて言えばイイ?
こんな空気俺ヤだよ…。
ていうかどうにかしてよ神様…。
俺がした土下座とか無意味になっちゃうじゃん…。
「…やっぱり、深來勘違いしてる…。俺が言いたいのはお前のかッ…」
……言えない、そうカンタンに。
あ〜素直に俺言えよ…『お前の過去を消したコト』って。
「…? お前の『か』? ――もしかして俺の顔になんかついてるの?」
あぁ〜余計深來が勘違いするじゃんよ。(てかしてるよ〜)
何?やっぱ俺って怖いんだ?
深來に怒られるか、って?そのせいで俺が傷つかないか、って?
そのまんまじゃ―――俺一生謝れない…。
今すぐココから逃げ出したい気持ちだ。
「やっぱ何でもない!」って、この場から立ち去りたい気持ちだ。
そうやってたのが、今までの俺だったんだ。昔の俺――。
だけど、そうはいかないか。
やっぱ逃げ出すのは、ヒトとして最悪か?
謝る気持ちになって、投げ出すのは深來に悪いか?そぉりゃ悪いよな。
だって後でそのコトを知った、深來が傷つくかも知れないし。
投げ出すのは―――本当ダメだよな…。
「お、俺さ…。その、あの、だからさ…、深來の過去を、さ…」
ぎこちない声が出た為、俺は一瞬本当に逃げ出したくなる。
緊張と不安で声がかすれるし、第一声がそうカンタンに出ないのだ。
でもグッと握り締めていた拳を握り、ムリしながら俺らしくないコトを言う。
「何?早く言え」
…やっぱり来るか。深來は呆れた様子でこちらを伺う。
「だからッ…深來の過去――――俺が、消したんだよ、な」
,お笑いなのかシリアスなのか。,#5400A8,,61.119.195.44,0
2006年03月24日(金) 01時52分18秒,20060324015218,20060327015218,8cJ11sMDn4.RY,麻薬のような女 最終回,D・二プル,,, 36
ある日、俺は病院から外出許可を得てイラと出かけた。
イラは俺を野毛動物園に行こうと誘った。
野毛動物園は以前イラが住んでいたアパートの裏にある入場無料の動物園だった。
俺はイラとの久々のデートで浮かれていた。
イラも像が見たいとはしゃいでいた。
動物園を回りながらイラは初めて俺にこれからの話をしてきた。
「もうすぐ退院だよね。ねえ、退院したらどうするの?」
「そうだな、とりあえず、実家はもう無いから横浜に部屋を借りようと思ってる。できればイラと一緒に住みたいな…」
「…ねえ、あたしの母親の話ってした事あったっけ?」
「…いいや、聞いてない」
「あたしの母親も昔、娼婦だったんだ。黄金町で働いてたんだって。だからあたしもなんとなくあの町が好きだったんだ…」
「…そうなんだ」
「あたしが記憶を失ってる間ね、何度も母親の夢を見たの。それが不思議なんだけど最後はいつも春道と重なって消えるの。今思うとそれがおかしくってさ…」
「………」
「…あの町が壊されたって知って何か心の中にぽっかり穴が空いたような感じがしてねとっても悲しくなっちゃった…だからもう、あの町から卒業しようと思うの…」
「…イラ、俺は……」
「あたし達今日で別れよう。あたしとあんたは違う道を歩まなきゃいけないような気がする。あんたは見違えるほど大人の男になたから子守りは今日で終わりにするよ。今までありがとね。本当に楽しかった…」
「………わかった」
俺の目から涙が溢れ出していた。
俺は動物園の真ん中で一目も機にせず力いっぱいイラを抱きしめた。
イラが見たがっていた像は3日前に死んでいて見る事が出来なかった。
俺は「ここで別れよう」というイラを引きとめ最後にある場所に連れて行った。
俺はイラを「黄金町」に連れて来た。
川沿いの道をイラと一緒に歩いた。
俺達が一緒に暮らしたマンションはすでに取り壊されていてコインパーキングになっていた。
橋の上で立ち止まった俺はそこから見えるコンビにを見詰めた。
「…ここ覚えてる?」
「え、何?」
「ここで俺達初めて会ったんだ。俺にとっては思い出の場所さ。イラは全然覚えてないだろ?」
「…覚えてるよ。ここで一緒に蟷螂を埋めたよね」
「そうそう、俺あの時からイラに惚れたんだ…最後にどうしてもイラとここに来たかった。あの時が全ての始まりだったんだ…」
「…ねえ、あたしのどこに惚れたの?」
「え?…」
「自信が持てそうじゃん。春道に言われたらさ」
「…すごく変なトコ。普通いないぜ、こんな変な女…だから好きになった」
「…やっぱ変ってるよ。あたしより春道の方が絶対変だよ…」
「かもね…」
「よし、そろそろ終りにしよっか。ここで別れよう」
「イラ、これからどうすんだ?」
「…まだ決めてない。とりあえず体を売るのはもうやめる。でも絵だけ描き続けたいと思ってる。絵だけがあたしの存在証明だから。それからもっと世界を見てみたいな。あたしこの町しか知らないからさ。きっとまだ知らない素敵な事が待ってるような気がするから」
「きっと見つかるよ。イラなら…。今まで本当にありがとう。マジで楽しかったよ。最後に聞かせてよ。俺のことちょっとは好きだった?」
「…ばーか。大っ嫌い…」
笑いながらイラは俺の唇にキスした。
それは最後の別れのキスだった。
「じゃーね。元気でね。ちゃんと病院戻りなよ」
そう言ってイラは俺の前から去っていった。
俺はイラの後ろ姿を見えなくなるまで見送った。
不思議と涙は出てこなかった。
俺は笑顔でイラを見送った後病院に戻った。
そして、その日からイラのいない日常が始まった。
エピローグ
久しぶりに昔の事を思い出した。
あの時期に起こった事はどんな時も忘れる事はなかったが、やはりこの町に来ると記憶は鮮明に蘇ってくる。
香澄の記憶≠ヘ今も俺の心の中に残っている。
しかし、香澄が俺に語りかけてくる事はもうなかった。
あれは一体何だったんだろうか?
世界には他人の記憶が自分の頭に入ってくる事例がある事は後に知った。
しかし、なぜ、香澄の記憶が俺に入ってきたのか。
俺がイラという女を好きになった事とイラの身に危険が迫った事が重なったからなのか…それは永遠に謎のままだ。
あの頃が本当に懐かしい………。
俺は喫茶店である人を待っていた。
外国にいる頃からメールのやり取りをしていて、今日会う約束をしていた。
俺はその人が現れるのを心待ちにしていた。
少しするとにぎやかな騒ぎ声と供に子供連れの女が入ってきた。
「…春道、久しぶりね」
そこには子供達と日本に遊びにきたアイ…ペンの姿があった。
あの後、ペンとは何度か手紙のやり取りをした。
ペンは山田の事をすごく悲しんでいたが、今は元の夫や子供達と楽しく暮らしているそうだ。
ペンは歳を取っても綺麗で元気だった。
俺はすっかりペンの子供達と仲良くなった。
ペンは俺が作家になった事に驚き、俺が情けなかった頃の昔話をして笑った。
俺はあの時、強制送還されてしまい言えなかった事をすべてペンに伝えた。
ペンはイラ以上に俺に人生を教えてくれたすばらしい女だった。
ペンと別れ、俺はホテルで次の小説の下書きをしていた。
そんな時、ふとイラの事を思い出した。
「黄金町」で書き始めたイラと過ごした日々を書き留めたノートが、俺の作家としての原点となった。
あの時から書く≠アとのすばらしさを知った。
イラに絵があるように俺は小説を書くことに自分の存在証明を感じた。
あれ以来、イラとは会っていない。
今、どこで何をしているのかも俺は知らなかった。
それでも俺はもう、イラを引きずっていなかった。
俺は鞄の中から一枚の絵を取り出した。
それは当時、イラが自分の血で描いていた絵の残った最後の一枚だった。
あの大地震の後に拾ったこの絵は俺の宝物だった。
あれから俺は外国を旅し様々な女達と出会ったが、あれほど強烈に俺の心に残っている女はいなかった。
この世には必ず男を成長させる麻薬のような女≠ェ存在する。
男次第でその女は毒にも薬にも変貌する。
それでも、勇気をもって一歩その女と向き合えば、そこにはすばらしい明日が必ず待っているはずだ。
完
この物語を今は無き、すばらしいドラマを生み出してきたあの街の住人たちに捧げる。
あとがき
私がこの作品の構想を考えたのはまだ、学生時代の事だった。
初めは学校の課題として考えていたが、なかなかまとまらずそれが作品になる事はなかった。
それから、私はことあるごとにこれを作品化しようと考え、再度、構成し書き始めたがやはり最後まで書く事はできなかった。
その間にも私は何度も職を変え、退屈な人生を過ごしていた。
そして私はそんな心の隙間を埋める為にこの小説を書き始めた。
今回は以前とは書き方を変え、短期間に一気に書くのではなく、毎日少しずつ長期に渡って書き溜めていった。
そして気分が乗らない時は書かなかった。
そのうちに私自身がこの物語の世界に吸い寄せられるようにハマっていった。
初めにこの話を考えた時は自分の体験談と希望を込めたラブストーリーだった。
しかし、時間が経つにつれてそれではおもしろくないのではないかと思うようになり、フィクション要素を多く取り入れるようになった。
途中段階では春道は山本のような犯罪者で「黄金町」に逃げてきた逃亡者という設定の時期もあった。
しかし、やはり途中で投げやりになり完成には至らなかった。
今回、最後まで書き上げる事が出来たのは、リアリティーとフィクションの要素がうまく混ざり合ったからだと思う。
香澄の記憶≠フ部分や大地震=A最後の死闘≠ネどはフィクションだが、登場人物のキャラや行動はかなりリアリティーを込めて書いた。
この物語の登場人物のほとんどがモデルになった人物が実在する。
とくにイラ≠ニアイ≠ヘ私自身が実際に過去に体験した経験を素にした。
それが書いているうちに現実はフィクションよりも信じられないような事があると実感し、それに付け加えたフィクション部分がまたおもしろいように微妙なエッセンスとなってこの作品を完成させた。
書き上げてみて改めて感じた事は私はこの作品を心から愛しているという事だった。
これを世間に発表し、例えどんなにコケにされたとしても私自信はこの作品を愛していけると実感した。
作家にとって自分の作品は自分の子供と同じだと思う。
自分の子供を愛せない親は最悪な人間だ。
例えどんなにデキの悪い子供でも自分の子供は愛さなければならないと思う。
私はこの子を生涯愛していけると思う。
最後にこの作品を書き上げる上で協力していただいた方々に心からお礼を申し上げます。
その人達との出会いが無かったらこの作品は完成しませんでした。
これまでの想いを胸に秘め、私は新たな子作りの旅に出ます。
D ニプル
, こんにちは。D・二プルです。
「麻薬のような女」もついに完結です。
長い間お付き合いいただいた皆様に心から感謝しております。
この作品は私の中で特別思い出のある作品だったので独りよがりになる部分もあったかとは思いますが、とにかく最後まで書くことができました。
機会がありましたらぜひまた投稿したいと思います。
それではまた次回作でお会いしましょう。
さようなら。
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年03月23日(木) 05時49分11秒,20060323054911,20060326054911,7hQC8ohRpHO3A,詩集,吟遊詩人 ,,, 露の間の 恋の木枯らし 包まれて
一日千秋の 思いなりけり
明け暮れて 晩酌そそる背中には
手垢に滲む 土方の男と
汗と涙の日々ありけり
,一作目 訳
(一瞬の短い間に思えるような恋が
木枯らしのように過ぎ去ってゆく歳月を照らし
今は亡き相手を思う気持ちが、永遠の秋のように長く続いている。)
,#5400A8,./bg_f.gif,220.209.164.78,0
2006年03月22日(水) 13時16分35秒,20060322131635,20060325131635,7JC5Ju02rfGUU,あえて乙女に送る詩,歩喜和家,,houkikazuya.blog43.fc2.com/,女心がわからない
乙女心がわからない
そう言って
走ってどこかへ行ってしまった
追おうと思えば追えた
追いつくことなんて簡単だった
でも
追わなかった
下手な同情で傷付けたくなかったから
それもある
でも
意地による部分が大きかった
君に笑っていてほしかった
傷付けたくなかった
だから
俺は俺なりに優しくしていたつもりだったのに
大切だと思ってたのに
それが理解してもらえなくて悲しかった
だから
追いかけなかったんだと思う
言葉ではなく
行動で示したい
だから
誤解されても黙って耐えてきた
遠ざかる君の背中に
いつも言いたかった
お前達こそ
男心をわかっていない
漢心をわかっていない
そして
ごめん
わかってる
お互い
ただの意地っ張りってことぐらい
恥ずかしくて言葉に出さないから
いつもすれ違ってることぐらい
好きだ
離れたくない
素直にそう言えれば
楽なのにな
女と同じくらい繊細で
それを隠してしまう辺り
女よりも弱い
硝子のように脆い男心
強くなどないから
偶には優しく
思っても
声には出さず
胸に秘め
耐えるのが
漢の美学
だけど
素直になりたい
俺の心, 覚えていますか、歩喜です。
男は王子様でも不屈でも屈強でも単純でもないです。
案外繊細で、壊れやすい硝子の心を持っています。
しかし、それでも虚勢を張り続けているのが、漢です。
だから、時々労わってください。
時々でいいから優しくしてください。
と、追い詰められた男のように語ってみる、歩喜なのでした。,#000000,,219.22.191.43,0
2006年03月22日(水) 02時21分43秒,20060322022143,20060325022143,7NAMwYS2JNTAA,悲しみは喜びよりも深いところで,カナリア,,,悲しさは喜びより深いところで幸せを呼んでいる
この世を全て地獄だと思うとき、何かにそぎ落とされたように
蛹から蝶になる私が見える
暮れなずむ風景にキャンパスを書く名のない画家のように
私の心は あの頃の懐かしさに聳えている
一杯の缶コーヒーの味が 手垢にそまった土方の俺を
励ましてくれる
一人孤独にさいなまれる日々も
悪いことばかりじゃないと目の前にある裸の自分を投影しながら
私は身体の芯から生きる喜びを知る
人のゴミを捨てる人も 女性をキャッチをするホストも
必死に生きている
勝利も敗北も保障されない現実で
果てしない情報が交錯する社会で
ある人は花を咲かそうと努力している
ある人は人と違った花を咲かそうとしている
ある人は今を大切に生きている
ある人は・・・・・・・人に捨てられたものを大切にして片隅で咲く花だ
悲しみは深いところで幸せを運び
貴方の涙が永遠に暗闇に包まれていないと希望を齎す
世が思っているより、色がなく、色は全て自分の中にある
キャンパスで描く画家は
健康や財産を捨て没頭する
それこそが生命の輝きであるように
空に羽ばたくのである
,,#B500B5,./bg_c.gif,220.145.133.6,0
2006年03月21日(火) 01時06分38秒,20060321010638,20060324010638,7poV4QCxoKuWI,麻薬のような女 VOL 21,D・二プル,,, 33
「彩、起きなさい。今がその時よ。起きてあなた自身の手で終わらせるの。あなたがこの町で生きてきた理由は今この時の為にあるのよ。あなたの手で終わらせなさい。あなたなら出来るわ。あなたは私の娘なんだから…」
山田のナイフは俺の肩に突き刺さった。
俺は山田に突っ込み、イラに覆い被さっていた。
肩は燃えるように熱く徐々に痛みが伝わってきた。
俺は自分の血を見ながら山田の足元に崩れ落ちた。
意識が朦朧としてくる中、山田の声が聞こえてきた。
「…バカめ、自分を盾に女を守ったつもりか?心配するな。すぐにあの世で会わせてやるぜ…」
「あの世にはあんた一人で行きな…」
その瞬間、俺も山田も一瞬何が起きたのか分からなかった。
それまで赤ん坊のように山田にされるがままにしていたイラが、突然山田の顔面を殴りつけたのだった。
完全に不意をつかれた山田はイラのパンチを喰らい、ナイフを落としていた。
イラは山田のナイフを拾い上げると冷たく言い放った。
「あの世でしっかり謝ってきな。母さんやあんたが殺してきた多くの人達に…」
「…止めろ。お前も犯罪者になるんだぞ」
「…聞こえない。あんたの声はあたしには響かない」
イラは迷わずナイフを山田の額に突き刺した。
山田の額から大量の血が噴出し、返り血でイラを真っ赤に染めた。
「あたしは色盲だけどあんたの血の色はわかる。あんたの血の色はどす黒くて腐ってる…」
イラの足元で山田は息絶えた。
一瞬、俺はイラが香澄の姿にダブって見えた。
呆然と倒れている俺にイラは駆け寄ってきた。
「春道、大丈夫?しっかりして…」
「…イラ、記憶が戻ったんだな。良かった…」
「…うん」
イラは俺にやさしくキスした。
それは久しぶりのイラのキスの味だった。
この地獄のような修羅場で俺は、久しぶりに愛する女と抱き合った。
突然、下の階で爆発が起こった。
けたたましい爆音と供にマンションは大きく揺れ、部屋のガラスを割り、大量の炎と煙が襲いかかってきた。
「…春道、これどうなってんの?かなりヤバイじゃん」
「…ああ、早くしないと逃げられなくなるぞ」
入り口はすでに火の中に埋め尽くされていた。
イラは窓から下を見下ろした。
下には野次馬と警察と供に消防隊が消化活動をしていたが、あまりにも火の勢いが強く、ほとんどが焼け石に水だった。
大量の煙が死角になり消防隊は俺達の存在に気づいていなかった。
「春道、どうしよう…あいつらあたし達に気づいてないよ」
「…心配するな。どんな事があってもイラは守るから…」
「…バカ、この状況でよくそんな事が言えるね」
「…こんな時だから言ってんだよ」
「…春道」
俺とイラは見詰めあい全てを覚悟した。
その時、天井の一部が崩れ落ち、瓦礫が俺とイラに降りかかった。
藤巻さんと山田の遺体に瓦礫が降り注ぐのを見て俺とイラは抱き合ったまま意識を失った。
34
気がつくと俺は真っ白な空間の中にいた。
さっきまで死に掛けていたはずの俺の体はどこにも痛みを感じず、ただぼんやりと佇んでいた。
俺は前にクスリでラリッた時にこんな感じの世界にやってきたのを思い出した。
俺はイラを捜した。
しかしそこにはイラはいなかった。
その時、どこからともなく一人の少年が現れた。
よく見ると少年というよりまだ幼い赤ん坊だった。
その子はスッと俺に近づいてきてこう言った。
「始めまして。やっと会えたね。ずっと前から君とは話したかったんだ」
「君は誰?ここはどこ?俺は死んだのか?」
俺はその子に質問した。
「ここは君の頭の中さ。君はまだ死んでない。だけど、もうすぐ君の体は限界に達する。その前に君と話して起きたかったんだ」
「…話って?」
「君はこの町に来て本当によくがんばった。僕はずっと見ていたんだ。だから君の願いを一つだけ叶えてあげたいと思ったんだ。君の望みは何だ?一つだけ願いが叶うとしたら何を望む?」
「…決まってるだろ。イラを、イラを助けてやってくれ。俺の望みはそれだけだ」
「本当にそれが望みかい?たった一つの願いを他人の為につかうのか?本当にそれでいいのか?」
「ああ、それが俺の望みだよ」
「もし、その願いを叶えることで彼女が君から離れて遠くに行ってしまっても同じ事が言えるかい?」
「…ああ、俺の願いは変らないよ」
「分かった。君の望みをかなえてあげよう。僕は君から、この町から多くの愛をもらったからね」
「…待ってくれ。君は一体?」
「ありがとう、母さんの願いを叶えてくれて。母さんもきっと喜んでるよ」
俺の頭の中で香澄≠ェ姿を現した。
香澄はニッコリと微笑み「ありがとう」と言って消えた。
その瞬間、少年はまぶしい光に包まれた。
次の瞬間、少年は「黄金町」の地蔵に姿を変えていた。
そして俺は光の中に包まれていった。
気がつくと俺はイラと抱き合って502号室の窓際に倒れていた。
イラを見ると意識を失ったままだった。
俺は何も考える事ができなかったが、不思議と体が自然に動いた。
山田に刺された肩の傷は血が止まっていた。
俺はイラを抱きかかえたまま割れた窓を開け、ベランダに出ていた。
俺は下を見ずに空を見上げた。
空は煙に包まれていた。
俺はイラをギュッと抱きしめ、ベランダから飛んだ。
俺は何も考えていなかった。
普通なら地面に叩きつけられて死ぬはずだった。
しかし、俺はちっとも怖くなかった。
それはイラと一緒だったからだ。
俺は覚悟を決めていた。
その時、俺は風を感じた。
今までの熱気を浴びていたせいか、その風はやたらと気持ちよかった。
そして俺とイラは真逆さまにに落ちていった。
しかし、落ちた場所は地面ではなかった。
俺とイラは大岡川に飛び込んだ。
俺とイラは冬の大岡川に巨大な水柱を作った。
35
俺が意識を取り戻したのはそれから一週間後の事だった。
山田との死闘から奇跡的に生還した俺だったが、全治三ヶ月の怪我で病院に担ぎ込まれていた。
あの地獄のような修羅場の中で信じられないような体験をいくつもした俺だったが、後から知った現実にもっと驚かされた。
あの事件の翌日、「黄金町」に行政の一斉摘発が入った。
それは今までのような暗黙の了解の上で成り立っていたイタチゴッコではなく、「黄金町」そのものを潰すほどの徹底したものだった。
娼婦達は不法入国を理由に強制送還され、働いていた店は全て閉鎖された。
その中にはアイも含まれていた。
アイは死んではいなかったのだ。
アイはマンションの隣の店の中で眠っている状態で発見されたと後で知った。
恐らく、山田はもう一人のイラを眠らせた後、隣の店にアイを運び、俺を自分の部屋に入れ替え、犯行の準備をしたものだと思われた。
あれだけ多くの人を殺害してきた山田がアイだけは殺さなかった。
これは俺の推測だが、山田は本当にアイの事を愛していたような気がした。
山田はアイに香澄と同じ匂いを感じていたのかもしれない。
しかし、その答えも今となっては確かめる事は出来なかった。
アイはタイに強制送還され、多くのタイ人娼婦達が収容されている施設に送られたと聞いた。
その施設は人身売買や売春の被害にあった女達の介護をする所だった。
その施設で快復を待ち、アイは子供達が待っている家族の元へ帰る事になる。
子供達と一緒に暮らす事はアイの夢でもあったはずだ。
アイの家族は人身売買で得た金とアイが日本から送っていた金のおかげでタイでもそこそこの暮らしをしていた。
しかし、それは悲しい現実を生き抜いて稼ぎ出した女達の生き様の結晶だった。
アイはまた日本に来たいと思っているだろうか?
しかし、もう二度とアイ≠ネどと日本のヤクザにつけられた名前で呼ばれる事はあって欲しくない。
アイのマンションは全焼は免れたものの中からいくつもの死体が発見され、結局取り壊される事になった。
俺の所にも警察が事情徴収にやってきた。
俺は山田に全ての罪を被せ、警察に山田が血塗られた胎児≠ナ「黄金町」で起きた連続殺人の犯人だと証言した。
しかし、この事件が明るみになる事はなかった。
恐らく警察の上層部と政府のお偉いさん方が事件をもみ消したのだろう。
行政側にしても自分達が使っていた山田の存在が世間で明るみになるのを恐れた結果だと思う。
事件はうやむやになり迷宮入りし、やがて忘れられていった。
俺はこの話をもう一人のイラから教えられた。
もう一人のイラは突然、病院の屋上に現れて俺にこの話を聞かせてくれた。
もう一人のイラは俺に助けられた事を感謝していた。
たぶん、もう一人のイラが政府にうまく報告してくれたおかげで事件がまるく収まったんだと実感した。
もう一人のイラは政府の仕事から足を洗ったと言う。
しかし、その為に政府から追われて逃亡中だった。
もう一人のイラは俺に「もう二度と会う事はない」と言い残し去ろうとした。
俺は最後にもう一人のイラに本名を聞いた。
もう一人のイラはやはり俺を動揺させる為にイラ≠ニいう名を語ったと言う。
政府の作戦の中で本来「黄金町」の住人ではないはずの俺は異端児としてマークされていたらしかった。
もう一人のイラは俺の耳元で本名を告げて去っていった。
事件は解決したが、「黄金町」は完全に潰されてしまった。
「黄金町」の入り口の路地には警察官が立ち、店の再会を阻止し、訪れた客に睨みを聞かせていた。
あれだけ輝かしかったピンクの明かりは消え、ガラリとした町はまるでゴーストタウンのように静まり返っていた。
やがて町の周辺は整備され、「黄金町」は何の変哲も無いどこいでもあるような住宅街になった。
俺が入院している間イラは何度も俺の病室に見舞いに来てくれた。
その日、病室を訪れたイラは長かった髪をバッサリと切り、坊主頭で俺の前に現れた。
「髪切ったばかりから本当は会うのも恥ずかしいんだけど……」
イラの言葉が妙にかわいかった。
軽傷で済んだイラは信じられないほどやさしく、毎日のように病院に訪れ、話し相手になってくれたり、果物を食べさせてくれたりした。
その時にイラとは他愛も無い話をたくさんしたが、これから先の話は一切しなかった。
ある時、俺は深夜の病室でイラとSEXした。
イラが記憶を取り戻して以来初めてだった。
俺とイラはお互いに深く愛し合った。
俺にとってこの時の時間は本当に濃密で充実したすばらしい時だった。
しかし、最高のSEXをしている最中も俺の心は妙に醒めていた。
イラの部屋で結ばれた時のことは今でも鮮明に思い出すことができるのに、今やっているSEXはまるで抜け殻のように透き通って見えた。
俺はイラとのこの時間が永遠に続けばいいと思っていたが、心の片隅でそれは無理だという事にも気づいていた。
俺の頭の中で、あの地蔵の言葉がリピートされていた。
「…彼女が君から離れて遠くに行ってしまっても……」
そしてそれは突然やってきた。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
ついにここまできました。ここまで読んでくれた皆さん、本当にありがとうございました。
皆さんの温かい声援に励まされここまで来ることができました。
「麻薬のような女」も次回で最終回を迎えます。最後までお付き合い下さい。
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年03月19日(日) 01時51分22秒,20060319015122,20060322015122,7krIAzC9qvJhU,麻薬のような女 VOL 20,D・二プル,,, 29
俺がマンションの前に辿り着いた時には、「黄金町」の住民達も火事に気づいていて辺りは人で覆い尽くしていた。
俺はその場に群がっている群集を掻き分け前に進んでいった。
その中に藤巻さんの姿があった。
「…春道、大変だぞ。誰かがマンションに火を……」
「…通して下さい。まだ、中に人がいるんだ」
「…何だって。まさかイラやアイか?」
「…とにかく俺はもう一度部屋を確認してきます」
「バカ、やめとけ。もう手遅れだ。それにもうすぐ消防車が来る。それまで待ってろ」
藤巻さんは俺を止めようとした。
「ふざけんな。そんなの待ってられるか。俺の邪魔をするな」
目の前にはすでに炎の熱気によって凄まじく熱い空気が渦巻いていた。
俺は止めようとする藤巻を振り払い一度後ろに下がると、冬の大岡川に飛び込んだ。
「黄金町」を流れる大岡川は潮の味がした。
俺はすぐに岸から上がると、俺に視線を集める群衆を掻き分けマンションの中に飛び込んでいった。
マンションの中はすでに炎と煙に支配されていた。
俺は一階の管理人室に飛び込んだ。
管理人室のドアは開いていて無人だったが、各部屋の鍵はなんなく見つける事ができた。
俺は鍵を持って急いで階段を駆け上がって行った。
川の水をかぶっているとはいえ煙は俺に容赦なく襲い掛かり、一酸化炭素中毒の旅へご招待してくれている。
命綱の川の水も少しずつ蒸発していて刻一刻と命のタイムリミットを刻んでいく。
それは俺一人の命の問題ではなかった。
イラ、アイ、そしてもう一人のイラの命のタイムリミットでもある。
俺はひたすら階段を駆け上がった。
山田の言葉を鵜呑みにする事はできないが、「三人が実はここにいない」などという甘い期待は捨てた。
問題は「まず誰から助け出すか?」という事だ。
俺の頭の中にはイラの姿が過ぎった。
俺が好きな女はイラだ。
イラを守る事が最大の目的だ。
イラ無しの人生なんてこの先考えられなかった。
しかし、俺はどうしても205号室≠素通り出来なかった。
ドアノブを触ると焼けるように熱くなっていた。
間違いなくこの部屋には火が点いている。
という事はやはりここにアイがいるという事だ。
しかし、ドアは当たり前のように鍵が掛かっていた。
俺は205号室の鍵を開け中に入って行った。
中は想像以上に凄まじい熱気に包まれていた。
大量の煙で視界もさえぎられていた。
それでも俺は躊躇せず部屋の奥に進んで行った。
「アイちゃんー、どこだー。居るなら返事してくれ」
アイの姿はどこにも無かった。
頭の中で焦りが生じた。
その時、クローゼットの中からもう一人のイラを発見した。
もう一人のイラは気を失っているだけで息はあった。
俺はもう一人のイラを抱きかかえ玄関に向かった。
しかし、予想以上に広がった炎は俺をあざ笑うかのように行く手をさえぎってきた。
それが山田の姿と重なり俺は怒りでいっぱいになった。
その怒りが逆に生きる糧となって俺に力を与えた。
俺は部屋の奥に進んで行った。
窓ガラスを足で蹴破ると新鮮な空気を感じた。
窓の外から下を見ると野次馬が騒いでいるのが見えた。
俺はもう一人のイラを抱きかかえたまま野次馬の群れの中にダイブした。
まさに火事場の馬鹿力だった。
俺の頭の中には恐怖は無く、本能で飛び降りていた。
野次馬の中に落ちた俺ともう一人のイラは一命を取り留めた。
しかし、この時俺は足を痛めてしまった。
それでも俺は休むわけにはいかなかった。
まだイラもアイも残っている。
俺は止めようとする野次馬の群れを薙ぎ払い、炎と煙が支配する地獄の中に再び飛び込んで行った。
30
俺は痛めた足を引きずりながらひたすら階段を駆け上がって行った。
さっきよりも熱気と煙は凄まじさを増していた。
俺は真っ直ぐに502号室を目指していた。
山田は電話で「イラを貰った」と言っていたがイラは502号室にいるような気がした。
山田は俺を焦らせ、各階を捜せせて結局イラを502号室で殺す演出をしようとしているように思えた。
そして山田もそこにいるような気がした。
山田はあの部屋を最後の決戦の舞台≠ノ選ぶ予感がしていた。
全てが俺の予測に過ぎなかったが、俺は確信を持っていた。
それがどうやら香澄の記憶≠フ影響である事もはっきりと分かっていた。
俺の頭の中で急速に香澄の記憶≠ェ全て解き明かされる予兆があった。
それが俺にどのような影響を与えるのか。
またこの地獄のような山田との戦いに有利になるのかは分からなかったが、何かが起こるような予感がしていた。
しかし、今のこの現状が最悪の状態である事には変わりなかった。
イラとアイの安否は未だに分からず、俺は足を痛めている。
もし、二人を見つけ出す事が出来たとしてもここから脱出する事が果たして出来るだろうか?
そして、俺の予想通り山田もこのマンションのどこかにいるとしたら、俺は山田と戦って勝つ事が出来るのだろうか?
そんな事を考えている間に俺は502号室の前まで来ていた。
不思議な事にアイの部屋の時とは違い、ドアノブは熱くなく、鍵も掛かっていなかった。
俺は迷わず中に飛び込んだ。
思った通り中に火はついていなかった。
そしてイラは俺が出て行った時の状態で眠っていた。
俺は慌ててイラに駆け寄った。
体を調べてみたが外傷は何処にも無く、ただ眠っているだけだった。
俺が一安心したその瞬間、突然山田が背後から現れた。
山田は黒い手袋をはめた拳で俺のわき腹と顔面を殴りつけた。
「待ってたぜ春日春道…意外に早かったな」
「…山田、テメエ………」
俺は怒りで痛みを忘れ山田に殴りかかった。
しかし、山田は俺のパンチをサラリとかわし、カウンターで俺の顎を強打した。
俺は口から血を流し、床に転がった。
「まあ、慌てるなよ。少しおしゃべりしようか。お前も俺に聞きたい事があるんだろ?」
「…そんな悠長な事言ってる場合じゃないだろう。早く脱出しないと火が廻っちまう」
「心配するな。ここまで火が廻ってくるまでまだ時間がある。少しぐらい話していても大丈夫だ」
「……」
「それにお前はまだ自分の立場が理解出来ていないようだな。お前をここから出すつもりは無い。お前はここで死ぬんだ。あの女と一緒にな。俺を満足させるまでがお前らに残された命の猶予だ」
「…ふざけんじゃねえぞ」
俺は再び山田に殴りかかったが、俺の攻撃は山田には一発も当たらなかった。
逆に山田の攻撃はおもしろいように俺にヒットし、的確に俺を痛めつけていった。
山田は明らかに急所を外し、俺を弄ぶように攻撃していた。
しかし、その攻撃は正確で素人離れしたプロのものだった。
以前俺が対山本用に特訓した素人喧嘩術では到底太刀打ち出来なかった。
遂に俺は力尽きて立ち上がれなくなった。
「どうしたもう終わりか?お前の力はここまでか?」
山田は俺を見下ろしながらあざ笑うように言った。
「………」
はらわたが煮えくり返るほど悔しかったが、俺は立つ事も言い返す事も出来なかった。
「まったくなさけない姿だな。お前のそんな姿を見ていると胸が高鳴るよ…」
「…どうして俺に…。俺に恨みでもあるのか?………」
「…ああ、初めてお前を見た時から気に入らなかった。お前は昔の俺にそっくりだった。ただお前が俺と違うのは女に愛された事だ。お前は諦めずに女の愛を勝ち取った…。俺には出来なかった事だ。だから俺はお前が憎かった……」
「…女ってアイの事か?それならお前は勝ち取っただろう。俺にはアイと結婚する覚悟は無かった。それをお前はやってのけたんじゃないか…」
「…アイの事じゃない…。過去に俺を捨てた女に俺は復讐したかった。俺の人生を狂わせた女 香澄に…」
その瞬間、俺は激しい頭痛に襲われた。
そのあまりの痛さに俺は床をのた打ち回りもがき苦しんだ。
「…どうした?……どうやらお前の体に限界がきたようだな。お前はもう死ぬんだ」
俺の体の異変に山田が唖然としている中で、俺の頭の中で香澄の記憶≠ェ全て蘇った。
そして俺はすべてを理解した。
あれほど俺を苦しめていた頭痛は自然とどこかに消え去っていた。
俺は山田の前にスっと立ち上がった。
「…よく立ち上がったな。最後に言い残す事があれば聞いてやるぞ。それがお前の遺言になる」
「やっと謎が解けたよ。なぜ香澄の記憶≠ェ俺の中に入ってきたのか。香澄の真の目的、そしてお前のような怪物が生まれた訳も全てな…」
「………何だと?何を言っている。お前、香澄の事を知っているのか?」
「…ああ、知ってるぜ。香澄本人に聞いたんだからな」
「…香澄本人だと?何言ってるんだ?ハッタリはやめろ。大方この町の誰かから聞いた話だろ?適当なこと言ってんじゃねえ…香澄は俺が殺したんだ…」
「…ああ、知ってるぜ。嘘だと思うんなら全部話してやるよ。過去の忌まわしい真実をな………」
31
三十年前の「黄金町」でまだ十代だった山田は香澄という娼婦と出会った。
この頃の「黄金町」は今よりも活気があり娼婦の数も多く、正に全盛期だった。
山田にとって香澄との出会いは運命的なものだった。
しかし、香澄にとっては山田はただの客の一人に過ぎなかった。
山田はたちまち香澄に入れ込み毎日のように黄金町に通うようになった。
しかも香澄は当時人気の娼婦で、なかなか順番が回ってこなかった。
それでも山田はめげずに香澄の店に通っていた。
しかし、まだ学生だった山田の金はすぐに底をつき、山田は次第に悪事に手を染めるようになっていった。
盗みやカツアゲで得た金で山田は香澄との情事を交わした。
そんな山田を香澄は居たたまれなく思い、「自分の稼ぎで遊べるようになるまでもうここには来ないで」と山田に忠告した。
それでも山田の香澄に対する想いは強まるばかりで、時には強盗や恐喝までして金を稼ぐようになっていった。
そして山田は香澄の店を訪れる度に求婚を申し込んだ。
初めは軽い気持ちで断っていた香澄も、山田のあまりのしつこさに遂には拒絶するようになった。
ちょうどその頃、香澄は自分の妊娠に気づき、仕事を休んでいた。
香澄に会えない毎日が続き、香澄に完全に拒絶されたと思った山田は遂に凶行に及んだ。
山田は自分の鬱憤を晴らす為に「黄金町」に火をつけ始めた。
それはやがて連続放火事件と発展し、多くの死傷者を出した。
そして山田は香澄の家を突き止めた。
香澄に子供が居た事を知った山田は激怒し、香澄の家に火を点けた。
山田はすぐに逃げ、香澄の子供はその火事で死んだ。
子供を失った悲しみから香澄は娼婦を辞め「黄金町」から去って行った。
それでも山田は香澄を忘れる事が出来なかった。
山田は再び香澄の家を突き止め、求婚した。
しかし、すでに香澄は他の男と結婚していて女の子も出来ていた。
怒り狂った山田は香澄と旦那を殺し逃亡した。
残された香澄の娘は施設に送られ育てられた。
32
「どうだ?これが真実だろう?」
「…お前、何でそこまで知ってるんだ?その事は誰にも気づかれていないはずだ。死体だって未だにに見つかっていないはずだ」
「ああ、そうだ。香澄の遺体は未だに海の底に沈められている。だが、香澄の記憶は俺の頭の中で行き続けているのさ」
「…どうやら貴様は完全に息の根を止めなければいけない男だったようだな…貴様、その秘密を誰かに話していないだろうな…」
「…遅かったな。もう何人かに話したよ」
その瞬間、山田の眼の色が変った。
「…ウォォォォォォォー」
山田は逆上し、獣のように叫びながら俺の上に覆い被さり、首を絞めてきた。
「殺す。殺す。殺す。殺す。殺す………みんな殺してやる。お前もその女も…モナや他の女達のように…」
「……やっぱりお前が、モナや二カウを…血塗られた胎児≠フ正体はお前だったのか…」
「…二カウは俺じゃない。まあ、今更そんな事関係ない。お前は今、死ぬんだ…」
その時、鈍い音がして俺の首を絞めていた山田が頭から血を流して床にのた打ち回った。
俺が頭を上げるとそこにはイスを両手で振り上げた藤巻さんが立っていた。
「…藤巻さん?どうして………」
「…春道、全部聞かせてもらったよ。この男はどうしても許す事はできない。お前が言ったこいつに殺された香澄の夫は俺の親友だったんだ…」
「…そうだったんですか」
藤巻さんは床に転がっている山田を見下ろして言った。
「ずいぶん捜したんだ。だが、犯人は見つからなかった。まさかこんな形で犯人が見つかるとはな…」
藤巻さんは山田の腹を思いっきり蹴りつけた。
山田は口から血を流しもがき苦しんでいる。
「お前は俺の手で殺してやるよ。心配するな。どうせこの老いぼれも長くはもたん。すぐそっちに逝くよ。だから先に地獄で待ってろ…」
藤巻さんはイスを山田の頭上で振り上げた。
藤巻さんは今まで見せたことのないほど恐ろしい眼で山田を睨みつけた。
恐らく藤巻さんは山田を殺すだろう。
しかし、俺は藤巻さんを止める気はまったく無かった。
山田はそれだけの罪を犯してきたのだ。
そしてそれは法で裁いても解決するような事ではないように思えた。
世間では例え自分の大切なものを奪われても法によって解決する事が正しいとされている。
しかし、俺は必ずしもそれが正しいとは思わない。
自然界において、自分を殺そうとする者や自分の大切なものを奪おうとする敵を殺すのはいたって当たり前の事だ。
それにここは裏社会の町「黄金町」だ。
法よりも人の気持ちが優先する事が許される場所だ。
俺は目の前の光景を黙って見届けようとしていた。
しかし、山田は俺が思ってもいなかった予想外の行動に出たのだった。
山田は床に転がったままの状態で転がりながら移動し、寝ているイラを人質に取ったのだった。
山田は懐からナイフを取り出し、イラの首もとに近づけた。
イラはされるがままに泣き叫び、無防備なイラの泣き声が部屋中に響き渡った。
「動くとこの女も死ぬぜ…」
「山田、てめえ…」
「さあ、イスを下ろせ。女を刺すぞ。もう、火はそこまで迫ってきているんだ。死のカウントダウンは始まっているんだぜ…」
確かに熱気は次第に強さを増して来ていた。
藤巻さんは仕方なくイスを下ろした。
その瞬間、山田は藤巻さんの心臓にナイフを突き刺した。
藤巻さんは血を噴出し、音を立てて床に倒れた。
山田は一瞬で藤巻さんの命を絶った。
「藤巻さん…」
「動くんじゃねえ…。女を殺すぞ。次はお前の番だ…」
「…殺りなよ。だが、イラだけは殺させないぞ。例え俺が死んでもお前からイラを守って見せる…」
「…それだよ。その眼だ。俺がムカツクのは…。自分を犠牲にしてでも女を守るだと?そんな事出来るはずがない。ただの偽善だろう?自己満足だろう。お前のそういう態度が一番ムカツクンだよ…」
「…本当に可愛そうな奴だな。俺を殺したいんならイラを離して俺を刺せよ。簡単な事だろう?」
「…そんな手に乗ると思うか?俺を挑発して女から遠ざけようとしても無駄だ。そんなミエミエの手に引っかかると思っているのか…」
「…本当は俺がうらやましいだけだったんだろ?」
「何だと…」
「お前も本当は分かってるんだろ?自分の間違いに…。お前がもし、少しでも他人の事を考えていれば結果は変っていたはずだ。香澄は死なず、お前も政府の仕事なんてしてなかったはずだ。いい加減に無いものねだりはやめろ。いくら悔やんでも過ぎ去った過去は変えられないんだよ。いつまでも過去に縛られてないで未来を考えな…」
「…分かったような事いってんじゃねえ。お前に言われなくても分かってたんだよ。わざわざ言葉に出さなくても、心の中では分かってたんだよ。だけど、現実はどうにもならないんだよ…」
山田はナイフをイラの首に振り下ろした。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
ついに明かされた香澄の過去。山田との因縁。果たしてこの地獄の先には何が待ち受けているのか?
最後までノンストップでお楽しみ下さい。
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年03月16日(木) 20時50分51秒,20060316205051,20060319205051,7CFqrS3VZwb4.,モラトリアムを脱せよ,カナリア,,,俺には確固とした根拠のない自信がある。それ故、躊躇ったり屈したりしない。
「先祖代々松枝から繋がれた生業の鎖から開放されたとき、我々は新しい眼孔を持つことが出来る。それは全てを捨て去りし者だけに与えられる貧しさ(特権)である。」
一茶は文芸夫人の出だしにこう大きく掲げた。
バーのマスターの千代子婦人は、俺が酒に溺れて、女遊びに耽っていた頃、自分の本当に書きたい事を、俺の中から蘇らせてくれた女だ。
俺は、大富豪の家に長男として生まれ、決められた嫁を取り、石工を父親から受け継がれる運命にあった。
俺は日本の黙っていても通じる風習というモノを嫌った。日本は集団主義の国だ。
世間様の顔色を伺い、一喜一憂する狭い国だ。
俺はいつしか、このおかしな国を飛び出したくなった。それは物心ついたときからだった。
僕は物心付いたときから、束縛というものを嫌い、日本特有の文化を嫌った。
嫌、幼い自分には日本という文化を、まったく理解出来なかったのである。
しかし、必死にこの国を、この町を好きになろうと努力した。しかし、風当たりの悪い奴を皆でからかって、石を投げたり、周囲と違う性質の人間をあしらったりするのはどうしても理解出来なかった。
恋愛に対してもそうなのだが、好きと言ったら駄目なのである。好きと思う彼女に対して本心を隠し愛想を振りまく、高等な芸は僕には出来なかった。
ストレスを内に溜め込むことを美学としているのは、不健康であるが、多くの日本人がそうしているように、僕も不安を内に溜め込んでしまった。
そのとき、言い知れぬ恐怖が、幼い自分を襲った。まるで町は暗闇で、俺の目からすればこれらの全ての町は、干乾びた廃墟に等しい虚しさだった。
今思えばそれは精神の病であり、人がいやに醜く見えることを、俺は暗闇だと思った。
複雑で歪曲していて、こんがらがっていて、あしらいたくなるような嫌な煙ったさ、それを一言で表すのであれば鬱という字の通りであり、これは、僕に執拗に付きまとった。
どんな美しい花も、松の木も神社の境内も、俺は怖く虚しかった。そんな恐怖に打ちひしがれて、食卓のときも机を囲い、食べているときも、部屋で書物に耽っているときも、寝ているときも、何処もかしこも、全てが暗い鬱蒼たる暗闇に包まれた恐怖だった。
俺の表向きは、嫌、本性はひょうきんで明るく、周囲を笑わせる能天気でお調子者の坊主だった。それは今も変わらない。
しかし、この頃だけは、違った。どこもかしこも、見るもの、感じるもの、全てに拒否反応を示していたのだ。
そんなときだった。ベレー帽を被った西洋の服を着た汚い髭を生やした変なおっさんが俺の目の前に現れた。
「迷える子羊よ 何かお困りの様子だが」
おっさんは言うと、俺は答えた。
「おっさんよ。世の中はどうして暗闇(エゴイズム)ばかりなのだ。おいらは起きているときも寝ているときも心を休める暇がない」
おっさんは閃いたように
「君もそう思うかい。それは、禁断の果実を手に入れてしまったからだよ。」
「禁断の果実って、知っているよ、アダムとイブの話にあったものでしょ。」
「そうだよ。君はそれを何だと思う。」
「自由じゃないかな。」
「驚いた!!。君は聡明な目をしていて、頭も冴えているね。ひょっとすると君はかの芥川を越えるような文学青年になるかもしれない。」
「お世辞はいいよ、おっさん。しかし、おいらはおっさんと居ると何故か、心が和むんだ。おっさんはルンペンだろ。憧れるのさ。そういう生き方。俺は別に差別しているわけではないんだ。ごめんよ。傷ついたら。」
「良いのさ。私は自由気ままに何処吹く風の如く、旅をしている。君もついてこないかね。」
「あいにくおいらの心は暗闇だ。何処を彷徨っても地獄の廃墟しか見えん。」
「そうか。少年。いや、私もそうだったのだよ。酒ばかり飲み、葉巻を吸い、死んだ目で世の中を見ていた。しかし私は一冊の本に出会ったのだ。それから私はある神秘体験をしてからこの世はもっとも素晴らしいものに思えてきた。私は夢というものは掴み所のない遠い存在のように思っていたからね。そればかりではない。運命さえも、自分の手で変えられないと思っていたのだよ。でもそれは違うということをこの本で気づかされるだろう。文学青年よ。希望を持て」
そう言って変なおっさんは俺にお一冊の本を貸してくれた。
おっさんは、「我思うがままに行く。故に迷いなし。」
と言って去って行った。
彼から貰った本は、クリスチャンの本でも偉いお坊さんが書いた本でもない。
どの宗派にも属さない歪な本である。
しかし俺は一文を見て釘付けに成った。
2
俺はその本を読み始めた。
(神は私が「私」であることを知らないとき、すでにその中にいて、神も仏も無かった。)(貴方が、神そのものだったからである。しかし、貴方が母体から出たとき、初めて「私」を自覚した。)
(「私」が生まれて、その中で神は生まれたのである。「私」が「私」でないとき、「私の中の神」はまだ生まれていなかったのである。)」
俺はその一文を見ただけで、それまで暗闇と思っていた町が、自分自身と渾然一体と化した。
(自分の内から湧き出てくるもの、例えば、嫉妬、妬み、怒り、恨み、邪、盗み、被害心、謀、殺意、その他の煩悩、これら全ての内、どれか一つでも自分の内に捨てきれないものは、この事実を心の底から受け入れることは出来ない。)
(本当に貧しい心を持つということは、それら全てに対して、無垢であり、しがらみがなく純潔で清楚で貧しくあらねばならない。)
(しかし、それらを自ら純潔で清楚であると認識してはいけない。神の前にいかなる謀をしても無駄であり、誓い言をしても叶うという訳ではない。懺悔をして悔い改められると思うのはもっての他である。)
(大切なことは、神様が知っている。それはこの世の美しいと思えること全てに置いても、尚、神の前では、新たな真実があり、人間では到底認識出来ないような不幸の中の真実までお見通しなのである。)
(自分自身を放下しなさい。囚われているのは、外側にある事物ではなく、貴方自身の内面なのだから)
(この文章のことが理解出来ないと思って悩むことはない。其のうち、自然とはいってゆくものであるから。)
(だから、私は、この文章を頭で考える人ではなく、自然に素直に身体で感じてくれる人に読んで貰いたい。)
(この本は、どの宗派にも属さない、かといって巷に溢れている信興宗教の勧誘の本でもなく一切の権力や威厳を持たないただの紙切れである。)
幼心の俺には、崇高なるものとは、何処か遠くになるものなのではないかと勘違いをして一文無しになろうと決意してしまった。
十六で家を飛び出し、以後二度と帰ってこなかった。
3
そのことを話す前に一人の女を紹介しよう。
その女は、いつも清清しい一輪の勿忘草のように、穢れがなく、嫉妬というものを知らなかった。
婿になった俺を、最初は毛嫌いし、おっかなびっくり華族の生活を送っていたが、私が町を一望できる景色に彼女を連れていったとき、彼女は松の枝にぶら下がっていた。
「初めて君をみたとき、覚えているかい。君は泣きじゃくって僕の目の前で、お嫁に行きたくないって言ったんだよ。そのときはどうなるかって心配したけど、春子はおてんばで元気があることに気が付いて安心したんだ。君だったら大丈夫だって、僕は思った。」
「そんなこともあったっけ。あたしはこの家に嫁ぐとき、お先真っ暗に見えて、白い厚化粧して、自分の顔を見たらびっくりしたわ。未来がないような気持ちになったの。でも、そのとき沢山、お母さんが励ましてくれたし、沢山泣いたらすっきりしたの。葉蔵さんはそういう気持ちになったことない?」
「ああ、俺だってしょっちゅうあるよ。そういうこと。」
「でもね。そのことを母に言ったら、春子らしくないわね。春子はいつも、どんなときも、夢を諦めないで希望に向かって生きていたわ。それが、春子よ。だから春子にはそうでいて欲しいのよって言ってくれたの」
「でもさ、春子ってそういうところあるよ、今でも。能天気なのは俺も春子も一緒だな、ところでさ、学校はどう、窮屈だろ、俺は嫌いだな」
その当時春子は女学校に通っていたので、其の話を持ち出した。
「えっ、どうして、春子は好きよ。」
「どんな子もね。意地悪そうに思える人から、人懐っこいふゆっていう友達まで、もし、この子達が私の目の前から消えてしまったら、その意地悪な女の子ですら、逢いたいと思うなあ。それだけ今の学校が好きよ。楽しいの。」
そのとき、俺は彼女だったら力強く生きてゆける。
どんな不幸でも乗り越える力を持っている少女だと信じたくなった。
俺が東京に上京してから、暫く経ち、春子は学校を卒業して、美容師を目指して東京の俺の自宅に来た。
しかし、当の俺はその家には居なく、酒と女遊びに明け暮れていた。
俺の郵便受けには、カルト教団の勧誘のビラが幾つも入っていた。春子は「何これ」という感覚で、俺の家の門を開けた。
春子の俺に対する微妙な心の揺れ具合を感じ始めたのは、この頃だった。
俺の変わりに俺の友人の又八という操り人形で芝居をやる芸人のはしっくれがいた。彼は能面な顔つきで、食卓の上に座って一人事を言っていた。
春子は初めて俺の自宅に入ったとき、たまたま其処に又八がいたので、春子はびっくり仰天してしまった。
家の門を見ると確かに俺と春子の苗字である「赤城」と書いてある。何だこの人はと言って「貴方はどなた様ですか。」と話しかけると、「ポアをしているから話しかけないで下さい。」と言った。
しばらく光景を見ていると、又八は何か唱え始めた。
そして人形芝居らしきものが始まった。
春子はそれを見て、真新しいものを見る感覚で、とても感動した。
又八が多重人格のように、色々な人を演じるのに、春子はびっくりした。
人形喜劇が終わると、春子は大きな拍手をした。
しかし、又八はまた能面な顔つきに戻ってしまった。
「ポアって何ですか。 何を唱えていたのですか。」
又八はそっけなく春子とは正反対の鉢植えを眺めながら、顎に手を置き、肘を机にのっけながら話した。
「ポアは解脱です。」
「解脱って何ですか。ワクワクします。」
又八は溜息をつきながら、「そんなこともわからないんですか。いいですか。」と言ってと言って倒れてしまった。
春子は目を丸くして、「大丈夫ですか」と揺すった。気が付くと又八は息をしていなかった。
春子は慌てて隣近所に行こうとしたそのとき、又八は起き出した。
「大丈夫ですよ。ポアしただけですから。」
そのとき、玄関から女が入ってきた。
又八を見るたび、「あ、口からでまかせ男だ。あんたまた勧誘してるの」と言った。
又八は顔つきが変わって慌てた調子に「ちっ違うよ。お静ちゃん、稽古をしていたんだ。はーちゃんが、この部屋貸してくれるからって。」と言った。
又八は続けた喋った。
「あそこの宗教にはもう行っていないよ。」
お静は疑心暗鬼に呆れて見ていて序序に視線をづらすと、私と目があった。
「あんた誰」
お静は言った。
「私は、葉蔵さんの妻です。」
お静は目を泳がせて、「はーそういうこという女って貴方だけじゃないわよ」
「本当です。私、名古屋から来たんです。」
お静は絶句して又八と目を合わせた。
どうやら本当に認めたらしい。
「じゃあ、東京は初めてなの」
喧嘩腰に
「はい」
と言った。
お静は申し訳なさそうに
「ごめんね。気づかなかったの」
と言った。
4
春子は俺を探しに、千代子婦人の居る居酒屋を訪ねた。
千代子婦人は薄明かりの証明のバーに居た。
「私は名古屋から来た葉蔵さんの妻です。葉蔵さんが此処にいつも来ていると知ってきました。」
千代子婦人は親しみの笑顔を浮かべて「初めまして」と言って語りだした。
「葉蔵から、貴方の話を聴いているわ。葉蔵はね。9歳のとき、武者小路実朝っていう偉い文学者にあって、小説を書くことを決意したの。その本はね、彼の人生観を変えてしまったのよ。葉蔵はね。貴方のことが羨ましくて仕方がないの。どうしてかわかる。貴方の心がそうなのよ。疑いのない素直な心よ。葉蔵もそうなりたいの。でも彼は自分でもわかっているって言っているのだけれど、意地っ張りなところがあって、なかなか貴方みたいになれないのよ。」
「私も意地っ張りなところあります。」
千代子婦人は微笑みながら、「じゃあ、案外似たもの同士かもねー。でもね。小説家っていう人は、普通の人と違って、抱えている問題が多いのも事実なのよ。その為には多くの事実を知っていなければならないし、彼は、貴方が思う程抱えているものが少なくないわ。多くの疑問を抱えている。また伝えなければならないことを沢山抱えているの。彼は幼くして、それを知ってしまったの。私は彼の作品を読んで、(殆ど少ない短編だけど)他の人にはない彼の視点に気が付いたの。それはまだ時代が辿りついていないし受け入れられない思想なのよ。だから私はその思想を現代でもうまく通じるように編集するのが、私の役目よ。」
春子は言葉が詰まってしまったが、一言言った。
「あの、私が葉蔵さんにしてあげられることは・・・・・・」
「残念だけど、そっとしてあげて・・・・・・」
二人は見つめ逢ったまま膠着してしまった。
「貴方本当に葉蔵さんを好きに成ってしまったのね・・・・・・」
溜息交じりに千代子婦人は言った。
,未完で終わってしまいました。,#800040,./bg_c.gif,218.229.155.209,0
2006年03月16日(木) 20時48分44秒,20060316204844,20060319204844,7CFqrS3VZwb4.,詩集,カナリア,,,輪廻転生
生きることとは何ですか
私の心はリアル(現実、真実)に打ちのめされ
リアルの中を彷徨ってます。
否、私は自我に打ちのめされている
本当の幸せとは
本当の幸せとは何か
真実の信頼が認められることか?
本当の幸せとは何か
家族団らんに食事をすることか?
太宰治の人間失格は
全肯定か、全否定しか批評にならない
本当の幸せとは何か
好きな女とセックスすることか?
本当の幸せとは何か
草の臭いと景色の気配を感じることか?
本当の幸せとは何か
朝は清清しく目覚め、心地良いのか?
本当の幸せとは何か
やることがあるということか?
本当の幸せとは何か
誰かに愛されるということか?
本当の幸せとは何か
絆を深めることか
本当の幸せとは・・・
わからないけど・・・
何かを愛そうとする自分の心なのだ
何かを信じようとする自分の心なのだ
幸せと思えるような自分の行いなのだ
幸運を手に入れるのも自分自身
壊すのも自分自身
報われても、報われなくても
こうでありたいと思うこと
夢を持つこと
希望を持つこと
それが生きる力になる
心の痛みも私が私であることから
人生のレールの上で
人生の目標を見つけることで
自分の進むべき道を必死に掴み取りたいと焦る
そんなとき、なるようになるさと私は思いたくない
でも事実はそうさ
でも、人生は己の手で掴み取るものさ
そんな力強さが欲しい
軋みと弛緩を上手に取る方法
双方がいずれか欠けてはいけない
不安は人を強くする
しかし、不安ばかりが先立っていたら
前には進めない
失敗を恐れず、出来るところから前へと
思っている
ときには心の鎧をつけながら
己とうまく付き合ってゆく方法を
今の僕は見出しそうだ
投げ出したら、其処で終わってしまう
必死に食いついてゆき
最終的に信じるのは他人じゃない
自分自身
人生のあらゆる岐路を歩んできて
つくづくそう思った
他人とのしがらみは一生絶えないが
どんなときも自分を信じるしかない
自分を信じることをやめたとき
人生に敗北すると
私は思う
毒と悦楽の為ではなく
俺の中に蓄積しているむなしさ
この正体は一体何なのだ
信頼を裏切られる恐怖か
己の中の業の深さか
俺はとにかくむなしくて
寂しい・・・
かつて俺はマゾヒストな程自虐的に
自分を責め痛め続けてきた
脳(心)を破壊し快楽をひたすら求め続けてきた
今は煙草とコーヒーで身体を痛めつけて
唯一の恍惚感の為、美しき音楽を聴いて
虚しいのは当たり前だ
虚しさは自ら造った自らへの罰
もっと自分を大切にしてゆきたい
痛んでいるこの星のように
私の心も痛んでいる
もう気付いてもいいんじゃないか
毒と快楽の為ではなく
本当の自分の為に
しがらみを捨てたい
全てが初まるのです。
私の中の幸せは
空中を彷徨い、ただ鏡の動きに照らし合わせるように
旋律とともに、身体を委ねることです。
そのとき、遥かなる山並み、新涼の中に佇む
小さな息吹が
私の心のオアシスを満たすとき
初めて我に囚われず
私が私であることも忘れ
私は心の古巣へ旅立つのです。
深い深い執着の傷跡
それから開放された裸一貫の抜け殻のような自分を
彷徨い
眠りから覚めたとき
また新しい風景が
心を彩り潤してくれるのです。
,,#B500B5,./bg_f.gif,218.229.155.209,0
2006年03月16日(木) 17時17分24秒,20060316171724,20060319171724,7vvnmQbeDr5/U,ウルトラ奇想天外<完結>,スケハチ,,,
「宿代が無いのだが――……無理だろうか」
そう言ってその猫は身体についた雪を払うように大きく毛を震わせた。
真っ白い雪が俺の頬につき、じわりと水へと変化を遂げる。
その冷たさを頬に感じながら俺はそいつを見下ろす。
流れるような虎模様。
ピンと張った細い猫特有の髭。
愛嬌のある大きな耳。
長い尾は僅かに揺れ、
深い緑色のガラス玉の瞳は俺の姿が映っていた。
目の前に起こった状況をそう簡単に理解出来るはずもなく俺は声を発せずにいる。
(……無理とかそういうことじゃなくて……それよか猫がしゃべってることが問題じゃねーの……?)
と、胸の内ではしっかり突っ込みを入れることを忘れない。
(新種……エイリアン……それとも俺の幻聴か……?)
そう。確かにこの猫は今、口を聞いたのだ。
かなり古風な口調ではあったが。
もしこの事実が世界に知れたら新たな発見となることは確かだ。
そして第一発見者の俺には何かしら賞が貰えるのだろうか。
家族……とくにおふくろはご近所にうちの息子自慢を始め、
知人は一人一升酒瓶を持参し俺の部屋で馬鹿騒ぎをし始めるだろう。
ああ、そうだ。インタビューされたらこう言おう。
『猫って意外に日本語上手いんですよ』と。
思考回路は疑問からすでに妄想の域へと達しており、
猫は動かない俺に小さく笑う。
「ふむ、驚かれましたかな?猫如きが口を聞いて」
髭が僅かに動き、目を細める。
俺はそこでようやく我に返り目を何度か瞬きさせる。
冷たい息を大きく吸い込みゆっくりと口を開き、
そして……、
「ぎ、ぎゃあああああぁぁぁぁぁ〜〜〜!?」
出た言葉は二度目となる悲鳴で。
一瞬俺自身が叫んでいることが分からず、
頭の隅で客観的に見ているもう一人の俺が「煩い声」と呆れて呟く。
耳に痺れるような突き刺さる悲鳴に耳を塞ぎたかったが、
それよりも今は胸の内で芽生えた恐怖が強く、本能的に逃げなければと訴えかける。
俺は慌てて立ち上がった。
先程尻餅ついた衝撃で腰を上げると同時に痛みを伴ったが今はそんなことを気にしている場合ではない。
尻の痛みより逃げることが最優先。
猫がどんな顔をしているか見る暇もなく、焦りながらドアノブに手をかける。
閉める直前サンダルが挟まり、動揺と焦りは頂点に達する。
片手でドアノブを強く内側へ引きながら、サンダルをもう片方の手で内側に引っ張る。
まあ普通に外側にドアノブを押せばこんな苦労はなかったと後々冷静に考えれば気付くのだが。
俺は渾身の力でサンダルをひっぱり、ドアから引き抜く。
ビニール製の百円のサンダルは哀れ、変形しドアに挟まったことを証明するかのように黒い線がくっきり形をつけている。
俺はその辺にサンダルを放り出し、両手を使い鍵をかける。
が、手が震えるせいか上手くかからない。
「ちくしょう!」無意識に罵声を飛ばし、金属音を扱う乱暴な音が部屋に響く。
肩で荒い息をして鍵をかけ終わる頃にはどっぷり三十秒以上はかかってしまった。
俺は深呼吸をニ、三度繰り返し改めてドアを見つめる。
怖いほど静まり返ったドアに叩く音は聞こえない。
多分人生一度あるかないかの出来事で、
その大発見を放棄したことに悔いはない。
根性無しと言われてもいい。
俺は新生物との地球外交官ではなく、一般市民なのだ。
勿体無いチャンスを。
そんなことを言われてもいい。
だったらお前が実際体験してみろ、と力強く指を指して言える。
俺は頬に流れる水を手の甲で拭う。
頬に触れる指先の冷たさに肩を小さく揺らす。
時は再び静かに流れ、
俺はストーブの元へ戻り、手をつきながらまるで老人のように腰を下ろした。
まだ僅かに痺れる尻の痛みは明後日まで続きそうだ。
指を擦りながら俺は長年使っている毛布に手を伸ばし引き寄せる。
まるで何事もなかったように。
夢でも見たかのように。
包まりながら目を瞑る。
数分の出来事であったが心なしか身体が重く感じる。
どっと出た疲れはいつしか眠気を誘う。
今はこの疲れが心地よく、自然に口元が緩む。
今日は変な日だった。
大雪降って……
猫が来て……
オマケに言葉しゃべれて……
「失敬な。主人よ。五ヶ国語ぐらいは我輩軽いぞ?」
すぐ横からは聞き覚えある古風な口調。
うっすら目を開ければ猫が器用に小さな手を使いストーブの温度調節をしている処だった。
ああ……神様。
これは俺への試練ですか?
「どうした?主人。何故泣く??」
猫の問いに返す言葉なく脱力した俺はがっくりと大きく肩を落とし沈没した。
,ども、スケハチです。
試験が終わりやっと完結です。
かなり自己満足の小説となりましたが最後まで読んで下さった方々、有り難う御座いました。
,#5400A8,./bg_g.gif,220.60.200.63,0
2006年03月15日(水) 17時44分09秒,20060315174409,20060318174409,6z5zLxSCcjcCU,最強★警察,ぺり★かん,pagu_712_taati@t.vodafone.ne.jp,, 尾沢 奈美(おざわ なみ)16歳
私は人生最大の賭けをする・・・。
それは`結婚´という名のおとり捜査。
私は警察の 尾沢誠(おざわまこと 警察部長官)の娘だったからだろうか、
昔から警察の中に混じって事件を解決する事が多かった。
今まで、私が捕まえた犯人は、普通の警官よりも何倍も多く、ざっと100人くらいだろう。
高校生にしては凄い事らしいが普通に考えて、
犯人がしょぼいのか、警官がしょぼいかのどちらか・・・。
学校では特に活躍なんていてないもん!頭は悪いし・・・。
ってことはやっぱり私が凄いんじゃない!ってこと。
話に戻るけど、この賭けというのは・・・。
××××年9月××日
殺しが起こった。。。
犯人は大体予想が付いたのだが、まだ決まっていない。
そしていろいろ考えをねって【結婚おとり捜査】をすることにした。
16歳の私は、もう結婚することのできる歳だったので
しかたなく、その犯人らしい人物、小倉 勇造(おぐら ゆうぞう)24歳とおとり結婚をすることにした。
何故結婚をすると相手が犯人かがわかるというと、
夫となった人物の見えないところ・・・パソコンの中身や携帯の中などをさぐることができるから。私はそういった仕事のほうが得意だったから私が結婚することになった。
彼もすぐ私のことを気に入ってくれて結婚をしてくれた。
そして・・・
結婚をしていろいろな事をさぐった。
いろいろな情報が見えてきた。
たとえば彼は あの日殺された、中井徹子(なかい てつこ)25歳 が好きだったとか・・・。
でも好きな人に恨みが出来て殺そうとする人は何人もいる。
だからそれで・・・小倉は、犯人にまた一歩ちかずいた。
何日もたったある日・・・。
警察に電話があった。彼らしき人の声だった・・・。
彼が犯人だとしたら私が警察だという事を知ってたから殺しはしなっかたのだろう。 だけど・・・
「明日○川で妻を殺る。」ガチャ
《ピーーーーピピピピ・・・》
警察のみんなは顔が一瞬にして青ざめていった。
私が殺されるのだろうか。。。。。
まぁ死ぬのは怖くない。だけど犯人を捕まえられない事はすごく嫌だ・・・。
だから明日私は○川にいく。銃をもち犯人を・・・
捕まえる。 殺されかけたら、その前に殺るか・・・
どっちにしろ、死んだとしても犯人は私が捕まえる!!!
まだ小倉が犯人かなんてわからないけど・・・
家に帰ると小倉が言った・・・
「なぁ、明日○川まで散歩に行かないか?」
一瞬でコイツは犯人だと思った。
だから、「うん♪」
と、相手にさとられないように言った。
アイツはまだ今日私が警察本部に行ったことをしらなっかったのだ。
よし!!!コッチ(警察)の勝ちだ!!!
思った。
そして○川・・・。
「あー!気持ちいい!!!」
「うん」
私は、いつ、アイツが殺ろうとするのかをじっくり待った。
周りの観光客もほぼ全員が警察だった。
そして
「なぁ、奈美。」
アイツが動いた・・・。
「ん?」
「一緒に死んでくれなぇか・・・?」
「・・・いやだ!」
「なんで!!!」
「私はあんたみたいな奴、最初から嫌いだったんだよ!!!
だから・・・そういう風に逃げる野郎は、私が逮捕する。」
「・・・!!!っち。じゃぁその前に殺ってやるよ!!!」
「どうかしら?」
「え・・・」
周りの警官がすかさずこちらに銃を向けた。
「ちっ・・・。仕組んでたのか・・・。夫を信じずに。」
「信じる?馬鹿なこと言わないで!結婚の時からこの計画ははじまっていたのよ!!!」
「え・・・・・?」
「あんた、中井さんが好きで、何らかの理由で腹がたって、殺したんでしょ?」
「・・・なんだよソレで俺なんかによってきたのか・・・。
期待した俺がばかだった なっ!!!」
パンッ!!!
あたり一面が赤く染まった・・・。
撃たれたのは・・・え・・・自殺?
くそ・・・。
ころしたくなかった。。。捕まえて、また人生を一からスタートさせたかった。
まだ私の力じゃ無理だった・・・。
犯人を追い詰めすぎた・・・。
でも次は・・・。次こんなことがあったらそうはさせない。
ただで死なせはしないよ。。。待っとけ犯人・・・。
私はもっと強い警察になるからな。。。
この事件が解決して私はまた新聞に大きく載せられた。。。
《高校生警察大活躍!!!》
それで良い訳がないのに・・・
もっと頑張らなきゃ。
世界中の犯人たちを私が捕まえてやる!!!
,こんにちは!!!
今回もつづくかもしれません。
でも、あんまり自信がないんですけど・・・
どうでしたか?感想ください!!!
タイトルで最強★警察とありますが
あれは サイキョウ★デカ
と、読んでくださいね!!!
wでわw
12才の私がよくこんな内容を書けたものだ・・・(笑,#B500B5,./bg_f.gif,218.225.136.1,0
2006年03月15日(水) 01時33分20秒,20060315013320,20060318013320,6qPiTmyMgtxoA,麻薬のような女 VOL 19,D・二プル,,, 26
もう一人のイラは俺を隣の店に連れて行った。
ここは以前もう一人のイラが俺を誘惑してきた場所だった。
またそういう展開になるのかと一瞬思ったが、もう一人のイラはそんな雰囲気は出さず真剣に話し始めた。
「私の正体は分かってるんでしょ?」
「…ああ、山田の仲間だろ。約束通り全部話してくれ」
「いいわ。その前に一つだけ教えて。あなたはなぜこの町にいるの?」
「…どういう意味だ?」
「あなたはこの町で生まれ育ったわけではないでしょ?なのになぜこの町に住んでるの?ただ女を買いに来た客だったら自分の家に帰るでしょ。常連客だって家に帰るわ。でもあなたはこの町に住みついた。今ではりっぱな黄金町の住人≠セわ。あなたがここにいる理由が知りたいの」
「…俺はここに来るまで死んでるのと同じだったんだ。知らない間に親に飼いならされていた。でも、心のどこかで矛盾を感じて生きてきたんだ。あるきっかけでこの町に来て俺は生まれ変わった。この町の人達に出会った事で俺は多くの事を学ぶ事ができた。だから、俺はこの町で生まれ育ったようなものだ」
「……」
もう一人のイラは黙って俺の話を聞いていた。
「そして俺はこの町で心から愛せる女と出会った。その女の存在理由を守る為に俺はこの町にいるんだ」
「あの娘の事ね。あの子の何が違うの?見た目もそんなにかわいくないし、スタイルだっていいとは言えないわ。色々面倒くさそうだし、あなたの趣味がイマイチ分からないの」
「見た目じゃあいつの良さはわからないさ…」
「どういう事?」
「確かにアイツはやっかいな女だよ。あいつにハマッた男は間違いなく不幸になると思うよ。男を不幸にする為に生まれてきたような女さ…」
「だったら何で…」
「違うんだよ。イラは他の女とは。今はほとんど眠ってる状態だけど、記憶を失う前のイラはマジでヤバかった。何もかもが純粋すぎるんだ。自分の欲望に正直なのさ。だから他人にもやさしくなれるんだ。その本当のやさしさを知っちまった。一度、イラという女を知ったらもう他の女じゃ満足できないんだ。分かるか?性欲を超えたさらに心の奥深くの欲望を揺さぶられる感覚が。真のエクスタシーを与えてくれる麻薬のような女≠ウ」
「…そう。分かったわ」
そう言うともう一人のイラは俺にそっとキスした。
「…!!!」
「本当に他の女じゃダメなの?私で試してみない?」
俺の頭の中が急に濃い霧に包まれたように真っ白になった。
「…今のは本気で入ったわ。あなた、本物のバカね…」
もう一人のイラの言葉が耳に伝わるのと同時に、俺は口の中の異物に気づいた。
そして次の瞬間、俺は意識を失った。
「ごめんなさい。今のを聞いてあなた達を死なせる訳にはいかなくなったわ」
もう一人のイラは倒れている俺を残して店から出て行った。
27
もう一人のイラは店の外から鍵を掛けた。
そしてアイのマンションに入って行った。
階段をゆっくりと上がって行き、アイの部屋の前で立ち止まった。
耳に付けていた小型イヤホンをOFFにした。
中の様子を伺うように軽く深呼吸した。
もう一人のイラの目つきが変った。
次の瞬間、もう一人のイラは懐から取り出した針金のような金属の棒で一瞬にしてドアの鍵を開けた。
もう一人のイラはゆっくりと部屋の奥へ進んでいった。
部屋の中ではアイが眠っていて、山田の姿は無かった。
もう一人のイラは山田の気配を探りながらアイの状態を確かめた。
アイはどうやら薬で眠らされているようだ。
その時、押入れの中で物音がした。
すかさずもう一人のイラが押入れを開けたが中は物で溢れていただけで、積んであった物が崩れ落ちただけだった。
もう一人のイラはハッとなった。
いつの間にか自分の後ろに山田が立っているのだ。
「さすがね…」
「人の部屋で何してる」
「ここはあなたの部屋でもないでしょ。彼女を眠らせてどうする気なの?」
「お前に関係ないだろう。仕事以外の事で口出しするんじゃない。何をしようが俺の勝手だろ」
「…春日春道と話したわ」
「…それで?」
「彼、おもしろいわね。さすがにあなたが目をつけるだけの素材ね。私も気に入ったわ」
「…いいか、お前が誰を気に入ろうが知ったことじゃない。ここでの仕事は明日で終わるんだ。その前にどうしても決着つけなくちゃいけない事がある。ただそれだけだ」
「…決着?何の事?」
「…お前が知る必要は無い。ごく個人的な事だ。いいな、俺の邪魔だけはするな」
「…あなたの邪魔をする気はないわ。ただ私は自分がしたい事をするだけ」
もう一人のイラは山田に裏拳を放った。
山田は紙一重で裏拳をかわした。
「…それがお前の答えってわけか」
「春日春道に手出しはさせないわ。それが私の答えよ」
「…バカが」
山田はもう一人のイラに殴りかかった。
しかし、もう一人のイラは山田の攻撃をすべて見切り払いのけて、逆に後ろから首を締め上げた。
「明日まで眠ってもらうわ」
山田はうなり声を上げてはいたが、いたって冷静だった。
山田はもう一人のイラの指の骨を迷わず折った。
思わずもう一人のイラは腕を放してしまう。
その一瞬の隙を山田は見逃さなかった。
山田は懐から取り出した針のようなものをもう一人のイラのわき腹に突き刺した。
「しまった…」
山田が刺した針には即効性の睡眠薬が塗ってあった。
もう一人のイラはもうろうとしながらバッタリと床に倒れた。
「そこがお前の甘いところだ。相手を眠らせようと思ったら殺す気でやらなかったら実行できないんだぜ。特に相手が自分よりも格上の場合はな」
山田はもう一人のイラを粘着テープで縛り上げ、押入れの中に放り込んだ。
山田は床に眠っているアイを見詰めた。
山田はアイを担ぎ上げると部屋から出て行った。
28
どれぐらい眠っていたんだろうか?
俺が気づいた場所は502号室でイラの隣で寝ていた。
俺は確かもう一人のイラに眠らされたはずじゃなかったのか?
俺は自分の携帯の音で目を覚ました。
寝ぼけ眼で電話に出ると相手は山田からだった。
「準備が調ったぜ。さあ、ゲームの始まりだ。一分以内に黄金町の入り口、日の出町側の公衆便所に来な。遅れたら花火を打ち上げちゃうぜ」
そう言うと山田は電話を一方的に切った。
寝ぼけていたせいもあって俺は山田の言葉を鵜呑みにし、慌てて山田が指定した場所に向かった。
山田が指定した公衆便所に俺はダッシュで到着した。
全速力で走った為息が乱れていた。
辺りを見回しても山田の姿は何処にも無い。
その時、携帯の音が何処からか聞こえてきた。
勿論俺の携帯ではない。
携帯は確かに近くで鳴っていたがなかなか見つからなかった。
女子トイレの中も覗いてみたが携帯はどこにも無かった。
その間、携帯の音は休むことなくずっと鳴り続けていた。
そんな中、通りすがりの女が不意に呟いた。
「電話、上で鳴ってない?…」
その言葉で俺は携帯公衆便所の上で鳴っている事に気がついた。
俺は公衆便所に攀じ登りやっとの思い出携帯を発見した。
「…もしもし」
「…遅かったな。待ちくたびれたぜ」
「人を呼び出しておいて一体どこに居るんだ。約束通り、全部話してもらうぜ」
「…勘違いするな。主導権は俺にあるんだ。俺は一分以内に来いって言ったんだ。あれからもう十五分も経ってるぜ」
「俺は一分以内にここに来たぜ。ただ、携帯を探すのに手間取っただけだ」
「それじゃダメだ。罰ゲームだな…」
「何が罰ゲームだ。大体何でこんな分かりにくい場所に…まさか、お前わざと時間稼ぎの為に…」
「ハッハッハ、やっと気づいたか。でも、それだけじゃないぜ。お前のマンションの方を見てみな。そこからだとよく見えるだろう」
俺は自分の目を疑った。
アイのマンションから煙が出て燃えているのだ。
「…お前、まさか、マンションに火を……」
「そうだ。これがゲーム開始の花火だ。どうだ、おもしろいだろ」
「ふざけんじゃねえぞ。すぐに警察も来るぞ」
俺は便所から飛び降りマンションに向かって走り出した。
「警察はこのゲームのゲストさ。それに到着まではまだ時間がかかる」
「…ふざけんなお前はどこに居るんだ」
「答えると思うか?自分で捜しな。あと、マンションにはお前の知ってる女が三人いるぜ。イラ、アイ、そしてもう一人……イラ。お前は三人を助けられるかな。誰を一番に助け出す?お前が惚れてる女か?あ、そうそうお前の部屋は鍵が開いてたぜ。無用心だな。寝ている自分の女を一人残してよ…」
「!!!」
しまった。
俺は慌てて部屋の鍵を閉め忘れてきてしまった。
「本当にかわいい女だな。殺す前に味見しとくか…」
「…テメエ、イラに指一本触れたら殺すぞ」
「バーカ。やれるもならヤッてみな。とにかくイラは貰った。マンションの一室に監禁しておくからな…。ああ、イラだけに時間を掛けてたら他の女の命も危ないぜ。アイには相当世話になったんだろ?恩を仇で返すなんて最低だね」
「お前、自分の女も殺すきか?」
「…別に本気で惚れたわけじゃねえよ。演技に決まってるだろ?」
「テメエ、ふざけんじゃねえぞ!」
俺は持っていた携帯を地面に叩きつけ、全速力で走った。
頼む、何とか間に合ってくれ………。
【続く】
, こんにちは。D・二プルです。
ごゆっくり御堪能下さい。
,#000000,./bg_f.gif,219.1.121.141,0
2006年03月14日(火) 21時49分17秒,20060314202741,20060317214917,6ooBTdutmnZkQ,『WORとして生きているコト』 −3−,蝶。。,,,深來は自分の小さい頃を覚えていないらしい。
当たり前だ―――――・・・記憶を消されてるとか何だか聞いた。
この前、同僚と立ち話した時のコトだっただろうか――・・・。
****
「でさ・・・深來のヤツ、父さんとか母さんとかいう存在がナイんだってよ」
俺の同僚仲間、雫季(だき)が真剣な眼差しで俺を見つめて言った。
いつもは明るくて、兎に角元気で何事にも突っ走るあの雫季が、急に真剣になる
というのは大変珍しい。
「―――亡くなったのか・・・?」
俺が間を置き問うと、雫季は「んー・・・」と俯きながら後頭部を掻く。
「亡くなったっつーか・・・・・・記憶を消されてる?って言ったら分かるか?」
「記憶を消されてる?」
雫季の言った言葉を、俺は繰り返して言った。
『記憶を消されてる』
雫季が言うからに、深來の小さい頃の記憶は何者かによって消され、今に残る
深來の記憶は「WORとして生きているコト」しかない、とのコトだ。
でも、何故深來の記憶を消す理由があったのだろうか。
第一その雫季が言う「何者か」と言うのは何なんだろうか。
どちらにしろ、「何者か」という存在を知りたくなった俺。
「雫季の知るコトを全て聞かせて欲しい」と雫季に頼んでみる。
すると雫季はふぅと溜息を付き、俺に聞き返してきた。
「いいのか?――――・・・知らないからな、俺」
意味的に「俺の言葉がお前のコト傷つけても知らないから」とかいうコトだろう。
俺はためらったが、すぐにコクリ、と頷いた。
「あぁー、マジで聞くのかぁ。まぁ朝祢が求めるんだったら仕方ないよな」
そう雫季は呟き、俺の目を見つめ口を開いた。
「お前が消したんだよ、深來の記憶」
「・・・は・・・・・・?」
俺が唖然してそこに立っていると、「俺、用があるからまたな」と雫季は
足早にこの場を去っていった。
・・・嘘だろ――――――――――?
「・・・・・・」
理解不能だ。
自然と、涙が俺の頬を伝う。
なんとなくだけど――――その日、初めて声を上げずに泣いた様な気がする。
雨が、しだいに降り出していたな・・・
****
「朝祢?マジ、大丈夫か?」
「あっ、え?」
またハッとすると、現実に戻されたのか、辺りはあの戦地になっていた。
「お前今日ヤバいぞ、まぁ俺にはカンケーねェけど」
俺が首を左右にコキ、コキと鳴らしていると、深來が腰に手を当て俺を覗き
こんでくる。
一応笑いで誤魔化そうと、はははと頼りない笑みを浮かべた。が、急に俺の頭に
何かがよぎる。
『お前が消したんだよ、深來の記憶』
「・・・?おいどうした朝祢?」
『深來のヤツ、父さんとか母さんとかいう存在がナイんだってよ』
「大丈夫か?朝祢?朝祢??」
何を恐がっているんだ俺は?
違う、今更そんなコト考えるなよ!
そんなコト思ったって、深來は・・・ 「朝祢!!朝祢!?」
俺が記憶なんて消さないのにッ―――――!!!!
「朝祢ー!!?」
違う―――――俺は、記憶を――――・・・!!!
,雫季さん登場。
,#000000,,211.122.49.55,1
2006年03月13日(月) 16時35分20秒,20060313163520,20060316163520,64.ZN8dV9uwd2,earth of dream,アプリコット☆,banbanban_28@hotmail.com,,もし孤独な人に伝わる 音楽があれば もし寂しい人に伝わる 音楽があれば
どんなリズムを奏でましょうか 例え形がなくとも 心に響く様なそんな メロデ
イー
鉄の雨が降る 現実に 目の前に映るのは 誰かが 逃げる 足音に 叫ぶ 声
知ってるのでしょうか。黒い雨に濡れた 人々を。。
どれだけの人が怖い夜を過ごして 泣いたでしょうか。。無責任な世界の狭間で。
どれだけの人が怯えたでしょうか。人の心をなくした 何かに。。
言わないで 過ちなんて、そんな言葉じゃなくて 本当に愛と愛が覆う世界なら
全然違う そんなんじゃなくて
言わないで 誠意 持って 戦った人達もいるのだから
愚かな行為なんて 無神経な 言葉 言わないで。
ただ生きるために 与えられた命だから どんな人も 同じ世界で 同じ幸せを
願う事は 幸せという命
人を愛せるなら 自分を愛せるなら あの公園を愛せるのなら
大切なもの 守りたいという気持ちは 自然なものじゃないですか。
壊さないで 生まれた国を 一緒に育った この町も 一つの星で生まれた 私達の
地球を。
たとえ遠く離れても 一緒じゃないですか 世界中の人はこの星に生まれたのだから。
これ以上壊さないで いっぱいすぎる 人の心も 木も 水も 動物達も。。
きっと存在した事を壊す事が、間違えだったりして 過去の出来事よりも 今の現実よりも 何よりも
ただ生きるために 与えられた命だから 同じ世界で 同じ幸せを。 祈る事は幸
せという命
もし孤独な人に伝わる 音楽があれば もし寂しい人に伝わる 音楽があれば
どんなリズムを奏でましょうか 例え形がなくとも 心に響く様なそんな メロデイー
あの太陽を感じて 手を伸ばして 届きそうな月の光を浴びて 思いきり叫びたい
本当の愛の歌を。。平和の歌を。。笑顔の歌を。。
素敵なメロデイー。。
この星のメロデイー。
erath of dream that is ;love and peace,ちょっと平和の歌詞みたいなのを作ってみました♪♪,#000000,./bg_c.gif,58.159.66.74,0
2006年03月11日(土) 19時31分59秒,20060311193159,20060314193159,6FrI3lMAOjmGo,***運命***@,ぺり★かん,pagu_712_taati@t.vodafone.ne.jp,,私たちが出会ったのは、そぅ。
ついこの前の出来事。ありえもしない、
奇跡とか偶然とか、かるい言葉では表す事のできないような
運命的な出来事。神様がくれた運命。。。
由利『やっぱ電話かけようかな。。。でもなぁ。。。今はもしかすると仕事中かもしれないしなぁ・・・。はぁどうしよう。』
・・・由利・・・かけてくるって言ってたのになぁ。。。
仕事の事心配してくれてんのか・・・?
なら俺からかければ!・・・でも・・・いいや!
かけよう!!!
賢「番号は・・・」
《ピピピピピピピピピ》
由利『だれだよぅ・・・。こっちが真剣に悩んでる時に。。。
ったく。』
《ピ》
由利『はい・・・どちら様ですか?』
賢「あ!俺。大丈夫か?・・・病気???」
由利『俺って。。。誰???』
賢「何言ってんだよ!?
はじめて俺がお前に間違えてかけちゃった時みたいじゃん(笑」
・・・は?もしかして・・・
由利『賢ちゃん???』
賢「そうだけど・・・。わからなかったの?(笑」
由利『いや・・・名前のトコ見てなくて・・・ごめん↓↓』
賢「いーよ(笑 なんで電話してくれなかった?」
由利『・・・仕事中だったら悪いなぁって・・・』
賢「やっぱりな。(笑 由利は優しい奴だから、
そんなこと考えてかけてこないんじゃないかと思って、
だから俺から電話したんだ(笑」
由利『そ!そうだったの???ごめん!!!まだかけていいか不安になっちゃって。。。』
賢「いや俺が悪かったよ!だから、俺のスケジュール教えるわ!!!
毎週必ず!!!だから、今からいい?」
由利「!!!う、う、う、う、うん!!!ありがとう///」
賢「由利〜!!!」
由利『賢ちゃん!!!』
賢「ごめんな。スケジュールなんて電話でもいえたのに。」
由利『そうなの?いいよ!!!会いたかったし♪』
賢「////そういう恥ずかしい事よく、すらっといえるな///」
由利『・・・だって好きだモン!!!・・・//////』
賢「///////////////ドウモ。」
由利『あはははは。賢ちゃん顔真っ赤!!!』
賢「///仕方ねぇだろ!
そんな恥ずかしいこといわれて普通になんて出来ない・・・よ。」
由利『はははは』
賢「ンなことより、スケジュール!!!
ほらこうだから・・・。うつして。」
由利『はーい!ハハハ。』
賢「////ったく。」
由利『ありがとぅ!!!空いてる時間に電話するからね!』
賢「おぅ!!!ありがと!俺からもちゃんと電話する!」
由利『バイバイ。』
・・・何この沈黙・・・
賢「・・・やっぱさ。返事はもう出さなくちゃだめかもな。
こんなにのめりこんでるから。」
由利『・・・へ?』
賢「俺、お前が大好きだ!!!///
最初は妹っぽくしか見えなかったけど、
いまじゃぁ欠かせない存在だから。
電話だって、こなかった時、本当はさみしかった。
やっぱ俺のこと好きじゃないんじゃないかっておもった。。。
俺は・・・お前に、由利にこんなにのめりこんでるんだ。
すっごく大好きなんだ!!!」
由利『//////』
なぜか涙が出てくる。何で出てくるのかくらい自分でもちゃんと分かってる。
だけど・・・頭が、考えてる事が、体と違う行動をするから・・・
嬉しいはずなのに。。。うれしすぎるのかなぁ。。。
抱きつきたいはずなのに。。。涙が出てくる。
泣いてるんならはやく抱きつきたい・・・。
はやく・・・・・うごけ・・・
賢「///////////由利。」
由利『//////う゛〜。ありヒックがとヒック
ひっく・・・ありがとうひっく。。。。う゛〜。。。』
本当は泣きたくない。泣いた顔であなたと抱き合いたくない。
けど今は体が言う事聞かないから。。。このままで。
賢「気をつけて帰れよ!じゃーな。また。」
由利『////うん!ばいばい。』
今日は、運命とは、誰もが予想をしないことなんだと。
あらためてわかった。
だから運命というのかもしれない。
それは神様の名前なのかもしれない。
ありがとう。運命という名の神様。。。,久しぶりです!!!
今回は、運命の神様が大活躍!!!(でもなかったかも↓ 笑
やっぱり好きな人にすきって言われたら、嬉しすぎて・・・
こんなことがあるだけで嬉しすぎて泣いちゃうくらいですよ!!!
だからこのようなストーリーになりました!
皆さんどうでしたか?感想をいただければと。おもいます!!!
ありがとうございました!!!,#0000A0,./bg_d.gif,61.125.36.135,0
2006年03月11日(土) 15時38分23秒,20060311153823,20060314153823,6GZ/7xhqPuYtE,さよなら。美しい世界たち。,藍那,,,あの場所が好きだった。花が沢山あって、優しい風景で・・・。でも、もう二度と見れないと思うとね。・・・やっぱり寂しいんだ・・・・。
死んじゃったの。私。車にはねられて。死んじゃうと、後悔ってするものなんだね。・・・たとえば。あなたに告白しておけばよかった・・とか。
もう行かなきゃ。上の世界へ・・・。行かないと・・・。ゆっくりと私の体は浮上していく。涙は雨になって、人間界に降り注いだ。
『おぬしも死んでしまったのですね・・・。』
神様がさびしそうに声をかける。
『・・・・』
その問いの私は答えない。違うこと考えてた。そう・・。貴方の事を・・・。
『・・・行ってまいりなさい。』
神様が優しく声をかけてくださる。
『ぇ?』
思わず私は聞き返してしまった。ああ、何て失礼なことをしてしまったのだろう。
『会いたいのでしょう?彼に・・佐伯海斗に。』
『・・・はい・・。』
私は弱弱しく答えた。
『仕方ありませんね。』
『会いに言ってもよろしいのですか?』
私はばっと顔を上げた。
『・・・はい。』
だが、対照的に神様は顔を伏せる。
『ですが。』
『ぇ・・・?』
『会いにいったりすれば、貴女は二度と生きかえる事は出来ません。100年経っても・・。1000年経とうとも。それに、彼に会えるとしても一分から・・
一分三十・・・。このくらいでしょう。貴女はたった一瞬に近いような時間のために生まれ変わることをあきらめますか?藍那。』
・・・正直、少し迷ったんだ。彼は私のこと好きじゃ・・・。ないと思うし・・・。
私は首を縦に振った。一瞬でも、会いたかったんだ・・・。君に。
『行ってまいります。』
『気をつけて・・・。藍那。』
『はい。』
ゆっくりふわふわと下へ落ちていく。会いに行くよ。今君に。たとえ、生き返れなくても。涙を流す羽目になっても。
*
『藍那・・・。』
会えた。やっと君に。
『どうしてお前がここに・・。死んだはずじゃ・・・。』
よっぽどびっくりしたのか、彼は口をあんぐり。その隣には・・・。
とても可愛い彼女。涙がこぼれそうになったけど、一生懸命我慢する。
彼女に私は見えないらしく、彼のことをじっと見つめてる。
『うん・・。もう死んでる。でも、貴方に会いたくて・・。』
『何で??』
そっか。この人ものすごい鈍感だったんだっけ。普通あなたに会いにきたって言われたら、自分の事が好きだからって思うよね。私はクスッと笑う。
『大好きだったよ。貴方の事が。これを伝えに来ただけ。』
あと、30秒・・。29,28・・。
『これだけ。あとね・・。私がのあそこが好きだった理由は・・。貴方がすきだって言ってたから。』
19,18・・・。もう帰らないと・・。
『もう行かないと。さよなら。彼女と仲良くね・・。』
私は上をむいて、上り始めた。
『藍那!!俺も・・。俺もお前の事ずっと好きだった。お前が死んだって知らせ聞いて・・。やけになって・・。彼女作って・・。気持ちをまぎわらそうとしてたんだ。大好きだ。ずっと。お前を。』
私はにっこりと笑った。うれしかったよ。君の気持ち、届いたよ・・・。
エンド,初投稿ですー。
何か、意味わかんないっすねー・・。
呼んでくださる方に、感謝感謝ですー。
(☆´∀`★)どうもありがとうございました,#B500B5,./bg_f.gif,61.21.107.98,0