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追憶・交遊録|まこちゃん (1 / 1)

まこちゃんとは、本名政国さんという幼馴染のことである。
歳は私より3つほど上で、正義感の強いとても男っぽい人であった。
私が、普通の遊び相手という印象しかなかったまこちゃんに、特別な思いを抱くようになったのは、ある出来事がきっかけであった。
まこちゃんには、私より1つ下の、Nという弟がいた。ある日、その3人で山へマツタケを獲りに行ったときのことである。
慣れない私には、どこをどうやって探したらいいのか分からず、
「あったぞ!」
と言う声がすればそっちへ飛んで行き、
「見つけた!」
との声を聞けばそっちへ駆けて行く。そんな訳で、ただ二人の後を追いかけてはその後塵を拝しているばかりであった。
ところが、そんな私もついに見つけたのである!! 落ち葉を押し上げて頭を出しているいくつかのキノコ、まさしくマツタケである。
大喜びで駆け寄ろうとした瞬間であった。
「見つけた!」
声と一緒に弟のNが飛び出してくると、かまわず掘り出し始めたのである。『遅かったか……』と、あきらめのいい私は、他を探そうと行きかけたときであった。
「このやろう!」
いきなりの、まこちゃんの怒声である。と同時に、夢中で掘っているNの背中に、突然太い木の枝が振り下ろされたのである。
「ギャー」
Nが悲鳴を上げて飛びのく。
「このやろう、みっちゃん(私の名である)が先に見つけたんだぞ! お前のものじゃねえ!!」
まこちゃんは恐ろしい顔をして何度も何度もNの背中を打ちつける。
「痛いよー、痛いよー、死んじゃうよー」
ガツンガツンと鈍い音がし、その度に悲鳴をあげ泣き叫ぶN。あまりのことに、ただ呆然として私は声も出ない。
「泥棒みたいなまねするな、あやまれ、あやまれ!」
まこちゃんは容赦がない。ついに木の枝が折れた。このときになって初めて我に返った私は、
「まこちゃん、もういいよ、もういいよ、きっとNが先に見つけたんだよ!」
と、折れた枝でなおも打ちつけようとする、まこちゃんの腕を押さえたのであった。
「みっちゃん、すまんな、すまんな、これで勘弁してやってくれる?」
荒い息の下で、そう何度も詫びるまこちゃんであった。
後年、まこちゃんとの付き合いが深まるにつれ、私は、このときのまこちゃんの行動が、単なる正義感というだけのものではなく、
それは、いわゆる・任侠心・というようなものであり、それが中学生にして、すでにまこちゃんの中に存在していたのではないか?! と思うようになった。
だからこそ、かわいい弟のNをあれだけ打ったのではないか?私にはそう思えてならないのである。
実にまこちゃんとはそういうひとであった。 このときの強烈な光景は、数十年経た今もなお私の脳裡にやきついて離れない。
このことがあって以後、まこちゃんとはより親密になっていった。私が高校生になった頃には、すでに東京へ出ていたまこちゃんであったが、帰ってくる度に、必ず映画に、食事にと連れて行ってくれたものである。
やさしくて、極道が好きで、黒のダボシャツを着たまこちゃんは、当時いっぱしの不良ぶっていた私にとっては、兄貴分のような存在であった。
そんなまこちゃんの消息が知れなくなったのは、私が東京へ就職して数年経った頃である。一年目の正月に帰郷した折、すでにUターンして故郷へ戻っていたまこちゃんが、
「東京から連れてきた嫁さんを紹介する」
と、実家に訪ねてきたことがあった。10代の可愛い人で、すでに産まれたばかりの男の子がいた。
これがまこちゃんに合った最後である。連絡がとれなくなってから、私の両親に消息を尋ねても、
「、よく知らないが、あそこにはもう誰も住んでいないようだ」
との話で、まるで分からない。
いつだったか、一度だけ会社の方に電話があったことがあるが、私は外出中で、また、どこからかけてきたのかも分からなかった。
以後何の連絡もないことを思うと、そのとき留守にしていたことが残念でならない。
まこちゃん、今頃は、どこでどうしているだろうか……
私の今一番会いたい人である。

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